太陽系制圧演習記録   作:アメリンゴ二等兵

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トレーサー

2163年6月27日 土星衛星軌道 廃棄ステーション

 

 

コルト大尉は隊員らをデブリの影に隠しながらステーションを監視していた、いつでも突入できるようにだ。

「ブラボーチーム、ドローンの状況はどうなっている」「まだ変化が見受けられません」この数十分この会話ばかりだった、あまりの変化の無さにコルト大尉は不思議に思いつつあった。(そろそろ良い時間のハズだが)コルト大尉がこのまま時間が過ぎいつか正面から突っ込むことになると思い始めていた頃だった。

「見つけました!例のブツです!」ブラボーチームから連絡が入る。「よしこれからウェイポイントロンドンまで隠密で行動するぞ。360度警戒を怠るなよ」コルト大尉らはデブリの影から出て行動を開始した。

ステーションは非常に巨大で複雑で21世紀のステーションとは比べ物にならないほどだ。そのため隠密行動は簡単に思えるがそうはいかない、ここはあくまで宇宙空間だ全方向に監視を置くことができるある意味両チームともに想像力が試されているのである。

「こちらブラボーチーム敵歩哨を確認、そちらに向かっている」コルト大尉は応える「了解、こちらで排除する」コルト大尉らはしばらくその場で待っていると上方向から敵歩哨がやってくるのが見えた。「よし山野、タイミングを合わせて撃てよ」「了解」二人は物陰に隠れタイミングを見計らった。5秒ほどで「撃て!」コルト大尉が合図を出すと同時に二人は弾丸を発射した。歩哨を無力化したところでコルト大尉は「奴らにバレるのは時間の問題だ、ウェイポイントロンドンまで急ぐぞ」と合図を出した。

宇宙空間で迅速に移動と聞くと簡単そうに思えるが実際は難しい体を動かすのはもちろん、RCSユニットの操縦に加え今回は隠密である。下手にRCSを吹かすと熱源探知でバレる下手に体を動かしても目視などでバレるのである。しかし彼らは軌道海兵隊であるもうこんなのは手慣れたものである。

敵の監視ドローンや歩哨に気をつけて進み多少手こずったもののウェイポイントロンドンに着くことができた。

「全員予定の配置につけ、銃撃戦の用意だ」コルト大尉は指示を出す。作業は順調に進んだ。

40秒ほどして「全員配置に付きました」川島から連絡が入る「よし、、、やれ!」コルト大尉が指示を出した瞬間ステーションは一瞬にして地獄となった。

山野は今目の前で起きていることについていけなくなりそうだったがなんとか銃の照準を敵に合わせて打ち始めた。

ステーションのあちこちではトレーサーが確認できた。もし遠目から確認できたら誰もが美しいと思うだろうが本人たちにとってはある意味命をかけた戦いであるのは言うまでもない。

弾丸は演習用とは言え、あらゆるものを破壊していった。発電用のソーラーパネルや使われなくなった核分裂炉、軌道維持用のエンジンノズル、与圧区画の壁等あらゆるものを破壊した。無論兵士もである、流石に宇宙服を破ることはないもののそれでも弾着時の衝撃は凄まじく言葉にできない感情に襲われる。

地獄は4分程続いた。やっとトレーサーが落ち着き始めた、しかしそれは人が減ったからではない。敵がステーション内部に退却し始めたのである。

「クソッ、仕留め切れなかったか」コルト大尉は厄介そうに呟いた。そうこの後想定できるのは一つ屋内戦である。

宇宙空間における屋内戦は非常に厄介である、なぜなら遮蔽物が浮いているのである。つまるところ遮蔽物とともに移動することが可能だったり重力下では考えれない位置から奇襲を仕掛けることも可能なのである。そのため宇宙空間においては防衛側は非常に有利なのである。しかし攻撃側も同じことはある程度できる「ブラボーチームこっちに来てくれ、そしたら爆薬を指示する場所に設置してくれ」コルト大尉が指示を出した。1分ほどでブラボーチームは到着した。コルト大尉はハンドサインで隊員らに突入する場所の指示を出した。

演習時も爆薬の取り扱いには気をつけないといけない。仲間もそうだが敵の位置にも気をつけないと報告書の量が増えるどころか軍法会議にかけられかねない。

全員配置に付き爆薬の設置が終わりあとはコルト大尉の指示を待つだけとなった。コルト大尉は慎重だった先も言った通り敵の位置味方の位置に気を配らないといけないからだ。

そしてその瞬間はやってきた「よし、起爆しろ!」コルト大尉の指示で爆薬が起爆された。ステーションのあちらこちらで破片が飛び散っているのがわかる。しかしコルト大尉らの目的はステーション内部である。

「突入だ!ゴーゴーゴー!」コルト大尉が叫ぶと隊員らも一気に突入した。破片をのけながらステーションに突入しつつ敵兵には弾丸を浴びせた、今度はステーション内部が地獄となった。弾丸は先の通りあらゆるものを破壊した。ステーションの壁から壁の所々についている電子機器、遮蔽物までありとあらゆるものを粉々にしていった。しかしいくら破壊しても敵兵はあふれるばかりに前線に出てきた、コルト大尉は仕方なく「クソ、、、仕方がない、一度ステーションの爆破箇所に退却するぞ!」と指示を出した。

味方たちはゆっくりとだが安全かつ確実に爆破箇所まで交代していった。しかしただ退却しただけではなく所々にブービートラップを仕掛けながら退却したのである。こうしてコルト大尉らは爆破箇所まで後退することに成功した。「これからどうするんです」山野が質問する「こうなったら直接ブツを取りに行くぞ」コルト大尉は「ブラボーチーム、ステーションにどこかちょうどよい亀裂はないか!?」と情報に探りを入れた。すると「あるぞ、目標から60メートル手前に亀裂がある。人一人分のな」。それを聞いたコルト大尉は指示を出した「山野らはここを死守しろ、川島、俺について来い」「了解」こうしてコルト大尉と川島は亀裂に向かっていたが途中で敵に出くわすこともあった。

(流石に守りは薄いが敵も気づいてたか)コルト大尉はそう思いつつ亀裂に向かって進んでいった

亀裂に到達した二人はまずは同時に演習用グレネードを亀裂に投げ込んだ。爆発を確認した二人は慎重に中に入っていった。亀裂側にはあまり敵はいなかった、まず二人は目標のいちを確認することにした。道中かなりの敵に遭遇したが二人にとってはあまり脅威ではなかった。こうして目標にたどり着いたが、雰囲気がどこかおかしかった「、、、何かがおかしい」「そうですね、、、僕もそう思います。とりあえずマッピングして味方の支援に行きましょう」「そうだな」二人はマッピングしたのち、敵の背後に奇襲をするべく進んでいった。

こうして敵の背後についた二人はタイミングを合わせて敵部隊に奇襲を食らわした。

奇襲とは言え非常に鮮やかな技だった。的確に敵の頭部を狙い確実に1発で仕留めていったのだ。それもミスなく。

二人の活躍により味方部隊は危機を脱した、川島は部隊に状況を伝えた。

「目標のブツを確認したんたが。何かがおかしいんだ、とにかく来てくれ」。皆は川島とコルトに案内されて目標のあるところについた。

 

演習開始より2時間後

 

隊員らは目標の入ったコンテナ前に到達した。

確かに雰囲気はどこかおかしいというよりおぞましいものがあった。「一体何が入っているんだ川島」山野が質問をする「いやまだ開けてない」川島が答える。

「よし、、、何が入っているかわからん。総員警戒してコンテナを開けるぞ」コルト大尉はコンテナのコンソールを操作し始めた。全員銃を構える、コンテナが開かれた時、全員おぞましさの意味を知った。

コンテナの中には更に小さな厳重に保管されたコンテナ。だが問題はそっちではない、箱に書かれた黄色の背景に書かれた黒いクローバーのほうが問題だった。

川島が恐ろしげに喋る「これ、、、演習用だよな。な?」全員は黙ったままだった。その時司令部から演習終了の合図が送られてきた。

「、、、とにかくコイツを運ぶぞ。川島、いや山野、手伝え」。

 

川島はこんなことを考え始めていた。

 

いつしか地球火星連合軍の基地を強襲し、これと同じようなものを盗むんじゃないかと、そしてそれを前線で使うのではないかと考え始めていた。

 


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