「どうして、お姉さんたちは魔族に味方するんですか」
ボヘロスの邸宅の前で壁をくっつけた女性と元気そうな女性に尋ねる。
「みんないいやつだぞ?悪いのは帝国のやつらだ」
「カリンカ……そう、簡単な話でもないのよ」
二人はいつも魔族達と行動している。僕からしたら信じられない話である。僕の国は魔族に征服された。たくさん大人も子供も死んだ。あの子にももう会えない。いまは、少しだけ落ちついた。魔族も僕たちをいじめたりしない。だけど、あの時の景色を僕は忘れてはいない。
「あんたにとっては仇でも、私たちにとってはヒーローなの……そして、ポリュカがいずれ世界を全部救ってくれるって、私たちは信じてる」
壁をくっつけた女性が言う。
その言葉に僕は納得できなかった。
「世界を救うヒーローならなにをしたっていいんですか?そのために踏みつぶされるほうはたまったものじゃない」
「あんた……相変わらず面倒なガキね」
厄介者を見る目で彼女は見てくる。魔法使いらしいが、随分気持ちが顔に出やすい人だ。
「今まで私たちを踏みつけてた世界が悪いってのもあるし……」
「いや、世界を救うためだからってなにをしてもいいわけないだろ」
もう一人の女性が割り込んでくる。
「酷いことをすると罰が当たるってポリュカも言ってたぞ。サラーサも聞いてたろ」
「いまその話持ち出すのはやめてよ。ただでさえ面倒なのが更にややこしくなるでしょ」
「僕も納得できません」
子供だましのような言葉は聞きたくなった。その理屈が正しいなら、酷いことをした魔族には罰が当たっていないとおかしい。
「とにかく……過ぎたことはもうどうにもできない。これは今の話よ。私たちは、私たちが今正しいと思ったことをしてるの。」
「僕は正しいと思えません」
「……はぁ~……」
面倒だと言わんばかりに彼女はため息をつく。
そもそも正しいことをすれば、過去に行われた罪が許されるものなのだろうか。
「よしわかった……お前もお前が正しいと思ったことをしろ!」
また、もう一人の女性が割り込んでくる。とにかくいつも元気で騒がしい人だ。
「サラーサも正しいと思ったことをする!お前も正しいと思ったことをする!それで解決だな!」
なにも解決しない言葉を、彼女は満面の笑みで語る。しかし、なんの解決にもならなくても、それしか答えがない気もした。
「僕が思う正しいこと……でも僕は弱いし……」
弱くて、意気地なしで、戦うことどころか、街から出ることさえできないのが僕だ。
「なら鍛えろ!強くなれ!」
「……そうね、強くなりなさい」
からかっているのか、心の底からの言葉なのか、わからないような口調で二人は言う
「よし!いまから始めよう!まずは街を百周だ!」
「え?……そんな急に……」
「いいから行きなさい。鍛えるには走るのが一番よ」
「いやでもお姉さんにいたっては浮いてるし……」
「つべこべ言わずに行け」
そう言って彼女は魔法を使おうとしてくる。僕は逃げるように走り出した。
結局僕は街を1周するだけで、ダウンしてしまった。いつか百周できるくらい強くなれば、今度は大切なものを守れるだろうか。そんなことを思った。