騒音混じりの保存記録   作:空ボトル

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第5話

 

「ただいまー」

 

よお、帰ったきたな(ほお、はへってひはあ)

 

 机の上いっぱいに広がるお菓子の袋。しかしほとんどは食べ着くされている。

 いやぁ、襲撃が終わってからお腹が空いていた事を思い出してな。軽くつまもうとしたら、お菓子に伸びる手が止まらなくなったわけなんだよ。

 

「あっ! とっておいたお菓子が!」

 

 セリカが1つ袋をとると悲しそうにした後にこちらを睨む。

 

「まぁまぁ、またお菓子は買った来ればいいんですよ」

 

「食べた分は補給品と一緒にまた待って来るから安心してくれ、俺もちでな」

 

 さすがに食い散らかしといてそのままにして置くつもりはない。ちょっと懐が痛むが必要経費と思っておこう。

 

「お菓子の大量買い、これが大人の力……。資源から戦闘の指揮まで、大人ってすごい」

 

「ちょっと違うような気もしますが……」

 

 まぁそんなことよりも対策委員とこの学校についてだ。

 話を聞く色んな理由で生徒が減ったこの学校を何とかしようと集まったが対策委員会。学園都市の住人も減っておりかなり衰退しているようだ。全校生徒が5人ってマジかよ……。で、その人数で自治区全体を回れるわけがなく不良が暴れていると。

 

「ヘルメット団は何度も襲撃してきます。こんな消耗戦をいつまで続けたらいいんでしょう……」

 

「そういうわけで、ちょっと作戦を練ってみたんだー」

 

「いつも寝ているホシノ先輩が!?」

 

「うそっ……!?」

 

「さすがにちょっと傷つくな〜。おじさんだってちゃんとやるのさー」

 

 ホシノはよく寝ているらしい。実力はあるのだが反応を見るに作戦立案をするのは驚かれるみたいだ。それでいいのか委員長。

 

「ヘルメット団は、数日もすればまた襲って来るはず。だからこのタイミングでこっちから仕掛けて奴らの前哨基地を襲撃しようかなって」

 

「い、今ですか?」

 

「今なら補給があるし、先生もできるみたいだしね」

 

 チラッとこちらを見るホシノ。範囲にいなかったと思うけどもしかして音弾が聞こえたのか? 聞こえなかったとしても目の前で敵に変化があったら不自然すぎるか。

 俺の声に関しては基本的に自分から言うつもりはない。生死が関わるところでは遠慮なく使わせてもらうが……まぁ、先生として活動している俺のポリシーだ。

 

「なるほど。ヘルメット団の前哨基地はここから近いし、今から出発しよう」

 

「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるとは思っていないでしょうし」

 

「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」

 

 生徒が選んだ選択を暴力(ゼブラの力)で解決するのではなく、支援する。あくまで解決する主体はその生徒であると思っている。俺も納得できるものなら尚更だ。

 

「行こう」

 

 

 ▢▢▢▢

 

 

 なーんてカッコつけましたが、基地は1時間ぐらいで片付きましたとさ。ちゃんちゃん。

 改めて戦いを見てみるとアビドスの生徒は並の生徒以上の実力を持っている。以前シャーレ奪還のために協力してくれた生徒達はおそらく上澄みレベルだったが、それに負けずとも劣らない。長い間5人で……5人だけで戦ってきたからこその強さなのだろう。

 

「改めて思うがみんな強いよな」

 

「そう? 普通だと思うけど」

 

『あまり他の学校との生徒と関わることが無いですからね』

 

 所属生徒が少ないから色んな学校に手を借りた方がいいと思うけどなあ。

 

「こっちは片付いたよー」

 

「ん、1人も残さず捕まえた」

 

 終わったみたいだしぼちぼち学校に戻るとするか。

 

 

 ▢▢▢▢

 

「ただいまー」

 

 と本日2度目の声のもと、アビドス高校に戻った俺たちは対策委員会の教室で一息つく。

 戦闘の後に走って帰ってきた割にはみんな余裕がありそうだ。

 

「先生が一緒に向かうって言った時は驚いたけど大丈夫そうだね」

 

「怪我は無いですか?」

 

 アロナが守ってくれたので無問題。“アロナガード”と呼んでいるナゾバリアがあるため流れ弾が当たることは無い。……ないのだけど本当にどういう仕組みなんだろう。本人に聞いてもフワッとした答えしか帰ってこないし、シッテムの箱はナゾが多い。解決する予感もしないが。

 

「ヘルメット団も片付いたし、これで重要な問題に集中できる」

 

「うん! 先生のおかげだね、全力だ借金返済に取り掛れるわ!」

 

「借金返済……?」

 

 およそ普通の生活をしている生徒からは聞くことがない単語がセリカの口からこぼれる。心音からして冗談ではなさそうだ。

 

「あっ、ええっと……」

 

「もしかして、この学校は借金を抱えているのか?」

 

「そ、れは……」

 

「いいんじゃない? 話しても。別に罪を犯した訳じゃなんだし、悩みを打ち明けたら解決法が見つかるかもよー」

 

 言い淀んだセリカとアヤネにホシノが提案する。

 

「でも、結局先生は部外者なんだし!」

 

「セリカ、先生は信頼していいと思う」

 

「シロコ先輩まで……! 今まで私たちだけでなんとかしてきたじゃん! なのに今更大人が首をつっこむなんて……」

「私は認めない!!」

 

 そう叫ぶとセリカは教室から飛び出した。

 様子を見てくるとノノミを出て行った時に俺も行くことを考えたが、追いついて俺が話をしたとしても余計に拗れるだけだろう。今は話を聞くのが先だ。

 

「えーと。先生がさっき言ったように、この学校には借金があるんだ」

 

 そうして語られたのは砂漠に沈む自治区と9億を越える借金、全校生徒が5人なった経緯だった。あんまりな負の連鎖に聞いてるこっちも頭を抱えたくなる。

 

「で、これからは借金返済に全力投球で取り組めるようになったってわけ。あー顧問になってくれるにしても借金は気にしなくていいからね」

 

「そうだね。先生はもう十分力になってくれた。これ以上迷惑はかけられない」

 

 これまで相談できるような相手がおらず、自分たちだけでなんとかしてきた彼女らは本心で関わらなくていいと言っているのだろう。

 何せ9億。まともに暮らしていたら想像がつかない大金だ。その返済に協力しようとする人がまずいないだろう。が

 

「対策委員を見捨てるつもりはない。顧問として協力させてくれ」

 

 死にかねなかった街中の案内にお菓子を(勝手にだけど)食べさせてもらった分。その恩を返さないとな

 

「……はいっ! よろしくお願いします!」

 

「へぇ、先生も変わり者だねー」

 

「よかった、これで希望が持てるかもしれない」

 

 教室の中で嬉しそうにする3人。その様子をこっそり伺うように扉の前で話を聞いていたセリカは、不機嫌そうな足音をたてて帰宅した。

 





雑に話をカットする時があるのでそこも大目に見てもらえると…

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