適当魔女と草臥れ仙人   作:ジト民逆脚屋

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──ねえ、師匠仙人
──なんだ?
──この戦いが終わったらどうするの?
──さてなぁ、仙界に引っ込むかね
──じゃあさ、人界に来てよ。一緒に遊ぼうよ
──あのな、チビ。儂は仙界で結構な立場に居る訳だ。その儂が人界に気軽に行けるかよ
──行けるよ。行ける様にする
──へいへい、そんな日が来るといいな


騒がしい日の屋台

「いやー、金はある所にはあるもんですね」

「そりゃ、五大英雄の内の最たる英雄の勇者を奉る祭りだから、国も必死になるよ」

「うわ、ランキング四位ですよ四位。あんな上位ランカーまで警備に引っ張るとか」

「上も失敗したくないし、周りもそうだからね」

 

パイプ椅子に座り、何処ぞの有名店のパスタを安っぽいプラスチックのフォークで手繰りながら、宮木とジテツは壮観と言える風景を眺めていた。

 

「聖典教会からは騎士団が第一から第三まで、魔法連盟からは上位ランカーほぼ全員。そして、我らが特異監視機構からは実働班。金かかってるぅ」

「ランキング三位の娘ッ子が、何言ってんだか」

「伝説の大仙人が言ってますねえ」

 

へらへらと笑い、パスタの入った紙皿を空にすると、もう一つの皿に手を伸ばす。

 

「和洋折衷というには、些か無節操じゃない?」

「パスタと豚汁でもいいじゃないですか。あ、次何処の食います?」

「あー、中華とかどう?」

「じゃあ、それで」

 

次の屋台の予定を立てつつ、とりあえず周りに目を向ける。

人の動きを管理しやすくし、ゴミ問題を解決する為か、会場内は基本的に食べ歩きは禁止で、飲食は指定の場所でのみ許可されている。

飲食席を屋台が囲む様にした配置は、買う側にとっても買い食いがしやすいメリットがある。

 

「いやー、有給最高」

「ハメ外し過ぎない様にね」

 

笠に隠れて巡らせる視線は、やけに多い聖典教会の騎士団に向けられていた。

 

「……気になります?」

「そりゃあねぇ……。ちょっと話すけど、儂と教皇は少しばかり喧嘩してそれっきりだし」

「仲直りしてない感じですか」

「この辺、儂らみたいな連中の悪い癖だね。ちょっとほとぼり冷まそうとしたら、百年単位で時間経ってるし」

「今更、どうするって話ですか」

 

ジテツ達古い仙人の時間は永遠とも言える。病や怪我で死ぬ事はあっても、明確な寿命が存在しない。

故に仙人の死因は病死か、故郷の地に還るかの二択になりやすい。

 

「回鍋肉食べます?」

「いいね。青椒肉絲もいこう」

 

古い魔女も似た様なものだ。

なまじっか寿命が永いと、大事な時間というのを忘れやすい。

 

「まあ、なんとかなるでしょ」

「そう?」

「なんとかなりますって」

「だといいけどね」

 

しかし、教会の騎士団が多い。

聖剣並びに、共に眠る勇者を守護するのが連中の役目と言っても、流石に少々多すぎではなかろうか。

というより、

 

「今年はえらく豪勢ですね」

「あら、そうなの?」

「そうですよ。去年まではもうちょっと大人しめでしたよ」

「まあ、確かに楽団とか凄いよね」

「賑やかですね」

「そうだね」

 

 

 

 

      聖剣祭だよ! 全員集合!

 

1:名無し

いやー、凄い人だかり

 

 

2:名無し

人多すぎて酔いそう

 

 

3:名無し

しかし聖剣祭も……、何回目だ?

 

 

4:名無し

今年で勇者没後で五百年目

 

 

5:名無し

五百年目か……。私達も永いわね

 

 

6:名無し

まあ、千年単位は余裕ですし

 

 

7:名無し

飲み屋で知り合った人間が、いつの間にか孫連れてるとか、よくあるし

 

 

8:名無し

あれ? 大将は?

 

 

9:名無し

あ、十年前に……

 

 

10:名無し

人って儚い……

 

 

11:名無し

我々が長寿すぎる定期

 

 

12:名無し

しかし五百年、五百年経っても邪神の残滓が消える気配は無し。

どうなってんだ!

 

 

13:名無し

ちょっと勇者ーって言いたいけど、こればっかりはねえ?

 

 

14:名無し

勇者の犠牲に成り立った今の世界、否定なんて出来ないよ……

 

 

15:名無し

勇者の犠牲と言えば、今年もあの大仙人は来ないか

 

 

16:名無し

無理言うなよ。あんな事があって、納得出来る訳ないじゃん

 

 

17:名無し

ジテツ・コジにとって、聖剣は弟子の仇だから……

 

 

18:名無し

それでイルマ教皇と大喧嘩になったって、先輩から聞いたけど、やっぱり凄かったん?

 

 

19:名無し

あ、お前戦後生まれか

 

 

20:名無し

はい、今年で二百歳になります

 

 

21:名無し

あー、丁度知らない年代だー

 

 

22:名無し

五百年前のあの戦いは凄まじいの一言しか言えんなあ……

 

 

23:名無し

魔法と仙法に対してメタ張れる輝術相手に、あそこまで対等にやり合えるのは、やっぱり大仙人所以か

 

 

24:名無し

私、現場近くに居たけど、邪神が復活したかと思った

 

 

25:名無し

ミネルヴァ連盟長が結界張ってなかったら、国一つ消えてもおかしくなかったしな

 

 

26:名無し

……あの、先輩達は?

 

 

27:名無し

無理

 

 

28:名無し

無茶言うなよ

 

 

29:名無し

絶対無理

 

 

30:名無し

輝術って、言ったら場の掌握をメインにする結界術だから、張られた時点で私達クラスはなにも出来ましぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!

 

 

31:名無し

それを無視して、あの大仙法よ

 

 

32:名無し

邪神に対して使った仙法を喧嘩に持ち出すな!

 

 

33:名無し

半径五㎞のクレーター産み出すな

 

 

34:名無し

……現場に居たけど、あのダメ仙人のあんな顔は初めて見たよ

 

 

35:名無し

さもありなん。基本的に子を為さん仙人にとって、弟子は自分より大切な存在だから

 

 

36:名無し

ミネルヴァ連盟長もさ、もう今にも泣き出しそうな顔してたよ……

 

 

37:名無し

あの三人、いやあの時代だと四人は全員そうよ

 

 

38:名無し

止められない。どう止めたらいいか解らない。

そんな喧嘩だった……

 

 

39:名無し

ジテツ・コジだけが悲しかった訳じゃなくて、全員がどうしようもない悲しみで、どうするべきか解らなくなってた

 

 

40:名無し

ジテツもさ、理解してたんだ。

だけど、理解はしてても納得は出来なかった……

 

 

41:名無し

納得しろなんて、同じ仙人として口が裂けても言えん……

 

 

42:名無し

そんな事があったから、あのダメっぷりなんですか?

 

 

43:名無し

あ、いやそれは元から

 

 

44:名無し

元から!?

 

 

45:名無し

うん、元からサボり魔のちゃらんぽらん

 

 

46:名無し

その癖、仙法に対する適性が全仙人一だから、長老衆も困ってさ

 

 

47:名無し

そこに現れた人界からの迷子よ

 

 

48:名無し

まあ、可愛がってたよね

 

 

49:名無し

はえー、そんな事が……

て言うか待って!

ジテツ・コジ、会場に居るじゃん!

 

 

50:名無し

うわ! マジだ!

 

 

51:名無し

え、これ不味くない?

 

 

52:名無し

凄く不味い。

宮木か? 宮木が連れてきたのか?!

 

 

53:名無し

何やってんだ、あの現代魔女?!

 

 

54:名無し

あーもー、めちゃくちゃだよ!




聖典教会¦人界に伝わる聖剣に纏わる逸話を信仰する集団。
排他的ではなく、他宗教にも寛容。しかし、聖剣と勇者に対する侮辱は許さない。
ジテツ? ……何も言うな
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