水着徐福の一撃を受けて半年くらい死にかけていた(半分冗談でリアルがかなりキツくなっていたのもあります)
というかいまだに水着徐福がアヴェンジャーなのを脳が受け止めきれていない節があります。
俺のアヴェンジャー…………………?
死を蒐集するということは、呪いそのものになるということで。礼装ではなく自身に行うならなおさら。
私の身体は、私の夢そのものとなった。永遠に、この果てと化した小さな世界は私そのものになった。
「……だから、私もいられるのだけれど」
ふわふわと浮いている少女は、呆れた顔でこちらを覗き込んでいる、さかさまに。
「夢を渡るんだっけ?」
「そうよ、銀の鍵の力で。夢の中なら列車に乗ることも多いけれど」
一輌だけの車両。夢の中を進むイエロゥレイルウェイ、黒猫の様な少女を運ぶそれは、ここにはない。
「ふーん」
「それで、どうするのかしら?」
「どうもしないよ、しばらく楽しんで貰って」
その間に数度、殺せばいいだけの話だ。死因はまぁ、ホラー映画から何点か。こういう時は定番のやつの方がいい。誰が見ても、どう見ても死ぬだろうと思わせる様な死に方を。
「あら、いいわ。うんと怖いのにしましょう」
くすくすと少女は笑う。白磁の人形のように美しい少女だから、ひどく怖いと思う。というか、邪悪で怖い。
魔女というのはみんなこうなのだろうか、この特異点を動かす三者は皆、魔女の類ではあるのだけれど。
ああ、別に魔術的、種族的な話ではない。ただ、そういうあり方をしているというだけだ。どうしようとなく、そう成り果ててしまった生き物。
「……演出、やる?」
「──」
固まった、やりたさそうにしてる様に見えたけど、違ったかな。
「……いいの?」
「寧ろ助かるけど、やれる?」
「ふふ、やるわ。どんなのがいいかしら、スラッシャー? 和風? それともスリラー、POVも好きよ」
「え、B級スラッシャー」
その発言の後、徐福の背後に薄らと巨大な骸骨が浮かび、困惑した様な仕草をする。アビゲイルはそれにチラリと目線だけ向けると、ため息をついた。
「……………………テキサスなチェーンソーでいいのかしら」
たっぷりと時間をかけて、色々な言いたいことを飲み込んで、ついでに背後に浮かぶモノへの若干の哀れみを込めて。
「2ね、2」
「い や よ。せめてリメイク前初代」
「えー!?」
「ホラーとして認めないわ! 面白いのは認めるけど」
互いに不満はあるが、頼む側であんまり偉そうなことも言えないので取り敢えずは本人に任せる。
「それじゃ、とびっきりの悪夢にしてしまうわ。そこで見ているといいわ」
少女は、楽しげに笑って、目の前から夢のように消え去る。当然だ、なにせ、ここはすでに夢同然の場所なのだから。
湖で霧と幻を滲ませている人魚姫のおかげで、この特異点は夢と現実が常に転回し続けている。昼と夜、どちらが現でどちらが夢なのか、それはどちらにもわからない。曖昧な陰陽図がくるくると回り続けている。
螺旋階段を登るように、世界は回転しつづけている。彼らが、夏を過ごしているだけでこの特異点はその本来の目的に寄り添って歯車が回るように駆動し続ける。
「あーあ、いいなぁ。私も水遊びしたり、お化け屋敷ごっこしたいなぁ」
誰に語っているのか、多分、ここにいるような気がする誰かに。
にこり、と後ろを向いて笑って、術式を回す。適切な場所に適切に殺人役を配置して、適切なシチュエーションに誘い込む。
そろそろ、最初の死が始まる。
喝采はない。ただ、哀しみだけがそこにある。
ただ、あなたがそこにいるだけだ。
そして、それが、この場所の真実である。
貴女の死を記録する。
これから行われることは、西洋錬金術において、黄金錬成と呼ばれるもの。
道術においては、八卦炉。かの火眼金睛、不老不死の石猿すらを殺すに足る焔の煉成。
私と、あの人を除いて、炉心に足りぬは六つの死。
火種に燃え盛る泥を注ぐように、遠い何処かでは黒聖杯と呼ばれたモノのように。
その果てに、この場所は地獄となるに違いない。
「第一の死。私の心臓は動かない」
「永遠に、永遠に」
「ただ、貴女に死をもたらすもの、それが唯一のおとぎ話」
「ここは涙と血とが紡ぎ出した、貴女のための地獄」
謳う、歌う、言葉を紡いで、指先を向けて。黒い焔が伸びる。
赤黒い骸骨が、彼女の背後に浮かび上がる。口を開き、彼女には聞こえない声で、詠う。
『────惨死しろ、天上の風の如き女。貴女を贄に、永劫は此処にある』
2人の思惑が、絡み合う螺旋のように廃棄孔を動かす。
昼と夜が、逆しまに回転する。
『星体は天動説へ、因と果は円環に』
『遍く者は見るがいい。これこそ、我が◼︎の終焉だ』
『無辺の夕暮れの中で、お前は永遠となる』
謳う、謡う、詠う。永劫無間、変わらぬモノを。
『『『男が死んだ! 女が死んだ! 母が死んだ 父が死んだ! 子が死んだ! 真っ逆さまに海の底!』』』
男の声に付き添って、死霊が童のように歌っている。恨み言のような言葉を明朗に、なんの恨みも持たないで。
『『『寂しいあなた 寂しい君ら 僕らみんな海の底』』』
『『『さよなら! さよなら! 涙とおんなじ重さしかない言葉も言えないなくなっちゃうね!』』』
嘲るような言葉を、悪意もなく言うの死人の群れに、赤く染まった骸が笑みをこぼす。
『そうとも、もう必要のない言葉だ。もう、使い果たしてしまった言葉だ』
死霊はいつまでも手を組んで回っている。皆一様に、徐福という女に笑みを向ける。一方で骸には駄々を捏ねている子供のように喧しく声を上げていた。
一方、その頃。
「後輩、死んだわ」
「パイセン!?」
廃墟にて、虞美人は突然現れた人形にチェーンソーで頭をかち割られて、即死した。
黄昏にて電鋸というわけである。
「いや、生きてるけどもね?」
「頭かち割られただけで死ぬんですか」
「いや、そのくらいで死ぬはずないのだけれど……? なんというか……即死確率178%くらいの一撃が……」
「えぇ……?」
『……おい、お前さん本当にこれでいいのか?』
「……まぁ、とにかく死んでるし、ヨシ! ……ん? 私は何に話しかけて……?」
『……いいならいいけどもよ……』
……何はともあれ。
第一蒐集:斬殺
完了。
こんな感じでシリアスなようでそうでもない感じで進んでいきます。