超次元ゲイムネプテューヌ -LOST PURPLE-   作:烊々

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Episode5

 

 

 さて、どこから話せばいいのかしらね

 まずはメガミについてね。メガミっていうのは、この世界の守護者。選ばれし人間がシェアクリスタルを使用することで、人間からメガミへと進化して、メガミはモンスターを倒すなどして人間から信仰されたり、他のメガミと戦い敗者からシェアクリスタルを託されることで、更に強くなる。そして全てのシェアクリスタルを集めたメガミは更なる進化を果たし、『真のメガミ』として君臨し、世界の繁栄を司る存在になれる。これはあんたも知っている話でしょうね

 でも、これはあくまで表向きの話。

 実際はメガミってのは、上位種のモンスターでしかないのよ。そして、それ以外のモンスターはメガミのなりぞこないとして人の姿を失ってしまった存在なの。シェアクリスタルに適合できなかった人間はモンスターに成り果てるのよ。街の外に蔓延ってるモンスターたちは、かつてメガミになれなかった人間の成れの果てよ。

 つまり、ゲイムギョウ界におけるメガミとかメガミ戦争とかモンスターとかは、中央教会が主導している今の世界を演出するためのマッチポンプのようなものってわけ。

 メガミの更なる進化、世界の繁栄を司る存在と『真のメガミ』になるっていうのも、実際は自我を失い、人をメガミにするためのシェアクリスタルの生成するだけの存在に成り果てるだけなのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     超次元ゲイムネプテューヌ

 

    -LOST PURPLE-  Episode5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイエフが語った世界の真相とは、欺瞞に満ちているものだった。

 ネプテューヌは狼狽えることも怒りに燃えることもなく、ただ淡々と聞いていた。

 

「ねぷねぷ……平然としてますね」

「う〜ん。記憶がないからなのかな? 聞いてもあんまり衝撃じゃないっていうか……中央教会が悪いことしてそうだったのはあいちゃんとコンパの雰囲気から察せられたし……許せないのはそうだけど、記憶がないからどう怒ればいいのかわからないっていうか……」

「自分がモンスターなこと、気にならないの?」

「姿形はみんなと一緒だし、今こうして話もできてるんだから、些細なことだよ。モンスターになっちゃった人たちにとっては些細なことじゃないけど……あ」

 

 ネプテューヌは、何かを思い出した。

 

「だから……戦いたくなかったんだね、モンスターたちと」

「……そうよ」

 

 以前アイエフとコンパが、どんなにモンスターに襲われても戦おうとしなかった理由を、ネプテューヌは今ようやく理解できた。

 

「でも、そんなことしてまでメガミを生み出して、中央は何がしたいの?」

「それは……私にもわからない。中央の連中が私腹を肥やすにも、別のいいやり方なんていくらでもあるし……」

「もうすぐ教会に着くですよ。ノワールさんを助け出したらまたすぐ逃げるです」

「おっけー! ……っていうか、ノワールが負けてる前提なの?」

「無理ね。一人のメガミがレイ会長をどうにかできるなら、とっくにこの世界は在るべき姿に戻っているわ」

 

 ノワールを回収して即逃亡するために、今度は徒歩ではなく車をコンパの運転で走らせながら、三人は再び中央教会へと向かうのだった。

 

 

 

 

 ブラックハートとメガミ化したレイは、戦いながら中央教会の展望台へと戦場を移していた。

 

「頑張るわねぇ」

 

 身体中を傷だらけにし、剣を支えにしながらもなんとか立ち上がるブラックハートに、レイは嘲笑うように言い放つ。

 

「倒れちゃった方が楽になれるのに」

 

 ブラックハートは、メガミ化したレイに手も足も出ていなかった。

 実力の差もあるが、真実を突きつけられたブラックハートは、もうまともな精神状態で戦えていなかったのだ。

 

「あんた、モンスター退治に一番熱心だったそうじゃない? 同胞とも言える存在を、何度も何度もなぁ〜んども殺してきた気分はどう?」

「……あああああッ‼︎」

 

 怒りのままに繰り出した刃は、レイに届くことはなく、素手で軽くいなされる。

 そして、レイが反撃に放った衝撃波を受けたブラックハートは倒れ、遂に変身が解けてしまった。

 

「ぐ……うぅ……」

「あら、終わりね」

 

 レイは倒れたノワールの髪の毛を掴んで持ち上げる。

 

「人であることを捨てて、世界のための犠牲になって、惨めよねぇ」

 

 そして、そのままノワールを引き摺って歩く。

 

「……じゃ、さよなら」

 

 展望台から百数十メートル下の大地に、ゴミのように放り投げた。

 身体が頑丈なメガミであっても、この高さから落ちれば只では済まない。弱りきったノワールが地面に直撃すれば、そのまま死に至るだろう。

 

「ねぷぅぅぅぅっ! キャーーーッチ‼︎」

 

 だからこそ、落下地点に先回りしていたネプテューヌが、その身体能力を上手く使い、ノワールを優しく受け止めた。

 

「こんぱ! 車出して!」

「りょーかいですぅ!」

「いや、運転は私がするからコンパはノワール様の治療!」

「でもあいちゃんはバイクの免許はあるけど車の免許は……」

「今はそんなこと気にしてる場合じゃないわ!」

「は、はいぃ!」

 

 そして、上空のレイに捕捉される前に車を走らせ、中央教会からすぐさま逃亡した。

 

「ネプ……テューヌ……」

「ノワール! 大丈夫⁉︎」

「私……たち……モンスター……なんだって。私たちだけじゃない……たくさん……倒して……殺しちゃった……」

「ノワール……」

「私と同じみんなを……私が……守ってあげなきゃいけなかったのに……ぅ、うううぅ……!」

 

 ノワールは涙を流しながら意識を失った。

 

「……まぁこうなるわよね」

 

 アイエフが呟いた。

 

「メガミとしての使命感が強いノワール様みたいな人ほど、真実を知った時のダメージが大きいんでしょうね」

「……これからわたしたちはどうすればいいかな、あいちゃん」

「こうなったらもうやるしかないわ。ノワール様が回復したら中央に仕掛ける。レジスタンス全ての戦力を結集してね。そうすれば、戦いにはなるでしょ」

「ブランも手伝ってくれるかな……?」

「……どうでしょうね」

 

 会話が途切れ、沈黙が車中を支配する。

 

「……」

 

 沈黙の中、アイエフは昔のことを思い出す。

 かつて、アイエフは優秀な諜報員だった。中央教会に身を寄せるものとして、ありとあらゆる不穏分子や教会内の腐敗を炙り出し、健全な中央の運営に貢献していた、そう思っていた。

 

『これが……メガミの真実……なの?』

 

 しかし、優秀過ぎたのだ。自身の卓越した諜報員としての腕を活かす中、中央教会の闇を知ってしまった。

 

『優秀すぎるってのも考えものね。じゃ、みんなばいば〜い』

 

 結果、会長たるレイ直々の手で部下の諜報部隊は皆殺しにされ、自身は死にかけながらなんとか逃げ延びた。

 しかし、今回のネプテューヌ救出の件で自分がまだ生きていることをレイに知られるだろう。中央に忍び込んでネプテューヌを助ける、それをあの手際で迅速に行えるのは自分しかいないし、レイもそれを分かっているからだ。そしてそうなれば、レジスタンス活動への対策を一気に押し進められてしまう。今まで中央教会からはレジスタンスなど見向きもされていなかったが、主導者が自分だと知られたならば本気で潰しに来られるだろう。

 

(……どうすればよかったのかしらね、私は)

 

 永遠に隠れながら生きるか、決死の覚悟で中央に仕掛けるか、どちらにせよこのまま時が過ぎればレジスタンスの仲間から多くの犠牲が出る。かつて部下が皆死んだ時のように。

 

「……あいちゃん」

「どうしたのネプ子?」

「みんなはわたしが守るよ」

「……ありがと」

 

 その後、数ある拠点の一つに着いたネプテューヌたちは、アイエフの主導でレジスタンスの皆に向けある通達をした。

 西区のメガミたるノワールの回復と、北区のメガミたるブランへの協力要請、この二つを済ませたら、中央教会に向け進撃する、と。

 しかし、その翌朝。

 

「た、大変ですぅ!」

 

 慌てふためくコンパが、爆睡していたネプテューヌを起こした。

 

「ねぷぅ⁉︎ どうしたのそんなに慌てて」

「の、ノワールさんがいないんです!」

「ええっ⁉︎」

「まだ怪我も治りきってないのに……」

「大変よ‼︎」

 

 すると、今度はアイエフが大声を上げながらネプテューヌたちの元に来る。

 

「今度はなに〜……?」

「中央教会は、メガミネプテューヌの権限を凍結、一般市民には見つけ次第中央に通報するよう、全ての地区に通達したわ!」

 

 中央教会は、ネプテューヌを反逆者として指名手配してきた。

 ネプテューヌたちにとっても予想内の動きだったため、そこまでの驚きではなかったが。

 

「予め東区の教会から引き上げてきてよかったね。でも、せっかく住んでる皆の生活が少しずつ良くなってきてたのにな……」

「それより、ノワール様が失踪って本当⁉︎」

「本当です! どこに行ったんでしょう……?」

「……一つしかないよ」

 

 ネプテューヌは、ノワールの行き先に思い当たる節があった。

 

「どこ? まさか中央に殴り込み⁉︎」

「ううん、北区の教会だよ。だから急がないと……ブランが危ない」

 

 

 

 

「私が……メガミ戦争の勝者?」

 

 四名の女神の内一名が敗退、一名が死亡、一名が反逆者として権限を凍結されたことにより、残った一人であるブランは中央教会からメガミ戦争の勝者として扱われる、という文書を受け取った。

 しかし、真のメガミとなるためには、行方不明であるネプテューヌを見つけ出す必要があるため、現段階では保留でもあった。

 

「なんで……こんな決着……」

 

 他のメガミを誰も倒していない自分が勝者としての扱いを受けることに納得がいかないブランであったが。

 

「久しぶりね、ブラン」

「ノワール……っ⁉︎」

 

 中央からは『死んだ』と通達されたはずのノワールが目の前に現れたことにより、そんな感情は消し飛んだ。

 

「久しぶり……って、ノワールあなたどうしたのよ? 中央からは死んだって通達が来たのに……生きていたの? それに、中央からネプテューヌのメガミの権限を剥奪って通達が来たのよ。ネプテューヌは一体何したの……?」

「知る必要はないわ」

 

 ノワールは表情ひとつ変えずに剣を抜く。

 

「何のつもり……?」

「何、って、メガミ同士が出会ったなら、やることは一つしかないでしょう?」

「待ちなさいノワール。メガミ戦争はもう終わったのよ」

「終わった? メガミが二人ここにいるのに?」

「あなたは今正気じゃないのよ。少し落ち着いてから……」

「現実から目を背け、都合が良いことだけ信じることが『正気』なら、私は気が狂っているのかもしれないわね」

 

 ブランはなんとかノワールを落ち着かせようとするも、ノワールは全く聞く耳を持たない。

 真実を知るノワールと知らないブランでは、話が噛み合う筈もない。

 

「けど、私は知ってしまった。知ってしまった以上、もう止まるつもりはないわ」

 

 目の前の幼馴染はもう言葉では止まらないことを理解したブランは戦う覚悟を決める。

 

「どうしても……やるのね」

「元々そのはずだったでしょう、私たちは」

「なら……場所を変えましょう」

「構わないわ。好きにしなさい」

 

 ブランにとっては、北区教会の玄関先で戦闘を行うわけにもいかず、近くの雪原へと戦場を移すことにした。

 

「私が勝ったら、何があったか全てを話してもらうわ、ノワール」

「勝ったなら、ね」

「なら……行くぜ‼︎」

 

 ブランは白のシェアクリスタルを解放、自身のエネルギーを高め、ホワイトハートへと変身する。

 ノワールも同様にブラックハートへ変身しする。

 

「そんな傷で良く仕掛けてきたな! けど、容赦はしねえぞ!」

 

 本来シェアクリスタルを二つ持つブラックハートに対し一つしか持たないホワイトハートでは、メガミとしてのエネルギー出力が大きく劣る。

 しかし、ブラックハートはレイから受けた傷がまだ治りきっていないため、身体の動きがまだ鈍く、両者は拮抗していた。

 

「……なんで」

 

 戦いの中、ブランの激情が漏れる。

 

「なんでこんなことになってんだよ!」

 

 かつてメガミとなる前に人間だった頃、少しだけ歳上だったベールと違いノワールとブランは同い年だった。

 だからこそ、よく意見を違えて衝突した。メガミとなった後も、ベールとはまた違ったライバルとしてお互いを意識していた。

 

「私は……お前とこんな形で戦いたくなんてなかったのに!」

 

 おそらく、ノワールはもう自分と同じものを見てはいない。『真のメガミ』を目指すのではなく、他の自分の知らない"何か"のために戦っている。

 それは、ブランが望んだノワールとの決着の付け方ではなかった。

 

「……っ」

 

 ブランから漏れた激情はノワールの心に突き刺さる。けれど、もうノワールは止まらない。ブランを斃して力を得て、キセイジョウ・レイを倒し、この世界の真実を解き放つ、その目的の為に。

 

「……痛……ぅ……!」

 

 しかし、戦いで激しく動いたからか、レイから受けた傷が開き、身体が軋むような激痛に、ブラックハートの動きが止まる。

 

「……っ! そこだっ! 『テンツェリントロンペ』!」

 

 ホワイトハートはその隙を逃さない。

 ブラックハートに向けて、戦斧を思い切り振り下ろす。

 

「……ほらね、あなたは優しすぎる」

 

 しかし、ホワイトハートの一撃はブラックハートに受け止められていた。

 

「……っ」

「この期に及んで、まだ私を救おうとか思っていたんでしょう⁉︎」

 

 意識していたか、また無意識だったか、ブランはノワールを本気で倒すつもりはなかった。錯乱した幼馴染を本気で倒せるほど非情にはなれていなかった。そんな思いが、攻撃の威力を鈍らせてしまっていたのだ。

 

「でも……そんな優しさなんて、この世界には不要なのよ‼︎」

 

 しかし、その有情は、戦いにおいては命取りだった。

 戦斧の攻撃を弾いたブラックハートは、ホワイトハートの右腕を斬り裂いて、引き千切る。

 

「ぐ……ぎ、あああぁぁぁっ!」

 

 ホワイトハートは、想像を絶する激痛に苦しみ悶える。

 

「さようなら、ブラン」

 

 そしてブラックハートは、ホワイトハートの人間なら心臓がある場所に手刀を突き刺し、シェアクリスタルを奪い取った。

 

「……」

 

 ブランは声を上げることもできず、そのまま絶命して消滅した。

 

「あなたはせめて……何も知らないままで……おやすみなさい」

 

 ブランから奪い取った白のシェアクリスタルを受け取ると、そのエネルギーでブラックハートの傷が癒えていった。

 

「……ノワール‼︎」

 

 その時、ネプテューヌたちが現場に駆けつけたが、何もかもが遅かった。

 戦いの跡に一人佇むブラックハート、消えていく白い光、何が起こったかも言うまでもなかった。

 

「……」

 

 ブラックハートは何も言わず、雪原から去っていった。

 ネプテューヌたちは、その背中をただ見つめることしかできなかった。

 

 

 

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