新馬戦を快勝して、そのあと桜花賞トライアルのアネモネステークスを勝利し、桜花賞への切符をとることができた。
だが、私の次走は……
「NHKマイル!?」
「うん、カメハメハくんと同じレースに出れるんだって!」
調教師さんが言っていた。
一度大舞台で私たちを戦わせてみたい、と。
「楽しみだね、私頑張らなきゃ!」
「俺も負けていられないな。」
併せ馬は何度もしたけど、レースで競いあうこと自体は初めてだ。
「そのあとは私はオークスに行くらしいけど……体調次第なんだって。」
お母さんはオークスに出たが負けてしまったらしい。短距離マイルが適正だったらしいから……。
「こういう日が来るとは思っていたが……存外早かったな」
「そうだよね。私とカメハメハくん適正被ってるもん。」
私は今年は牝馬路線に進むから当たることはないと思ってた。
どうせならワンツーフィニッシュしたいよね。
「いいレースにしような、お姫様」
「そっちこそ、大王様」
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NHKマイルカップ
5月9日
東京 芝 1600メートル
「カメハメハくん!」
「体調は大丈夫そうか?俺は万全のお前と戦いたいからな」
「うん。勿論バッチリだよ。」
ゲートが隣で、パドックをぐるりと一周した私たちはこっそり話す。
カメハメハくんは本当に仕上がりがいい、見ててわかる。
私も調教師さんが頑張ってくれたからいい感じの馬体のはず。
「実はなベル、俺は今日負ける気がしない」
「その言葉、あとで後悔することになっても知らないからね」
確かに一番このレースで危険なのはカメハメハくんだ。
明らかに、格が違う。
「キンカメ、早く行くぞ」
鞍上の安東さんに声をかけられ一足先にゲートインしたカメハメハくん。
私も隣なのですぐ向かう。
絶対に負けない、負けたくない。
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「お先に失礼しますね」
ゲートが開き、抜群のスタートを決めた私がまずしたのはハナを奪いペースを作ること。
取り敢えず、私が損しないギリギリを見極めてハイペースにして……。
あら?
「意外とついてきてないのね。自滅すると思ってるのかしら?」
二番手からは私を窺ったまま。
早めに仕掛けないと私との差がどんどん開いていくけど?
いつもより恐らくかなり早くコーナーを回り、最後の直線に入った。
私は大差を保ったまま……ん?
ふわりと横に広がった後列からすごい脚の馬が追走してくる。
「カメハメハくん!」
「とんでもないペース作りやがって……このお転婆姫が……!」
珍しく荒々しく言い放った彼はぐんぐんと差を縮め、私と並んだ。
最初で脚使いすぎたかな……。
そのまま差しきって一馬身ほど前に抜け出した。
このままじゃ、終われないっ……!!!
頭が真っ白になり、一気に脚の回転数が上がるのを感じる。
ストライドも今までとは格段に広くなり……
「まだまだあああああ!!!!」
「くっ……負けるか……!!!」
自分でも驚くくらい一瞬で差を詰めて、競り合って。
「はあっ……ふぅ……っ」
息絶え絶えにゴールして、掲示板を見た。
審議のランプがピカピカ光り、少しして……
一着 キングカメハメハ
二着 ベルサフィール(ハナ差)
ワールドレコード 1:29.1
「ま、負けちゃった……!」
ベルサフィール
黒鹿毛
脚質 逃げ先行
適正 マイル~中距離