最低で最凶のサポートギタリスト   作:毘沙門天堂

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最凶と最強

「お邪魔しますよ~…っと、てか広いなぁ。ホントにマンションの一室かよ」

俺はライブした後日にお礼がしたいとRASのメンバーに連れられてチュチュのマンションの一室へと通された。

「Hey!ちょっとジン・キド?興奮するのは分かるけれどLadyの部屋をじろじろと見るのは感心しないわよ」

マンションの一室というより一軒家の内装と言っても不思議ではないほどの素晴らしいものだった。

「あぁ、すいませんねぇ。マンションの一室とはとても思えなくてつい、ね」

俺がそう評価するとチュチュは胸を張って(胸?とは言ってはいかんぞ?)

「当然よ!最強のバンドと最強の曲を作るプロデューサーが安っぽいところに住むわけないじゃない。それよりソファにかけてくれるかしらミスター?」

とソファに座るように促されて「ギターケースお預かりしますね!」と笑顔で手をされればNoとは言えないので大人しく渡せば抱えてチュチュの後ろに控えるように立った。そして俺もソファに座る。

「ジン・キドさん。この度は急なお願いとはいえ受けていただき本当にありがとうございました」

チュチュを皮切りに他のメンバーも「「「ありがとう(ございました)」」」と礼をくれた。

「礼はいいよスタッフさんも困ってたみたいだし、アンコールを潰すわけにもいかなかったんだろう?」

「フフッ、噂通り優しい方のようですね。それでどう思うかしら?」

はてさて…どんな噂が広まっているのやら。とても興味は…ないな。他人が俺をどう評価しようと俺は俺でしかないからな。質問の意味が分からない。

「どう、とは?」

「私のことよ。こんな子どもが、とか最近の遊びは芸が細かいな…とか、ないの?」

そういう意味か。不思議とそんなことは思わなかった。

「さてな。思わなかったな、あんな凄い曲を作る実力者とできれば会ってみたいと思いはしたかな」

と素直な感想を述べればチュチュをはじめ他のメンバーも目を丸くして言葉を失くしていた。

「あ~…みんな大丈夫か?」

俺の一言でみんな正気を取り戻したのか「なんでも(ないよ)(ねえよ)(ございません)」と目をそらしていた。

「ゴホン!率直な感想をthank you…それで、ギャラのことなのだけれど」

「今回はいいよ、ライブハウスのスタッフさんから臨時収入をもらったからな」

そうライブハウスを出る直前にスタッフから「急なお願いだったのにありがとう、少ないけど」と数人渡されたのだ。

「そう…ねぇ、ジン・キド提案があるのだけれど聞く気はあるかしら?」

「おい、チュチュまさかRASに入れるのか?」

「Sure!マスキング、レイヤ。あなたたちからジン・キドのことを聞いたとき随分と高評価すると思ったわ。それと同時にジン・キドのギター力を手に入れればRASは最強になる、そう確信したわ」

俺を差し置いて何かとんでもないことを話してると思うのは俺だけではないはずだ。

「ジン・キド!聞いた通りよ」

「は、はい!…は?」

急に話を振られれば腑抜けた返事しかできなかった。

「あなたの対応力、そしてレイヤ、マスキングからのギター力の評価。この二つがあなたをスカウトする理由よ」

なんとも急な話で正直頭の中はぐちゃぐちゃだ。

「…スコアを出してもらえるか?」

「それじゃあ!」

チュチュが目を光らせて期待に胸を弾ませているといったところだろうか。

「早とちりするな、弾くにしたって曲を覚えないとできないだろ?…それに」

「What?それに…?言いたいことがあるならはっきり言ってほしいわね」

頭の中で駆け巡る言葉とか感情を飲み込んで首を振る。

「何でもないさ、さてやるか。どこでやるんだ?リビングでやるのか?」

ポニーテールにして眼鏡を外す。

「No,ブースでやってもらうわ。というかもう覚えたの!?」

「スコアをさらうのは難しくはない。ま、弾けるかどうか別の話だがな」

チュチュは大興奮である。そしてすぐに平常運転に戻る。

「いいわ!すぐにブースに入ってくれるかしら?パレオ、ジン・キドにギターケースを」

「イエス、パレオー!木戸さんパレオ、とても期待しちゃってます」

とても眩しい期待の眼差しで見つめられる。まぶし過ぎるのだが、不思議な感じがする子だとそう感じた。

「まぁ、期待に応えられるかは分からんがやるだけはやってみるさ」

そして俺はギターケースからカラコンとギターと諸々出してブースへと入っていく。

「Heyジン・キド、チューニングは済んだかしら?」

「ああ、早くやろうぜ」

俺はそう答えて内心ワクワクしている自分がいる。今更何も変わることもないだろうにと苦笑し軽く弾いてみる。ウォーミングアップにしてはやりすぎなくらいなものを披露したと思う。

「Wow…ゴホン、それじゃあかけるわよ?」

チュチュはその言葉と入れ替わりに『R.I.O.T』をかける。俺もそれにギターで応える。

「パレオ興奮します」

「ギターの腕だけは相変わらず本物だな、木戸のやつ」

「ますき、今は木戸くんのギター必要なんだから」

「アンタたちうるさいわよ!」

そうして『R.I.O.T』は終わりを迎えた。

「終わったぞ、チュチュ」

俺はそう言ってブースを出る。

「すごい…すごいわ!Unstoppableよ!ジン・キド…いいえあなたは今日からはキッドよ」

「キッドね…そう付けるに至った経緯を聞いてもいいか?」

俺はそう言って髪をほどき眼鏡をかける

何かパレオのほうから「はわぁ…」とか聞こえる気がしたがおそらく気のせいだろう。

「ええ、もちろんよ。演奏中のあなたはまるで子どものようにギャラとかそういうのは関係なく楽しんでるように見えたの…って何で泣いてるのよ!?」

こいつ…人の内心まで見抜く力を持ってるのか…。実際、俺は楽しかった。中からぶち壊そうとも考えていたが…楽しんでしまった。

「別に何でもない…キッド、か…。悪くないな。RASだったか、本当に最強になるかもな」

と憑き物が取れたかのような気がする。少なくともRASの連中には自分を隠さずに済みそうだと感じた。

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