ラブライブ! 姫君の騎士   作:Plime

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兄の喜び、妹の成長

「はい、お茶」

 

 

「ありがと」

 

 

我が家の習慣で食後に飲む熱いお茶を淹れて真姫の前に置く。その後で自分の分を手に持ちながら席に着き、話を聴く体勢になる。これまで真姫からの相談事なんて数えるほどしかなく、こちらも相当に緊張する。だってそうだろ。これで真姫の口から「私、彼氏ができました」なんて出てきた日にはもう俺はそいつを八つ裂きにしなければならないだろう。これは兄がもつ義務であり特権であると自負している。

 

 

そんな莫迦なこと(俺としては至極当然なことなのだが)を考えていると、真姫が意を決したように口を開く。どうか!どうか、恋人ができたという報告ではないように!!

 

 

「実はね、兄さん。部活動のことなんだけど」

 

 

内心めっちゃ安心した。兄ちゃんよかったよ、真姫に彼氏ができてなくて。

部活動のことか。これまで家族の誰にも詳細を伝えていなかったのに、余程のことが起きたのだろうか。しかし俺は真姫が何の部活をしているか把握していない。だからまずは真姫の部活についての話からになる。

 

 

「部活のことはわかったけど、俺は真姫の所属している部活、知らないぞ?」

 

 

「ゔぇぇ!?」

 

 

めっちゃ驚かれた。あたりまえの質問だったんだけどなぁ。少し抜けているところも十分可愛い。

 

 

「そ、そうよね、兄さん私の部活はなにか知らないものね…」

 

 

そう言うと真姫は腹をくくったのか話し始めた。

 

 

「あのね、その…、私は部活動っていうか、なんというか、その、ね…」

 

 

腹をくくった割には後半はゴニョゴニョ言って聞き取れなかったぞ、妹よ!もうちょっとはっきり言って、と俺が言うと真姫は顔をトマトのように真っ赤にしながらも、今度はしっかり聞き取れる声量で話してくれる。

 

 

「私ね、部活動っていうか、その、スクールアイドル活動してるのっ!!」

 

 

「 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っは!?」

 

 

真姫の衝撃的すぎる発言に脳が強制シャットダウンしてしまった。

 

 

「なによ…」

 

 

真姫の不貞腐れた顔も可愛いなぁ…。じゃなくて!

 

 

「いやいやいや!え、なに、ちょっとまって!いろいろとおかしいだろ!」

 

 

「なによっ!別にどこもおかしくなんてないわよ!」

 

 

「全部おかしいわ!そもそもお前、友達いないじゃん!なんで友達できたとかそーいうのすっ飛ばしてアイドルやってんだよ!」

 

 

「そんなことない………」

 

 

「え?」

 

 

「そんなことないって、言ったの!私、ちゃんと友達できたもの!それにスクールアイドルの、μ'sのメンバーだってみんな最高の仲間なんだからっ!!」

 

 

一瞬、俺はたじろいでしまう。あたりまえだ、真姫はずっと友達なんていらない、なんて言っていたのだ。それが当然で、それが正常で、それが日常だった。そんな真姫が『友達いないだろ』なんて言葉だけで、こんなふうにーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞳に涙をいっぱいに溜めて、今にも泣きそうに顔を赤らめ、今まで聞いたこともない大きさの声で、俺に怒鳴るなんて。

 

 

 

 

 

 

 

真姫の瞳から目が逸らすことができない。別に真姫から睨まれているのではない、ただ見つめられているだけ。それなのに、この瞳からは、この熱い意志が篭った瞳からは目が離せないを逸らせない、逸らしたくない。

 

 

「真姫………」

 

 

真姫にこんな表情をさせる『μ's』という存在に、俺は感謝する。けれどもそれと同じくらい嫉妬もしてしまう。

 

 

「そうだな…。真姫だって成長するよな。いつまでも昔のままなんて、ないよな。ごめんな真姫。兄ちゃん、真姫のそんな表情が見れて嬉しいよ」

 

 

嬉しい反面、悔しい。兄として、俺が真姫にこんな表情をさせてやりたかったなぁ。

 

 

「な、なによ兄さん、気持ち悪いわよ」

 

 

真姫に罵倒されてしまった。

 

 

「そうだな、なに言ってんだろうな、俺」

 

 

まぁ、今は真姫のこの表情を精一杯、脳に焼き付けよう。

 

 

「話を戻すけど、俺に手伝って欲しいスクールアイドルの活動って、もしかして作曲とか?」

 

 

だいたい予想はつく。真姫は作曲できるし、ここ最近は俺にいろいろと作曲について質問してきていた。本人は学校の宿題とか言っていたが、宿題にしては曲数が多かった。

 

 

「うん、そのとおり、兄さんにはμ'sの作曲を手伝って欲しいのよ。音ノ木坂学院スクールアイドル『μ's』はね、廃校を阻止するために結成したの。それでね、近々オープンスクールがあってそこでμ'sも出演することが決まったんだけどー」

 

 

「作曲が上手くいかない、と」

 

 

「さすが兄さん、話が早いわね」

 

 

もっと褒めてくれて構わないぞ。

 

 

「それでね、μ'sも9人全員が揃っての初ライブなの。詩の方はもう出来てるんだけど、それに合う曲が思い浮かばなくて…」

 

 

表情がどんどん深刻になっていく。無理もない、真姫は責任感が強い娘だ。作曲が滞ってることにだいぶ焦っているはずだ。それはもう、藁にもすがる思いで俺に相談しているに違いない。そんな妹の想いに答えない兄なんて、きっと全国探しても誰1人としていないに決まっている。

 

 

「そんな顔するなよ、真姫。大丈夫、俺が手伝ってやるから、な?」

 

 

それでも、真姫はきっと表情を変えないだろう。みんなが自分に寄せている信頼を、みんなのしらないところで裏切っているからー

 

 

「ほんとに!流石兄さん!じゃあみんなに連絡してくるわ!あ、あと今度の休日の予定は空けといてよね!みんに会ってもらうから!それじゃ!」

 

 

そのまま真姫はリビングからスゴイ勢いで飛び出し階段を駆け上がり自室に戻っていった。きっとさっき言ったようにメンバーにこのことを報告するのだろう。

 

 

「あ、あれー」

 

 

一方俺はすごい取り残された感がハンパない。そもそも真姫は嫌々ながら相談していると思った。しかし蓋を開けたら、どうやら真姫はノリノリで相談していたらしい。俺の了承を聞いたときの真姫の笑顔と言ったら…。

 

 

 

 

 

めっちゃ輝いていた。

 

 

「しゃーない、俺もやるか」

 

 

お茶を片付け、俺もリビングから出る。そのまま自室に入り、パソコンの電源を入れる。

 

 

「さってと!じゃあまずは『μ's』について調べるか!」

 

 

きっと今の俺の顔は真姫に負けず劣らずの笑顔だろう。

 




なかなか纏まらない……
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