ジャスタウェイ「ベルサフィールに狂わされた三銃士!?」
ゴールドシップ「母親と同じくらいベルサフィールに懐いていたドゥラメンテ!」
ドゥラメンテ「……クソ親父に負けた」
ゴールドシップ「有馬記念でハーツクライとベルサフィールに負けたことで脳が焼かれたディープインパクト!」
ディープ「クイーンサフィラちゃんを任せられたはいいけどベル先輩に未練は少しあるかな」
ゴールドシップ「最後に実は当初彼の嫁にするつもりでオーナーがベルサフィールを買っていた!クロフネ!」
クロフネ「後輩に盗られた」
クロフネさんとの話はいつか書こうと思ってるがいかせんドロドロになるんよね。
ヒトよりも、自分は何倍も恵まれていた。
生まれながらの才能も、それを育てる環境も、見守ってくれる両親も、すべて備えていた。
「お姉さんにそっくりの才能ある妹さんですね」
なんて親戚にも言われた。
私の姉は短距離とマイルの女王になれる素質がある。
私の妹たちも既に才あるウマ娘としての片鱗を出しつつある。
お金がなくて、トレセン学園への入学を諦める子がいる。
健啖家で、食費が増え続ける家庭もある。
未勝利戦を脱出できなくて、自主退学する子もいる。
それらに比べたら私は遥かに恵まれていて。
でもその代わり、重すぎる期待がのしかかるのだ。
「ちょっとサフィラ。ボーッとしてどうしたのよ。」
ムッとした顔をしている隣の席のジェンティルドンナ。
同期のトリプルティアラウマ娘だ。
「ドンナのお母様はG1ウマ娘なのよね?」
「えぇ、そうよ。アメリカ出身で、スプリントG1を制したの。私の誇りよ。」
トレーナーとして名を残した優秀な父親とG1ウマ娘の間に生まれた彼女はその名……貴婦人に恥じないようどんなことも全力で打ち込み優秀な成績を修めている。
「裕福な家庭に生まれたんだね」
「……なにそれ、嫌味かしら?華麗なる一族の令嬢が言うなんて……」
華麗なる一族。
政財界を含むあらゆる分野で傑出した能力を発揮し、界隈の権威となる者を次々と輩出し続けており、その名は世情に疎い者にすら知られている。無論、それはトゥインクル・シリーズの史上においても燦然と輝いており、その偉大なる功績から2度URA賞に選出され、引退後も後進の育成にて大いに評価を受けている。
世間に一族の名を轟かせたイットー、『頂点』の名を持ち、一族に初の桜花賞勝利をもたらし、2代続いてURA賞に選ばれ一族の名をさらに輝かせたハギノトップレディなど、とてつもない活躍をした者たちの一族である。
サフィラの祖母はシニアG1を2勝したティアラウマ娘、母は名を知らぬもののいない九冠女王。
父親は大企業の社長とトレーナー業を両立させた、かつて「大王」と呼ばれた傑物だ。
サフィラとその姉妹たちは正統なる華麗なる一族。
しかもあの名門メジロ家の血も継いでいるのだ。
サラブレッドのなかのサラブレッド。
女王の血筋。
約束された勝利の一族。
一族の玉条は、『華麗であれ。至上であれ。常に最たる輝きを。』
ドンナも他のウマ娘より優れている家だがクイーンサフィラにはさすがに劣る。
「嫌味に聞こえちゃったか、ごめん。そんなつもりはなかったのだけれど」
「あなたがそんな性格ではないことは知っていてよ。」
誤解は解かれていたようで安心する。
なにせサフィラはその家柄から孤立気味であるからだ。
友達はジェンティルドンナやヴィルシーナなどの同期くらいしかいない。
「ドンナはやはりお母様のようなウマ娘にと思ったことはあるの?」
「それはもちろん。そしてお姉さまも重賞勝利したウマ娘。私も重賞勝利を、と願われたわ」
でも期待は倍にして返すのが私のセオリーよ、と笑う彼女。
その通り、トリプルティアラウマ娘となりティアラのウマ娘ながら三冠ウマ娘オルフェーヴルとジャパンカップにて熾烈な戦いを繰り広げた彼女はすごい。
「……それを重荷に感じたことは?」
「ないわね。むしろそれを越えるために燃えるわ」
きっぱりと答えた彼女はどうしようもなく強い。
本当に。
「シップ~速いって~!」
「アタシのスピードについていけるのはジャス、お前だけなんだ!その脚の爆弾ドカンと爆発しな!」
騒がしい声は間違いなく同期のもの。
「来やがりましたわね」と苦い顔をしたドンナ。
どうやらハチャメチャな行動をする彼女が苦手らしい。
教室のドアを勢いよく開けたゴールドシップ、そして息も絶え絶えについてくるジャスタウェイ。
「わたしマイルと中距離が得意なんだって!長距離も走れるシップとはスタミナが違うの!」
「あぁん?アタシよりもスタミナ多いって?おっしジャス、天皇賞春走ろうぜ!」
「そっちの意味じゃない!!」
芦毛のロングヘアーを靡かせた見た目は極上ゴールドシップ。
セミロングの鹿毛をところどころはねさせた見た目は普通のウマ娘ジャスタウェイ。
どちらも同期。
そして古い知り合いで親友らしい。
「ゴールドシップ、私たちの教室に何か用ですの?」
こめかみを押さえるジェンティルドンナに「いやお前に用はないんだわ」とあっさり答えるゴールドシップ。
「つまりわたし?」
「そういうこと。ほらっ、一緒にゴルゴル座を見に行くぞ!!オラオラオラ~!」
「きゃっ……」
ぐいっと持ち上げられ、米俵を運ぶように運ばれる。
「ちょっとサフィラになにするんですの!?」
「ドンナさん落ち着いて……」
_____________________________________
「おっし着いたな。ほらここなら何言っても周りに聞こえねえよ」
「……あなたがいるじゃない」
屋上に連れてこられたわたしは彼女の意図を探る。
彼女はハチャメチャな言動はするが友達思いだ。
だから私の嫌なことはしないと……思う。
「そうだ。この際あなたにも聞いておくわ。私って、お母様に似ている?」
「んーーーー、全然」
「そう」
残念なようで、嬉しい。
「ゴールドシップ。私はお母様じゃないのよ。」
「そんなの、当たり前のことじゃねえか」
「そうね、当たり前ね。でも、一族では違うの。」
いつの間にか用意されたココアをくいっと飲む。
少し熱くて舌をやけどしそうになった。
「お母様は私から見ても素晴らしいヒトだわ。G1最多勝利記録、日本のティアラウマ娘として初のジャパンカップ制覇、海外で3つのレースに圧勝……華麗なる一族の最高傑作なのよ。」
「名ウマ娘の子は走らない。そう言われてるでしょう。そのジンクスも破って姉さまや私、妹たちも産んだ。」
ここまで現役時代と引退後に活躍したウマ娘を他に知らない。
海外でも女王として語り継がれる伝説となったお母様。
その輝きはあまりにも眩しすぎたのだ。
「華麗なる一族はね、古くさい骨董の血統だと言われてたの。でもお母様が生まれ活躍したことでそんな声ひとつも聞こえなくなったわ」
「私は、お母様の子供たちのなかで唯一のティアラウマ娘。お母様のような女王になりたかった。けどね……」
私は桜花賞でも、オークスでも、秋華賞でもなく日本ダービーを選んだ。
ダービーはこの世界でいちばん特別なレース。
一回のチャンスしかない。
ダービーウマ娘のトレーナーになるのは一国の大臣になるより大変なこととも言われたくらい。
私は、クラシックウマ娘とレースをして確かめたかった。私の実力はどれほど通用するのか、そして昔から憧れてたダービーウマ娘の座を手に入れるために。
結果、得意の追い込みで勝利。
一族も喜んでくれた。
ただ……
「お母様とは違うのね、お母様は圧倒的なスピードで逃げていたけど娘はそうじゃないのねって……。」
何気なく発した親戚のひとこと。
私はとてもショックだった。
幼少期から「お母様のようになりなさい」「お母様の逃げはとても美しいでしょう」「あなたならお母様のとれなかった桜花賞と秋華賞も勝てる」
そう言われ続けていたのよ。
「お母様……お母様のように、ならなくては……」
「お父様とお母様に恥じない、ふさわしい娘にならないと……」
「違う違う違うっ!!!私は!!お母様なんかじゃない!!!」
みんな、わたしを通してお母様を見ている。
お母様ならトリプルティアラがとれた、お母様ならジュニア女王になれた、お母様なら凱旋門賞が勝てた。
うるさい、うるさいのだ。
私はクイーンサフィラ。
一族のなかで唯一女王の冠名を持つウマ娘。
お母様と同じサファイアの輝きを名前にしている。
私は私だ。
私はお母様のように圧倒的なスピードを持たない。
私はお母様のように華のある容姿ではない。
私はお母様のように走れない。
でも、おばあさま譲りの追い込みはいつだってわたしを勝利へ導かせてくれた。
お父様に似た瞳は姉妹でお揃いで嬉しくなる。
お母様のようなフィジカルを持っていなくても、牽制したり走法などの技術で補える。
クイーンサフィラはこの世に一人しかいない。
世代のダービーウマ娘は私しかいないのだ。
「なーに当たり前のこといってんだよ」
呆れ顔のゴールドシップ。
ようやく気づいたか、といった感じか。
「死んだ顔しやがって……これじゃぶち抜きがいがないっての」
「むっ、ロングスパートの末脚勝負なら負けないわよ」
「それはゴルシちゃんも」
空になったココア缶をゴミ箱に放り投げ、グラウンドを眺めた。
レースに向けて練習しているウマ娘たちが見えた。
「私も、頑張らなくちゃ……ね」
だから見ていてくださいね、お母様、お父様。
きっとお母様にも負けない輝きを魅せますから。
レイデオロ、チュウワウィザード、ロードカナロア、ドゥラメンテなどなどのキンカメ産駒からはサフィラは「おひいさん」と呼ばれてる。
ハーツクライ一家の信条は「絶対王者許さない」「三冠馬は倒すもの」。新年になると円陣を組み叫ぶので三冠馬であるルナーリアはかなり気まずい。