我、英雄ぞ   作:NBAU

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ちょっと、いやかなり強引かもしれないけど許してください
うちのサイコは頭いい設定(作者の知能には限界がある)なので簡単にビーターなんかにはならんのや

知識と思慮深さと年相応の感性を持つキリト解説員マジでありがてぇ




第5話

 

 

部屋が明るくなり先程までの不気味な雰囲気は掻き消えたが、静寂は続いていた

 

その時鈴の音とともに紫色のシステムウインドウが目の前に現れる。獲得経験値や、自動分配されたコル、ドロップアイテムが表示された

 

同じメッセージを見たであろうプレイヤーたちに、フロアボス討伐の実感が湧き上がる。一瞬の溜めの後、爆発するような歓声が大広間に弾けた

 

喧騒を抜けてきたアスナが一言

 

 

「あなた本当に強かったのね」

 

「あれ? もしかして舐められてた?」

 

 

アスナはエイトの本気の戦闘を見たことがなかったため、今回初めてエイトの強さを実感したのだ

 

表面上は戦闘前となんら変わりない態度だがその実アスナの体は硬くなっていた。アインクラッド攻略の大きな一歩を踏み出した興奮か、エイトが精神的にも能力的にも自身より上の位階にいる人間だと改めて認識したからか

 

 

「アスナもいい動きだったよ、ちゃんと強くなってる。エイト大先生に感謝しなさい」

 

「そう…うん、そうよね」

 

 

エイトはアスナの変化に気づきながらも以前と変わらず軽い調子で話す。今までもこれからも何も変わらないとアピールする様な飄々とした態度にアスナの肩から力が抜けた

 

 

 

 

 

 

 

実力が高い者ほどエイトの異常性に度肝を抜かれ再起動に時間がかかった。一人はキリト

 

 

「おいエイト、お前……」

 

「テスターじゃないよ?」

 

「そんなこと分かってるよ。そもそもベータテスターって言葉は空中反転ソードスキルを説明できるほど万能なものじゃない」

 

 

エイトが初めて読みを外した瞬間だったが、それに気が付かないほどキリトはエイトの能力の秘密が気になって仕方がない様だ。そしてもう一人

 

 

「エイトさん…ありがとう。あなたが居なければ俺は……」

 

「いいよ、気にしないで」

 

「本当に警戒すべき人がニュービーだったなんて…まぁ今となってはLAに興味はないけどね」

 

 

ベータ版でキリトに次ぐ実力を持っていたディアベル。LA狙いだったことを隠す様子はない。自身がテスターであることがバレた時点で目的も看破されていると考えたのだろう

 

エイトはディアベルに何かをされた訳ではないし、取引を持ちかけられたキリトも実際に取引は成立しなかった事と、ディアベルのリーダーとしての働きを見て今回のことは全て水に流すことにしたらしい

 

デスゲームにクリアの兆しが見えた事により皆の顔には笑顔が浮かんでいる

 

 

 

 

 

「─────なんでだよ!」

 

背後で絶叫が弾けたのは、そんな時だった。絞り出すような鋭い声が、瞬く間に祝勝ムードを霧散させた

 

背に突き刺さる視線の主は軽鎧を身に纏ったシミター使いの男だった。C隊のメンバーの一人だ

 

 

「なんで……なんで俺たちを、みんなを騙したんだ⁉︎」

 

 

その言葉が自身に向けられたものだとは露ほども思わないエイトは振り返ることすらしない。自身に向けられたものでなくとも誰かがいきなり叫び出せばそちらを向くのが普通だろうが、コイツに常識は通用しないのだ

 

 

「しらばっくれるつもりか⁉︎ アンタはボスの使う技を知ってたじゃないか‼︎ 最初からアンタがあの情報を伝えておけば、みんなが……ディアベルさんが危険な目に遭うこともなかったんだ!」

 

 

その糾弾を皮切りに、他のレイドメンバーたちにも疑心が伝播する。周囲から注がれる視線は途端に賛美から疑念へと一転し、ざわめきが広がった

 

 

「そういえば、そうだよな⋯⋯」

 

「たしかに、ボスのソードスキル全部完璧に見切ってたよな⋯⋯」

 

「なんで? 攻略本にも書いてなかったのに⋯⋯」

 

 

その疑問に応えたのは、もちろん反ベータ派急先鋒のキバオウ……ではなかった。彼は複雑そうな表情で俯いているが、C隊の男のように激情を抱いている様子はない

 

代わりに、彼の指揮するE隊の一人が近くまで駆け寄ってきて、叫んだ

 

 

「オレ……オレ知ってる! こいつ、元ベータテスターだ! だから、ボスの攻撃パターンとか旨いクエとか狩場とか、全部知ってるんだ‼︎ 知ってて隠してるんだ!」

 

「それは違う。ベータの時、ボスの武器は確かに湾刀だった。………俺はベータテスターだったから分かる。一番最初にこのボス部屋を見つけられたのもそのおかげだ」

 

 

そこでディアベルが割って入る。今の反ベータの流れで名乗り出るには相当の覚悟が必要だっただろう

 

突然の告白に場が静まり帰る

 

ここでも再びE隊の男が叫ぶ

 

 

「ゆ、許せねぇ! クソ、クソクソ……、コイツ、オレらを騙してたんだ! なにがリーダーだ、なにが騎士だ!ただの薄汚ねぇ裏切りモンじゃねーか!」

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

え〜、俺〜⁉︎ 今糾弾されてたのって俺〜?

 

なんか面倒臭い事になったな。そりゃあ突出し過ぎた力はゲームバランス的に疑われるリスクがあるってのは承知してたけどさぁ

 

さっきまでは良い雰囲気だったじゃん。強いヤツがいれば死亡率は下がる訳だし拒絶するメリットはほぼないからね

 

ハァ、ここはどうにかこの流れを断ち切って………てかなんで俺がそんな事考えなきゃいけねぇんだよ

 

こんなガッツリ頭使ってたらディアベルのことなんも言えねぇじゃん。何が『一言で瞬時に集団の向きを決められなきゃまだまだだね』だよ

 

もう言いたい事普通に言っちゃおうかな。それで上手くいかなかったら俺はその程度の器だったってことで……いや、それは思考放棄だ。英雄とは脳筋のことじゃないからね

 

俺は奸雄路線で行こう。正直俺の解釈次第なところがあるけど、そもそも俺がやりたくてやってることだしね

 

 

あくまで冷静に、でも周囲に忖度して自己を抑圧するのはらしくない

 

 

仲間のミスなら笑って許してやるが、"敵”の策謀を見逃してやるほど甘くはない

 

 

よし、行こう。俺ならできる

 

 

 

──────────────────

 

 

 

ディアベル、ソレは悪手だったんじゃないか

 

もちろんエイトを生贄にしてこの場を収めるのが最善策だなどと言うつもりはない。だが今のカミングアウトが根本的な解決に繋がらないのも自明だ

 

こんな時にエイトは何してるんだ。お前も何か言わないと……

 

 

「まず一つ」

 

 

来た、またこの重い空気感。恐らく何度体験しても慣れることはないだろう。一瞬で全員に緊張が走る

 

 

「俺はベータテスターじゃないよ」

 

 

振り向きざまに放った一言と同時に全員が固まった。恐らく言葉の意味ではなくエイトの容姿によるもの。戦闘中はエイトの動きが早く、距離もあった為誰も顔を見てはいなかった様だ

 

 

「そ、そんな事信じる訳ねぇだろ‼︎」

 

 

硬直から脱したE隊の男が否定する。まぁそうなるよな

 

 

「なんで?」

 

「ボ、ボスの攻撃パターン知ってたからだろ‼︎」

 

「なんで?」

 

 

おいおい、いくらみんなが気圧されてるからって、まさかそれだけで乗り切ろうとしてるんじゃないよな……

 

 

「君らの常識で測んないでくれるかな?俺が初見でも対処できる力を持ってだだけ。そもそもディアベルがベータ版と変わってるって言ってんじゃん」

 

 

よかった、エイトがそんなに短絡的なはずがない。そうだ、今はディアベルが元テスターである事を告白し、その事実が一番に迷宮区を踏破した実績によりほぼ証明されている状態

 

つまりディアベルがボス情報を知っていながらボスの攻撃を受けると言う自殺行為をした理由を解き明かさなければE隊の男─もうE男でいいか─の言葉に説得力は生まれないと言うこと

 

 

「そんで二つ目。俺がベータテスターだとして、それを知ってるオマエは何なんだよ」

 

 

それも重要だ。俺を含め元テスター達は皆自身の素性を隠している。そんな現状で他者がテスターである事を指摘するのは自分もそうであると曝け出す様なもの

 

皆もそれに気がついたのか、疑惑の視線がE男に移っていく

 

 

「ち、違う‼︎ 俺は…」

 

「そうだよね。オマエはテスターじゃない、でしょ?」

 

「あぁ…? そうだ、俺は違う……」

 

 

あれ?今のはそのままE男を追い詰める流れじゃ……

 

そうか『ベータテスターのE男』を排斥したとしても反ベータの風潮を消すことはできない。ならエイトの目的は?

 

 

「おかしいよね。君らはリソースや情報の独占を嫌ってたはず…俺を吊し上げるメリットはない。もしかして、他に目的があるのかな?」

 

 

他の目的?エイトが何を目指しているのか全く分からなくなった

 

 

「ジブンさっきから何言っとんねん。その男がベータ上がりちゃうからってジブンがそうだとは保証できへんやろ。その目的っちゅうのをハッキリさせへん限り信用はできんで」

 

 

完全にエイトのペースになっていたところでキバオウの冷静な反論。失礼だがコイツがこんなに物事を俯瞰的に捉えられる人間だとは思っていなかった。ことの推移を見守っていたアスナやエギルも驚いた表情をしている

 

 

「アインクラッドに警察はいないけど皆んなはどう思ってるのかなって話」

 

 

囚われた一万人の中に警察官は居たかもしれないが組織としての警察はもちろんない。だがそれがE男の目的とどう繋がるのか

 

皆が首を傾げる中─アスナだけは平然としていた─ディアベルが信じられない物を見た様な驚愕を顔に貼り付けて言った

 

 

「ま、待ってくれ‼︎ まさか彼は…意図的に攻略を遅らせる為に一番強い君を排除しようとしたとでも言うつもりか‼︎」

 

 

場がざわめいた。エイトが警察と言う言葉を出した意図は分からずとも『意図的に攻略を遅らせる』と言う一言は皆に隠しきれない衝撃を与えた

 

 

「ディアベルはん‼︎ そらどうゆう意味や‼︎」

 

「キバオウさん、このSAOでは強さが全て。犯罪を犯せばカーソルがオレンジになるけど逆に言えばそれだけなんだよ」

 

「町に入れなくなったりするペナルティはあるらしいけどそれさえ無視すれば、SAOは犯罪者にとって法律も警察もない楽園になる」

 

 

今思えばE男の行動は少しおかしい。最初はエイトを糾弾していたのにディアベルが元テスターである事を告白した途端に標的を変えた。反ベータの気が強いシミター使いの男でさえディアベルのリーダーとしての働きを受けて戸惑っていたのに、だ

 

E男の目的が攻略の要となり得るプレイヤーを排除することなら、自分がでっち上げた架空のベータテスターより本人が告白した本物のベータテスターの方が都合がいい

 

 

「そうでしょ……って、逃げちゃった」

 

 

ディアベルが言葉を発した時点で自身の敗北を悟ったのか、E男は既にボス部屋の入り口から出ていくところだった

 

 

「ちょっと‼︎ 追わなくて良いの⁉︎」

 

 

アスナが焦った様子でエイトに問いかける。アスナの足なら今からでも余裕で追いつけるだろう

 

 

「いいよ、もしこっちがオレンジになる様なことがあれば有る事無い事吹聴されかねない」

 

 

確かに、トッププレイヤーは他者を攻撃してアイテムを奪っている、なんて噂を流されるだけでかなりの痛手になる。オレンジカーソルの解除法がわからない現状でアイツを無理矢理捕まえるのはリスキー。一瞬での判断、相変わらずエイトの先見の明には驚かされるばかりだ

 

 

「何はともあれサボ…キバオウ、これで良い?」

 

「正直信じられん話やが、アレを見てまうとな……」

 

 

確かにここでの逃亡は何よりの証拠になる。エイトについての話には一応の方が付いた

 

 

 

──────────────────

 

 

 

見切り発車で行ったけどどうにかなったね

 

あそこで逃げたって事は確定と思って良いだろう。やっぱりいるんだよあーゆー奴

 

 

「ディアベルさんは……」

 

「あぁ…リンド、ベータテスターなのは本当だよ」

 

 

は? オマエらまだその話してんの?

普通にディアベルは人材として失いたくないんだけど

 

助けてやるか…

 

 

「別にどうでもよくね、ソレは」

 

「なんだって?」

 

「ディアベルが何も知らない君らを集め、策を与え、先陣切って戦ったのは事実。リソースの独占を狙ってたなら俺が疑われた時名乗り出るのもおかしいよね」

 

 

警察って言葉から俺の意図に気付けたのも、多分『力による統制』を考えてたからだ。そうなるとLAを狙う意味が出て来る

 

コイツも私利私欲を排して強い力で集団を率いようとした訳だ

 

掘れば掘るほど英雄的じゃね?コイツ

 

 

「知識を持ってる奴がそれを皆の為に使ってるなら文句言われる筋合いはないでしょ。実際ディアベルがいなきゃこの状況はなかった訳だし」

 

 

なんか擁護してるだけで嫌な気分になるわ〜

もう終わらせよ

 

せっかくのデビュー戦なのに変な感じになっちゃったし。今回の戦果と言えばLAくらいか

 

《コート•オブ•ミッドナイト》厨二心擽られる素晴らしい名前じゃないか

 

ディアベルに見せびらかして行こ。君コレ欲しがってたよねぇ。別に負け惜しみとかじゃねぇから、うん

 

 

「じゃあ俺は行くから」

 

「本当にありがとう。転移門の開放のやり方は分かるかい?」

 

「え? 何それ?」

 

「…時間でも開放されるから気にしなくてもいいよ」

 

 

マジでなんでも知ってんのな、ベータテスター。ずりぃ

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「皆‼︎言いたいことはあるかもしれないが、もう一度だけ信じてくれないか‼︎ 」

 

「まぁディアベルさんが本心から攻略を目指してるのは伝わったし…」

 

「俄には信じ難い話だが蔓延る悪意にも対処できる様にならないといけないしな…」

 

 

エイト君もディアベルさんもお咎めなしと言うことになった。ボスを倒すことができ、悪意の可能性について周知することもできた

 

私としては素晴らしい結果だと思うのだが彼は恐らく納得していない

 

白髪に黒いロングコートという出で立ちはゲームのキャラクターのようだが妙に様になっている。しかしその後ろ姿はなんだか不機嫌そうだ

 

とにかく私も追いかけよう

 

 

「俺も行っていいか?」

 

「別に訊かなくても」

 

 

転移門?とやらの仕様も知らないのでキリト君が居てくれるのは正直ありがたい

 

 

 

 

 

 

 

「エイト君‼︎」

 

「あら?来たんだ」

 

「なによ、まるで来て欲しくなかったみたいな…」

 

 

一人で放り出されても前のような生活に戻る事はないだろうが、死ねない理由がある今一人になるのは心細い

 

 

「そんな事言ってないじゃん」

 

「もしかして……拗ねてる?」

 

「おいアスナ、いい歳して……マジで?」

 

 

ぜったい拗ねてる。年下であろうキリト君の前でもこの態度。最近この子供の様な言動は一部の人の前でしか見せないことがわかった

 

私は彼が情け無い姿を見せてくれる人間の一人…喜んでいいのだろうか?

 

 

「誰も死なずにボスも倒せた、ベータテスターとの溝もほぼなくなった、おまけにLAまで手に入れてる。何が不満なんだよ」

 

 

ああそうか。彼の一番の目的は華々しく"デビュー“する事

 

エイト君からしてみればフロアボスを圧倒したのは自分なのに、最終的にディアベルさんの素晴らしさを語らされる羽目になった訳だ

 

でもこんな理由を年下の子に知られるのは流石に恥ずかしすぎるので話を逸らそう。エイト君は私に感謝するべきだ

 

 

「それで、これからどうするの?」

 

「パーティーのこと?それならキリトが決めな」

 

「え?俺?」

 

「俺たちにはメリットしかないけど、君は違うでしょ?」

 

 

『俺たち』と言う言葉から、エイト君にとって私を連れて行くことが確定事項であることが分かり安心してしまった。なんだか悔しい

 

"私たち“は知識の面で得をするがキリト君にそのメリットはない。経験値効率的にも二人から三人になる私たちより、一人から三人になる彼の方が損益が大きい

 

 

「…良ければこれからも続けさせてくれ。それに経験値の話ならソロはそこまで効率的じゃないんだよ。安全マージンが過剰になりがちだから」

 

「そっか、じゃあ早速宿探そ‼︎、風呂付きね。いいとこない?」

 

「それなら主街区の《ウルバス》に……」

 

 

残り99層、まだまだ先は長いが不思議と不安はなかった

 

私は軽い足取りで二人を追った

 

 





どうやらプログレッシブではキバオウが良識ある大人として描かれているらしいですね

私はそこまでSAOガチ勢ではないので、ここからは基本アニメに沿った流れになりそうでげす

オリジナルの話も書ければいいな
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