それより。
はい、来ましたね、水着が。
来ましたね。
来ましたよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あまりにも嬉しすぎて人生で1番デケェ声が出ました。
結婚してくれ。
声が聞こえる。眠る私の耳を、聞こえない声が響いている。
私は眠っている、サーヴァントは眠らないけれど、この場所では別だった。ここは夢幻と死の世界、そうなりつつあるから、眠ることに意味はある。
もう忘れてしまったことだけが、夢の中にはあった。遠い夢とはそういうものだから。
秋の花と、夕焼けと、夏の暑さと、冬の寒さと、肌の暖かさと、春の血の匂いで夢の中は満ちている。
闇の中で、私達はいた。目の前にいるのは何も喋らない、影だったけれど。
「ねぇ、私頑張るから、見ててよね」
影は何も言わない、当然だ、夢の中なのだから。ここには私しかいない。
夢は灰色だった、灰色の無意味だけが広がっている。でも、血の匂いがすると、赤くなっていく。
夕焼けの色だった、それは、いつか見たような気がする夕焼けだった。
「もう夜だ」
影が口を開いた。夢の中なのに。
「……え」
「目覚めるといい、今日は空が綺麗だ。満天の星というのはこんな夜だ」
燃える、燃える、影は燃える。憎しみを糧にして、◼︎を糧にして。全て、彼女の燃料なのだから。
「ああ、よかった、お前の声が響くにはいい夜なんだ。笑ってくれると、嬉しい」
「────おい、なんで」
「ああ、起きたら忘れておいてくれ。まだな、どうせもう少ししたら会える」
「待て、待てよ、待って!」
「ああ、丁度今は
黒い炎は笑う。夕焼けの中で笑っている、それは見覚えのあるもので、今すぐ殴ってやりたいような、泣いて、謝りたいような。
そうして、どうしようもなくなって立ち止まった私を見て、少し笑みが困ったような顔になって、それでも格好つけて。
「『待て、しかして希望せよ』だってさ。伊達男に教わったんだ、カッコいいだろう?」
「……自分で言うな、ばーか」
「む、やっぱり似合わないか」
「うん」
なんとも、しまらない別れ方だ。でも、その方がらしいな、とも思う。
夢が覚める、目が覚める。まだ夜らしいけれど、星でも見よう。そうして、懐かしくなったら、また続けるのだ。
この特異点をも、燃やし尽くす、私の
「じゃあ、話を続けよう」
夢から覚めた女が消える、残るのは影のみ。いや、正確には違う。
赤黒い炎と、青い黒炎が互いを焼いている。それは、復讐者の神たる男だった。巌窟王、エドモン・ダンテス。カルデアのマスターを守護する廃棄孔、遠い未来でイドと呼ばれるそれを作るモノ。
「……貴様がこの場所の中核か。だが、主導権もなければ、意思もないか」
何処からともなく現れたテーブルに両者はつく、夢の中ゆえに多少は融通が効くところだった。
「廃棄孔がなんなのかも知らないし、あいつが何をしようとしているのかも知らないけど。でも、邪魔はしないでもらいたい」
「……あれは全てを焼き尽くす。我らと同じ、己すら滅ぼす黒き涙」
「知ってるよ、知っている。尽きぬ叫びと、涙と、怒りの果てだ」
「ならば、なぜ燃える。何故、お前は死を集め続けている」
問いという形だったけれども、何もかもわかっているのだろうなという口ぶりだった。だって、彼の炎は同じモノだ。
「わかるんじゃない?」
「────」
目の前の男は口を噤む。随分とうるさい人間だけれども、口にすべきではない言葉は口にしないあたり、真面目で優しい人間なのだろう。
「怨念でもなく、怒りでもなく。そのためにお前はここにいるのだな」
「そうだなぁ、無いと言えば嘘になるし、むしろその為と言われても仕方ないと思うけれど」
色々と、思うところはある、恨みなんてそれこそ沢山ある。あの女が、最後まで報われなかったこととか。
「────オレは、お前を止めねばならん」
「そうだね、君はカルデアのマスターの……そう、そうだな、現代で言うと……王子様だから」
「…………」
苦々しい顔をしている、どうやら間違ったらしい。どうだろう、そう離れてはいないとは思うけれど。
「まぁ、でもそうだな。貴方のマスターは、助けてあげてくれ」
きっと、巻き込んでしまうのだろうけれど、彼女も別に死んで欲しいわけじゃないだろうし。
「最後まで走らせてくれよ、俺たち、多分同じなんだろう?」
走る、走る、走って最後に燃え尽きて、その手を伸ばして、倒れ込む。
「────その手、伸ばす限り。目を瞑ろう」
「だが」
一呼吸おいて、巌窟王は影を睨む。
「我がマスターに何かあれば、即刻貴様を焼却する」
「助かるよ。ああそれと無理せずに、随分と辛そうだぞ」
「構うな、我が身は既に炎。削れはするが、消えはしない。貴様の罪禍全てを燃やして余りある」
「……(痩せ我慢をする人だな)」
とはいえ、己には止められない。集まる死そのものは、自動的だ。無限に近づくほどの蒐集された死は、怨霊達の主人格たる自分ですら制御できるものではない。
「ありがとう、俺が言うのもなんだけれど……お達者で」
「……か弱き復讐者よ、その道行きに答えを見つけるといい」
「見つかるかな?」
「────ふ、愚問だな、亡霊よ。それは既にある。あとは、わかるな?」
「……ありがとう、親切だな、貴方は」
彼は消える、この場所は、いるだけで辛いだろうに俺の話に付き合ってくれたのは、まぁいい人だろう。復讐者を名乗っていたけれど、大仰な話し方以外は随分とまともそうだった。
夕焼けの中で、残されたテーブルのカップを啜る。
「……なんだこれ、お茶じゃない」
身に宿る亡霊の知識が言うには、コーヒーというらしい。苦いし黒いけど、まぁそういう飲み物として飲むなら悪くない。
「……お菓子、欲しいなぁ」
つぶやいた独り言は、虚空に消えていく。
ちょっと幕間という趣。
こっちの徐福は神霊より亡霊を固めて作った複合霊基なのでアヴェンジャーという感じ、