適当魔女と草臥れ仙人   作:ジト民逆脚屋

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――ねえ、師匠仙人
――なんだ?
――次、かな?
――まだ邪神本体の場所も判らんのに次もねえだろうよ
――……そうだよね
――お前、最近どうした? 腹でも下したか?
――レディに腹下したとか言う?!
――へっ、ちんちくりんがレディ気取りか
――ウキー! ボクだってもう十三歳! 一人前のレディだよ!
――一人前のレディ気取るなら、儂がやった羽織の丈が合ってから言え
――へーんだ! いいもんね。いつか師匠仙人も追い越すもんね!
――お前、それ2mいくからな?


ご馳走と四方山話

「で? 昔に何があったんですか?」

 

派手な音を立てながら、宮木が仙界特産のエビの素揚げを噛みながら問いかける。

人が機嫌良くただ飯を食っているというのに、この年長者二人はビミョーに仏頂面のままだ。

非常に迷惑だし、せっかくのただ飯が不味くなるので、仕方なく過去の因縁について聞いてみる事にしたのだ。

 

「……事の始まりは仙魔大戦だ」

「え、お前そこまで昔の事言うの?」

「喧しい。大体貴様はあの大戦時も変わらず、オクニ様の手を煩わせていたではないか」

「あのな、あれは長老衆が間抜けだからああなっただけで、計画自体はオクニの婆さんのもんだ」

「なっ!? 初耳だぞ!」

「お前、昔から興奮すると人の話聞かんだろ。だから、婆さんもお前を外したんだよ」

「ぬう、しかしだな……」

「ああ、そういえばミネルヴァと会ったのもその辺りか」

 

宮木はそばを食いながら、ジテツとサジンの話を聞く。

仙魔大戦と言えば歴史というより、神話やお伽噺寄りの話だ。原因は三界融合期の遥か以前に仙界と魔女界がぶつかり、それが原因で両界で約二百年程続く戦争となった。

長命の魔女や仙人ですら、もう当事者の半分近くが表舞台から姿を消している。

つまり、その頃から三界最高峰の二人は生きている。

 

「大魔女ミネルヴァか。あれには手を焼いた」

「焼いたってか、お前は一方的に焼かれてたじゃねえか」

「うるさい。まだ如意棒も継いでない時だ。今なら一撃入れられる」

「で、連盟長はどんな人だったんですか?」

「ん? ああ、ミネルヴァはかなりはっちゃけてたよ。あいつの魔法は〝全属性〟、実験しようにも場所が無いから戦時中は暴れたもんだ」

「いきなり山が燃えるわ凍るわ地形が変わるわ。それが同時に起きたからな」

「ほーん、連盟長も若い時があったんですね」

 

遠い目をする二人を他所に、宮木は焼き飯に取りかかる。

まだ腹五分目にも満たない内に、重たいものを片付ける算段だ。

 

「で、事を重く見たオクニ様が私とジテツを大魔女にぶつけたのだ」

「あれ、お前はケツに火が点いて走り回ってただけじゃねえか」

「貴様こそ、大魔女相手に逃げ回ってばかりで、役目を果たしたのは終戦間近ではないか」

「無茶言うなよ。あの荒れに荒れたミネルヴァ相手だ。被害抑えるだけでも必死だ」

「あー、連盟長のバーストでも食らいました?」

「それ、魔力圧縮からの変質ブッパ。あいつの〝全属性〟流石の儂でも痛い」

 

魔法は水金地火木の基本五属性、もしくはそれから派生する属性を操る技術であり、仙法もそこはあまり変わらない。

魔女や仙人はその属性に得意不得意等の適性があり、宮木等の例外以外は適性のある基本属性を習得し、そこから派生する属性を身に付けていく。

だが、ミネルヴァは違った。

かの大魔女は魔女の始祖の一人以外に観測されなかった魔法〝全属性〟の最高適性と、規格外の魔力量を持ち合わせ産まれた。

 

「だからか、周りにチヤホヤされ過ぎてストレスが爆発してたみたいでなあ……。あの時のあいつの相手は本当にしんどかった」

「あの大戦の影響がまだ残っているからな……」

 

遠い目をするジテツとサジンだが、聞いた当の本人である宮木はどうでもよさげに丼を掻き込んでいた。

具は醤油の様な味で、何かの肉を何かの卵と思わしきもので閉じている。

旨いが、ちょっと薄味で好みからは外れる。

 

「あの、ミヤちゃん? わりとピンポイントで高級料理狙い打ちしてるけど、仙界文字読めるの?」

「勘です」

「勘かー」

 

勘で高級料理狙い打ちされてはこちらの財布が保たないのだが、支払いはどうするか。

 

「……ジテツ紅瓢(べにひさご)はあるか?」

「紅瓢? お前も持ってるだろ」

「いいから出せ」

「ほいよ」

 

サジンに言われるまま、ジテツは羽織の袖から装飾の施された紅色の瓢箪を手渡すと彼女はそれを取り、店主を呼びつけた。

 

「店主、済まないが勘定はこれで頼む」

「あ、おい!」

「……失礼ながら、持ち主は」

「ジテツ・コジだ。ほら、見てみろ。この草臥れ顔」

「……確かに、ジテツ・コジ様に相違ありませんな。しかし、かの大仙人の紅瓢となれば代金には些か足りすぎますので、こちらに中身を」

 

言って店主が袖から出したのは、小さな陶器の壺だった。

 

「誰が草臥れ顔だ」

「貴様がだ。それで足りるか」

「これでも過分と言える程です」

 

店主の壺に瓢箪の中身を注いでいく。

それは水にしては濁り、酒というにはあまりにも澄んだ金色の液体だった。

 

「それなんです?」

「紅瓢の薬湯、仙人の魔力の活性やらなんやらに効くやつだよ」

「そして万病に対する特効薬にもなりうる。まあ、こいつ級ならな」

「だから、お前のやればいいじゃん。なんだって儂のを……」

「私のは使いきって今造り直している」

「お前、また酔って飲んだな?」

「……勝手に私の口に入ってきただけだ」

「お前ね……」

 

ジテツは呆れ、サジンはそっぽを向いてしまう。

それを見ながら、宮木は追加の品を頼むべく、勘を働かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ、ではそのように」

「何かあったのですか?」

「〝バロールの眼〟からの要請だ。……〝勇者の遺物〟が行方不明になった」

「それ、最大級の厄ネタですよね? あのぐうたら仙人がガチになる」

「ああ、最悪は都市一つ消える覚悟が要る」

 

簡素かつ機能的なオフィスで壮年の男が椅子に深く腰掛け、無機質な天井を仰ぎ見る。

〝バロールの眼〟は五大英雄の一人であるフェイランが設立した魔女でも仙人でもない覚者という、所謂超能力者の為の組織だ。

まだ、魔女や仙人の血筋が人界に入る以前、人界の僅かな魔力に反応して異能に目覚めた者達。

その歴史は決して明るいものではなかった。

差別や迫害の歴史そのものと言ってもいい。

だからこそ、フェイランは同じ覚者達に後々の希望をと、〝勇者の遺物〟の管理をする役目と組織を遺した。

この重大な役目を担えば、覚者の立場を今よりも良くしていく足掛かりとなる。

事実、そうなった。

なのに、

 

「連盟と教会にも連絡を入れろ。奴には俺から連絡する」

「はっ」

 

何処ぞの愚か者がやらかした。

特異監視機構局長は怒りを隠さず端末を手にした。

 

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