King Exit ♯   作:ただの誰か

16 / 23
幕間7

「やめて……私は違う……」

少女のようなものが目の前で命乞いをしている。僕はそのままそれを斬る。断末魔を上げることもなく、それは息絶えた。人だったのか魔族だったのかはわからない。ここにいた全てを斬るのが僕らの仕事だ。

 

魔族が狂ってしまってから随分とたった。僕は今では街を100周できる。でも結局なにも救えなかった。何も救えず、終わった戦争を今でも引きずっている。

父も母も死んだらしい。孝行するどころか別れの言葉すら言うことは出来なかった。あの日、急に消えてしまった僕を見て悲しんでいたのだろうか。

気になっていたあの子についてはもっと酷いことしか聞けなかった。僕が帝国で鍛えているときに彼女は魔族に地獄を見せられていたらしい。それなのにあの頃の僕はいつかまた会えるかもしれないなどと遠くの地で思っていた。なんて愚かなのだろうか。

 

世界中のすべてがそんな風だった。僕が魔族に対して絶望するには十分な地獄があった。

 

「お前ボヘロス出身だろ?ゲオルイース様の凱旋見に行かなくていいのか?」

同じ仕事をしている兵士が声をかける。目は死んでいた。僕もこんな目をしているのだと思う。

 

「いいよ……英雄様を見てもみじめになるだけだ」

ゲオルイースは仲間を引き連れて魔族の長たちを倒した。世界を救った英雄だ。あちこちに凱旋し、多くの人がその偉業を讃えている。僕はなにも成し遂げていない。ただ自分のこの怒りを魔族の残党狩りでぶつけているだけだ。人からも嫌われている。

 

魔族かどうかもわからない相手を斬り続けるのが僕の仕事だ。洗脳されたものや融合したものもいる。だから疑わしいものは全て殺す。本当に人間だったものも居るのかもしれない。それでも魔族を殺し続けなければならない。そうしないといつまでも終われないから。

 

そんな仕事をするのは、たいていもう何も残ってない人たちだ。なにか少しでも残っている人たちは参加しない。彼らにはこれからがあるからだ。僕らにはもうなにも残っていない。家族も友達も恋人もなにも残ってない。だからひたすら魔族を斬り続ける。世界のためなんて大層な思想があるわけじゃない。もう魔族を殺すことくらいしか生きる理由がないのだ。

 

「ナージェジタ殿下もこっちの方面来てるってよ……」

あの王子様もあんなに仲が良かった魔族を殺し続けた。世界で一番魔族を殺したのはあの人で間違いない。いまこの残党狩りを指揮しているのも王子様だ。かつては、僕もあの人も魔族と仲良くした時期があるなどと言えばどうなるだろう。きっともう誰も信じてはくれなさそうだ。

 

「じゃあ、このへんもいよいよ終わりか……」

王子様が来たということは、この地域の掃討も完了するという意味だ。

「次はどこだろう?」

「さぁ?……もう殺しつくしちゃったんじゃねぇか」

大陸中を殺しまわった。もう魔族を絶滅させてしまっていても不思議はない。

魔族を殺し尽くしたあと、僕はいったいどうするのだろう。なにも思いつかない。きっと僕の人生はとっくに終わっていたんだと思う。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。