周りの仲間は全て死体になっている。そこにいるのは満身創痍の僕と、傷ついた魔族だけだ。
その魔族は見知ったものであった。魔族が狂ってしまったあの日、僕をボヘロスから逃がしてくれたのが彼であった。おかげで僕はなんとか生き残ることができた。そんな彼と僕は武器を構えて向かい会っている。本当に偶然の再会だった。たまたま道に迷った僕たちが彼を見つけてしまった。嘘みたいな話しだ。この地区に魔族が居るなんて誰も思ってなどいなかったのに、道端ですれ違うかのように僕たちは再会した。再会したからには殺し合う以外にもう僕たちの関係はない。
「お仲間も全滅だろ。もう引けよ」
ガーデーモンの彼は言う。彼が言う通り、今の僕に勝ち目がある気はしなかった。
「関係ない。魔族は殺す」
それでも僕は引く気などなかった。魔族を殺すこと以外にもう僕には残っていないのだ。だから引けない。
「どうせそのうち死ぬさ……でもそれは今じゃねぇんだよ」
「下手な命乞いはやめたら」
「このまま続けたら死ぬのはお前の方だろ」
「かもね……でも、やるだけはやってみるさ」
そうしてまた僕たちは殺し合った。
結果は予想通りだった。僕は瀕死の重傷で、彼は少し傷を増やしただけだ。少なくとも僕と違って死ぬようなことはないだろう。
「ここまでか」
「だから言ったろうが……」
彼は悲しそうな声で言う。憎しみあった人類と魔族ではない。まるで、昔の僕たちの関係のままであるかのような態度だ。それが少し可笑しかった。あれほど憎んでいた魔族だということを、僕はいつの間にか忘れている。
「……そういえば聞きたかったんだけどさ」
僕もまるで友人と話すかのような口調で言う。
「……どうしてあの日助けてくれたの?」
魔族が狂ってしまったあの日、どうして自分を助けてくれたのか、それは気になっていた。
「あれは失敗だった……俺も何が何だかわからないうちにお前を助けちまった。まずかったと気付いたのは戻ったあとだ」
「なんだ……特別に助けてくれたわけじゃないんだ……」
少し僕は残念に思った。
「そんなことできるわけないだろ」
「だろうね……君は魔族で僕は人間だ……殺し合うしかない……ただ……」
「……ただ?」
「友達だから助けたって……言ってほしかったな……」
自分の命の終わりを感じながら出た言葉は随分女々しいものであった。
その言葉を聞いて、彼はなにか叫んでいた。悲惨な目にあって絶叫しているようだ。「何をやろうとしている」「ダメだ」「バカか俺は」何かに怒るように自分への罵倒を重ねた。そうして、意を決したように死にゆく僕と目を合わせた。
「お前に頼むぞ!」
僕はもう返答することもできない。
「俺の命をやる!だから頼むぞ!」
彼は必死に僕に訴えている。
「俺はお前の友達だから!お前を助ける!」
今になって彼は僕のことを友達と言ってくれている。
「だから!デスポリュカのことを頼むぞ!」
彼がなにを言っているか僕は理解できない。ただ、大事なことを託されたことだけはわかった。