アノス「ふむ、それはどういう意味だ?」
アノスはアルカナにそう訪ねる
アルカナ「あらゆる神は選定者を選ぶ事で選定神となる。私は選定神となる以前に有していた神の名を忘れてしまった、覚えているのは優しさが欲しかったということ……私が優しくなかったということ」
アルカナは静かに言葉を紡ぐ
アルカナ「神は秩序。感情を持たず、生きてはいない。だから、私は名を捨てたのだと思う。神の名とその記憶を引き換えに、心を手に入れたのだと思う。しかし人の心は、特に愛や優しさは秩序を乱す。私が手に入れたのは神が手にしてはならない混沌だった。それに気がつかないまま、私は名も無き神として地底に光をもたらした。救いの光を。私はそうしなければならないと思っていた。この身に優しさがあれば、人を深く愛する心があれば、秩序の枠から脱しもっと多くの者を救えると思っていた」
ウィリアム「………救う」
ウィリアムはアルカナの言葉に反応しアルカナを見る
アルカナ「この地底で私は神の奇跡を振るい、人知れず救える限りの者を救ってきた。千の命を救い、万の心を救い、そうしてある日私は出会った。娘を殺され報復を神に願う、ジオルダルの信徒に、彼の娘は選定者で、聖戦の末命を天に返した。ジオルダルの教えでは聖戦によって死んだ根源は神のもとで救済される。何よりも喜ばしく、何よりも祝福すべきこと。だが娘は死の直前に彼に告げた」
アルカナの目が曇る
アルカナ「『神の元に行くよりお父さんと一緒にいたい』と彼は嘆き、教えに背いて娘を殺した選定者を恨んだ。彼は私に願った。すがるように訴えた、その選定者に裁きが下り、永劫の死が訪れるのを。それだけが救いだと彼は言った」
アノス「どうしたのだ?」
アノスはアルカナに先を促す
アルカナ「その時の私は選定神ではなく名も無き神でしかなかった。選定者に裁きを下す事は出来ない。私は彼を説得しようとした、復讐は何も生まない。娘の命は戻らない。貴方が幸せに生きることを、死んだ彼女も願っている、だから貴方が望むなら死んだ娘を甦らせると言った」
ウィリアム「そんな事出来るの?根源は滅んでたんだろ?」
ウィリアムの問いにアルカナは静かに頷く
アノス「ではどうした?」
アルカナ「創造の月の秩序を歪めれば同じ人物を創造出来る。心も体も記憶も同一、彼の娘は蘇る、少なくとも彼にとっては」
アノス「ふむ、嘘をついたか」
アルカナは頷き更に続ける
アルカナ「知らなければ、それで彼は幸せになる。私はそう考えアーティエルトノアの力で彼の娘を創造した、彼はそれを喜んだ。私は救えたのだと思った」
アルカナ「その数ヵ月後、彼は首を吊って死んでいた。泣きじゃくる娘が私に言った。選定審判を経て、代行者に選ばれた者が彼に娘は偽物だと告げたと。その者は彼の娘を殺した男だった、…………誰が彼を殺したのか?」
自問するようにアルカナは言う
アルカナ「彼を嘲笑う様に真実を告げた代行者か?。復讐心を抱いた彼自身か?」
自身の発言を否定する様にアルカナは首を振る
アルカナ「いいえ。彼を殺したのは私。偽物の娘を創造することで私は彼を救おうとした。けど、それは救いではなく絶望の種を撒いたにすぎなかった、それが私の咎。神として、決して犯してはならない過ちを私は犯してしまった。私は考えた。どうすれば彼の心を救えたのか。復讐を叶えてやれば良かったのか。けれど彼の心は救えても、今度はその代行者が死に1つの救いが消えてしまう」
アルカナは更に続ける
アルカナ「私は漸く気付いた。これらは全て繋がっている。今回の事に限った話じゃない。1つの救いは気付かぬ内に別の救いを失わせる。誰かを救えば誰かがこぼれ落ち、この神の掌にさえ、全ての願いは乗せられない、全能者はいない神ですら全能ではない。全てを救う事はできはしない、だからこそ私は自分が間違っている事を願った。私の出した答えを、私は誰かに覆して欲しかった。そうして地上に出た時、貴方達を知った」
アルカナはアノスとウィリアムを見る
アルカナ「神すら滅ぼす暴虐の魔王、それと同等の力を持つとされる仮面ライダー。貴方達なら私の問いに答えてくれるかもしれないと思った」
アルカナ「不適合者アノス・ヴォルディゴート。貴方はきっと秩序から外れた存在。私は審判を下す。貴方こそ神の代行者に相応しい、真の全能者へ至る者」
アルカナはそう言うと落ちているリヴァインギルマに触れる
アルカナ「全てを救えなくて、どうして神なのだろう?。悪人も咎人も愚者も悪魔さえ救えずに、どうして私は神なのだろう?。神はただ秩序を守るだけの理で、これでは何も救えはしない」
アルカナはリヴァインギルマを広い上げ水平に持つ
アルカナ「私は全てを救う優しい神になりたかった。本物の神に。そう思って名を捨てた。多分、きっと」
彼女は右手の柄を握る
アルカナ「間違いだった。だから、貴方達がくれたこの敗北が、罪を犯した私への罰。そして同時に何よりの救い」
柄を握るアルカナの右手に力が加わる
アルカナ「さようなら。貴方達の勝利を願ってる」
静かに抜かれようとするリヴァインギルマ、しかしその手を止める手が2つ
アルカナは不思議そうに2人を見る、しかしウィリアムは何も言わずアルカナの手からリヴァインギルマを捨てさせその手を握る
ウィリアム「1人で救えないなら、皆で救えば良い、ほら、こうして俺の手も合わせればそれだけ多くの人を救う事が出来る」
ウィリアムはそう言うとアルカナの手を取る
アルカナ「…………あ」
アルカナは先程まで届かなかった人に自身の手からこぼれ落ちた1人を掴む何者かの手が届く所を幻視し涙を浮かべる
ウィリアム「ほら、アノスの手も借りればまたそれだけ多くの人を救える」
ウィリアムはアノスの手も同じ様に繋ぐとアルカナは再び自身の手から零れ落ちた誰かを救う手が零れ落ちた者をしっかり掴む所を幻視した
ウィリアム「どこまでも誰にでも届く手、誰も取り零されない手、こうすればどこまでも、誰にでも届く、誰かを取り零す事も無い、だから、手を取り合って行こう?神様だからって無理することは無いんだ、全能者じゃないなら全能者に負けない救いの手を皆で作れば良い」
アルカナの頬を一筋の涙がつたう
アルカナ「全能者はいなかった、でも、全能者ではないからこそ手に入れたものがあった」
ウィリアム「………………お前はどうする?アヒデ?………………あれ?」
ウィリアムが振り向くとそこにアヒデは居なかった
アノス「逃げたか、まぁ良い、そのうちゼインと言う奴に捕まるだろう」
ウィリアム「助けないのか?」
アノス「救いようの無い男をいちいち救ってやったりなどせぬ、さてアルカナ、お前はこれからどうしたい?最早お前が選んだ選定者は行方が分からなくなった」
アルカナ「…………私は………………選定審判を無くしたい、この秩序は人に優しくなんか無い。神の都合で作られた生贄の儀式。彼の娘が死んだのもアゼシオンにジオルダルが攻め入ったのも全て選定審判が始まり。このまま続ければまた争いが起こる、何度も何度も、人は死ぬ。不適合者アノス・ヴォルディゴート。仮面ライダーウィリアム・テイラー、貴方達とならこの儀式を終わらせられる、だからどうか私に償いをさせて欲しい」
アノス「お前を信じよう。お前の優しさを俺は決して疑いはせぬ、俺の神となれ、アルカナ。お前が償いをすると言うのならばおれがその罪を許してやる」
アノスの盟珠に紅い炎が宿る。
それは、2人の誓いが刻まれた証だった