下手になってるかもしれないですし誤字脱字もあるかもしれませんが温かい目で見守っていただけると幸いです。
それではお楽しみください。
2163年6月29日 エンケラドゥス高軌道
誰が見ても年代物とわかるほど古い船が軌道上を佇んでいた。
船首には対放射線兼デブリ用シールドが溶接されており、船体中央には与圧区画とその後ろに出力は低めの核分裂炉、エンジンには核分裂炉で発生した熱を利用する熱ロケットが取り付けられている…本当にシンプルで古い設計の船だった。
しかしこの船の乗組員の運命はとても重いものだった。
かつてパンドラという小型フリゲート艦の乗組員だった5人組は今、土星の環に向かって飛行しようとしていた。5人組のうちの一人レミントンが弱々しくつぶやく「ああ、あんなところで活躍するんじゃなかった。活躍しなければ…」しかしこのつぶやきは5人組のリーダー、もといノアス艦長にも聞こえてたらしく「気持ちはわかるが弱音を吐いてはいかん。これは任務なんだ」とレミントンは言われてしまった。
しばらくの沈黙が続いた後アランが「…あとどのくらいで出港何だ?」とクロムに質問した。「あと1日ですよ機関長」「チクショウ…あと1日もこの空気に耐えないといけないのか」。
船の中は重々しい空気で満たされていた。というのも彼らは対デブリ雲突入訓練、通称死の数秒間に参加することになってしまったのである。死の数秒間は名前からも察しがつく通り、死亡率の非常に高いものである。そんなものに行くことになって喜ぶ者はそうそういないだろう。
また静寂が船内を支配し我慢の限界に達しようとしたときだった。ミデラスが放った一言で少しだけ救われることになった「皆さん…その、もうそろそろ食事の時間では?」。
食事も簡素なものではあるが地獄のような空気よりかは何倍もましだ。各々食事を取りに船内後方へ行った。
食事を取りまた各々の席に付き食事を取り始めた。とは言え誰もが沈黙の中過ごすと思ってた、そしてそのとおりになるはずだったが。
突然通信が入った。クロムは急いで通信を立ち上げた、通信内容は<そちらの軌道に接近する複数のデブリがある、こちらの指示通り回避せよ>という内容だったクロムは急いでノアス艦長に報告する。
「こちらの軌道に接近するデブリが確認されたようです。至急回避マニューバを」「分かった、航海長回避マニューバを取れ」「了解です。機関長エンジンはどうだ?」「いつでも行けるぞ」。
たったひとつだけの行動とは言え一度命令が下るとエンジンが入るのが旧パンドラ組の良いところであり、今回死の数秒間に選ばれてしまった原因でもあった。
機関に火がつけられいつでもマニューバが取れる体制になったときだった。突然艦長が「皆、聞いてくれ」と言った。皆が驚いたかのように艦長の方へ振り向く。
艦長は言葉を続けた「ここ最近で君たちと任務をこなしてきて君たちの良さがわかって来た、そして感謝している。君たちのおかけでここまでこれたんだ。絶対死の数秒間も乗り越えられると信じている…以上だ」。突然の感謝の言葉に乗組員は動揺したがミデラスは任務をこなした「エンジンに火が入りますよ加速度は0.8G、準備はいいですか?」その言葉で現実に戻った皆はうなずいた。「エンジン噴射回避マニューバ実行」航海長が言った途端船内に慣性重力が発生した。それは皆にとってどこか懐かしい感触がするものだったが一瞬で終わってしまった。
それから約1日
一度心に火がついたがゆえか船内の空気が地獄のようになることはなく遂に出発の日を向かえた。
「もうそろそろ1日が経ちます、HQからの通信があるはずです」クロムがノアス艦長に報告をする「分かった。ありがとう」。そこにレミントンが「一時期はどうなるかと心配でしたよ」と言ったが、「砲雷長まだ任務中だ、それに山場をくくり向けてもいないのだからな」とまた言われてしまった。
そのタイミングで通信が入った。クロムは通信に出ると<そろそろ出撃マニューバの時刻だ、指定する方向に船首を向けてくれ>との通信を受けた。クロムは同時に受け取ったデータをノアス艦長の席に送信した。
「よし航海長、指示する方向へ船首を向けろ機関長、機関を立ち上げろ」と指示を出した。機関長と航海長は「「了解」」と返事をした。
そしてマニューバ実行のときは来た「機関異常なし進路よし、マニューバ実行まで3…2…1…」航海長が言い終えると同時に船内に慣性が発生した。生死をかけた運命の航海が始まった。
エンケラドゥス低軌道 司令部
西井少将とスチュアート中将は通路を歩いていた、司令部に係留されている新鋭艦を視察するためにだ。
スチュアート中将は質問をする「西井君、彼らはやってくれると思うかね?」「そればかりは私にもわかりかねます、しかし人的資源の観点からは成功してほしいものですが…」「そうだろうね、私としても成功してほしいものだよ、それに正直言ってこのテストは何も利益を生み出していないしね」。スチュアート中将の本音を聞いた西井少将は頷いた、同じ思いなのだ。「そういえば今回の新鋭艦の艦名を聞いていませんでしたね、なんというのでしょうか」西井少将は質問をするが「フフ、艦を見てからのお楽しみだよ」と返されてしまった。
こうして司令部の外装に近い通路を歩き続け遂に宇宙と艦を見られる窓のある通路に到着した。
「西井君、見給えあの新鋭艦を」。
艦を見た西井少将は驚いた。なぜなら今まで様々な艦艇を見てきた西井少将でさえも見たことのない艦影だったからだ。
「スチュアート中将…これは?」艦の全体的なシルエットは鋭角的だ、そして何より、武装が見当たらないのである。「驚いたようだね西井君…この間には我が軍独自の技術が使われているのだよ」「…それは!?」「ステルス技術だよ」。
その言葉を聞いた西井少将は驚いた宇宙空間でステルスは意味をなさないはずなのだと。なぜなら宇宙では電波よりも簡単に艦船を発見できる方法があるからだそれは”熱”である。宇宙空間においては艦船は機械や人間の発する熱により内部の温度が上がっていく。それを防ぐためにラジエーターを装備しているのだがこれがステルス性を損なう一番の原因である、ラジエーター自体大きい上ステルス塗料を塗装する訳にはいかない、その上機関を停止させたとしてもしばらくラジエーターは放熱し続ける…だからこそ宇宙では熱探知による索敵が主流であり今後も変わらないはずだった。
「まさか…熱探知さえも妨害する技術を?」「詳しくは言えないがまあそんなところだ」。
西井少将は新鋭艦を見続けた。黒い船体はどこか冷たさを感じさせた。
「ところでこの間の武装は…」西井少将が質問をする「この艦には新開発の速射レールガンを多数装備させている、そして放熱が実質ないことを利用して多数のレーザー砲も装備している。そして…大量破壊兵器も搭載可能だ」「大量破壊兵器というのはその、デブリ放出弾のことでしょうか?」「それもあるがここで言っているのはNBC兵器のことだ」。
この言葉を聞いた西井少将は軽く混乱した。たしかに土星衛星郡は軍を保有している。しかしそれは海賊相手の治安維持程度のはずであり大量破壊兵器は保有してないはずだ。そもそも作るノウハウすらないはずだと混乱した。
西井少将の様子を見たスチュアート中将は言葉を続けた。
「まあ安心したまえ、最悪の状況にならない限り大量破壊兵器を使うことはないよ西井君」「ではその最悪の状況とは?」「こちらから地球火星連合軍に奇襲をかける状況に追い込まれるとか…ね」。
西井少将の混乱は悪化した。