最低で最凶のサポートギタリスト   作:毘沙門天堂

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最凶の泣き所

チュチュのマンションに来て一度チュチュを探す。部屋の中には主はおらずRASのキーボード担当パレオだけがいた。

「やぁ、おはようパレオ。今日も一番乗りか」

そうパレオに挨拶する。RASに本気で対するようになってから世界が変わったような気がする。

「あ、キッドさん、おはようございます!もちろんですパレオはいついかなる時でもチュチュ様のことを考えて行動しなければいけないので。そう言うキッドさんも早いですね。まだ皆さん集まっておられませんが少しゆっくりしていかれますか?」

俺は首を横に振る。

「いや、今日はさほどゆっくりもしていられないんだ。これから人に会いに大阪に行かなくてはいけないんでね。」

「あらぁ、それはそれは大変ですね。…キッドさん変わられましたよね。やはり契約書の効果だったりするんでしょうか。」

パレオは冗談めかしたように笑いながら言うので俺も苦笑で返し

「どうだろうな…まぁ、RASのおかげなのは間違いないな。そうだ、渡すものがあった、健康管理表みたいなものだ。熱を測ってそのほかに異常はないか、とか紙に書いて練習時間を決める目安にしてくれ。」

と4人分の管理表とバインダーをパレオに渡す。

「わざわざ申し訳ありません。まだまだパレオも至らないところがありますのでご教授お願いしますね。と、そろそろ行かないといけないのでは?」

そうパレオに言われて「じゃあ後は頼む」とだけ言ってマンションを出て駅に向かい新幹線で大阪へ向かった。

~大阪~

大阪に着くなりチュチュから連絡が来た。

「チュチュか、どうかしたのか?」

『どうかしたのか、じゃないわよ!何勝手に大阪に行っているのよ!』

電話の名からチュチュの怒号が響く。耳が使い物にならなくなるんじゃないかと不安になるくらいだった。

「悪かったよ。人に会わなければいかなかったんだよ」

『それはパレオから聞いたわよ!私が言っているのはなぜ事前に言わなかったのかということよ!』

それはごもっともだ。だがその人の呼び出しも急なので忙しいのだ。

「あんたの意見ももっともだがその人の呼び出しはいつも急なんだよ。無下にするわけにもいかなくてな。」

『むぐぐ…ハァ。分かったわよ、その代わりちゃんと無事に帰って来なさいよ?あとお土産もわすれないこと!いいわね!!』

俺が分かったという前に切られた。チュチュもあの人もなかなか強引な女ばかりだ。

「お、木戸くんやないか!こっちやで~」

君島美紀。俺の本当のクライアント。この人に逆らえばいろいろと生活できなくなる。俺を呼びだした張本人でもある。

「お久しぶりです、君島さん。」

俺は軽く挨拶をする。

「なんやつれないなぁ美紀さんでええ言うとるのに。まぁええか、活躍しとるらしいなレッドアイ、今はキッド…やったかな?それでどうなんや?RASのほうは」

この人の情報網は広くメディアで取り上げられていないことでも知っている。見た目はとても綺麗だがとても怖い人である。

「はい…貴女に言われたとおりに少しずつ大きくする手伝いをして実際大きくなってる気はします。」

そして君島は怪しく笑う。そして彼女が用意した車に乗り込む

「ええことやな、ちゃんと言うこと聞かんと私も木戸くんのお願い聞いてあげられへんようになるしな。仲良うしてくれな。さ、着いたで私が約束守っとること証明するさかい着いてきてな。」

君島は車から降りて目の前のとても大きな施設に入っていく。俺もそのあとに続いて中に入っていく。

ピッ、ピッ…と機械の鳴る音が聞こえる。ここは大病院に引けを取らない設備が整っている。その先には機械につながれて『生きている』人がいる。俺の姉の木戸類だ。大阪に出かけて交通事故に遭って植物状態となってしまっている。それでも姉が生きているのは君島のおかげであるのだ。

「な?約束は守っとるやろ?ちゃんとお姉さんは生かしてあるで?」

「ありがとうございます。姉が生きているのは君島さんのおかげです。」

俺は深々と頭を下げて礼を言う。

「礼はええて。その代わりちゃんと木戸くんも約束を守ってRASを大きくしとくれな?」

この人の手腕はホントに素晴らしいと感じるものもあり怖いと思うところもある。だが…提案という形で切り出す。

「君島さん…お願いというか提案があるんですが」

俺がそう切り出すと出口に歩く歩を止めて振り返って笑みを向ける。

「ん?どないしたんや?聞くだけ聞いてあげるわ」

「RASをどうしても潰さなければならないんでしょうか。RASを潰さなくても多くのバンドを再起不能まで追い込んできてるんです。もちろんこれからもそうしろと言われればっ…」

そして君島の顔から笑みが消える。

「木戸くん?なんやRASと出会うてから熱い男になってしもたんやな…」

君島は何かがっかりした雰囲気を発する

「そんなことはないですよ…今後もちゃんと言う通りにしますので」

「木戸!アンタは私の言うとおりに動いとればええんや!もうこれ以上肉親を失いとうなかったら大人しく従っとけボケ!」

…これがこの人の本性だ、これがあるから誰もこの人には逆らえない。もし逆らえば自分の生活や家族がどうなるかわからないからだ。この人にはそれほどの力がある。

「なぁ、木戸くん。木戸くんはとてもええ子やからそんな子からお姉さんを奪いとうないんや…。分かってくれるやろ?な?」

俺の手を両手で涙目でつつんで俺を見つめてくる。

「分かり…ました。」

おそらく彼女の本心ではないのだろう。だがそう言われれば分かったというほかない。

「ん、木戸くんはやっぱりええ子やな。木戸くんが約束を守ってくれる限り私も約束を守る。必ず。さ、駅まで送るわ。乗って」

そして再び車に乗って駅に戻る。

「ほな、木戸くん生活費はまた送っとくわ。学費も払っとくさかい心配せんでええで」

「…姉のこともよろしくお願いします」

俺は再び冷え切った目で見つめてお願いした。

「分かっとるよ、ちゃんと約束は守るさかい、な」

そして俺は駅内部へ歩いていく。

___________________________________

「お嬢様よかったんですか?」

「…何のことや?」

「あの男のことですいつか真実を知るのでは…ぐっ」

そして君島は運転手の首をつかむ

「私の計画は失敗するいうんか?大丈夫やで…木戸くんは真実にはたどり着けへん何せあの施設が何の施設かもわかってへんからなぁ。あ、やってしもたぁ木戸くんにお土産渡すん忘れとった…まぁええか。なぁ?」

そういって君島は手を離し施設へと戻っていくことを木戸は知らなかった。




木戸類
木戸尋の姉。一人で大阪に出かけて交通事故に遭い君島の施設へと運び込まれるがすべて君島の計画でそれに巻き込まれる。

君島美紀
木戸尋のクライアントで施設の最高責任者。交通事故から木戸類を施設に運び込み植物状態を維持させるまでがすべて彼女の計画。目的はバンドそのものをなくすことらしい
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