2163年6月16日 タイタン 第13空軍基地 3時55分頃
ダニエル・レモンド少尉とブライアン・リモア大尉は格納庫へ向かっていた「ここ最近演習の予定でみっちりらしいっスね?大尉」。レモンドがリモア大尉に質問をするが「私語は慎め、可能ならTACネームで呼べ、ランス」と返されてしまった。
(ホント、頑固なやつなこと、、、)と、レモンドは心の中で思いつつ通路を歩く。
歩き続けていると丁度目的地とは別の格納庫から出てきたであろう今回のAWACS、コールサイン「ホークリーダー」ことローウィ・アスト少佐に出くわした。「お、こんなとこで会うとはな、ちょうどいいブリーフィングルームに来てもらおうか」ランスとリモア大尉ことTACネーム「ライト」はブリーフィングルームへ向かった。
ブリーフィングルームは思ったより人が少なく静かだった。アスト少佐は部屋の奥の方にあるコンソールを操作するとともに「二人共、かけたまえ」と声をかけた。
二人が席につくとブリーフィングが始まった「結論から言おう。今回の演習は空対空戦だ」。(よし、久々にこのときが来たか!)とランスは思った。アスト少佐は一息置いて言葉を続けた「まずは目標空域に向けて飛行してもらう、空域には無人機をいくつか配備しているこれと模擬戦を行ってもらう。それと、、、相手が無人機だからと言って気を抜くなよ、近くには無人機の通信母機が待機しているからな。0800まで模擬戦を行ったらそこから空中給油をしてもらう、その後また模擬戦を1000まで行い模擬戦は終了、帰還という流れだ、、、質問は?」沈黙が少しの間続く。質問がないと判断したアスト少佐、いやホークリーダーは口を開いた「よし、それでは早速格納庫へ向かうぞ、出撃の時刻は0500だ、少しは余裕があるからなしっかりと準備をしろ。以上」。ランスとライトは席から離れ格納庫へと向かった。
格納庫につくとすでに準備万端の愛機、F/A-44が待機していた。ランスは近くの整備士に声をかける「今日はやけに準備が早いじゃないか」整備士が答える「そりゃあしばらくぶりの空戦ですからね、機体が悲鳴を上げないようにしないとですからね」。ランスにとってなんとなくではあるが心強い答えだった。
ランスは待機室へ向かった、待機室へ向かうと自分のロッカーを開きタイタン専用に開発された宇宙服のような耐Gスーツへと着替え始めた
耐Gスーツは先も言った通り宇宙服のようになっている。これはタイタンの厳しい環境からパイロットを守りつつパイロットに優れたパフォーマンスを提供する環境を作ろうとした結果宇宙服のようになったのだ。しかし、お陰で着たり脱いだりするのは非常に手間のかかるものになってしまっている。
なんとか苦戦しつつも耐Gスーツを着たランスは機体のもとへ歩いて行った。途中で駆けつけた整備士に予想外のことを言われた「ホークリーダーからです、訓練開始を繰り上げるそうです」ランスは「いつから開始だ?」と返す。整備士から「0450からです」と言われたランスは慌て始めた。
ランスは整備士をそっちのけで機体に乗り込んだ。ランスは機体に向かって「よーし久々の空戦だぞ、相棒」というとコックピット内のタッチパネルを操作し始めた。準備が進むに連れて周りの整備士たちの動きも慌ただしくなっていく。エンジンのスタートを終え、キャノピーを閉めた頃、ランスは管制塔に向かって通信を始めた。
「こちらバルキリー1-2格納庫内の換気を開始してくれ。」管制塔が答える「了解したバルキリー1-2、10秒後に換気を開始する」。その通信から10秒して換気システムの稼働音が格納庫内に響き出した。40秒ほどで換気は完了し機体もエンジン音以外静かになった。「バルキリー1-2、これより格納庫のドアを開ける。滑走路にはすでにバルキリー1-1が待機している」ランスは答える「ありがとう管制塔これより滑走路にタキシングする」。
F/A-44は滑走路にタキシングし始めた。心なしか管制塔から視線が集まっている気がする。気が乱れそうなのを我慢して滑走路にタキシングをする。滑走路につくとバルキリー1-1、ライトから通信が入った「1-2ホークリーダーはすでに空に飛んだようだ、俺たちも上がるぞ」ランスは「了解です、1-1」と返事を返した。
数分して管制塔から「よし滑走路に異常はなし、離陸を許可する。良い狩りを」ランスたちはエンジンのスロットルを全開にしてタイタンの薄暗い空へと飛んでいった。
タイタン上空 7時50分
目標空域に到着するとAWACSから通信が入った「よし、予定より早いがまずは長距離から空戦を行う、準備はいいな?」ランスたちは「「ウィルコ」」と答える。
2人は無人機の群れに対してフルスロットルで飛行していく、その時ライトがランスに向けて通信をする。「いつものスタイルで行くぞ1-2」ランスは「了解1-1」と答えた。無人機が有効射程に入った時二人は同時にミサイルを発射した、それと同時に2機は複雑な機動を描きながら無人機の群れに突っ込んだ。「俺が囮になる、お前は機銃で無人機を確実に仕留めろ」ライトがランスに言った「了解」ランスは手短に返事をする。二機ともその機動はとても「人を殺すための機動」とは思えないほど美しかった。二人にとってこれは簡単なものだろうが、一般兵からするととても真似できたものではなかった。無人機はそれに対抗して数と機動性を生かして二人に襲いかかるが、長年組んできた二人からすれば子供の遊びに付き合っているそうなものだった。
二人が空に機動を描いているとAWACSから通信が入った「よし、そろそろ良い時間だ、空中給油を受けろ」。ランスは気づかなかったが結構時間が立っておりタイタンの空は少し明るくなっていた。
空中給油も二人にすれば子供の遊びのようだった。しかしその速さのあまりにいつも空中給油機側の人間がいつか事故を起こすのではないかとひやひやしていることを二人は知らない。
スイッチが入っているのか空中給油の間も二人は静かだった。しかし、そこにAWACSから通信が入る「給油が完了したら今度は二人で格闘戦を行ってもらう」言葉には出なかったがランスにとっては意外な指示だった。反射的に(やはり上層部は地球と火星に喧嘩を売るのか?)と考えたがすぐにこの考えは脳の隅に追いやられた。給油が完了した二人はAWACSの指示が来る前にもう距離をとっていた。「まずはランス、お前から仕掛けろ」ランスはすぐにライトの後ろについた。少しずつ距離が狭まっていく、そしてタイミングは来た。反射的にランスは機銃のトリガーを引いていたがライトには当たらなかった。しかし回避したライトをランスはこれでもかと追い詰める、それと同時に体が押しつぶされそうなのがわかる。二人の動きは完成させられていた、まるで芸術だった。
しかしこれはあくまで空戦、何らかの形で終わりは来る、ライトが雲の中に入る(逃がすか)ランスも雲に入る。しかしランスは判断を誤ってしまった。突然ライトは急上昇したのだ、ランスも追う。しかし雲を抜けた先に待ち構えてたのは、ライトのF/A-44の機首だった。避けるまもなくコックピットに機銃の直撃判定を受けた。
その後も何回か交代交代で攻守を入れ替えて空戦を行ったが遂にはランスが勝つことはなかった。
タイタン 第13空軍基地13時頃
二人は滑走路に着陸した、そして格納庫へとタキシングしていく。その時管制塔から通信が入る「よしこのまま1-1は第11格納庫へ、1-2は第15格納庫へ入ってくれ、二人共お疲れ様だ」。
ランスはそのまま第15格納庫にタキシングし換気が終わるとコックピットから出てきた。「ああ、今日はやけに疲れたな」ランス、もといレモンドは近くにおいてくれたコーヒーメーカーからコーヒーを淹れ、ゆっくり飲みつつ脳の隅っこに置いていたことについて再び考え出した。(火星と地球に喧嘩を売ったとして俺たちは勝てるのだろうか?勝ったとしても俺は生き残ることができるのだろうか?)
戦争の足音はゆっくりとだが近づきつつある、、、