超次元ゲイムネプテューヌ -LOST PURPLE- 作:烊々
ネプテューヌ収監と脱走からたった数日で、中央教会周りの状況は大きく変わっていた。
「紫のメガミはまだ見つからないんですか?」
普段のような丁寧な言葉遣いは崩していないものの、本性を露わにしている時に近いような強い口調で、教会員に詰め寄るキセイジョウ・レイ。
「ひ、東区の教会にも戻っていないようで……市民からの目撃情報もありませんし……申し訳ございません」
「そうですか……わかりました。下がっていいです」
「は、はい!」
教会員が逃げるようにそそくさと立ち去った後、レイは眼鏡を外し深い溜息を吐く。
「今回は……上手くいけばいいけど」
レイは焦っていた。
『真のメガミ』……とは名ばかりのエネルギーコアが、後数年も保たない。その前に新たな『真のメガミ』を捏ち上げる必要があるのだが、逃亡中のネプテューヌ、自分が処分したノワール、敗退したベール、その三人を消去法で弾いて選ばれた最後の一人のブランと、連絡が付かないのだ。
「この前の教会襲撃……あんなことができるやつなんて限られている……あのクソチビがまだ生きてたってわけ?」
レイの記憶の中にアイエフの顔が浮かび上がる。アイエフはレイにとっても優秀な部下であった。優秀すぎたことが仇となり処分せざるを得なくなったが。
「レジスタンスなんてカスの集まりだと思ってたけど、アイツがやってんなら話は別よね。潰すか」
面倒だから、という理由だけでレジスタンスを放置していたレイだが、遂にレジスタンス壊滅へ向けて重い腰を上げようとしていた。
『レ、レイ会長! 大変です!』
その時、中央教会の緊急放送が、レイの執務室に向けて鳴り響く。
「えっと、何が起きたんですか?」
『メガミノワールが生存、剣を持ちながら、中央教会に接近中! おそらく敵対の意思有りです!』
「……! わかりました。全職員に避難するように通達」
『しかし、迎撃は?』
「衛兵程度では不可能ですよ。命が惜しければ逃げることですね」
『は、了解致しました!』
自分が戦う姿を見られないように人払いを済ませ、レイはノワール迎撃に向けて教会のエントランスホールに向かう。
「……さて。行きましょ」
その足取りは、どこか上機嫌なものだった。
*
中央教会正面玄関の扉を斬り裂いて破壊し、堂々とゆっくり歩いて侵入するノワール。
「生きてたのね、あんた」
「ええ、あなたを殺すまでは、死んでも死に切れないわ」
レイの姿を見るなり、ノワールが黒のシェアクリスタルを解き放ち、エネルギーを高め、メガミ化を果たす。
すると、瞳に刻まれた紋章が半円から完全な円となり、ブラックハートの身体から溢れた光が装甲と羽根になる。
「これは……!」
その変化は、今ここにブラックハートが完全なメガミ化を果たしたことを意味していた。
「……なるほど、あんた白いやつを喰らったのね」
レイも応じるようにメガミ化し、ブラックハート同様装甲と羽根を生やした。
「ま、その程度のパワーアップなんて、私にも出来るんですけどねぇ!」
「前は……手を抜かれてたわけね」
「当然じゃない。私は小動物を狩るのに全力を出すようなバカな獣とは違うのよ」
「……そうね、ついこの間までの私は……弱くて、無知で、愚かな獣だったわ」
ブラックハートが剣を取る。
レイも己のエネルギーの光を剣の形にし、握る。
「前までは? メガミなんかに成り果てたあんたは、今も、この先も、未来永劫愚かな獣よ!」
「自分もメガミのくせによく言うわ」
互いの剣がぶつかり合う。
「……っ! へぇ」
以前までのブラックハートの力量差ではレイと鍔迫り合いにすらならなかったが、ブランを斃して力を得たことにより、その差は埋まっていた。
「だからどうしたってのよ!」
レイの翼からエネルギーの鞭が生え、ブラックハートを殴り飛ばす。
「……っ!」
以前までならこの一撃だけでも大きなダメージとなっていた。
しかし、更なる力を得たブラックハートは怯むことなく体勢を立て直し、再びレイに飛びかかる。
(……例えば、死後の世界があるとして、天国と地獄があるとしたら、ベールとブランは天国にいるのでしょうけど、私が行くのは地獄でしょうね)
ブラックハートの繰り出す剣技は、歴代のメガミの中でも随一。身体能力が大きく向上した今、近距離の斬り合いだとレイですら手を焼くほど。
加えて先程のような不意打ちもおそらく通用しないだろうと、レイは後退し距離を取る。
(自分の手で殺しておいて、今更身勝手なのはわかってる。けれど……今だけは……力を貸して‼︎)
レイが魔力を纏わせた腕を振るい、衝撃波を繰り出し、あたり一帯を薙ぎ払う。
「……あ?」
しかし、ブラックハートの目の前に出現した白い戦斧が盾となり、衝撃を防いでいた。
そして、ブラックハートがレイに向かって手を差すと、緑の戦槍が射出される。
「これは……」
レイは、ブラックハートが放つ雰囲気に覚えがあった。
自らが得たシェアクリスタルに宿る元の持ち主の力を用いて、通常のメガミを超えた輝きを放つ。
「……『真のメガミ』?」
その時代の全てのシェアクリスタルを集めたメガミが到達する存在『真のメガミ』。
しかし、レイにとって不可解な点が二つ。
一つは、シェアクリスタルが全て揃っていないにも関わらずブラックハートが『真のメガミ』へと覚醒を果たしていること。
もう一つは、『真のメガミ』へと覚醒を果たしているにも関わらずブラックハートが自我を失っていないこと。
「こいつ……まじか」
メガミが『真のメガミ』になると、力に呑まれ自我を失い、ただのエネルギーを垂れ流すだけの存在となる。
レイは、現在に至るまで何度もそうやって『真のメガミ』仕立て上げてきた。『真のメガミ』になるとその力が尽きるまでは自分が求めるようにこの世界を変えることができる、とシェアクリスタルの適合者たちを唆して。
「行くわよ……ベール、ブラン!」
「……っ!」
自身が持つ『真のメガミ』の膨大なエネルギーを意のままに振るうブラックハートに、レイは初めて敗北の危機を感じていた。
「調子に乗るなってんのよ!」
レイが繰り出した雷撃魔法がブラックハートの右腕に直撃し、右腕が千切れて吹き飛んで行く。
「……ぐっ、ぅ」
「油断したわねぇっ!」
「……っ、は、ぁああああッ!」
しかし、ブラックハートの欠損した傷跡から漏れ出た光が腕の形となり、右腕が復元され、再び剣を掴み、レイの装甲を斬り砕く。
「な……っ⁉︎」
所詮、自分は人の形をしているだけの化け物。人にとっては致命的な傷も、メガミにとっては擦り傷のようなもの。ブラックハートはそう割り切って、ひたすら攻め続けながら、ダメージによる外傷を受けた側から強引に治していく。
「すっかり……化け物が板についてきたじゃない!……!」
ブラックハートは、溢れるエネルギーを剣に込め、思い切り振り回した。
「『トルネードソード』」
巨大な斬撃のエネルギーの塊が、中央教会のワンフロアごと消しとばし、建物が歪む。
「が、ぁぁっ!」
足が今の一撃で斬り飛ばされていたため、立ち上がることができず、倒れ込むレイ。
「どうしたの? まだ足が無くなっただけでしょう? すぐに治して立ち上がればいいじゃない」
一歩ずつ、ゆっくり歩いて近づきながら、ブラックハートが冷酷に言い放つ。
「……そこまで捨てられてないのよ、私は」
メガミの超速再生は、メガミとしての自分を受け入れていなければ使用できない。
メガミという存在になり誰よりも長いレイだが、誰よりも人間としての自分を捨てられていなかったのである。
故に、失った足を取り戻すことができず、ブラックハートに敗北を喫することになる。
「二つ」
ブラックハートは倒れ込むレイに剣を向けて言う。
「あなたを殺す前に聞きたいことがあるわ」
レイは抵抗せず、地面に仰向けに倒れ、楽な体勢を取る。
ブラックハートも変身を解いて剣を下ろした。
「なにが聞きたいの?」
「……どうして私を殺さなかったの?」
ノワールは、以前レイにあえて生かされていたことを察していた。
明らかに手を抜かれていたことだけでなく、殺そうと思えばいくらでも殺せたにも関わらず、生き残れる可能性がある地面に放り投げられたことに違和感があったのだ。
「素質があった、あんたには私以上に、メガミとしての素質がね。だから、全てを押し付けて楽になりたかったのかもね……」
「押し付ける……?」
「もう一つの聞きたいことは?」
「……あなたは、何のためにメガミになったの?」
メガミという存在を作り、この世界のシステムを作ったのもおそらくレイなのだろう。しかし、不可解な点が多かったのだ。先程の『押し付ける』という発言も含め、自分が想定している以上の真実がある、ノワールはそう思っていた。
「中央の議会は、民を放置し、私腹を肥やすばかりの碌でもない連中だった。けど、あなたはそんなものに執着していない。なら、何が目的で、『メガミ戦争』なんていう茶番を演出し続けてきたの?」
レイが口を開こうとすると、指の先が光になって消え始めた。
「もう……説明する時間もなさそうだから、これを渡すわ」
レイが投げ渡し、ノワールが受け取ったのは、紫色の枠の中央教会職員証だった。
「これは……クラスマスターのカード……?」
クラスマスター、中央教会のトップである会長のみが持つことを許されたカードである。
「それを使えば、中央の全てのセキュリティを突破できる。そしてあんたの知りたいことを全部知れるわ。メガミという存在の全ても、この世界の更なる真実の全ても。そして、私の権限も全てあんたに譲渡されることになるわね」
言いながら、レイの身体がどんどん光となって消えていく。
メガミ戦争と同じプロセスで、ノワールに敗北を認め自らの力を託そうとしているのだ。
「最後に一つ教えてあげる。私たち中央が管理してる紫のシェアクリスタルは盗まれてなんていなかった」
「……!」
「始めから……あのネプテューヌってやつはシェアクリスタルに選ばれることなくメガミだったってことよ……」
「……」
「私は……ここまでね……あんたもせいぜい足掻くと良いわ。こんな……クソみたいな世界で……どう足掻くか……地獄から見ていて笑い飛ばしてあげるから……ね…………」
レイの身体全てが、光となって消滅する。しかし、その表情はどこか満足げだった。まるで、重荷から解放されたからのような。
「……お疲れ様でした、レイ会長」
そこに残されたレイの水色のシェアクリスタルを、ノワールはあえて吸収しなかった。
曲がりなりにも長き時に渡り中央教会のトップに立ち続けてきたレイに、ノワールなりの敬意を表し、その力も意思も眠らせてあげることにしたのだ。
「真実……か」
ノワールはレイから受け取ったカードにより、教会のセキュリティを突破し、レイの執務室のパソコンから、データベースにアクセスする。
「これは……!」
ノワールがそこで目にしたものとは────
*
人の姿のない中央教会、ボロボロになった建物。
ネプテューヌたちは、確実にノワールが此処に来て戦っていたことを理解する。
「ノワール……」
凄まじい戦闘の跡に、ノワールの身を案じるネプテューヌ。
「呼んだかしら?」
すると、奥から何事もなかったかのようにノワールが歩いてきた。
「ノワール!」
「全く、私がいつどこにいてもすぐに現れて……そんなに私のことが好きなのかしら?」
「好きだけど……そうじゃなくて! 何が……起こったの?」
「私がキセイジョウ・レイを殺した。それだけのことよ」
「……!」
驚きはあるが、ノワールが生きてここに立っている以上当然のことでもあるため、ネプテューヌたちは納得する。
「ねぇ、ネプテューヌ」
「ノワール?」
「私たちが今まで『平和』とか『安寧』って呼んでいたものは、そのために犠牲になっている何かを踏み台にした脆い足場の上に辛うじて存在していたものなのよ」
「どうしたのノワール? いきなりそんな話して……」
「でも、その脆い足場が、もう限界に近づいてきていてる。だから、新しい足場を作るか……それとも、足場が無くても成立する世界を作るか、その二つしかないわ」
「どういう……こと……?」
「はっきり言うわ。この世界はもう限界なの」
全てを知ったノワールが、世界の現象を端的に言い放った。
「……今思えば当たり前よね。中央教会に連なる四つの街だけが世界の全てな筈ないじゃない」
ノワールの説明は続く。
太古の時代、この世界は『守護女神』という存在に納められていた。
メガミではなく、女神。人々の信仰により顕現し、世界を護り導く存在。
しかし、ある時世界を人々に託し、自らの住む神の世界へ帰ってしまった。残された人間たちは、自分たちの手で世界を繁栄させていこうと誓った。
だが、そんな崇高な誓いは時代の流れと共に忘れ去られ、人々は争い合い、滅ぼし合い、滅び合い、世界は衰退していった。
ある時、キセイジョウ・レイと彼女の仲間たちが、いつしか忘れ去られてしまっていた女神という存在が実在したことを突き止め、その力を再現するプロジェクトを開始した。世界の滅亡を防ぐため、死力を尽くして。
しかし、人の力で神の力を再現できるわけはなく、出来たのは紛い物『メガミ』、そして副産物のモンスターたちだった。それでも、世界を存続させるだけのエネルギーをなんとか賄うことができるようになったのだ。
「その先は、あなたがアイエフから聞いた話と同じよ」
それが、この世界の真実だった。
「さて、本題はその先。このままだとメガミ戦争が続き、それに踊らされた適合者たちの殺し合いが続く。かといって、メガミ戦争をやめれば、この世界に必要なエネルギーを賄えない」
「だから……ノワール様は何をする気なんですか……?」
「私の力と、残った先代メガミのエネルギーで、シェアクリスタルを世界中にばら撒き、人間全てをモンスターに変える」
ノワールは自身の計画を語り、ネプテューヌたちは絶句した。
「もうこの世界は、人々が繁栄するためのエネルギーを賄いきれない。キセイジョウ・レイは、メガミ戦争という制度を使って騙し騙しやりくりしてきた。けれど、それももう色々と限界だったのよ。真実に気づくアイエフのような人間が出たり、私やあなたのような教会のやり方に反するメガミが出たり、ね」
その限界は、レイの嘆きでもあったのだろう。自分を倒せるメガミか人間が現れたら、全てを託す、もしくは押し付けて楽になりたい、そう思っていたのかもしれない。
「モンスターは、メガミほどでないけど微弱なエネルギーを撒きながら生きている。だから、人間全てがモンスターになれば、真のメガミという犠牲が無くとも、そこに生きる者たちに必要なエネルギーを賄うことできるわ。それができるほどキセイジョウ・レイは思い切れなかったようだけど」
「だからって、人をみんなモンスターにするなんて……!」
「私たちメガミだってモンスターじゃない。そんなモンスターに縋って生きてきた人間たちに、モンスターになることを拒否する資格があるの? それに、モンスターであっても言葉を交わせれば問題はない、ってあなたたちを見ていれば分かるわ」
ネプテューヌとアイエフとコンパの友情を、ノワールは都合が良いように曲解し、反論を封じようとする。
「世界を存続させるためには、何かを犠牲にするしかない。そのためには、誰かがその業を背負わなければならないわ」
「それを……ノワールが背負うってこと……?」
「……そうなるわね。他に方法はないわ。このままなにもしなければ、緩やかに滅びの道を辿るだけよ。だから、私は私のやり方で、この世界を救ってみせるわ」
ノワールは覚悟を決めていた。親友を殺し、曲がりなりにも世界を守っていた先人を殺したノワールは、もう引き返すことはできないと思っており、引き返す気もなかった。
「そんなことさせない……! ノワールのやろうとしていることは、間違ってるのだけはわかるから! わたしが止める!」
「止める? あなたが、私を? 変身もできないあなたが?」
「止めてみせるよ!」
ネプテューヌが剣を取り、ノワールはメガミ化する。
メガミ化した時の衝撃だけで、ネプテューヌは吹き飛ばされそうになるが、それでもなんとか持ち堪え、ブラックハートに剣を振るう。
「下がりなさい……ネプテューヌ」
振るった剣は、ブラックハートが出現させた戦槍と戦斧に阻まれ、届かない。
それでも、ネプテューヌは諦めない。
「……下がって」
ブラックハートは腕を動かすことなく、浮遊させた武器のみでネプテューヌを弾き飛ばし続ける。
それでも、ネプテューヌは何度も立ち上がる。
「下がってよ! 私に親友を三回も殺させないで!」
激昂したブラックハートは、遂に剣を握り、ネプテューヌを斬り伏せた。
たった一閃でネプテューヌは意識を失い地面に倒れる。
「ネプ子ッ‼︎」
「ねぷねぷっ!」
アイエフとコンパが、ブラックハートの前に立ち塞がってネプテューヌを守る。
「退きなさい二人とも」
ネプテューヌはたとえ死ぬことになっても自分を止めるだろう、と判断したブラックハートは、ネプテューヌにトドメを刺そうとしていた。
「退きません!」
「……そう」
言うことを聞かないのならば力付くで退かそうと、ブラックハートがゆっくりと腕を振り上げたその時。
「『ラ・デルフェス』!」
アイエフはブラックハートの顔に向かい光魔法を撃つ。
「こんな眩しいだけの攻撃……」
しかし、人の魔力で放たれる魔法など、覚醒したメガミであるノワールにはダメージにすらなっていない。
だが、アイエフの狙いは攻撃ではなく、光にる目眩しだった。
ブラックハートの視界が戻る前に、既にネプテューヌを背負って離脱していた。
「……逃げられた、ようね。でも、もう逃げ場なんてないわ」
ブラックハートはアイエフたちを追おうともしない。
「この世界のどこにいようが、降り注ぐシェアクリスタルによる進化からは逃げられないからね」
邪魔者さえいなければ、ブラックハートの計画は完遂される。
人間全てがモンスターになるまで、猶予は残されていなかった。
*
かつて、この世界には今よりも多くの人間がいて、四つの大国があった。
そして、その大国を統べる四人の女神が、神界と呼ばれる場所で、終わりなき守護女神戦争を続けていた。
『……これは、何? 夢……?』
その最中、女神の力に魅入られたある邪悪な存在が、その争いを利用し、世界を混沌に陥れようと企んだ。争い合う運命として魂に刻まれていた四人の女神は、そんな状況でも戦いを止めることができなかった。ある一人の女神を除いて。
『夢……じゃない。あぁ……そっか』
しかし、その女神の戦いを止めたいという願いは聞き入られることはなく、結局その女神は、他の三人の女神を斃し、その邪悪な存在も斃し、世界を救った。
『これ……わたしの記憶だ』
女神の存在が世界の危機を誘発する、二度とそのようなことが起こらぬよう、その女神は世界を人間たちに託し、神界に戻り、神界と人間界を断絶した。
『そうだ……そうだった……』
そんな女神が、再び人間界に行くというのは、初めは単なる好奇心だった。女神である自分が去った後でも人間たちは上手くやっているだろうか、上手くやっていた場合人間たちはどれほど世界を発展させただろうか、と。
だが、人間界は明らかに衰退と滅亡の道を辿っていた。未来に希望を込めて人間に世界を託した自分の選択は、誤っていたものだった。だからこそ、再び人間界に行かなければならないと思った。
しかし、断絶した世界を渡るというのは、並大抵のことではない。世界の壁を強引に突破するとなると、いくら女神だとしても、その身体にどんな影響が出るか分からない。
『……全て、思い出した』
その影響で、守護女神『ネプテューヌ』は、記憶と力の殆どを失ってしまった。
そして、飛ぶ力すらも失われたので、墜落し、地面に突き刺さることになった。
「……! ……子! ……ネプ子!」
「……ねぷねぷ!」
守護女神の力の源は、人々の想い『信仰』。そして、力というものは、時には記憶や意思に付随する。自身のルーツを知ったネプテューヌは、守護女神としての神格を取り戻し、親友たちの想いを力に変えることで、自身の傷を癒し、意識を取り戻す。
「……おはよう、二人とも」
愛する全てを守る。この世界を包む悲しみから連れ出す。
「ありがとう、行ってくる」
全てを思い出した女神ネプテューヌは、自らの使命を果たすべく、再びノワールの元へ向かうのだった。
超次元ゲイムネプテューヌ
-LOST PURPLE- Episode6