その後もアノスは碑文を読み解き続け全ての解読が終わった頃
ガゼル「まだ、だ、まだ神は私を見捨てておらぬはず」
そこには虚ろな目でヨロヨロと立ち上がる聖者ガセルがいた、その向かう先には魔方陣がありウィリアム達のいる部屋から脱出しようとしていた、しかしその足は止まり彼の前にアルカナが現れた、彼女はそっと手を差し出す
アルカナ「盟珠を」
そう一言呟いた
ガゼルはビクッと1度体を振るわせ身構える
ガゼル「偉大なる選定神アルカナ。ワシの審判はまだ下っておりません。新たな神を迎え、この聖地に戻って参ります」
しかしアルカナは静かに首を左右に振り否定した
アルカナ「我が信徒、神託者、アヒデ・アロボアガーツェの祈りにより、選定の神アルカナの名において、汝、聖者ガゼル・アプト・アゲイラに審判を下す」
ガゼル「まさか…………そんな」
ガゼルが逃げ出そうとした瞬間
ガゼル「ぎゃああああああああああああああああ~!!!!」
そこには血を纏う雪で出来た剣を握るアルカナと腕を切断されたガゼルがいた
アルカナは手の平を開くとそこにガゼルが付けていた盟珠の指輪が飛んでくる、それと同時に魔方陣からアヒデの声が響く
アヒデ「選定の神にして、輝光神ジオッセリア、再生の番神ヌテラ・ド・ヒアナ、穿神ベヘウス、3神の秩序を供物とし、選定審判の盟約に従い、我が神アルカナに捧げる」
すると盟珠に宿っていた3つの光が飛び出し宙に浮かぶ
アルカナ「貰い受ける、我が身となれ3神の秩序」
するとアルカナはその3つの光を全て食べてしまった
ガゼル「す、枢機卿!!」
ガセルは止血もせずにアヒデを睨む
ガゼル「貴方は……ワシを裏切るのか!?、全能なる煌輝エクエスを信仰する、ジオルダルの信徒を!!」
アヒデ「信託が下りました。争うでもなく、競うでもなく、共に戦いましょう。貴方の意志、貴方の神は、私が継げと全能なる煌輝エクエスはおっしゃいました」
ガゼル「馬鹿な…………馬鹿な馬鹿な馬鹿なぁぁ!!、それではワシの救いは?、救済はどうなる!?、聖騎士として、聖者として神に捧げたワシの一生はなんだったと言うのだ!?」
アヒデ「それもまた試練です、ガセル、貴方ならば乗り越えられると神はおっしゃっています」
ガゼル「ふざけるな!!、自らやっておいて試練だと!?、それが聖職者の、神のすることかぁぁ!!」
その瞬間アヒデの纏っていた空気が冷たくなる
アヒデ「ガゼル、神を疑いますか?、ならばジオルダル枢機卿の名において貴方を破門とします」
ガゼルは全てに絶望したような顔を浮かべる、そんな彼に先程とは打って変わって優しい表情でアヒデはこえをかける
アヒデ「人は皆何も持たずに産まれてくるのです、貴方の物は神のもの、ならばそれを神にお返ししただけの事。何の悲しみがありましょうか、さぁ、懺悔なさい。貴方の罪を神はお許し下さるでしょう」
体を振るわせながらガゼルは祈るように膝を着く
ガゼル「神よ、全能なる煌輝エクエスよ。ワシは罪を犯しました。あなたを疑い信託に背こうとしたことを、どうかお許し下さいますよう」
アヒデ「全能なる煌輝エクエスよ、従順なる信徒、聖騎士ガゼルに許しを」
アヒデも目を閉じ祈りを捧げる
アヒデ「貴方は許されました」
ガゼル「神よ、感謝します、もう一つどうか神よ、お許しを。あなたの課した試練から逃れ、あなたのもとへ旅立つことを」
ガゼルは先程ウィリアムが砕いた剣の破片を喉元に押し付ける
ウィリアム「おい!!、まっ!!」
その瞬間氷がガゼルの体を包み込みガゼルは停止する、そこにはアルカナが悲しげな瞳でガゼルを見ていた
アヒデ「我が選定の神アルカナ、あなたは慈悲深い。しかしこの氷が溶ければ彼はまた神の元へ向かおうと、するでしょう、ならば今ここで彼の願いを叶えて差し上げるのが、神に仕える私の務め」
アヒデがそういった途端氷の彫像と化したガゼルは氷ごとその姿を消滅させられた
アヒデ「ああ、我が神アルカナよ。私は罪を犯しました。神に仕える聖騎士ガゼルの尊き命を奪い天に帰しました。懺悔します。どうかお許し下さい」
アルカナ「許しを与える。神託者アヒデ、これからは正しき道を歩みなさい」
アヒデ「全能なる煌輝エクエスの御心のままに」
アノス「とんだ茶番だなアヒデ」
ウィリアム「全くだ、何が『罪を犯しました』だ、罪の意識も無い癖に良く言うぜ」
アヒデ「異端者共に理解されようとは思いません」
アノス「その言葉は死んだガゼルにでも言ってやれ」
アヒデ「彼は救われました」
ウィリアム「何が救われただ、ただ人間が1人死んだだけだ、誰も救われてない、そんな救いしか与えられない神なら居ない方がマシだ」
アヒデ「私としては今ここで聖戦に臨んでも構わないのですが神はその信託を私に与えてくださらない。異端者共を見逃すのは遺憾極まりない事です」
ウィリアム「それは俺達の方が強いから今は戦いたくないって言う風に聞こえるけど?」
アヒデ「いずれ貴方達には神の裁きが下るでしょう、その時まで懺悔の用意をしていなさい」
そう言うとアヒデは魔方陣で姿を消した
アルカナはそれを見届けるとガゼルのいた場所に手をかざすと転生の魔方陣を組む
アノス「ふむ。お前は何故あの男を選んだのだ?」
アルカナ「彼は救いようの無い人で、私は神だった」
アルカナは更に続ける
アルカナ「貴方達は知っている?」
アノス「知っている事なら知ってるぞ」
ウィリアム「同じく」
アルカナ「どうして人は、そんなにも神になりたい?、命をかけてまで、神になって何をする?、それで彼らは救われるの?」
アノス「さてな、力が欲しいのではないか?、ウィリアム、お前はどう思う?」
ウィリアム「単純に思い通りに事を運びたいんじゃないか?、その為なら神だろうが悪魔だろうがなんでも良いだけでその目的に最も近いのが神ってだけだろう」
アノス「お前は何故そんな事を疑問に思った?」
アルカナ「この身が神であることが幸福だと思った事は1度もない」
アノス「くく、くはは、アルカナ、なかなかどうしてお前は神の癖にまともなことを言うものだ、まぁ、救いようの無い男を救わねばならぬとは貧乏くじも良いところだ、いや、そんな貧乏くじを好んで引く奴らがいたか」
アノスはそう言うとウィリアムを見た
アルカナはその間に転移の魔方陣を描く
アノス「もう行くのか?」
アルカナ「貴方達は敵」
アノス「最もだ」
アルカナ「1つだけ忠告しておく。地上に帰った方が良い」
アノス「ほう、何故だ?」
アルカナ「それ以上は言えない」
アノス「俺が敵だからか?」
アルカナ「そう」
アノス「では何故忠告する?」
アルカナ「敵を救ってはいけない?」
アノス「面白い事を言うものだ、そんな台詞を口にする神族はなかなかいまい」
ウィリアム「なら俺からも1つ忠告を」
アルカナ「何?」
ウィリアム「ある人が言ってたんだ、【人が人を助けて良いのは、自分の手が直接届くところまでなんじゃないか】って」
アルカナ「それが?」
ウィリアム「君も、自分の手が直接届くところまでを助けてみたら?」
アルカナ「………………考えておく、私の忠告を信じるも信じないも貴方達次第」
アルカナはそう言って転移していった
ウィリアム「信じるよ、君の忠告、でも、俺は君に手を伸ばすよ」
ウィリアムはアルカナの消えた場所に向けてそう言った