婚礼の儀から4日後、とうとうシンはアハルトヘルンを出ていった、大精霊、いや妻レノとその子供を残して、そう、2人に子供が出来た、教育の精霊たるエニユニエンは長い精霊の歴史の中でも魔族と精霊が子を成したのは始めての事だと言った、そしてその名前も
レノ「名前、どうする?」
シン「男の子ならゴート、女の子ならミサと」
そしてシンは次戻ってくる時は愛を持って戻ってくると約束しディルヘイドへ向かった
アハルトヘルンではエニユニエンに心配されながら涙花へ愛情の水を注ぐレノがいる
この時何となく嫌な予感はしていた、そしてそれは決定的となる
エニユニエン「本当にあれで良かったのかの?」
レノ「あれでって?」
エニユニエン「母なる大精霊レノ、あなた様の噂と伝承はあらゆる精霊達の母。何時いかなる時もあまねく精霊だけの母とのう」
エニユニエン「その子は半分が魔族じゃ、産んでしまえば貴女は噂と伝承に背く。潰える事になるのじゃ」
そう、全ての精霊の母、お腹の子を産んでしまえばレノは潰えてしまう、そして新たに精霊の母が産まれてもそれは全くの別人、つまり次シンが会いに来ても、そこに妻は居ない、例え愛を持って戻ってくるとしても
レノ「私は後悔しないよ。これは精霊の宿命だから。それに恋をしたんだ。これは命懸けの恋だった」
エニユニエン「レノ様がそこまで言うのなら最早………」
突然ドアが閉まりエニユニエンの声が消えた、風が吹いた訳でもないのに突然
レノ「エニユニエン?」
???「神殺しの凶剣が愛をくれた?、はは、君達は本当に愚かなことを言う。愚かで愚かで、何と滑稽極まり無いのか」
傲慢な声が響く
???「間違っているよ、母なる大精霊レノ、蒙昧な君に知恵を授けよう、神殺しの凶剣に愛は無い。あれにあるのは心を求めそれを真似ようとする哀れな憧憬だけだ、優しいふりを、悲しいふりをしているのだあの魔剣は」
レノ「そんなこと無い!!、何も知らないくせに!!、シンの事ちゃんと見てもない癖に!!」
レノの前にエールドメードの首を借りた天父神ノウスガリアが浮かぶ
ノウスガリア「ではなぜシン・レグリアは君を愛するようになったのか?、答えは1つ、神の奇跡によるものだ」
レノ「何が言いたいの?」
ノウスガリア「私は愛を授ける、と神殺しの凶剣に言った。奴はそれを斬ったつもりだったのだろうが、しかし。神の言葉は絶対だ。それは確かにシン・レグリアの空虚な根源を埋めたのだ」
ノウスガリアは更に言う
ノウスガリア「奇跡を起こすのは愛などではない。何時でもそれは神の御技だ」
レノ「嘘」
ノウスガリア「神の言葉は真実だ。神殺しの凶剣の希った愛も、母なる大精霊レノが望んだ自分らしくあると言う願いもその身に宿った奇跡の子種さえ、全ては天父神の秩序に従ったもの。その身に宿ったのはシン・レグリアの子ではない。彼の体は媒体に使われたのだ。魔王を滅ぼす神の子の種の」
ノウスガリアは精霊の事が書かれたリーランを取り出しレノに見せる
ノウスガリア「つい先程追加されたページだ。良く見ることだ」
そこには暴虐の魔王、アヴォス・ディルヘヴィアが綴られていた
レノ「暴虐の魔王が精霊に」
ノウスガリア「お膳立てはした。君の精霊眼にははっきりと映る筈だ。その身に宿した子の噂と伝承が、アヴォス・ディルヘヴィアの物だと言うことが」
レノは自身の子をその眼で見る
レノ「魔王アノスの魔力が」
ノウスガリア「全ては運命に導かれている、さあ!!、今ここに神の子が誕生する!!」
ノウスガリアの言葉に反応しレノのお腹に魔方陣が浮かぶ、術は成長(クルスト)だ
レノ「やめて……。今産まれたら生きられない」
ウィリアム「やばい!!」
俺はデザイアドライバーを付けバックルを取り出す
サーシャ「ちょっと!!、何する気!?」
そこにサーシャが待ったをかけた
ウィリアム「兎に角助ける!!」
サーシャ「そんなことしたら2人共どうなるか分からないわ!!」
ウィリアム「じゃあどうする!?」
サーシャ「どうするって言われても」
何も出来ない俺達をよそにレノの中の子はどんどん成長しついに生まれてしまった
その子は俺でも分かる程とても弱い魔力、今にも消えそうな程だ。レノも噂と伝承に背いた事でその存在が消えそうとしていた、そんな中でも彼女は自分の事より子供の事を優先した
レノ「お願い、生まれて、この子を助けられる精霊が、誰か」
そして彼女の願いは聞き届けられた、それは傲慢たる悪神への精霊達の抵抗だったのかも知れない
レノ「いた、生まれた、時空の泉エゼッセイ、生まれたばかりでごめんね。お願いこの子を連れていって。彼女が生きられる場所に、2000年後に。きっと魔王が救ってくれる、きっと救ってくれる筈だから」
レノは生まれた子に詫びた、抱いてやる事が出来なかった事、名をつけられ無かった事を
そして
ノウスガリアは直後、戻ってきたシン・レグリアによって真っ二つにされた、何でもティティ達が知らせたらしい、彼は妻へ駆け寄ると優しく抱き締めた
シン「レノ、申し訳ございませ……」
レノ「ありがとう、シン。守ってくれて、ごめんね。私嘘ついた、愛じゃなかった。奇跡なんかじゃなかったんだ」
レノはその眼に一杯の涙を浮かべシンを抱き返す
レノ「貴方の子じゃなかった」
レノ「ごめんねシン、愛を教えてあげられなくて、ごめんね」
レノ「シンは沢山の物をくれたのに。何も、返してあげられなくてごめんね。あの子は」
レノ「あの子は2000年後の未来に行く。もしあの子が世界の平和を脅かすなら貴方の手で」
そう言葉を紡ぐレノにシンは
シン「男の子ですか?、それとも女の子ですか?」
そう返した
レノ「女の子」
シン「分かりました。どうかご安心を、必ず
守りますので」
シンは更に続ける
シン「彼女が2000年後も生きていられる世界を、私が作ります」
レノ「だって、駄目だよ。あの子の噂と伝承はアヴォス・ディルヘヴィアだから貴方はそんなこと、そんなこと出来ないよ、シンは魔王の右腕何だから」
シン「それでも貴女が私にくれた愛に違いありません。例えそこに神の意図があったのだとしても」
シン「死なせはしません。例え我が君に。我が君に背こうと私は魔王アヴォス・ディルヘヴィアの噂と伝承を広め、それを守ります、我が子を守ります」
シンはそう言うと2人の子を乗せたゆりかごに剣を走らせミサの文字を刻む
シン「彼女は私の子ですから。あなたがくれた、大切な愛です」
その時、大精霊レノの体が消えた、音もなく、跡形もなく
シン「上手く行かないものですね、貴女の笑顔が見たかったのですが、私は言葉を知りません、最後に悲しませてしまい申し訳ございません」
シンはレノの墓なのか鉄の剣を突き刺しそこに白い花を添えた
シン「愚か者とは私の事を言うのでしょうね、貴女を幸せにしたかった」
シンが歩いてくる、何も言わずこちらに一歩一歩ゆっくりと、そして俺の前で立ち止まった
シン「貴方に問いたい」
ウィリアム「はい」
シン「貴方は彼女に『心から望めば理想の世界は叶う』と仰いました」
ウィリアム「……………」
シン「ならば」
ウィリアム「……………」
シン「ならば、空虚な私は何を望んでも叶わないのでしょうか?」
ウィリアム「………………」
シン「もし、もし叶うなら、私は」
ウィリアム「………………」
シン「私は、今度こそ、彼女を守りたい」