完全に見切り発車なので、どこに突っ走るかわかりませんが頑張ります。
不波市。
この一見なんの変哲もないこの街には、とある秘密がある。
「僕は諦めない!例えどんなピンチでも……必ずお前を倒すぞ!」
一人の少年が、目の前に立ちはだかる大男に向かって叫ぶ。
彼はすでに満身創痍の様子で、立ち上がることすら難しい状態のようだ。
近くには二人の少女が倒れていた。
一人は彼を心配するように見つめ、一人は意識を失っている。
「うるっせぇなぁ……これだからガキは……とりあえず死ねよッ!」
大男の腕が振り下ろされ、少年の頭はあっけなく潰された。
しかし。
「……っち、やっぱり復活するよなぁ、進くんよぉ」
「あたり、まえだ……そういうふうにしたのは、お前らだろ……!」
少年の傷はいつの間にか治り、立ち上がって大男に掴み掛かる。
「進っ!」
「大丈夫だ、リナ、すみれを連れて、逃げてくれ」
「でも」
「僕は死なないんだ、大丈夫だよ」
「……わかった、絶対助けに来るから」
「おいおい、泣ける話だなぁ、おい!」
「ぁぐっ」
少年の頭がまた大男によって叩き潰される。
倒れ、しかしそのたびに復活する少年は、その度に殴られ殺される。
「進……ごめんなさい……!」
悲惨な状況だった。
誰が見ても絶望的な状況だった。
しかし、そんな時に彼女はやってきた。
「……この辺?……うん、わかった……ひ、ひぇ〜たっか、こわ〜。え?いや別に怖がってないし!飛び降りればいいんでしょ!わかったって!い、行くぞ〜!よし!」
「お前は絶対連れて帰んなきゃいけねえんだけどよぉ、まだ生意気だから、少しわからせてからでいいよなぁ!おら!おら!……ぷげぅ!」
「……とぅ!ナイス着地〜!ほれ見たことか調っ!……え、踏んでる?何を?」
少年は、再生し始めた目で確かに見た。
黒い学生服をきて、黒く長いマフラーをつけた少女が、大男の背中を踏んづけているその様子を。
「て、テメェ……!」
「あ、あぁごめんなさ……じゃなくて!」
大男から飛び降りた黒い少女は一つ咳払いをして、目に手を当てる。
「私はシュヴァルツ。全ての黒を統べるもの……やっぱ私ネーミングセンスいいよね」
「シュヴァルツだぁ……?お前、何もんだ、そいつらの仲間か?」
幸運なことに、彼女のここにいない誰かに向けた言葉は、彼らには聞こえていなかった。
「ふん、私の詮索をしてる暇があったら、自分の身の心配をした方がいいわよ」
「っ、コケにしやがって!」
少女に大男が殴りかかってくる。しかし。
銃声が響く。
「あ、ぐぁっ……じゅ、銃だと……!?どこから出しやがった、いや、俺の肉体に銃弾が効くわけ」
「私の相棒は特別なの。……ほら、当てられたよ射撃訓練の成果が出たでしょ!……近距離でも当たったのは当たったんだからいいでしょ!」
「き、さまぁ!」
かちゃ、と大男の頭に銃が突きつけられる。
「心配しないで、死にはしないわ……ただ、死ぬほど痛いけどね」
「ぐぁっ……!」
大男が頭をのけぞらせて倒れる様子を見て、進と呼ばれた少年は口を開く。
「き、君は一体……?」
能力者はお互いを顔などで識別することができない。しかし……それでも彼女とは出会ったことがない、はずだ。
こんなキャラの濃い人とあったら、忘れられるわけがない。
「私はシュヴァルツ。運命を裁くもの。あなたがその道を歩むなら、いずれまた会うことになるでしょう……ね、今の超かっこよくない?」
「君も、組織と戦っているのか……?」
残念な言葉は聞こえていないようだ。
「……ねぇ、組織って何?いや私知らないけど、悪そうな方倒しただけで……て、適当に話し合わせとこ……あなたの想像におまかせするわ。じゃあ私はこれで」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、もう少し話を」
進は彼女を呼び止めるが、瞬きの隙に消えていた。
「……彼女のことを、リナに報告しないと……」
少年は立ち上がり、二人の大事な仲間の元へと歩いていった。
「ほら!調ぇ!超かっこよかったでしょ私!やっぱ私こういうの向いてるよね!」
「おっそうだな。組織とか言ってたのは気にしなくていいのか?」
程よく高い建物の屋上で、少女は誰かと会話している。
会話の相手は、まだ幼い少女の声のようだ。
「よくわかんないけど、犯罪者のグループがあるんでしょ!あの男の子も、犯罪者と喧嘩してた正義感の強いいい子だったんじゃない?」
「いや絶対そんなわけないと思うが……お前に何言っても無駄か。黒宮、うちによってかないか?やらせたいゲームがあるんだが」
「どうせクソゲーでしょ?今日ママ……お母さんが早く帰ってくるから私も早く帰るよ、新太も待ってるし」
「新太……って弟だったか?全くブラコンだなぁ」
「うるさい!じゃあ通話切るよ?それじゃあね」
黒宮と呼ばれた少女の特徴的な服が消えて、中から普通の制服が現れる。
彼女の名前は黒宮莉子。とある特殊な素質を持った、普通の女の子。
いや……普通ではない。
能力を使ってかっこつけ、事態を引っ掻き回して楽しんでいるはた迷惑な、しかし何も状況を理解していない少女。
それが彼女である。
「にしても、魔法少女にエルフに、今度は組織、かぁ……!」
少女は気づかない。
自分がとんでもない何かに足を突っ込んでいることに。
「この街、変な人多いな〜!いや、私が楽しいからいいんだけどさ」
少女は気づかない。
この街の運命が、自分を中心に変わり始めていることに。
「シュヴァルツと名乗った少女が、俺を助けてくれたんだ」
一人の少年は、彼女に運命を変えられた。
「やっぱりメルキーブラック、なのかなぁ……はぁ、仲間になってくれないかなぁ」
一人の少女は、彼女と仲良くなりたいと祈った。
「あの黒い少女……私と違う、この世界の戦士……」
一人の少女は、彼女をもっと理解したいと願った。
この街は、この世界は、確かにこの少女を中心に、変化を迎えようとしていた。
黒宮はただの迷惑女です
TSも書きたい……。