Black Externa ─黒の極致─   作:サム・ソー川

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ギア・シンジュクのお体はデバ◯テー◯ーとかアー◯ズフォ◯トっぽいデカくてガションガションしてるイメージです。


29話「新宿ワンダラー(6)」

 

 

「なぁにあれぇ……」

 

 視界の遠方、ビルの向こう側で蠢く新宿駅……のような何か。

 巨大すぎるため全貌は見えないが、盛り上がった駅そのものを胴体とし、百貨店などの建物を四肢、線路や地下通路が寄せ集まり頭部を形成した御姿はまさに機械亀だった。

 

「あー! ぎあのおからだうごいてるー! ぎあのなのに!」

 

 ギアは必死に自分の一部だと主張するも、数百メートル以上離れた『お体』に届くはずもなく。

 

「向かうな向かうな。踏み潰されんぞ」

 

 (なだ)めるようにディルが手を引く。その瞬間だった。

 駅の窓に先ほど見たばかりの特殊部隊らしき人影を確認する。

 

「なっ?! MMM(スリーエム)が中にいる?」

 

 人間の視力を凌駕した発見に怪訝な顔をする所長。

 

「あーん? お前目良すぎだろ。……こんなときは、キラーアンデット望遠鏡!」

 

 キラーアンデットを模したような小型望遠鏡を取り出す所長。片目で遠くの巨大起動体を観察する。

 

「ははぁ、ありゃあ確かにMMMどもだな。このガキんちょの体……起動部の解析でもしたんだろな。システム自体はそこまで複雑じゃなかったし。つーか動かせるほどの人数がまだ残って……」

 

 ぶつくさと状況解析をする所長だが、それに気を取られているのか、頭部が一行を向いたことに気づかなかった。

 

 顎の両端から二門の銃火器が出てくる。その平行線上は言うまでもなく皆のいる地点。

 そこに向かって銃撃が放たれる。

 

「なぁっ?!」

 

 閃光に気づいたディルが反射的に重力障壁(グラビティバリア)を展開する。

 

「ぐぅううっ!!」

 

 着弾。

 轟音が響き渡り、殺しきれない衝撃波が道路の破片を吹き飛ばしていく。銃弾というよりもはや大砲と変わらない威力だ。

 前方で受け止めることに成功はしたものの、ディルにかかった負担は大きかった。

 

「オイ大丈夫か?!」

「大丈夫よ」

「うん」

「当然ですわ」

「デス」

「モ-マンタイ」

「オレ様だけ破片刺さってんだが?」

 

 望遠鏡で覗き続けていた所長(バカ)の頭に破片が刺さっていた。「ツバでもつけとけ」と言わんばかりのメイド姉妹の態度からそこはスルーしたディル。

 とにかく、彼のとっさの行動は一行がバラバラになることを防いだ。

 

 しかし、砲門はこちらを向き続けている。さらなる発泡。

 

「迎撃ですわ!」

 

 今度はツーちゃんによる迎撃射撃。何処からか空間を割いて現れた砲門が弾丸を粉砕する。

 その余波をディルが防御。今度は被害をゼロに食い止める。

 

 その様子を見てか、『お体』は砲撃を止める。そして数秒の沈黙の後、側面を走るライトが一回だけ点滅した。

 

「何だ?」

「何か仕掛けてくるに違いありませんわ。防御態勢!」

 

 ディルとツーちゃんは彼ら以外の非戦闘員を下がらせ、迎え撃つ構えを取る。

 

 

 しかし、次の一手は予想していなかったものだった。

 

 横の地下街入り口から聞こえてくる金属音。前衛二人はその音に聞き覚えがあった。

 

「げっ!!」

「もしや!!」

 

 地下街にいたロボットの群勢が湧いて出てきたのだ。

 そしてそれに合わせるかのように『お体』が発砲を行う。

 

(このままじゃ防御の隙から後ろに回り込まれる!!)

 

 飛んできた重弾丸をバリア。それと同時に他の面々へ警告を促す。

 

「ロボットどもに囲まれたら防御しきれねぇ! なんとかならねーのか!」

「無理言うなですわ! ワタクシだって出てくるのを減らすだけで精一(せいいっ)ぱぐえっ」

「オイ?! ……ゔぇあっ」

 

 およそ淑女から出てはいけない呻き声と共にツーちゃん、ひいてはディルも後方へ引っ張られる。

 

 誰が? 答えは簡単、唯一のあからさまな人外。

 

 異様に伸びたキラーアンデットの腕が二人を掴んでいたのだ。それも十メートルは先から。

 

 だが驚いたのはそれだけではない。

 いつの間にか生えていたもう一対の腕で他の面々を抱えていたかと思えば後ろへ駆け出している。逃亡の構えだ。しかし速度が少し物足りない。

 

「オイ! そんな走りで六人も運んだら追いつかれてめった撃ちにされるぞ!」

「へっ! オレ様が考え無しにキラーアンデットにそんな命令出したと思ってんのか?」

 

 危機的状況であるにも関わらず不敵な笑みを浮かべる所長。

 指をパチンと鳴らすと、盛大に叫ぶ。

 

「キラーアンデット、トランスフォーム!!」

 

 すると、二本足で駆けていたキラーアンデットの姿勢が前傾を通り越して地面と水平に、胴体が横に広がったかと思えば背中が平らかつ、端に壁が生成され荷台となる。

 抱えていた六人をそこに放り投げると頭の向きが正面へと向き、計六つの腕足が交互に地面を蹴って走り出す。

 

「アーヒャッヒャッヒャ!! 見たか! これがキラーアンデット・ムービングフォーム!!」

 

 自信満々に宣言する所長。

 しかし、それに反して他の面々が抱いた感想はネガティブなものだった。

 

(軽トラのゴキブリだ……)

 

 

 とはいえ危機を脱したわけではない。

 

 ロボット群から距離を離しつつあるとはいえ、『お体』頭部からの発砲は続いている。

 飛来する弾丸をキラーアンデットはカサカサとした動きで横に回避しつつ、大通りを奥へ進んでいく。

 

「どーすんだこれ! 射程外まで逃げるつもりなのか?!」

「まさか。逃げるだけだったら地下でステルス使えばいいっての。おいゼロツー!」

「なんですの?!」

「今なら()()出す余裕ぐらいあるだろ?」

 

 何やら一考がある様子の所長。彼らの能力を知らないディルは首を捻るのみだ。

 逆にそれを理解しているツーちゃんはため息をつくように承諾の返事をする。

 

「やれやれ、分かりましたわ。キラーアンデット! 合図と共に跳んでくださいまし!」

「ガッテンショウチノスケ」

 

 互いの承認を得て、カウントダウンが始まる。

 その間もキラーアンデットは砲撃を巧みに回避し続ける。

 

「三、二、一……ゼロ!」

 

 背後で着弾した砲撃が爆風を生み出す。それと同時に前方へまさにゴキブリが如く飛び跳ねるキラーアンデット・オブ・軽トラ。

 

 そこへ、地面から突き出るように下から何かが迫り上がってくる。

 地面とキラーアンデットの間、そこにツーちゃんが砲塔を出す時と同じ異空間が大きく開いたのだ。

 

 厚みを帯びた流線型の船首。それに乗せられて一行は上昇させられていく。全体図が見えるようになる頃にはビル以上の高度へと至っていた。

 

「なっ……これは?!」

 

 ディルの目に入ったのは戦艦のような屈強さと戦闘機のようなフォルムを半々にしたような飛行艦だった。その大きさも両者の中間ほど。

 意図されているのか、夕日に照らされるボディの濃い紺色(こんいろ)はツーちゃんがその身に纏うメイド服と同じ色だ。

 

 そして、六つのブースターが火を噴きビル街上空を旋回、『お体』からさらに距離を取る。それにより重砲撃が次第に届かなくなっていく。

 

 無論、その加速で振り落とされないためか、一行がいるフロントがパカリと開き内部に収容される。

 そして、あっという間に司令室のような場所に移る。キラーアンデットもいつの間にか元の形態に戻っていた。

 

「ここは?」

「コントロールルーム。……とは名ばかりの人間用空間ですわ」

 

 ディルが困惑している間にセンターに位置取ったツーちゃんが答える。その背中に自動で動くチューブパイプが接続され、身体に光のラインが一瞬走る。

 

「ユニット接続完了。バトルモードに移行しますわ」

 

 静かに、されど魔物としての『気』を宿すメイドロボ。

 ディルがその身に装甲を纏うとすれば、この娘は巨大戦艦を呼び出し合体することが魔獣化に当たるのだ。

 

「アーヒャッヒャッヒャ!! これが、オレ様が造り上げた傑作の一つ、魔界空中砲撃艦DBAー02だァァァァ!!」

 

 高笑いする所長。それもそのはず。

 ツーちゃんことDBAー02*1は永久機関とも言われている心魂機関(ゴスペルエンジン)を搭載した魔物・『自動人形』であり、魔艦に類する戦闘飛行艇でもあるのだ。

 いくら魔界側から類似データを提供してもらったといえ、それらを(キラーアンデットの作業込みとはいえ)ほぼ一人(ソロ)で造り上げることはただのマッドサイエンティストではできない。

 

「さて、距離も取ったところでお前の超主砲・艦首奈落波動砲をドーンと! あんなデカいだけのマシン、有効射程から一方的にぶち抜いてやれ!」

「ぎあのおからだなくなっちゃう!」

「そ、そうだぞ! この子たぶんドミネーターだからアレぶっ壊れたらオレらが帰る足取りとか……」

「心配すんな。オレ様は大天才だ。廃墟新宿(この一帯)が元の並行世界Aに戻るための必要リソースと条件ぐらいとっくに計算している」

 

 所長は堂々と宣言する。多少の疑惑があったディルだが、とりあえずは信用することに。

 

 

 しかし、それとは別に所長の無茶振りとも言える方針に反するように、飛行戦艦は上空を旋回し続けるだけだ。距離を取ったとはいえ、『お体』の照準はいまだにこちらを向いている。

 

「おいゼロツー? さっきから旋回しっぱなしだぞ? どした? おーい」

 

 ツーちゃんが主砲を放たないことに疑問をもった所長が声をかける。

 

 それに対して返ってきた反応は、財布のがま口を下に向けて振る動作。すなわち……

 

「弾薬とエネルギー不足ですわ」

「ゑ?」

「昨日アナタがメンテナンスした際に補充し忘れたってところですわ。副砲はまだしも、主砲の弾数はゼロですの」

「……」

 

 所長は無言だ。冷ややかな視線が彼以外の全員から向けられる。

 

「プ、プランBィ!! 簡易ジェネレーターで補充!!」

「無理に決まってるいるじゃないですの! それワタクシの予算(エゴ)をめちゃくちゃ消費するやつですわよね!?」

 

 ツーちゃんからの強い反対。魔物であるため弾薬を自ら生み出すことはできなくないのだろう。しかし彼女が言うように、それは戦闘におけるエゴ……この場合は気力も大幅に消費してしまう行為でもあった。

 超大型の敵に挑むというのに疲れ切ってしまっては元も子もない。

 

「うむむむ……プ、プランC! キラーアンデットを弾丸として射出!」

「カミカゼトッコウタイハゴメンダ」

「あばばば」

 

 次第にダメそうな空気が漂ってくる。

 

 このコントめいたやり取りの間も、移動する『お体』が少しずつ距離を詰めてきては飛行戦艦がまた距離を離すイタチごっこを続けているのだ。

 

 

「ねぇ……」

 

 スッと手を挙げる人物がいた。色々と濃い人物たちの中で口数が減っていた恵那だ。

 

「あの巨大建築を無力化さえすればいいのよね?」

「まぁそうだが。いうてハッキングしろとか言うなよ。一部ならまだしも動力部まで制圧ってのはオレ様でもキッツイ」

「いえ、そんなことは言わないわ。むしろ一部だけでもできるなら結構よ。体内の()()()は把握できるかしら?」

 

 何か含みのある言い方に所長は眉間にシワを寄せる。

 

「嬢ちゃん……いや流蘭院恵那。何か案があるんだな?」

「えぇ♪ その前に前提条件を確認しておきたいの」

 

 余裕の微笑みを見せる恵那。それはディルを揶揄うときと同じ、頭の中に計画が完成しているときの顔だ。

 

「敵人数を把握って……いくらワタクシでもここから壁をぶち抜いて狙撃なんてできませんわよ?」

「まさか。そうそう、あなたにも確認しておきたいの。あなたの主砲とやらは()()()射出できるのかしら?」

「半魔を? まぁキラーアンデットが撃ち出せるわけですし理論上は。……ただ、衝撃に耐えれませんわよ?」

 

 恵那の意味深な言い回し、ツーちゃんの消極的とはいえ可能である言質……ディルの野生の勘が何かを感じ取る。

 

(悪い予感がする……)

 

 そして、それは的中した。

 

 

「ツーちゃんさんの主砲で黒装クンを撃ちだします!」

「はぁぁぁぁぁぁっ?!」

 

 

*1
Détruire Battleship Archer 破壊・戦艦・射手の三つの単語の頭文字である。ちなみに一号機と三号機はA以外また別のワードが当てられているらしい。




ちなみにDBA-02、イメージはガッツ◯ィング2号とかスー◯ーXⅢを混ぜたような感じです。
真ん中が開いて放たれる主砲・艦首奈落波動砲の威力は折り紙つき。コストは死ぬほど重いですが。
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