我、英雄ぞ   作:NBAU

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前回、気絶してる女の子に股間を触らせた事に触れられなかったんだけど

コレはエイトのキャラが受け入れられてるって考えていいですか?


第3話

 

 

「この町で攻略会議とやらがあるらしいよ」

 

 

『とやら』だとか『らしい』だとか、つい先日見せてくれたあの覚悟はなんだったのかと言いたくなる様な自信のない口振りだった

 

 

「しょうがないじゃん。なんかベータ版のプレイヤーにはコミュニティが有るらしいんだけどさ…」

 

「それもリソースの独占に関係があるのかしら」

 

 

エイト君によるとベータテストに参加したプレイヤーは10層までの情報をある程度知っているらしい。こんなところでも不利になる事があるのだろうか

 

 

「そうゆーヤツじゃないみたい、これ見てよ」

 

「攻略本?」

 

「そー、無料で貰っちゃった」

 

 

それは情報誌だった。モンスターの情報、マップデータからおススメの食べ物まで、さまざまな情報を網羅している一級品。この情報量は元ベータテスターが製作したモノと見て間違いないだろう

 

 

「ベータテスターにも良心的な人はいるのね」

 

「超優秀だよね」

 

「未だに何もしてない自称英雄さんよりよっぽど」

 

「あら?、なんか辛辣じゃん」

 

 

それはそうだ。犬死になどと言われたのが悔しくてどうにか見返してやろうと行動を共にし始めたのに、した事と言えばレベリングのみ。ただ数値だけが上昇し、強くなっている実感すら得られないまま

 

それに便宜上とはいえ、秩序形成の仮想敵として扱っていたはずのフロントランナーが自分たちよりずっと先にいると言う事実が不満に拍車をかけた

 

 

「まぁもうそろそろデビュー戦があるって思ったらワクワクして来ない?」

 

 

無邪気に笑う彼を見て、デビューするのはあなただけでしょうと言う言葉を飲み込んだ私は偉いと思う

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「結構いるのね」

 

 

攻略会議が行われる町《トールバーナ》の劇場には40人ほどが集まっていた

 

 

「レイドは最大48人だからちょっと足りないな。最初のボス戦にしては集まった方かも知れないけどね」

 

 

言われてみればそうだ。半ば自暴自棄になっていた私や、精神構造が特殊なこの人以外は危険なボスに挑む意味を分かっていながらここにいるのだ

 

そう思うと自らの命を危険に晒してでも攻略に励む彼らは悪い人では……

 

 

「あー、別に使命感とかないと思うよ」

 

「え?」

 

「ゲーマーとして置いてかれたくないだけじゃない?、きっと自分の身が危なくなったら責任追及して罵り合うぜ」

 

 

ゲーム感覚で命を危険に晒すと言う思考回路を理解する事は私には出来そうになかった

 

 

 

──────────────────

 

 

 

ゲーマーの思考が理解できず呆然とするアスナ─かわいい─を眺めていると、青い髪にブロンズ系の防具、大振りの片手直剣にカイトシールドを装備した青年が登場した

 

 

「皆!今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!俺の名はディアベル!職業は、気持ち的に騎士(ナイト)やってます!」

 

 

SAOでは生産系スキルはあるが、≪勇者≫や≪騎士≫などというジョブシステムは無い

 

ディアベルなりに、会場の空気を和ませようとした発言で、狙い通り、周りから笑い声やヤジが飛びピリピリした空気が少しばかり和んだ

 

会場の雰囲気がよくなるのを感じると、ディアベルは手を挙げ皆を制した。一度深呼吸をしてから真剣な表情で話し始める

 

 

「今日、俺たちのパーティーが迷宮区の最上階で、ボスの部屋を発見した」

 

 

その言葉に、会場のプレイヤーたちが息を吞む

 

 

「俺たちはボスを倒し、第2層に進む。そして、《はじまりの町》で待ってる皆にこのゲームがクリアできるってことを伝えるべきなんだ。それが、ここにいる俺たちの義務だ。そうは思わないか?」

 

 

ディアベルの言葉に皆賛同するかのように拍手が起こった

 

そんな時

 

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

 

なんか面倒臭そうなサボテンがしゃしゃって来た。どうせ生産的な話は出てこないだろう

 

よし、寝よう。俺はどんな状況でもすぐ寝れるタイプなのだ

 

ここは最後列なのでスペースが広い。フードを深く被り直し、アスナの腿に頭を預ける

 

あ、ビクッてした。かわいい

 

 

「ちょっと! 何して…」

 

「アスナ、話終わったら起こして」

 

 

意外にも蹴り飛ばされる事はなかった。いや、フード越しに視線を感じる。俺の寝顔が気になるのだろうか

 

 

「一応話聞いといてよ?」

 

「……っ、分かったわよ…」

 

 

俺はアスナのふともも堪能するけど、アスナは俺の寝顔見ないの?、まぁ見せないけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ト君、エイト君」

 

「おはよう、今何の時間?」

 

 

アスナ枕とアスナ目覚ましの効能か、短時間の睡眠だが物凄く気持ちがいい。どうせサボテンの話は聞く意味がないので今の状況を尋ねる

 

 

「6人組作ってだって」

 

「…3人余るはずだから最後まで待とう」

 

 

機動力を確保する為には少人数が好ましい。最後の一人はフーデッドローブの二人組と組む事になる。居心地が悪いだろうが我慢して貰うことにしよう

 

また待ち時間が出来たので一応サボテンの話について訊いておくことにする

 

 

「結局サボテンは何の話してたの?」

 

「………」

 

 

あれれ〜?、話聞いてなかったのかなぁ?

そんなに俺の顔に魅入っちゃってたかぁ〜

 

 

「あぁ、キバオウさんのことね。ベータテスターはみんなに謝らなきゃ…」

 

 

そうか、サボテンって呼んでたの俺だけか。話の内容はどうせベータテスターが初心者を見捨てたとかそんなんだろう

 

 

「やっぱいいや」

 

「どっちなのよ…」

 

 

 

──────────────────

 

 

情報屋の紹介で第一層攻略会議に参加していた俺の視界には奇妙なモノが写り込んでいた

 

モノと言うかヒト。フードを被った二人組がおり、片方がもう片方の膝に頭を乗せている。俗に言う膝枕というやつ

 

体が小さい方は女性か。プレイヤー人口的に男同士という可能性も大いにあるがあまり考えたくはない

 

 

今回俺がボス戦に参加しようと思ったのはゲーマーとして─大多数はこの理由だろう─と言うのもあるが、やはり引け目があるからだろう

 

SAOがMMOである以上リソースには限界があり、トッププレイヤー、特にベータテスターがそれを独占することで不利益を被る後発プレイヤーは数多い

 

実際俺もSAOに詳しくないクラインを置き去りにした負い目がある

 

使命などと言うつもりはない。贖罪のため、自身の心を守るために戦いに参加するのだ

 

この様な事情を抱える俺にとって、言い方は悪いが真剣味が感じられないあの二人組は心を軽くしてくれる存在だった

 

 

「まず、6人のパーティーを組んでくれ」

 

 

そんな俺の思考はディアベルの一言で打ち切られた

 

ヤバい

 

レイドボスだから当たり前なのだが、パーティーを組まなければいけない。この一月、いや、人生を通してソロを貫いてきた俺にとってそれは難題だった

 

会議が始まる前に集まった人数が48人を超えていない事は確認済みなので参加できないなんて事はないが……

 

そうだ! さっきの二人組は…

 

 

「あそこにキョロキョロしてるおボッチ様がいらっしゃいますぜ…ヒッヒッ」

 

「ちょっと! 私たちも同じ様なものでしょ! 恥ずかしいから辞めて」

 

 

めっちゃ見られてた

 

凛とした女性の声とは裏腹に男の方は如何にも小物臭い。二人の関係が全く分からないがあちらも俺の存在を認識しているなら話しかけ易い

 

 

「な、なあ。まだ6人決まってないなら組まないか?」

 

 

女性がスッと男の陰に隠れる。華奢で女顔である事がコンプレックスの俺が他人に怖がられることなどまずないので、この人が特別人見知りなのだろう。できればこの男と話すのはご遠慮願いたかったのだが

 

 

「いいよ」

 

 

簡潔な一言。しかし雰囲気が別物だった。とにかく重い声。低いと言う意味ではなく、むしろ中性的で人の精神に直接響く様な不思議な魅力を感じた

 

ここは仮想世界で音だって全て電子音。それが分かっていても、この声で命令されれば逆らえないかも知れないなんて馬鹿なことが頭をよぎる

 

最初にこの声を聴いていたら尻込みして話しかける事はできなかっただろう

 

 

「とりあえずパーティー登録しよう」

 

「あ、ああ…」

 

 

エイトとアスナ。リアルネームをそのまま使っているのだろうか。攻略の最前線にいるほどのゲーマーとしては如何なものかと…

 

 

「ほら、あまりやり込む気はなかったからさ。この子は普通に知らなかったんじゃない?」

 

 

思考を読まれているのかと思うほど完璧なタイミング。こんなに会話しにくいのは俺がコミュ障だからと言う理由だけではないはず

 

 

「何の話?」「アスナ現実の名前使ってるでしょ?」「何かまずいの?」「今時どこから情報盗られるか分からないからあまり推奨されてないんだよ」

 

 

二人の会話を尻目に、俺は早速エイトに話しかけたことを後悔し始めていた。次の一言でそれが決定的になる

 

 

「ひとつ訊いておきたいんだけど、キリトはベータテスターだよね」

 

「…っ!」

 

 

確信的な口振り。先のキバオウの話を踏まえれば隠しておくのが吉だがコイツ相手に隠し通せる気は微塵もしなかった

 

 

「そうだけど…、どうして?」

 

「俺が寝る前と後で雰囲気が変わってる人がチラホラいたから。サボテンの話聞いたからでしょ?」

 

「だからキバオウさんね」

 

 

そんなことまで分かるのか。ならばコイツはこの場のテスターを全て把握している事になる。ベータテスターに対して何も思う所はないのだろうか

 

その時またもや思考を読まれたような返答をされる

 

 

「別に興味はないよ。知っても意味はないからね」

 

 

どう言う事だろうか。ベータテスターに批判的な意見を持っていなかったとしてもその知識は価値があるはず

 

 

 

 

 

その後の会議では、第1層ボスの情報についての説明があった。

 

ボスの名は≪イルファング・ザ・コボルドロード≫で武器は骨斧と革盾。HPバーが4本あり最後の1つになると腰の曲刀カテゴリーの武器《湾刀》に変え、使ってくるスキルも変わる

 

取り巻きには、《ルインコボルド・センチネル》が3匹現れ、一定時間でリポップする

 

ベータ版との齟齬は特に見られない

 

SAOにはスキルや魔法による回復がないので役割はタンクとダメージディーラーのみ。遊撃と言う素晴らしい役職をいただいた俺たち余りもの部隊にはほとんど関係のない事だが

 

 

「これで攻略会議を終了する!明日は朝8時にここに集合。全員揃ってボス部屋へと移動する。それじゃあ、解散!」

 

 

ディアベルのその言葉を最後に会議が終了し、周囲に喧騒が戻る

 

 

 

 

次の瞬間俺は、初めてエイトに話しかけた時以上の衝撃を味わう

 

 

「解散!かいさ〜ん! アスナ、帰って風呂入ろう」

 

「部屋は別でしょ。誤解される様な事言わないで」

 

「え?…は?……うそ、だろ?…ま、待てよ!」

 

 

今までの威圧感を全て消し飛ばす陽気な声だった。驚きのあまりつい二人を呼び止めてしまう

 

 

「どしたん?」

 

「え?いや…、声…が……」

 

「あ!そうよ、さっきの声何だったの? ちょっと怖かったんだけど」

 

 

アレはアスナからしても異常な事だった様だ

 

 

「どう?俺のイケボ、カッコよかったっしょ」

 

「「辞めた方がいいと思う」」

 

「えー、てか俺たちが話してんの聞いてたんでしょ?」

 

 

確かに、最初の小物声を聴いているのだから驚く事はなかったはず。それを忘れるほどあの声にはパワーがあったと思う事にしよう

 

何はともあれエイトが親しみやすそうな人で助かった。二人は今までも一緒にやってきた様だが即席のチームで合わせる経験はないだろうから少しレクチャーしておくべきか

 

 

「この後多少連携の確認でも…」

 

「先にそこのお嬢さん、紹介してくれない?」

 

「え?」

 

「バレちゃったカ」

 

 

エイトには読心能力だけでなく気配察知能力まで備わっているのか。物陰から現れたのは何かと世話になっている情報屋のアルゴ。コイツは戦闘員ではないので会議には興味がないと思っていたのだが

 

 

「やッ!キー坊」

 

「アルゴ、どうしてここに?」

 

「青田買いってヤツかナ。将来有望なプレイヤーを探してたんダ。あとキー坊がちゃんとパーティー入れるか見守ってやろうかなっテ」

 

 

余計なお世話だ、とは言えないか。意図的に少人数を狙っていたらしい二人とは違い俺は普通に声をかける機会を逸していた

 

 

「もしかして攻略本の人? ちょー助かってるよ、金払ってもいいレベル。俺はエイト、でこっちの子が」

 

「アスナです」

 

「ご明察、オレっちがアルゴだヨ。情報屋やってるんダ」

 

 

攻略本を無料で受け取ったならベータテスターではない。エイトとアスナは完全なSAO初心者二人だけでここまで来たのか

 

 

「キリトから声かけてくれたんだよ。めっちゃキョロキョロしててオモロかった」

 

「へー、キー坊が自分からカ。オネーさん嬉しいヨ」

 

「キリト君がぎこちなかったのはほぼエイト君のせいですけど…」

 

 

コイツら、いつのまにか俺をダシにして意気投合してやがる

 

ローブの人間が三人。一人だけ顔を隠していない俺が逆にアウェー感を感じている

 

圧倒的に男が多いアインクラッドで女性が顔を隠すのは理解できるが、エイトは何故フードを被っているのだろう

 

そんな思考をまたもや読まれてしまったのか

 

 

「俺の顔そんなに気になる?」

 

「え……?、いや、まぁ…」

 

 

俺ってそんなに分かり易いのだろうか。気になるのは事実だが、本人が隠したがっているなら無理矢理見ようと言う気はないのだ

 

 

「そこまで隠したいと思ってるわけじゃないよ」

 

 

そう言いながらフードを取ったエイト。その瞬間自分だけでなく隣のアルゴも息を呑んだのが伝わった

 

ただ美しかった

 

雪の様に……

 

 

「一々このくだりやるのも面倒臭いし、明日のボス戦終わったら顔出すよ」

 

 

同性なのにフリーズしかけた。コレはできるだけ隠しておくべきだと思うのだが…

 

 

「変な空気になっちゃったし今日はお開きにしよっか。アスナ、行こ」

 

「ちょっと待って…、キリト君、明日よろしくね」

 

「あ、あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

二人が去った後も俺たちはしばらく呆然としていた

 

あ、連携確認…まぁ三人程度なら個々人で動いても問題ないか

 

そろそろアルゴを再起動させなくては

 

 

「おーい、アルゴ? アルゴさーん?」

 

「……カッコイイ」

 

 

うそだろ

 

いつもの人をくった様な笑みは見る影もなく、代名詞とも言える三本線が入った頬を真っ赤に染めていた。やっぱり明日改めて顔を隠すよう言って置かなければ

 

 

 

──────────────────

 

 

 

今日の出会いは素晴らしかった

 

ソロでこのアインクラッドを生き抜く力があるヤツ。孤高と言うよりは孤独に近いが、側から見ると一匹狼なのが良いのだ

 

アレね、いつも単独で戦う孤高の実力者がただ一人だけ認め力を貸すが英雄の俺って流れね

 

今はアスナの育成中だけどたまにはキリトと共闘するのも良いかもしれない。多分あいつは俺が育てるまでもなく強いだろうから

 

強いて言うなら年齢的に緊急時の精神力が心配か。まぁ流石にアスナレベルの精神力を要求するのは酷だろう

 

直接戦っても負けはあり得ないが、俺の隣に立っても見劣りしないのが大事

 

 

あ〜夢が広がる〜

本当に末永くよろしくしたいものだね

 

 

 





SAO二次伝統のキバオウ論破シーンを飛ばすスタイル

エイトの容姿は

『たった一人で戦ったけど力及ばず倒れてしまった女の子に犬死にとか言ってもなんだかんだ許される』

くらいにはやばい感じ(意味分かんない)

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