不老になった徐福と、最期まで騙された男の話。   作:鴉の子

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その後のお話とサマキャンイベントのお話。
それなりにシリアス。それなりにギャグ。
1話完結の予定だったんだけど終わんないので再編集と言う名の書き直しです!!!!(時間がかかった理由)


春は逝き、夏に咲いて、君と会って。
1節:白菊と魔女/或いは、魔女2人


 

「…………えー?」

 

 召喚されたのは、かつて己がたどり着いた場所。時代は随分と下って……というより、すごい後だな。2000年代って、何年経ったんだ、てかすご、村こんな綺麗になってる。

 

 コンクリートの上に立って、辺りを見回す。随分とまぁ、長いこと続けたらしい。その結果はどうやら、それなりに成功を収めていたようだ。2000年も付き合わせてしまった村の子孫たちには申し訳ないと思うと同時に、誇らしくも思う。だからこそ、彼らの積み上げてきたものを無にしてはいけないと、思った。

 

 投げ出して死んでしまった女が何をいうのだろうと思うけれど、それでも、これは私がやらなければいけないことだと思った。

 

 どうやら、怨念というか、幽霊は沢山いるみたいだし、当時の状況を聞いて回ってもいいだろう。もしかしたら、あの男もいるかもしれない。

 

 そう思ったけれど、いない。

 

 どこにもいない。

 

 それは、そうだ。だってきっと、この身体に熔けているのだろうから。当たり前のことだった。

 

 だから、彼とは話すことは出来ない。

 

「そっか、うん」

 

 当たり前のことだったけれど、確かめるしかなかった。墓はまだ残っていたけれど、そこには何もいなかった。

 

 何もいない、ただ、私の骨が溶けた土があるだけだ。

 

 ああ、うん、それは酷く寂しい。この身体に全て融けているとしても、話せないのは、とても寂しい。

 

 少しだけ、そんな風に思ってしまったけれど、やることは変わらない。設備は随分と残っているし、私の呪いもこの身に全て収まっている。

 

 とりあえず、漂着した聖杯と、()()()()()()()特異点とやらになりつつあるこの山で、私という呪いを完成させようと思う。

 

 とはいえ、人手がない、確か地下に労働用人形をたくさん置いていたはずなので、そこから始めよう。

 

 

 

 数日後、やたら顔のおっきい人形を掘り出して、作業を開始する。呪いと化したこの身に足りないものはあと少しだ。というより、呪いが強くなりすぎている、土地を汚染しかねないほどだった。

 

 おそらく、私の“死体”に、死を溜め込みすぎたのだろう。どうやら、仮面という形に加工されたらしいけれど、2000年にも渡って死を経験した結果、行き場のない憎悪が溜まっているようだ。多分、本来なら人間そのものに向かうのだろうけれど……方向性を与えられているので、害はないだろう。

 

 ちょっと……いや、かなり怖めの霊障は出るけど。多分それで捨てたんだろうな……村……。

 

 まぁ、私が勝てばいいのだ、うん。村を出た子達も、多分それなりにやれているだろう。簡単な魔術くらい使えただろうし、街で結婚したなんて日記もあったし。

 

 よぉし、頑張るぞ。

 

 

 

 さらに数日後。

 

 

 なんか、変な気配がする。サーヴァント? サーヴァントには違いないだろうけど、人魚……? 人魚か? なんだったんだろ……怖かったからとりあえず呪い殺しておいた。うん、サーヴァント1人くらいならば触れば殺せるので中々だと思う。

 

 なんだったんだろうあれ……絶対放っておいたら大変なことになった。あと、なんか昔の私よりろくでもない気配がある。教祖EXって感じ。

 

 

 ……数日後に、なぜか蘇って戻ってきた、こわい。しかもなんか、色々混ざっている、私より色々混ざっていて本当に怖い。どうやらこちらの目的に関与しないどころか、手伝ってまでくれるらしいので、湖の半分ずつをテリトリーとしてあまり干渉しないこととした。

 

 悪い人だけど、悪いことにはならない気がする。だって、ちょっとだけ知ってる目をしてたから。

 

 とりあえず、話は通じる気がするけど、会話するのも良くない気がしたので放置。

 

 ……後々面倒ごとになる気がするけど、あれを殺せる気がしないので後回しで。

 

 その間に作業を進めていく。うん、ホラー映画というのも悪くない。怖いけど。

 

 さらに数日、ついにサーヴァントが召喚され始めた。カルデア? とかいう場所からやって来たらしい。まぁ、そんな事はどうでもいい、彼女がいた。

 

 あの時からずっと変わらぬ姿で、ずっと強くて、美しいままだった。思わず笑みが溢れた、楽しそうだけどどこか気だるげで、ああ、ここまで来れてよかったと思う。

 

 でも、じりじりと、焦げ付く様な痛みが胸に走る。何故なのかは、わからない。この霊基に焼けついた痛みが、燃え広がる様に増している気がした。

 

 それを、見なかったことにする。ただ、その痛み(憎しみ)を見ないことにする。だって、それは(彼女)を壊してしまうだろうから。

 

 ──そうだ、この憎悪は()()に預けてはいけないものだから。

 

 ……あれ、今、何を考えていたのだろう。少し頭がぼんやりとする。

 

 うん? 少し呪いが多すぎて霊基異常でも出たのかな? 軽く調べても、そんな事はないらしい。

 

 気にせずに、呼び込まれたサーヴァント達に邪魔されない様に虞っ様を殺す準備を整える。やはり、本人を数度殺さないと多分ダメだろう。多分、7度。

 

 2000年を費やし、全ての命と知識を捧げて作られたあらゆる死を蒐集した私という肉体は既に霊基として歪み始めている。居るだけで地域を汚染する毒と化しているという点で、性質としてはⅦ階梯の死徒に近いだろう。

 

 おそらく、この特異点の中でなら正面から戦っても負けはしないだろうが、怖いし、やりたくない。大体、戦うのは苦手だし。

 

 あ、そうだ、召喚されているサーヴァントを洗脳して手駒にして代わりに邪魔してもらおう。

 

「……はぁ、独り言増えるなぁ」

 

「あら、あら、あら、寂しい人。誰かがいて欲しくて、そこにいるのに気が付かないのね」

 

 くすくす。くすくす。悪夢の様に、どこからか笑い声が響く。

 

 門が開く、銀色の輝きと共に。目の前に降り立つのは遠い異空より来る、夢を泳ぐ黒猫のような少女。その権能は史実世界を離れた、紫影の中にて生まれた放浪者(ストレンジャー)と言われた少女と同じモノ。

 

 その力の源は、時間と空間を超越するただ一つの窮極。空動する虹の泡そのものの力を身に受けた少女が、呪いと化した女の前に現れた。

 

「……こわ、何それ」

 

「……開口1番失礼な人ね」

 

「何がどうなってそうなってるの? いやいいや、聞かない、頭おかしくなりそう」

 

「あら、賢明ね。聖杯に呼ばれたサーヴァント、フォーリナー、アビゲイル・ウィリアムズよ。……協力したいのだけれど」

 

「はぁ? 特異点の解決しに来たんじゃないの?」

 

「いいえ? いいえ、私ね、貴女と同じことがしたくて」

 

「……は?」

 

「揺蕩う宙の中で、車窓からあなたの夢を覗いたの。いいえ、覗いてしまったのかしら? 同じことね。それで、私もやってみようと思って」

 

 くすくすと笑い声は絶えない。彼女は魔女なのだから、笑顔は絶えることはない。

 

「ただ1人のために全てを焼くのでしょう? ただ1人と夢の為に、何もかもを」

 

「うん」

 

 迷わずに答える。何故なら、当然のことだったから。だって、ここまで全てを捧げられたのだから、終わるまではやるしかない。

 

「ええ、ええ、だから、私も。たった1人のマスターの為に、あの人の夢を守る為に、全部を無くしてしまおうと思って」

 

「そっか」

 

「だから、手伝いましょう。私、魔女ですもの。とびきりの悪夢で、全て殺せばいいのでしょう?」

 

 魔女は笑う。魔女は、自らの世界で大切なもの(黄金の光)を永遠に守る者だからと。たとえ、それが外を全て焼き尽くすことになったとしても。

 

「その人、大事なんだね」

 

「ええ、とっても」

 

「うん、いいよ」

 

 なら、いいと思った。この少女は確かに恐ろしい魔女だと思う、見つめれば目が潰れるような狂気を持った女の子だ。

 

 でも、多分それは私も同じことだ。

 

 この子が魔女と言うのなら、私も、多分そうなのだろう。

 

 永遠にする。そうだ、永遠に。

 

 私の夢、彼らの夢、あの人の夢。

 

 彼女(虞美人)を殺して、私達は永遠になる。

 

「あら、あら、あははは。貴方、壊れているのね?」

 

「……? 霊基はちょっと肥大化してるけど、別に」

 

「いいえ、いいえ。壊れているわ、素敵ね。あなた、いえ、貴女の中の人も? 貴女の王子様はあの騒がしい方だけれど、貴方にとっては違うのかしら。やっぱり」

 

 くすくす、くすくす。魔女は笑う、絵物語を見る少女のように。

 

「……こわー」

 

 よくわからないことを言いながら笑う少女は怖い、ホラー映画の定番だなぁとちょっと引いた。

 

「うふふふふふふ。わからないの? ……わからないのね。黒い炎になっても、いえ、なってしまったからかしら?」

 

 門が開く、少女はこの場から消えようとしていた。

 

「さようなら、白菊のような貴女。燃えるような呪いは、きっと叶うわ」

 

 後には、何も残らない。真昼に見る夢のように消えるのが彼女だった。

 

「……なんだったんだろぅ……」

 

 後には、困った顔の女が1人残された。

 

 

 




紫影のソナーニル、おすすめです。(アビゲイル・ウィリアムズを理解するのに副読本としてとてもよいです)

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