二歳新馬戦
11月30日
東京 芝1800メートル
体調よし、脚よし、気分よし……。
厩舎から出てぐっと伸びをする。
大丈夫、ノリさんもいい出来って言ってくれたし。
「……」
じーっとこちらを無言で見つめてくる、明らかにボスって感じのデカイ牡馬。
たぶん先輩。
「あの、何か……?」
「……sorry、これからレースなのか?」
「はい……先輩もですよね。もしかしてジャパンカップに出走するんですか?」
もしかして、もしかしてだ。
G1馬なのか?あの?
「yes、ヒトが騒いでたから、恐らくは。」
「そうなんですか!?すごい!」
明らかに強そうだ。横綱って感じがする。
ジャパンカップはグランプリと違って賞金の規定があるからG1馬でも出走できないことがあるらしい。
「君の名は?」
「あっ、私はベルサフィールです。」
「私はシンボリクリスエス。ベルサフィール……いい名前だ。」
ちょっと恥ずかしいかも……。あと外国から来た方なのかな?
「ベル、そろそろ」
「じゃあ私はこれで。また会う機会があったら……」
厩務員さんに先導されたので、ぺこりとお辞儀をしてさよならする。
あー、緊張したあ……。ボス馬はやっぱり威厳があるな。
「……ベルサフィール……小さくて……可愛らしかった……」
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とうとうレース本番。
大丈夫、私はいける。
カメハメハくんも応援してくれたし!
エルシエーロちゃんも「貴女と対戦できるの楽しみにしてるんだから、さっさと勝ってきなさい」って言ってたし。
フンス!と気合いを入れていると、ノリさんが落ち着かせるようにゲートで撫でてきた。
「ゲートでは危ないから落ち着こうな」
ごめんなさい。
ちょっとシュンとして、前を見据える。
睨んでいると、ゲートが開いたのでスッと前に出る。
なかなかのスタート、練習通り!
私は先行し、前から三番目あたりを追走。
落ち着いて、時になったら抜け出す。
やはり皆は緊張している。初めてだもんね……。
コーナーをきれいに回り、ゴール板が見えた。
「よし、そろそろかな」
そう思ったときに合図が出る。
行け、と。
「行くよ!!」
隙間から抜け出し、一気に抜け出す。
仕掛け遅れた他馬も縋るようにスピードをあげている。
だが、捕らえられない。
ベルサフィールには、追い付けない!
その着差をだんだん広げていき……
「勝った!!!」
五馬身の圧勝でゴールした。
大きな歓声が響く。
ゆっくりと速度を下げて息を整えると、笑顔の調教師さんが見えた。
「まずは、一勝。」
目指すは、父と母のような栄光を。
2003年ジャパンカップインタビュー
三着シンボリクリスエス鞍上ペルエ
「タップダンスにやられましたね。道悪でなかなか差が縮まらなかった。馬の集中力も何故か切れていたように感じます。」
シンボリクリスエス「ベルサフィール見てるかな……見てるかな……(キョロキョロ)……タップダンス!!!!(ブチギレ)」