超次元ゲイムネプテューヌ -LOST PURPLE-   作:烊々

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Episode "Ain Soph Aur"

 

 

 

 

「負けた……アタシが……」

 

 変身が解けたユニは大地に倒れ込んでいた。

 ネプギアのものであろう足音が、段々と近づいてくる。

 おそらく、その足音が自分の元に着いた時が、自分の死ぬ時なのだろう。

 

「……これで、終わりか。アタシは……アタシたちは結局女神には勝てないのね……お姉ちゃん」

 

 ネプギアの足音がユニの前で止まる。右腕に握られた剣で自分はトドメを刺されて死ぬのだろう、と全てを諦めたユニは目を閉じる。

 

「ユニちゃん」

 

 しかしネプギアは剣を置き、ユニの上体を抱き上げて起こした。

 

「……っ? なんの……つもり……?」

「友達を助けるのに理由なんてないよ」

 

 ネプギアは、戦いの中でもユニへの友情を一切捨てていなかった。

 

「友達……? アタシは……あなたのお姉ちゃんを殺したのよ……? そんなアタシと手を取り合うって言うの……?」

「それは許さないよ。これからもずっと。だからユニちゃんは私と生き続ける。世界は滅ぼさせない。やりたいことや好きなことを他に見つけて、それを続けてもらう。それがユニちゃんへの罰だよ」

「アタシの……やりたいこと……」

 

 斃すべき宿敵に手を差し伸べる、そんなネプギアの器の大きさに、ユニは心の中で敗北を認めた。

 

「……カレー」

 

 ユニはふと、人間の文化のうち自身の興味が惹かれたモノの名前を口にする。

 

「え?」

「カレー……作ってみたい。あの食べ物は……好きだから」

 

 そして、心の片隅にあった意欲を言葉にした。

 嫉妬、無念、憎悪、そんな感情から世界の滅亡という目的を持って生まれた存在であるユニにとっても、二千年という時は長すぎた。何も知らぬ少女との語らいに安らぎを求めるぐらいに。そして、宿敵であった少女から差し伸べられた手を握る気になるぐらいに。

 

「作ろうよ。世界を守ったら、いつでもたくさん作ればいいんだよ! 私も一緒に作りたいな」

「……そうね」

 

 また、たとえ悪意から生まれて存在だとしても、根源であるノワールという少女が持っていた優しい心もまたユニには備わっていたのだから。

 

「……あんたに話すわ。クロワールがやろうとしていることを」

「クロワール……さん?」

「えっと、アタシの協力者よ。ていうか知らないの? 元々は女神ネプテューヌと行動してたらしいのに」

「じゃあその人っていーすんさんの元の……」

「まぁ、何はともあれ、そのクロワールは、神界を人間界に落とそうとしてる。アタシが負けても、神界ごとこの世界を滅ぼす為にね」

 

 クロワールの主なプランは二つあった。

 一つはユニ。そしてもう一つが天界の墜落。単純な話、ある世界に別の世界が一つ分の質量落ちてくれば、衝突の衝撃と次元融合により、両方の世界は崩壊するのだ。

 

「なら、クロワールさんを止めなきゃ! ユニちゃん、手伝って!」

「……しょうがないわね」

 

 ユニは、クロワールが残した次元座標の魔力図を使用し、ネプギアと共に神界への向かった。

 争い合う宿命を背負っていたはずの二人が今、同じ目的のために手を取り合った。

 

 

 

 

 神界。

 主である守護女神が死に、存在する価値の無くなった世界に、再び足を運ぶクロワール。

 

「なぁネプテューヌ」

 

 二人で何度も見たであろう神界の景色を眺めながら、もう届かぬ声を掛ける。

 

「なんで、俺の顔を見たぐらいで動揺した? なんで、あんな奴如きに殺された?」

 

 "悪"である自分が策を張り巡らせても、それを超えてくるのが『女神ネプテューヌ』であっただろう、と。

 

「お前が死んじまったせいで、今から世界は滅んじまうぜ」

 

 このまま事が進めば、自らの"終末"は成就する。しかし、クロワールは達成感を得ることはなく、虚しさを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      超次元ゲイムネプテューヌ

 

       -LOST PURPLE 2-

 

       LAST JUDGEMENT

 

      Episode "Ain Soph Aur"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでだろう……? 私、ここに来たことないのに、やけに懐かしい気持ちがする……」

「クロワールが言ってたわ、神界は女神の生まれた地。だから、あんたの中の女神の力が、この世界を構成する要素と惹かれあってるんじゃない?」

「そういうことかな」

 

 神界の地を立ち、クロワールを探し歩く二人。

 しばらく歩いていると、何者かが倒れ込んでいるのが見えた。

 

「いーすん……さん? いや、違う……」

「こいつがクロワールよ。でも……」

 

 倒れているクロワールは、まるで命が尽きて魂が抜けたかのように、微動だにしなかった。

 

「死んでる……?」

「いや……そんなわけ……」

「あ? なんで二人いんだよ?」

 

 倒れたクロワールを眺めている二人に、突然前方から声がかけられる。

 その声の主は、教祖イストワールだった。

 

「いーすんさん! 生きていたんですね!」

「は? 俺とお前は初対面……あー、そういや容姿のアップデートはまだしてなかったな」

「え?」

「この姿窮屈だから嫌なんだよ、そらっ」

 

 その言葉ともに、教祖イストワールの姿がいきなりクロワールの姿へと変貌する。

 

「……え?」

「まさか、あんた」

「あぁ、そのまさかさ。俺とアイツの最高傑作である人工生命体『教祖イストワール』、俺以上の戦闘力を持つこの身体だが、身体のスペックに脳のメモリが追いついてないのが難点でね。そこのネプギアだっけ? お前は教祖イストワールが度々オーバーヒートしてショートしてたことあったの見たことあるだろ?」

「あります……けど……」

「俺の……『史書イストワール』のメモリたる魂をこの『教祖イストワール』のボディに移植させることで、その弱点は消えるんだ。お前らがさっき見てたのは、メモリが抜けた俺の抜け殻だよ」

「じゃあ、いーすんさんをあなたは殺したってことですか……」

 

 教祖イストワールの身体の元のメモリは、クロワールによって上書きされている。つまり、もう教祖イストワールの魂は存在しない。

 

「あー、そうなるな。まぁでもよ、俺が作ったもんをどう使おうが俺の勝手だろ?」

「成程……教祖イストワールの身体を回収してたのはそれが理由だったのね」

「そういうこったな。てか、当然のように振る舞うから指摘が遅れたけどお前何平然と裏切ってんだよ」

 

 言いながらも、クロワールはユニの裏切りを然程気にしている様子ではなかった。

 元々、ユニがネプギアに敗れ、ネプギアが自分を止めに来るだろうと思っていた。

 クロワールにとって、協力者であってもメガミたるユニは取るに足らない存在でしかなかったのだ。

 

「まぁ良いさ。代用品と不用品共々、俺とアイツの最高傑作のボディの試運転に使ってやる」

「最高傑作のボディ、ね。けど、あんたの前には最強のメガミと最強の女神がいんのよ? 最高傑作とはいえたかが人工生命体で勝てると思ってるワケ?」

「確かに、それだけじゃ勝てないな。けど、俺にもお前から分けてもらった女神の力の一部があるんだぜ?」

 

 クロワールは、ネプテューヌの力の一部をクリスタル状にしたものを取り出し、身体に取り込む。

 

「ユニ、確かにお前は女神の力を手にした。だがそれを"使っている"だけだ」

「なにを……?」

「使いこなすってのは……こういうことだ……!」

 

 クロワールは、史書と教祖を融合させることで自身のスペックを完全に使いこなせるようになった身体に、更に女神の力を混ぜる。

 ユニが"力"としてしか使えていなかった女神の力の性質を、自らの力と性質の調和に用いることで、単純な足し算以上のエネルギーを生み出していた。

 

「ぐ……っ、オーバーフローしたエネルギーが……身体から漏れるなこりゃ……」

 

 すると、クロワールの背中から形容し難いドス黒いエネルギーが漏れ出し、禍々しい黒い翼へと姿を変える。それは、女神やメガミの力をも凌ぐ、この世界の歴史上最も強く悍ましい存在の誕生を意味していた。

 クロワールが翼を広げる。だけで、神界の大地がひび割れ、雲が霧散していく。

 ネプギアもユニも、即座に変身して、クロワールからの攻撃に備える。

 巻き起こる衝撃派に、パープルシスターもブラックシスターも身体に力を込めなければ、吹き飛ばされてしまうほどだった。

 

「何よ……このプレッシャー……!」

「さて、性能の程はどうだ?」

 

 クロワールが腕をブラックシスターに向け、魔力を解き放つ。それは技術のない単純な力の射出だった。

 

「……っ⁉︎ う……ぐ……あぁぁぁぁぁッ!」

 

 そのたった一撃で、ブラックシスターは絶大なダメージを受け、膝をつく。

 

「ユニちゃん!」

「一発であのザマかよ。これじゃ、試運転にすらならねえな」

「ふざけ……ないで……っ! まだやれるわっ!」

 

 ブラックシスターは立ち上がり、自身の大型銃でクロワールに射撃しながら前進する。

 射撃は目眩しを兼ねており、その間に銃から剣に持ち替えたユニが、クロワールの死角から斬撃を振るう。

 しかし、クロワールが展開した魔法壁に全ての射撃は阻まれ、斬撃はクロワールの背中から伸びた羽が防いでいた。

 

「『ふざないで』? それはこっちのセリフだよ。世界を滅ぼすために生まれた存在のくせに、ネプギアに負けるならまだしもネプギアと協力して俺の前に立ち塞がるお前こそなんなんだ。ふざけてんのはお前の存在だろうが」

 

 クロワールは残りの羽でブラックシスターを斬り伏せる。

 

「あぁ……っ」

 

 そして、斬撃のダメージで変身が解け、体勢を崩したユニの髪を掴んで持ち上げる。

 そして、無防備なユニの身体に次々と羽を突き刺していく。

 

「ぐ……ぎぃやぁぁああッ‼︎」

 

 人ならばとうに絶命している程の傷と痛みだが、メガミであるユニは死ぬことができず、苦痛の悲鳴をあげ続ける。

 

「ほら、立てよ。そんな傷すぐに治して立ち上がれ。モンスターだろ?」

「く……うぅ……」

「なんだよ、もう限界か? ならこれでわかっただろ? 女神の出来損ない如きが何も為せるわけねーんだよ。じゃあ死ね」

「たあああっ!」

「……ん?」

 

 クロワールがユニにトドメを刺そうとした瞬間、パープルシスターが割って入り、ユニを救出する。

 そして、何者にも捌けない筈のクロワールの攻撃を捌く。

 

「代用品の癖にやるじゃねえか。いや、代用品だからこそここまでやれるって方が正しいか」

「……っ!」

「だが……所詮は代用品だ。お前には……アイツのようにやれはしねえよ」

 

 パープルシスターの抵抗も虚しく、次第に攻撃が捌き切れなくなり、数多の翼に弾き飛ばされる。そして、変身が解け体制が崩れたネプギアに、尖った羽が突き立てられる。

 

「……っ!」

 

 しかし、その羽がネプギアを貫くことはない。

 満身創痍のユニがネプギアを庇い、クロワールの攻撃を受けていた。

 

「ユニちゃんッ‼︎」

「あが……っ、うぅ……」

 

 ユニは口から血のような液体を吐き出し、その場に倒れ込む。

 

「ユニちゃん! ユニちゃんっ!」

「ネプ……ギア……アタシは……どれだけ痛くても苦しくても良い……それだけのことをしたんだから……でも……あんたは……」

 

 身体を傷だらけにしながらも、ネプギアが無事で良かったと微笑むユニ。

 

「アタシの……唯一の友達だけは……死なせたくない……もの……」

 

 ユニは力尽き、地面に倒れ込む。

 

「宿敵を庇う……か。世界を滅ぼそうとしたらそこのネプギアに阻止されて、今度は滅亡を阻止しようとしたら俺に殺される。何もかもが中途半端で、姉と同じ虚無みてーなやつだったな、ユニ」

 

 クロワールはゆっくりとネプギアに近づいていく。

 急ぐ必要はない。ネプギアを殺し世界を滅ぼすのが数秒ズレるだけに過ぎないのだから。

 

「私は……」

 

 刹那、ネプギアの脳裏に浮かぶのは、幸せだったネプテューヌやイストワールとの日々の記憶。それだけではなく、身分を隠しながら触れた人々の心の暖かさ、そして親友と呼べる者、ユニとの語らい。 

 

「私は……もう……」

 

 走馬灯のようなものであったが、それを見たことで漠然としていたネプギアの"意思"は、明瞭に願いとなっていく。

 

「失いたくない……大切なものを……」

 

 すると、神界の光がまるで祝福のようにネプギアに降り注ぐ。

 神界そのものが、主の意思を継ぐものに力を貸そうとしていた。

 

「失わせは……しない!」

 

 そして、ユニのメガミの力がシェアエネルギーに形を変えてネプギアに与えられていく。

 たとえメガミという名のモンスターであっても、信仰──自分の信じる女神に力を与えることができるのだ。

 

「はあああぁぁぁっ!」

「何……っ?」

 

 ネプギアは力を振り絞り、再び女神化を果たす。

 それは、今までのものとは違った。姿形が変わることはないが、纏う光とエネルギーは、紫を基調としながらも、様々な色に輝いていた。

 

「……醜い光だな。めちゃくちゃだ」

 

 女神の神聖な光の中にメガミの邪な力が宿ったパープルシスターの輝きを、クロワールは醜いと吐き捨てた。

 

「まぁ、代用品如きにはぴったりの醜さだ」

「なんとでも言ってください。これが私の力、私の意志です。醜くても、傷だらけになっても、世界を守るために戦います」

「……気に入らねえな、その表情。力を増したから、俺に止められるつもりか? 今の俺を止めて良い奴は、あいつしかいない。けれど、あいつは死んだ。だから世界は滅ぶんだよ」

 

 蔑みの中に、哀しみが込められた表情でクロワールは言う。

 

「お姉ちゃん……見てて。世界は……私たちが守る!」

 

 『愛する世界を守る』。女神としての使命ではなく、ネプギア個人の願いとして、パープルシスターは剣を取り、クロワールに最後の戦いを挑む。

 

「……今までのが本気だとでも?」

 

 今までは試運転、遊びに過ぎなかったクロワールが、遂に敵意を剥き出しにする。

 黒き翼から無数のビームが発生し、軌道を変えて全方向からパープルシスターに襲いかかる。

 

「……!」

 

 パープルシスターが防御の姿勢を取る前に、緑の戦槍と白い戦斧が出現し、パープルシスターの周りを浮遊しながら、ビームを撃ち落としていく。

 それは、パープルシスターにとっても予想外の現象だった。

 ユニの力の中にあったあるメガミたちのごく僅かな残留思念が、二千年の時を超え、世界を守るためにパープルシスターに手を貸していたのだ。

 

「分からないけど……防御は任せます!」

 

 その力を信頼し、パープルシスターはクロワールに突撃する。

 

「ちぃ……っ!」

 

 クロワールは黒き翼を伸ばし、パープルシスターを迎撃しようとするも、その攻撃は戦槍と戦斧に阻まれる。

 そして、新たに出現した紫の剣と黒い剣に、黒い翼が斬り削られる。

 

「この……っ!」

 

 クロワールは自らの魔力を全面に展開し、極大の魔法弾を放つ。

 

「ユニちゃん!」

 

 すると、パープルシスターの掛け声に呼応するように、巨大な銃が出現し、ビーム砲を放つ。

 そして、魔法弾とビーム砲が相殺し合う。

 同時に、クロワールの黒い翼が斬り刻まれるが、浮遊していた武器たちも相討ちのように砕け散っていた。

 しかし、パープルシスターが手に持つ光の剣だけは健在。

 

「あなたの羽はもうない。追い詰めました……クロワールさん!」

「代用品の分際で……いや、その不完全さは……時にアイツの完全さをも凌駕する、か」

 

 戦いの中で、クロワールはパープルシスターの強さを認めていた。

 

「だが……俺も俺の意志は譲らねえ。世界は……俺が滅ぼす!」

 

 クロワールは残りのエネルギーを振り絞り、最後の一撃を放つべく、魔法陣を展開する。

 パープルシスターも、自らのシェアエネルギーを剣に集める。

 

「てやぁっ‼︎」

「消えちまえっ‼︎」

 

 クロワールが放った黒い闇の奔流と、パープルシスターが繰り出した色とりどりの光の斬撃。

 

「はぁああああッ‼︎」

「うおおおおおっ‼︎」

 

 光と闇がぶつかり合い、神界の空と大地を崩壊させていく。

 傷だらけながらも生きていたユニは、朦朧とする意識の中、光が闇を打ち祓い、確かにネプギアが勝利する姿を見届けていた。

 そして────

 

 

 

 

 先程まで神界にいたはずのネプギアは、見覚えのない場所にいた。

 

「あれ? ここはどこだろう?」

 

 小さな部屋のような場所であるが、自分が住んでいたものとは違う。しかし、何故かネプギアはこの部屋に親しみを感じていた。

 

「夢かな……それとも、私……死んじゃったのかな……?」

 

 ここが死後の世界なのではないか、とネプギアは思考を張り巡らせる。

 すると……

 

「死んでないよ」

 

 背後から声が聞こえた。

 もう二度と聞こえないと思っていた、最愛の者の声が。

 

「お姉ちゃん⁉︎」

「ネプギア、久しぶり……って程でもないか」

「お姉ちゃん! お姉ちゃんっ!」

 

 ネプギアはネプテューヌに抱きつこうとするも、ネプテューヌの身体をすり抜け、床に転んでしまう。

 

「きゃっ」

「おっと、大丈夫ネプギア?」

「大丈夫……だけど、でもなんで……」

「それはわたしが既に死んでいて、ネプギアが生きているからかな」

「……え?」

「ネプギアが考えてた通り、ここは死後の世界ってやつだね。でもネプギアは死んでなくて、意識がこの世界に迷い込んじゃってるだけなんだよ。だから、わたしはただネプギアを向こうに返しにきただけ。ここに長居しすぎると、帰れなくなっちゃうからね」

「そう……なんだ」

 

 話したいことはいくらでもある、けれど何から話せばいいか分からない。ネプギアが頭を悩ませていると、ネプテューヌが口を開く。

 

「ネプギア、ありがとう」

「え?」

「わたしがやり残しちゃったことを、全部やってくれて、お姉ちゃんとしてだけじゃなくて、先代女神として、ネプギアに感謝するよ」

「そんな……ううん、どういたしまして、なんてね」

「ふふっ」

「あははっ」

 

 無邪気さを散りばめ嬉しそうに笑い合う二人。この時間が永遠に続けば良いのに、とお互い思っていた。

 しかしその時、ネプギアの心に一人の友人の姿が、心残りとなって映る。

 

「お姉ちゃん……その……私、お姉ちゃんともっと話したいけど……でも……もう帰るよ。きっとユニちゃんが……待ってるから、一緒にカレー作ろうって約束したし」

「……そっか。あ、そうだ。ユニちゃんに気にしないでって言っておいて、死んじゃったのは悲しいけど、こっちの世界でも会いたかった人たちがたくさんいるからちょうど良かったし」

「うん……わかった」

「じゃあねネプギア。後は任せたよ、女神としての最後の務めをね、女神様」

「はい! じゃあね、お姉ちゃん」

「うん、いってらっしゃい」

 

 ネプギアはネプテューヌに背を向け、部屋から去る。

 この場所に来たのは初めてではあるが、なんとなく帰り方は分かっていた。

 

「行ってきます、お姉ちゃん」

 

 もう一度呟き、ネプギアは姿を消した。

 

「……いってらっしゃい、ネプギア」

 

 ネプテューヌは、消えたネプギアにもう一度声をかける。

 

「さて、と。あいちゃんとコンパを探しに行こうかな」

 

 

 

 

「……なんで生きのびちまったんだろうな、俺は」

 

 次元の渦に呑まれたクロワールは、どこともしれない次元の狭間に辿り着いていた。

 

「こうなっちまえば、もう戻れねーな」

 

 自分が元いた次元がどの座標に位置するのかはもう分からない。辿り着いたとしても、それが本当に目的の次元なのかも分からない。

 クロワールによる世界の"終末"は頓挫することになった。

 

「それに、やっぱ俺にはプレイヤーは向いてねーや」

 

 『史書』はあくまでも世界の歴史を司る存在、だからこそその世界に生きる者たちの意志の強さに敗北する運命であったことを、クロワールは悟った。加えて、ネプギアという存在に、かつて自分が捨てた希望というものを見出していた。

 

「こういう時、教祖の人工ボディは便利なんだよな」

 

 そして、自らの元の世界における記憶のみを、もう必要ないものだと全て削除し、残った好奇心のみを頼りに、次元を超える旅に出るのだった。

 

 

 

 

「……! ……ア! ……ネプギア‼︎」

 

 ネプギアが目を覚ますと、人間界の上空から落下するネプギアをブラックシスターがよろよろと飛びながら抱えていた。

 

「ようやく目が覚めたのね! 死んだんじゃないかと思ったわよ!」

「あはは……ありがとうユニちゃん」

「どういたしてまして! アタシだってまだ身体中穴だらけなの治りきってないの! 早く変身して飛びなさい!」

「そ、そうだねごめん」

 

 ネプギアが女神化し、逆にブラックシスターを抱えて飛行する。

 

「えっと……神界はどうなった?」

「あんたたちの戦いの影響で粉々よ。その衝撃で生まれた次元の渦に呑まれて消えたわ…………クロワールも一緒にね」

「そっか……」

「で、急いで人間界に戻るも、座標がズレて上空に放り出されるわ、あんたはぐーすか寝てるわで今に至るわけ」

「寝てたわけじゃないよぉ!」

 

 パープルシスターとユニは、上空から広がる世界の景色を眺める。

 

「ネプギア……青空って綺麗なのね。今まで、気にしたことなんてなかったわ」

「綺麗だよ、空だけじゃなくて、綺麗なものはこの世界に沢山あるよ」

「あんたのお姉ちゃんが守ってきて……あんたが守った世界って、こんなに綺麗だったのね」

「……そうだよ。あ、でもお姉ちゃん気にしなくて良いって言ってたよ? 向こうで会いたい人も沢山いたからちょうど良いって」

 

 こうして、女神、メガミ、史書が交差した因縁に幕が下りた。

 その後、ネプギアは女神として最後の仕事であった、人間への世界の統治の委譲を果たした。この先の世界の未来は、神でなく人間に委ねられたのだ。しかし、かつてのように人間が滅びの道に進むことはないだろう。何故なら、二千年間逃げることなく世界を守り続けたある女神の意志は、その世界に生きる人間たちに、確かに受け継がれているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      超次元ゲイムネプテューヌ

 

       -LOST PURPLE 2-

 

       LAST JUDGEMENT

 

          -完-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数百年後。

 

「いらっしゃいませ〜」

 

 かつて女神という存在が統治していたとされる大都市の端に、ある機械好きの少女が家電修理屋を営んでいた。

 

「今日はどういった用件ですか?」

「えっとその……この修理屋で食べられるカレーライス定食がとても美味しいと聞いたもので……」

 

 しかし、家電修理依頼の客よりも、家電修理屋なのに何故かそこの二人目の店員が作って出しているカレーライス定食を求めて来る客の方が多いらしい。

 

「はい今回のお客さんもアタシね。これでダブルスコアね〜」

「ずるいよぉ! 家電修理と美味しいカレー定食で勝てるわけないじゃん!」

「じゃあ明日からここはカレー屋ね」

「やだ!」

 

 明らかにカレー屋として営業した方が儲かるのだが、店長である一人目の少女の要望(ワガママ)によって家電修理屋で通しているんだとか。

 また、その店の少女たちは、その都市の老人が子供の頃からずっと少女の姿のままという噂があるとかないとか言われているが、真実は定かではない。

 

 

 





 終わりです。ありがとうございます。
 おそらくもう続編はありません。本当に終わりです。
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