ウィリアム「…………あいつ、何やってんだ?」
アノシュ「見たところ缶詰が開かず苦戦しているようだな」
2人が見つめる先では混血となったエミリアが缶詰を相手に格闘を繰り広げていた
ウィリアム「しょうがない、助けてやるか」
アノシュ「ふむ、ミーシャ、適当に俺達が好きそうな物を注文しておいてくれ」
ミーシャ「優しい」
彼女は一度頷きそう言うと店の中へ消えた
2人はエミリアの元へ向かう、未だに缶を開けられず恨み言を言いながら缶を岩に叩き付けているが缶の方もかなり頑丈でびくともしていない
エミリア「はぁ、はぁ」
アノシュ「貸してみるが良い」
エミリアが顔を上げるとアノシュには不思議そうに、ウィリアムを見た時は怨めしそうにしていた
エミリア「!?、ウィリアム・テイラー!!、それと確かアノシュ・ポルティコーロ君でしたか?」
アノシュ「そうだ、その魔法缶詰は魔族の魔力には反応しない。とはいえその判定もかなりいい加減だ、要は人間よりに魔力を偽装すれば良い」
そう言うとアノシュが持っていた缶詰がバキバキと音を立て中身を晒した、完全な力業だ
ウィリアム「おい、魔力云々の話は何処行った」
アノシュ「此方の方が早い」
アノシュはそう言いながらエミリアへ開いた缶詰を差し出す
エミリア「ありがとうございます」
ウィリアム「それしか食わねえのか?、体に悪いぞ」
エミリア「ほっといて下さい」
ウィリアム「こりゃあアノスがお前を戻すのもかなり先だな」
エミリア「!!、知ってたんですか?」
ウィリアム「アノスが言ってた」
アノシュ「何の話だ?」
アノシュはここで素知らぬ顔をしそんな事を聞く、どうやら同一人物だと悟られるのを回避する為の様だ、ウィリアムもそれをすぐに察し続けて言う
ウィリアム「お前が来る前の話だが、この人は元皇族だよ」
アノシュ「ほう」
ウィリアムはそう言うとエミリアの横の袋へ手を伸ばし漁る
エミリア「ちょっと!!、人の物を勝手に!!」
ウィリアム「缶詰、缶詰、缶詰、缶詰」
アノシュ「缶詰等食って旨いか?屋台などそこら辺にいくらでもあるだろう」
エミリア「騒がしいのは嫌い何です、それに口には入れば何でも同じですよ」
ウィリアム「弁当作れば良いのに」
エミリア「料理はしたこと無いんです」
ウィリアム(ああ、皇族でも上の方だったから料理人に任せてたんだな)
エミリア「そう言う貴方は得意そうですね、料理」
ウィリアム「まぁ、自分で出来ることは自分でやるってのが家のやり方だからな、人が居ないと出来ない事以外は大体自分でやってる」
エミリア「2人は良いですね、やりたい事が出来て、力もあって、天才で」
アノシュ「否定はせぬが生まれつきの力等さして自慢出来るものでもない」
ウィリアム「俺のは、まぁ、ちょっと特別だけどな」
エミリア「………………何故、あの時助けたんです?」
ウィリアム「俺?」
エミリア「そうです、貴方のあの、何と言いますか、白い狐の……」
ウィリアム「ギーツだ」
エミリア「そのギーツの武器で助けてくれたでしょう、私を、では無いかも知れませんが、あの時避難させる為に自ら皇族の生徒へ立ち向かった、どうしてですか?」
ウィリアム「別に、ただ、それが
エミリア「…………良く、分かりません」
ウィリアム「ある男が言った『手が届くのに手を伸ばさなかったら死ぬ程後悔する、それが嫌だから手を伸ばすんだ』って、だから助けた」
エミリア「………………そうですか、でもその人はいつか身を滅ぼすでしょうね、私には良く分からない在り方です」
ウィリアム「そうだな、だからその人も死んだ、子供を守って」
エミリア「…………そうですか」
ウィリアム「それが良いとは思わない、でもそれが間違いか正しいかと聞かれたら俺はきっと正しいと思う、あんたは?」
エミリア「は?」
ウィリアム「混血になって、何か変わったか?」
エミリア「………………何も、ただ私が最低で醜くてグズでどうしようもない奴だって、それが突きつけられただけでした、何も、何一つ変わりませんでした」
ウィリアム「そう」
エミリア「貴方達だって見たでしょう?教師なんて名ばかりで私には何もありません、ここに来てまだ日も浅いのに生徒達にはとことん馬鹿にされて、先生とすら呼んで貰えません、教えて下さい、私はどうすれば良かったんですか?、何時何処で間違えたんですか?、魔王に逆らった時?貴方に力を見せつけられた時?、何時、何時間違えたんですか」
エミリアは涙を流し唇を噛む、端から見れば弟に泣き付く姉の様だ、そして2人は
アノシュ&ウィリアム「「知らん」」
あっさりとエミリアのそれを振り払った
エミリア「………………そうですよね」
アノシュ「だが、全てが変わらなかった訳ではあるまい」
エミリア「え?」
アノシュ「良く考えることだ、そうすれば今度は何が変わったか分かるかも知れんぞ」
ウィリアム「そう言うことだ、じゃあな」
2人はそう言うとエミリアの元を離れた