「そしてその巨大な超獣はデスポリュカさまの必殺パンチで倒れたのです!」
ボヘロスの館の前では女性が子供たちの前で紙芝居をしている。あまり感想はよくない。魔族が活躍する内容というのもあるが、話を盛りすぎていくらなんでも子供だましがすぎた。
僕もそれを見ている。こうやってボヘロスの館の前で紙芝居を見ていると昔のことを思い出す。楽しかったころの思い出だ。いつかまた、あんな風にみんなと笑い合える日が来ればいいなんてことを思った。
「もう少し、リアリティのある話にしたらどうです?」
紙芝居も終わり、片付けをしている人に話しかける。
「はぁ?リアルのお話なんですけど。デスポリュカさまから直接お聞きしたんですけど」
紙芝居をしていた女性は何か文句でもあるのかと言わんばかりの態度で返す。魔族デスポリュカとその一行がパロ山脈にいた巨大な超獣を追い払ったという話は、僕も他の人から聞いてはいた。ただそれは倒したというにはほど遠い話であった。結果的に立ち去っただけである。
「直接倒したわけじゃないんでしょ?」
「……なに?あんたその場で見てたわけ?」
「いや、そういうわけじゃ……」
「はいなら倒してない証拠はない。よってこの紙芝居は超リアルでデスポリュカさまはめちゃかっこいい」
女性は大人げなくそんなことを言う。
「逆でしょ。そういう話にするなら倒した証拠を出すのが先だ」
「揚げ足取りの話は聞きませ~ん」
話を曲げるつもりはないと言わんばかりに彼女は片付けを続ける。実際、紙芝居の内容なんてフィクションだろうがリアルだろうがどうでもいい話ではある。
「大体あんたなんでちょくちょく見に来てんのよ。もう紙芝居って歳でもないでしょ」
魔族がやってきてからもうそれなりの月日が流れた。確かに僕ももう紙芝居を楽しめるような背格好でもない。
「昔を思い出すんですよ。紙芝居を見てたら」
「魔族が現れる前のこと?」
「そうです」
「はっ……あんたはそのころいい人生やってたんでしょうけどね……私は最悪だったからね」
「知ってます」
彼女は元奴隷らしい。魔族に解放される前に酷い生活をしていたことくらい僕でもわかる。他にもそういう人がたくさんいた。だから今となっては魔族を悪く言う気もそれほどない。恨みが全てなくなったわけではない。それでも今のボヘロスと言う国に対して僕は怒りを持てなかった。
「……いつか、なんとかなればいいですね」
曖昧な言葉を口にした。なにがどうなればいいかは具体的にはわからない。それでもなんとか色んなことが上手くまとまればいい。そんなことを都合よく思った。
「なんとかなるに決まってるでしょ。デスポリュカ様がいるんですもの。全てうまくいくわ」
彼女はそう断言する。彼女にとってデスポリュカという魔族は絶対の存在なんだと思う。
僕はそこまでその魔族を絶対と思うことはできない。僕の国を攻め落とした張本人だ。
それでも、少しは信じる気持ちもあったのは、変な噂が流れているせいだ。その魔族こそ建国の少女ボヘロスだという変な噂だ。みんなそんなことは嘘だという。僕もほとんど信じていない。でも少しだけそうじゃないかという気持ちもあった。
「そうですね……すべてがうまくいけばいいです」
本当にボヘロス様なら全てをうまくやってほしい。そんなことを願った。