超次元ゲイムネプテューヌ -LOST PURPLE- 作:烊々
ネプテューヌは牢屋の中にいた。
「はぁ……ねぷぅ……寒いなぁ……」
何故ネプテューヌが牢屋に入れられることになったのか。
それは遡ること、十時間前────
「はぁあああっ!」
ネプテューヌに対してネプテューヌ対してメガミ戦争を仕掛けに来ていたブランは、白のシェアクリスタルを使用し『ホワイトハート』へとメガミ化し、ネプテューヌに襲いかかる。
ノワールとベールの決着が付き、パワーバランスが崩れてしまったためである。
「よっ、ほっ!」
繰り出されるホワイトハートの戦斧の連撃を、身軽な動きで避けるネプテューヌ。
「ちぃ……っ」
ホワイトハートは苛立っていた。しかし、それは己が繰り出す攻撃が悉くネプテューヌに回避されるからではない。
「お前……どうして変身しやがらねえ! 舐めてんのか⁉︎」
メガミ化をせずにメガミ化したメガミと戦うのは、戦いに手を抜くという相手への侮辱と捉えられても仕方の無いことである。
また、そんな相手をすぐに倒すことができないブランの自分自身への苛立ちも含んでいた。
「だって、できないんだもん!」
ネプテューヌは、そんなホワイトハートの怒りを理解しつつも、自分にはどうにもならないことを告白する。
「できない……? そんなわけあるかよ! シェアクリスタルに選ばれた時点で、メガミ化ができないなんてあり得るか!」
「できないものはできないんだよー!」
「……そうかよ。かと言って容赦はしねえぞ。ノワールが力を手にした今、私もお前を倒して力を手に入れなきゃなんねぇからなッ‼︎」
「わかってるよ! さぁ来ぉい!」
問答が終わり、再び激戦が再開されると思いきや。
「ま、待ってくださーい!」
二人の戦いに、割って入って人物がいた。
「誰?」
「レイ会長……」
「ブラン知ってるの?」
「知ってるも何も……お前記憶喪失だったなそういや」
その人物の名は『キセイジョウ・レイ』。中央教会議会長、つまり中央教会のトップである。
「中央の連中が何の用ですか? 今メガミ戦争の途中ですが?」
「ひっ!」
「ブランったら、威嚇しないの〜」
「うるせえ! 敵に指図すんな!」
「えっと、良いですか?」
「……どうぞ」
レイの弱々しい態度や喋り方からはトップとしての威厳を感じられないが、ホワイトハートが戦いの手を止めて話を聞いている姿から、ネプテューヌは只者ではないことを察した。
「スゥ〜っ……よし。そ、そこのメガミは、メガミ化の儀を行わずメガミになっていることが判明しました! つまり……ええと、教会が管理しているシェアクリスタルを無断使用してメガミになった、ということです!」
ホワイトハートは、レイの言葉が何を意味しているのかを理解し、斧を消滅させた。
「だからっ、中央教会規定に則って! メガミネプテューヌを、中央教会の権限で拘束しまぁす!」
ネプテューヌは何も分からないまま、レイが連れてきた教会員に拘束されるのだった。
「え、ええええ〜っ⁉︎」
────というわけで、ネプテューヌは身に覚えのない罪で拘束されているのだ。
「一体記憶が無くなる前のわたしってなにしたのさ……」
あまり寝心地の良くないベッドに寝そべりながら、ネプテューヌは友二人を気にかけるのだった。
「退屈だなぁ……あいちゃんとコンパ、どうしてるだろう?」
超次元ゲイムネプテューヌ
-LOST PURPLE- Episode4
ネプテューヌが捕まってから数時間後、アイエフとコンパは直ぐに救助計画を立て、行動に移っていた。
友達としての情もあるが、アイエフとコンパのレジスタンス活動には、ネプテューヌの存在が不可欠でもあるからだ。
「待ちなさい」
そんな二人の前に、ノワールが立ち塞がる。
「シェアクリスタルの無断使用は重罪。それはメガミであっても変わらないわ」
「でしょうね。だから、私たちを止めに来たんですか?」
「まぁ……そうなるわね。私はネプテューヌを解放するように、中央教会に進言するつもりよ。あなたたちが無茶する必要はないわ」
「覆ると思いますか? そんなことで」
「レジスタンスのあなたたちが中央教会を襲撃するより現実的な手段だとは思うわね」
「……知っていたんですか、私たちが中央教会に対するレジスタンスだって」
「教会に対してギラついた殺気を放ちすぎなのよ、あなた」
アイエフの余りにも剥き出しだった教会への敵意は、ノワールに感づかれるほどであった。
場合によってはノワールと交戦することになるかもしれないと、アイエフはコートの中に仕込んでおいた短剣に手をかざす。
「とはいえ、あなたたちに何かしようってつもりはないわ。元々、私は今の中央教会を解体して再編するつもりだったからね。立場は違えどあなたと考え方は似ているわ」
「再編……?」
「今の中央に正義はないわ。会長は頼りないし、議会は私腹を肥すことしか考えてない。私たちメガミが統治してない地区は治安が荒れ続け、挙げ句の果てには苦しんでいる人々を教会が弾圧する始末。たから私はメガミ戦争に勝利したら、中央を有るべき姿に変える。あなたたたがレジスタンスなんてしなくていいように、ね」
ノワールは、アイエフの敵意を気に留めることなく諭す。
「私がなんとかするから、あなたたちは戻りなさい」
「嫌です」
「即答ね……」
「ノワール様が信頼できないというわけではありません。けれど、私たちは私たちの手であの子を助けます。その方が上手くいくと思いますし」
「中央のセキュリティが無駄に強固なのは、あなたでも知っていることでしょう? そんなとこに無駄に予算使ってるからね。すぐに捕まることになるわよ?」
「大丈夫です。中央の構造は頭に入ってます」
「頭に……って、中央の内部に入れるのはメガミを除くと限られた職員だけよ? 知りたいと思っても簡単に知れることじゃ……」
「だから、大丈夫なんです」
アイエフは、懐から中央教会職員証を取り出し、ノワールに見せた。
「これって……クラスゴールド⁉︎」
ノワールが驚いた理由は二つ。一つはアイエフが中央教会の関係者だったこと。
そして二つ目は職員証の色。カードの枠が金色であり、金色は上級クラスの職員であること。
「役職は……『中央教会諜報部隊長』……メガミや議会長の次の次ぐらいの大物じゃない……」
「このカードにもう効力はありませんけどね」
「驚いたけど……それ以上に納得だわ。諜報部は廃止されたって聞いてるんだけど、あなたが今レジスタンスになっているのはそれが関係してるわけね」
「まぁ……そういうことです」
ノワールは考える。いくら今の中央教会を潰そうとしているノワールであっても、元クラスゴールドとはいえ中央教会に忍び込もうとする目の前の不届き者を見逃すべきか。
「……う〜ん」
しかし、ここでアイエフに恩を売り、自分が中央教会再編を補佐して貰う、というのもノワールの考えの一つであった。クラスゴールドに上り詰めるということは、並大抵の努力と実力では成し得ない。そんな有用な人物を抱え込めれば相当楽に事を進めることができるだろう、と。
「……あなたたちのこと、見なかったことにするわ。好きになさい」
結局ノワールは、アイエフとコンパの二人を素通りさせることにした。
「ありがとうございます!」
メガミとして友を討ってしまったノワールは、友を助ける為に奮起する目の前の人間たちを、どうにも応援したくなってしまっていたのだ。
「はぁ……なにやってんだろ、私」
*
「紫のメガミ『ネプテューヌ』の拘束取り止め、ですか?」
「はい、お願いできませんか?」
アイエフたちを見逃してからすぐ、ノワールはレイに、ネプテューヌへの恩赦を申し出ていた。
「しかし……たとえ適合者であってもシェアクリスタルの無断使用は重罪です。メガミ様からの頼みでも、それを覆すのは……」
「です、よね……」
やんわりと断られるも、ここで引き下がるノワールではない。
記憶している様々な法令に、詭弁や屁理屈も交えつつ、ネプテューヌを救う方法を探す。
「しかし……彼女、メガミネプテューヌが中央教会に拘束される際、抵抗をしなかったと聞いています。情状酌量の余地はあるんじゃないですか? それに彼女は記憶喪失、法令の中には、記憶喪失は精神疾患扱いとなり、疾患者の犯行には刑罰を課せないというものもありますよね?」
「そ、そうですけど……でも……」
「まさか……何か、あるんですか……? ネプテューヌだから解放できない何か、が」
レイの要領を得ない返答に、自分の想定以上の理由を察したノワール。
「そ、そんなことは……」
「いきなり捲し立てて申し訳ありません。しかし……私にとっても、せっかくのメガミ戦争の相手がこんな形で終わるというのも納得できないです! だから、何とかなりませんか!」
「えっと……その……ふぇぇ……」
ノワールがレイに詰め寄った次の瞬間、中央教会に爆発音が鳴り響く。
「ひぃっ! い、今の音は……牢屋の方向……⁉︎」
「ええっ⁉︎」
アイエフとコンパがここまで派手に行動を起こすのはノワールにとっても想定外だったようで、二人がネプテューヌの元に向かったことを知っていたノワールですら驚きを隠せずにいた。
「牢屋の方……そうですか…………そうか……ちっ……そういうことか」
すると、レイは先程までの弱々しい態度から一変し、冷め切った声色と、舌打ちを響かせた。
「……はぁ〜」
そして、鬱陶しそうに深くため息をつく。
「れ、レイ会長……?」
レイの豹変ぶりに、驚きたじろくノワール。
「成程、これが狙いってわけ? 舐めた真似してくれるじゃない」
レイは眼鏡を外し、普段の彼女からは考えられない鋭い眼光をノワールに向け、殺伐とした雰囲気を放つ。
「……え? いや、違……」
「別に、違わないでしょ? 今の爆発にあんたが無関係だったとしても、あんたが私たちを中央を気に入らないのは本当でしょ? 私を引き摺り下ろして、中央教会の組織そのものを作り変えたいとか?」
「……っ」
ノワールが口にも態度にも出したことはなかった本心を、レイには昔から見透かされていた。
ノワールは向けられた殺気に対し、黒のシェアクリスタルを取り出して応戦しようとする。たとえレイがどれほどの気迫が放とうとメガミである自分が負ける筈がない、そう思っていたノワールであったが。
「まぁいずれにせよ、こうなったからには、あんたは…………廃棄処分よ」
レイが取り出した水色のシェアクリスタルを見て、驚愕するのだった。
「それは……シェアクリスタル⁉︎ どうしてあなたが⁉︎」
「そんなの、私がメガミだからに決まってるじゃない」
「だって……『真のメガミ』以外に……過去のメガミ戦争の生き残りはいない筈……」
ノワールが驚くのも無理はなかった。
過去に行われたあらゆるメガミ戦争において、最終勝者以外のメガミが生き残った例はない。それもその筈、敗者となったメガミは勝者にシェアクリスタルを託し命が尽きるのだから。
「ふっ……あはっ、あはははははっ!」
レイは、動揺するノワールを笑い飛ばす。
「メガミ戦争ぉ? 『真のメガミ』ぃ? 本当に、転がしやすい馬鹿ばっかで面白いわねあんたたちって」
「どういうことよ!」
「知りたい? 知りたいぃ?」
「言いなさい……っ‼︎」
「じゃ、冥土の土産に教えてやるわ。メガミってのはねぇ────」
*
ノワールとレイの対峙から数分前、アイエフとコンパは、中央教会内部に侵入し、ネプテューヌの元まで辿り着いていた。
「助けに来たわよ!」
「大丈夫ですか、ねぷねぷ!」
「す、すごいね二人とも……看守を一瞬で卒倒させて……」
「戦えないわけじゃないのよ、私たちは。下がっててネプ子、この牢屋の壁ごとブチ抜くから」
「えっ、ちょ、ブチ抜くって……⁉︎」
コンパは看守から奪い取った手錠の鍵でネプテューヌを解放し、アイエフは脱出経路の確認をしつつ自身の魔力を高めていく。
「……『魔界粧・轟炎』!」
「私もいくです! 『コンパ・ラブ・ハート』!」
アイエフの爆炎魔法が壁を燃やして削り、コンパの光魔法が削られた壁を破壊する。
「ねぷぅ⁉︎ ちょっ、こんなことして大丈夫なの⁉︎」
「大丈夫じゃないわ! だから早く逃げるわよ!」
「だっしゅですぅ!」
中央教会から難なく脱出した三人は、東区の教会へと向かう。
「あ〜あ、遂に正面から中央に喧嘩売っちゃった」
「もう戻れないですねぇ」
「あんたも脱獄したんだから同罪よ、ネプ子」
「それは良いんだけどさ……二人だけで中央教会に忍び込んで来たの?」
「そうだけど」
「よくわたしのとこまですぐ来れたね」
「あー、私元中央だから。建物の構造とか超詳しいの」
「へぇそうだったんだ……って、まじ?」
「だから今レジスタンスなんてやってんのよね。色々知りすぎたせいで消されそうになったから」
教会に戻った三人は、早速荷物をまとめ、教会からズラかる準備をしていた。反逆者として指名手配されることになる三人にとって、教会という拠点は無価値だからだ。
「ノワール様を助けに行かなきゃね。私たちのせいでピンチかもしれないから」
「ノワールがピンチになるようなことなんてあるの? 仮にもメガミだよ?」
「何よ"仮にも"って、あんたよりしっかりしてるわよあの人は……じゃなくて、レイ会長もメガミなの。それも、相当強いメガミよ。あんたたちみたいな他のメガミに気配とか力を感じ取られないようにカモフラージュしてるけどね。だからこそ、私たちレジスタンスが何人いようが武力では勝てないのよ」
「……え? じゃあ、あの人が先代の『真のメガミ』ってこと?」
「いいえ、そういうわけじゃないわ」
全てを話す時が来た、アイエフはそう思っていた。
「ネプ子、こうなったからにはあんたにも知ってもらうわ。この世界と……あんたたちメガミの真実を」