ヨハンは、穏やかな少年だった。
彼は、同じ年頃の男の子の中でも、とくに、大人しく、自己主張などするタイプの少年ではなかった。何か問題があっても、不満を言わず、淡々と処理するような男の子で、無口でありながらも、人に臆面を見せる様な事もなく、他人と関わっても、騒いだり、とぼけたりする事もなく、大人びた対応をとっていた。
周囲の子供たちも、彼を大人びたやつだとか、しっかり者だとか、口々に膾炙するのだった。
彼の家は、草原の、丘の上にあり、そこで、母と妹と3人で暮らしている。
彼の仕事は、家から、30分程離れた、場所にある、海岸から、船に乗り、漁の手伝いをすることだ。
仕事は、朝5時ごろから、家でお祈りを済ませると、一人浜まで向かうのだ。
静かな日々だった。
ヨハンは、人生は困難が付きまとうことも熟知していたし、それなりに、苦労もしてきた。
ヨハンは、生活において、人格を完成させていったのだ。
彼は、本当に、真面目な人間だった。
今日も、朝早くから、家を出て、海岸に向かう。東の方の空から、光条が差してきた。日の出である。
海岸に着くと、漁の道具が入っている小屋に向かう。小屋の中は、黴臭かった。
ケースから網を取り出し、束ね肩に担ぎ、船へと向かう。季節は夏だが、震える程寒かった。
「ヨハン、来たか」
声を掛けられる。振り向くと、髭面の男性が、遠くの方から歩いてくる。
ヨハンの乗る船の船長だ。船長は、手を振るとにこりと笑った。
遠くからでも、顔立ちがハッキリわかるほど、顔つきが、しっかりしていた。
「今日は、西に向かう、準備をしておいてくれ」
「はい、わかりました船長」
船長は。体格がよく、日焼けしていて、肌は浅黒い。人懐っこい性格である、
漁の時は、熟練の漁師らしく、堅実な仕事をする。
ヨハンは、幼いころ、村の会合で、船長の推薦を受け船長の擁する漁師会の船員になった。
妻帯者で、ヨハンの仕事の面倒や、生活で、様々な協力をしてくれる。
船に乗り込むと、他の船員たちが、魚を入れる箱を用意したり、船体をチェックしていた。
しばらくすると、船が、動き始めた出航である。
朝日を受けながら、船は進んでいく。
沖に出ると、ヨハンは、船体のへりに、座って海を眺めていた。
海は、静かで、ゆらゆらと、規則的な動きで波の模様を作っていた。
空は、灰色だった。雨が降りそうだ。
しばらくすると、突発的に雨が降ってきた。音を立てて、辺りに雨粒が四散する。
不意の出来事だった。灰色の空を割り、それが表れた。
雲の中から、濃い緑色の、翼の生えたトカゲが表れたのだ。
竜だ。