超次元ゲイムネプテューヌ -LOST PURPLE-   作:烊々

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Episode FINAL

 

 

 レジスタンスのアジトのガレージの扉が開き、中からアイエフのバイクに跨ったネプテューヌが現れる。

 レジスタンスのアジトの森の中を走り抜け、中央教会本部まで、ノワールの元まで、駆ける。

 ノワールに対する怒りはない。むしろ、ノワールの凶行も、この世界の現状も、元を辿れば自分の罪だ。

 かつて、自分は他の女神を全員倒した。敵対はしていても、分かり合える未来があったかもしれないのに。

 世界を救った後、世界を人間に託して去ったのも、彼女たちが遺した国を背負うことから、彼女たちを斃した罪から、自分は逃げたのだ。

 自分が世界を統治していれば世界が衰退することはなかったと言い切るのは傲慢だろう。けれど、全てを放り出して逃げた罪が消えるわけではない。

 

 だからこそ、行かなければならない。

 

 海岸沿いの道を走り抜ける。早朝なのもあって静寂に包まれており、バイクのエンジン音のみが鳴り響く。

 何個かトンネルを越えて少し走ると、街の大通りに出る。その先に見える下が少し歪んだ大きな建物が中央教会だ。

 

「ノワール……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     超次元ゲイムネプテューヌ

 

   -LOST PURPLE-  Episode FINAL

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キセイジョウ・レイからクラスマスターのカードを受け取った。つまり、たった今から中央教会会長は私よ」

 

 中央教会議会を招集し、集まった会員に言い放つノワール。

 

「前会長は、教会の運営に必要だからと、あなたたちに餌を与え続けていたようだけど、私はそう甘くはないわ。私が作る新しい秩序にあなたたちはもう必要ない。私に忠誠を誓うか、中央から消えるか、ここで死ぬか選びなさい」

 

 ノワールの言葉を聞いて、全ての教会員が中央教会を離脱した。ノワールに付き従おうとする者は誰もいなかった。

 ノワールからしても、計画が済めばモンスターと成り果てるだけの者たちなど必要なかった。新たな教会員は、シェアクリスタルに適合しメガミとなれた者たちから選ぼうと思っていたからだ。

 

「……そろそろ、来る頃だと思っていたわ」

 

 誰も居なくなったはずの中央教会に、足音が鳴り響く。

 今の自分を訪ねて来るものなど、一人しかいない。

 

「ネプテューヌ」

 

 足音の正体、ネプテューヌが中央教会のエントランスでノワールと対峙する。

 

「一つ聞くけど、私を止められたとして、その後はどうするつもり? この世界の衰退と滅亡を受け入れるの?」

「みんなをモンスターにはさせないし、衰退も滅亡もさせない」

「理想を語るなんて誰だってできるわ。最後まで私の邪魔をするのなら……今度こそ殺してあげるわ、ネプテューヌ……!」

 

 ノワールが黒のシェアクリスタルを取り出す。

 クリスタルは、ノワールの強い意志を反映したかのように、ドス黒く禍々しく輝いていた。

 

「理想、じゃないよ。そのために……わたしはこの世界に降り立ったんだから」

 

 ネプテューヌが正面に手を翳すと、紫色のシェアクリスタルが顕現する。

 

「シェアクリスタル? なるほど、変身の仕方を遂に思い出したようね。良かったわ。そうでなければ面白くないもの。けれど、シェアクリスタル一つで私に勝てるとでも?」

「勝つよ、わたしは」

「強がりね。なら、せいぜい足掻いてみせなさい!」

 

 ノワールが黒のシェアクリスタルを解放し、エネルギーを高め、変身する。

 変身の衝撃が爆発のように拡散し、周囲を薙ぎ払い、漏れ出たエネルギーが装甲と機械翼に変化する。

 

「刮目せよ」

 

 ネプテューヌが紫色のシェアクリスタルの力を使い、変身する。

 身長が大幅に伸び、身体の起伏が増え、シェアクリスタルから出現した『プロセッサユニット』と呼ばれる装甲と機械翼が装着され、瞳に電源マークのような紋章が刻まれる。

 そして、変身の完了と同時に、ネプテューヌの持つシェアエネルギーの圧力が、大幅に上昇する。

 変身後の姿の名は、『パープルハート』。

 

「……どういう……こと?」

 

 ブラックハートは、パープルハートの変身に違和感を持つ。

 一見、自分やベールやブランと似たような変身に見えるが、そのプロセスが異なっていたからだ。

 

「まさか……」

 

 そして、その違和感は、ある仮定を導き出す。

 

「本物の……守護女神……?」

 

 その仮定は、確信へと変わっていく。

 目の前に立つパープルハートが纏う光は、どこか神聖なものに満ちているように感じられるが、自分の纏う光は劣らぬ輝きを放つものの、ただの力しか感じられない。

 目の前の輝きが『本物』ならば、自分が『偽物』であることなど明らかだった。

 

「ふ、はは……あはははは!」

 

 だからこそ、笑う。

 

「良いじゃない……っ! 神話の存在たる守護女神……あなたこそ、私の最後の敵に相応しいわ」

 

 全てを力で捩じ伏せてきた。たとえ相手が本物だとしてもそれは変わらない。

 

「あなたを倒して、私が新たな神話になってやろうじゃない!」

 

 メガミ『ブラックハート』は、女神『パープルハート』に、最後の戦いを挑む。

 

「はぁっ!」

 

 ブラックハートは、白の戦斧と緑の戦槍を現出し、周りに浮遊させる。

 

「『テンツェリントロンペ』! 『ジレットスピアー』!」

 

 浮遊させたまま武器を動かし、亡き友たちの技を再現させ、パープルハートに差し向ける。

 

「……」

 

 しかし、パープルハートが腕をゆっくりと振るって出したたった一回の斬撃で、戦斧は両断され、戦槍はへし折られた。

 

「な……っ」

「もう、やめましょうノワール」

 

 ネプテューヌと同じ人物とは思えないような落ち着いた声と口調で、パープルハートはブラックハートを諭す。

 

「わかったようなこと言わないで……ッ‼︎」

 

 しかし、ブラックハートは拒絶する。

 

「今更世界に降りてきて! 自分が来たからもう全部終わりだって……! そんなの……私が今まで生きてきた意味は……私が犠牲にしてきたものたちの意味は……どうなるのよ‼︎」

「……っ」

「あなたなら……女神様だから世界を救えるのかもしれない……! そして……そうなるべきなのかもしれない! けど、そんなこともうどうだって良い! 私は……私が……私の手で……この世界を救うのよ‼︎」

 

 全てを犠牲にして突き進んだブラックハートに、もう引き返す意思はなかった。

 

「……そうね」

 

 パープルハートは、ブラックハートの真意を悟った。

 

「もう私は逃げない。あなたを倒して……全てを償うわ」

 

 そして、強く剣を握りなおす。

 

「はああああっ! 『トルネードソード』ッ‼︎」

 

 ブラックハートが全力の一閃を繰り出す。

 その衝撃で、中央教会の半分が斬り飛ばされる。

 

「……っ⁉︎」

 

 しかし、もう半分が斬れることはない。

 パープルハートがその斬撃を左腕だけで掴んで防ぎ切っているからだ。

 

「嘘……でしょ……」

「……『クリティカルエッジ』」

 

 そして、自分の技が放ち終わり、斬撃のエネルギーが消えたと同時に、パープルハートの剣技が眼前に迫ってきていた。

 

「私の……負け……ね」

 

 防ぐ間もなくその技を受けたブラックハートは、一撃で体力が底をつき、変身が解け、その場に倒れるのだった。

 

「まぁ……当然よね……偽物が……本物に勝てるわけない……か」

 

 ノワールは自らの完敗を受け入れ、清々しい笑顔を浮かべる。

 

「……ノワール!」

 

 パープルハートは、倒れたノワールを抱き上げる。

 

「ありがとうネプテューヌ……私を……倒してくれて……」

 

 ノワールの真意、それは女神に討たれることだった。

 全てを犠牲にして突き進み、自分ですら止められなくなった自分を、女神であるネプテューヌに倒して止めてもらいたかったのだ。

 

「私の本当の願いは……もう叶わないから……」

「本当の……願い……?」

「あの頃に……昔に戻りたい……ベールがいて……ブランがいて……いつのまにかいなくなっていた友達も……まだみんながいたあの頃に……!」

 

 

 

 

 

『みなさーん! これをみてくださいましー!』

『……ベールっていつからそんなしゃべりかたになったの? おじょうさまみたい。ていうかなにそれ』

『カメラですわ。せんせえのおへやからもってきましたの』

『かってにもってきちゃいけないのよ。かえしてきなさい』

『あとでバレないようにもどせばいいんですわ。それより、これでしゃしんをとりませんこと?』

『しゃしん?』

『わたくしたちのおもいでをのこすんですわー!』

『……めんどくさ』

『えぇ〜! そんなこと言わないでブラン〜! やりましょうよぉ!』

『はぁ……いちまいだけだからね。おわったらちゃんともどしなさいよ』

『ありがとうございますわノワール! ほらほらブランもはやく!』

『わたしいまほんよんでるんだけど……?』

『ほらほら! ほらほらほら!』

『ひっぱらないで。はぁ……しょうがないわね』

『とりますわよー! えっと、タイマーっていうのは……このボタンですわね!』

『それちがう、タイマーはこっち』

『あら、こっちでしたのね。これで、よし、っと。わたくしたちのゆうじょうはふめつですわ!』

『なによそれ……ふふっ』

『……ぴーす』

 

 

 

 

 

 もう戻らない過去に想いを馳せ、ノワールは頬に涙を溢す。

 

「……ノワール」

「ネプテューヌ……この世界を……よろしくね、女神様。もう……逃げないでね」

「……うん、分かってる」

「ありがとう、さようなら、私の……最後のお友達……」

 

 ノワールは、光となって消滅した。

 形見となった黒のシェアクリスタルを、パープルハートは砕き、空に還した。

 

「さようなら、ノワール」

 

 パープルハートは中央教会の中を進み、『真のメガミ』が眠る場所、シェアクリスタル製造室に辿り着く。

 そこに居たのは、結晶の中で眠る先代の『真のメガミ』、名前はオレンジハートと書いてあった。

 

「あなたも……ごめんね、そんな姿になって、よくがんばったわね。あのね、私の力とあなたの力を合わせれば、全てのモンスターを人間に戻せるの。でも……あなたは力を使い果たして……おそらく消えてしまう。それは……私にはどうしようもないの……」

 

 パープルハートの呼び掛けに対し、クリスタルが光る。

 自我を失った筈の『真のメガミ』だが、パープルハートの頼みに肯定の意を示していた。

 

「……力を貸してくれるのね」

 

 女神『パープルハート』の加護が、『真のメガミ』のシェアクリスタルを経由し、世界中に広がっていく。

 その光は、全てのモンスターに降り注ぎ、一人、また一人とモンスターが人の身体と心を取り戻していく。

 

「ありがとう」

 

 そして、全てのモンスターが人間に戻った後、『真のメガミ』は光となって消滅していった。

 

「あなたも……おやすみ」

 

 

 

 

 数ヶ月後。

 女神パープルハートが世界を統べる立場になることに、異を唱えるものは一人もいなかった。

 中央教会の真実は明るみになったが、それを咎める者も、裁かれるべき罪人ももういない。人々はそんなことより、紛い物ではない真の女神の君臨を喜んで受け入れていた。

 

「……まさか、ネプ子が本物の女神様だったなんてね……今でも信じられないわ」

「ねぷねぷじゃなくて……パープルハート様って呼ばなきゃです?」

「いいよ今から畏まらなくて。わたしたちは変わらず親友! でしょ?」

「まぁ……あんたがそれでいいなら」

 

 枯れた世界には、女神の加護が根付き、時が経てば再び繁栄が起こるだろう。その先の未来について、まだ女神は決めかねているが、世界の衰退が止まったことで一先ず安心といえる。

 

「あ、ねぷねぷ、そろそろプリンができあがるですよ〜!」

「ねぷ! やったぁ! 嬉しいなぁ! プリン、プリン!」

「プリンが好物……これが、女神ってマジ?」

 

 時代が進めば、中央教会もメガミ戦争も、人々の記憶からはいずれ忘れ去られていくだろう。

 しかし、女神パープルハートは、その過程で犠牲となった全てを忘れることはなく、その全てを背負い、世界を守っていく。

 今度こそ、人間が真に女神を必要としなくなるその時まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     超次元ゲイムネプテューヌ

 

       -LOST PURPLE-  

 

         -おわり-

 

 

 

 

 

 

 

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