令嬢、女王に即位す   作:白雪(pixivでもやってる)

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宝石と小石

「やっぱり華麗なる一族の先輩たちはカッコいいわよね」

 

シンハライトが食堂でぽつりと呟いた。

 

ミッキークイーンは「わかるわ、オーラが違うのよね」と頷き、アドマイヤリードは「全員同じ母親から生まれた姉妹……それってすごいことよね」と目を瞑った。

 

 

「現役時代優秀な成績を残せば残すほど子供は自分の強さが遺伝しないと言われてるからね。事実、競走成績と子供の成績を両立させたのってダイナカールさんやシービークインさんくらいだし」

 

「その二人かなり昔のウマ娘よね……」

 

 

自分の強さイコール子供の才能ではないのだ。

 

不思議なことである。

 

 

「でもシンハライトのお母さんってG1ウマ娘じゃない?」

 

「ま、そうだけどさ。私だってサトノダイヤモンドさんほどじゃないけどジンクスはこりごりよ」

 

 

サトノダイヤモンドは私たちと同級生で、新興の名門サトノ家のご令嬢。たくさんの人から期待されてる有望なウマ娘のひとりだ。

ダイヤモンド、かあ……。

 

お母さんの子供たちは男ならキング、女ならクイーンを名前の頭につけて、そこに青い宝石の名前をプラスする。

 

例えばクイーンサフィラ先輩なら、クイーン(女王)+サフィラ(サファイアの意味)。

 

まあ私はただの小石なんだけど。当たりまえよね。

 

 

「ドンキちゃんは、チームレグルスに入ることになったんだよね?」

 

「そう!そうなの!あと同級生だと、リオンディーズさんやドゥラメンテさんも同じチームなの」

 

母親が二つの国の女王であるエリート、リオンディーズ。

 

ダイナカールさんやエアグルーヴさんが講師を務めるレース教室に通っていたという、良家の出身なドゥラメンテ。

 

どちらも入学時に話題になっていたふたりだ。

 

「ひえ~、さらに強くなりそう……。レグルスのトレーナーってやっぱりイケメンだった?」

 

「そりゃあね。でも愛妻家だったし……あっ、そういえばね、昨日あのベルサフィールさんがチームに来たの!」

 

「えっ!?」

 

驚いたのは私だけではない。

 

誰だってかの九冠女王がトレセン学園に来たと聞いたら驚く。

 

 

「そんな……うう、私も会いたかったよ」

 

「サイン欲しかった……ドンキちゃん羨ましい……」

 

 

私たちの話が聞こえたのかさらにざわつく食堂。

 

ガタン、と大きな音が響き一気にシーンとなる。

 

「……うるさい」

 

相変わらず病人のように色白で不快そうな顔をしたドゥラメンテがコップを強くテーブルに叩きつけたのだ。

 

 

「ひゃぁ……気性難って噂は本当みたいね。こわぁ」

 

「でもとっても強いんでしょう?一緒に走るのが楽しみ」

 

そう私が言うと、「大物だねえキーゼルは」と感心したようにシンハライトが呟いた。

 

____________________________________

 

荒々しくも、繊細で寂しそうなピアノの音が聞こえた。

 

 

放課後、スカウトもなにもされてない私は校内を歩いていた。

さすがトレセン学園。すべての設備が最高峰である。

 

 

ピアノの音が聞こえ、孤児院の先生が弾いてくれたショパンを思い出した。

 

 

音楽室のドアをそっと開けると……

 

「ドゥラメンテさん……?」

 

「……お前は」

 

私にすぐ気づいて手を止めてしまった。

惜しい。綺麗な音だったのに。

 

 

「ドゥラメンテさんってピアノ弾けたんだ……」

 

「なんだよ、弾けて悪いか。」

 

「意外だと思ったの。走ることにしか興味ないと思ってた」

 

「母親代わりみたいな人が教えてくれた。ピアノは弾けて損はないって」

 

あのドゥラメンテも恩師?には頭が上がらないのかな。

 

 

「母親ってもしかして……あっ、ごめん」

 

「別にいい。覚えてないしな。物心つく前に亡くなった。母親の顔は写真でしか見たことがない」

 

 

良家の生まれであるが、孤独であり孤高だと聞いたことがある。

 

 

「ごめん。私は孤児院で育ったんだ。そこの先生は厳しいけどとっても優しくて……だからドゥラメンテさんの母親代わりのひとも優しくて強い人だったんだろうね。見てわかるよ」

 

「お前にわかるかよ……」

 

やはりすぐ睨まれる。

 

仲良くなるのは難しそうだ。

 

 

すると、コツコツとヒールの音が響き、ガラッと音楽室のドアが開かれた。

 

 

「……っあ」

 

その姿を認めた瞬間、息が詰まる。

 

艶やかな長い黒鹿毛、一等のサファイアを嵌め込んだような瞳、桜の花弁を食んだような唇、見るものを圧倒する美貌。

 

上等な春用コートに袖を通して、涼しげな白ブラウス、柔らかな素材のスカウトから伸びるすらりと長い脚には黒いタイツが包まれている。

 

歩み寄るその姿からは強者としてのオーラと女王としての風格がある。

 

 

九冠女王、ベルサフィール。

 

 

私の魂の母親がそこにいた。

 

 

「ドゥラメンテ、元気そうね。お友達はできた?」

 

「なんで、ここに……」

 

「なんで、と言われても。私がトレーナー免許とってるの、知ってるでしょう?1日遅れてしまったけど、スカウトに来たのよ」

 

「おれ……私は、チームレグルスに……」

 

「あのひとのチームにいることは知ってるから。私が用があるのは貴女よ、キーゼル?」

 

 

 

すっとその瞳に私の姿が映り、固まっていたカラダがようやく動き出す。

 

「昨日のあなたのレースを見て、スカウトしたいと思ったの。相手がいないなら、私の担当にならない?」

 

さらっと言うおかあさん。

 

 

なんで、なんで、こんな、こんな道端の小石を、わざわざ……

 

「わ、私……」

 

可愛らしく首を傾げるそのひとに、私は目がそらせない。

 

 

「ん?」

 

 

「な、なります……あなたの担当ウマ娘に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで……ベルさん。なんで、今さら……」

 

 




キタサンブラックとサトノダイヤモンドも出したかった、次話あたりに出るはずよ。

ルナーリア「負けるより鞭を入れられるほうが嫌だ」
サフィラ「普通!!逆!!」

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