俺達は敵の群れに突撃した。敵の数は九体。対する俺達は四人。場合によっては、いや、常識的に考えれば全滅もあり得る数の差だ。
相手は無属性魔法を頻繁に使用する人型のモンスターだが、無属性魔法の特徴は攻撃力が低い代わりに詠唱速度が速いことだ。俺はまだいいとして、グレートソードを持っているダライオスが辛そうだ。
他三人の攻撃は確実に当たっているものの、ダメージが異常を感じるほどに低い。
「なあ、その武器の通り悪いんじゃないか?」
「今までこれしか使ってないからな、よく分からないね」
「確かに、最近は入るダメージが少なくなってきた気がするが…気のせいじゃろう」
妙に落ち着いた声だった。
今はとにかく目の前の敵の密集したものを排除することに集中することにした。
結果的に、苦戦を強いられたものの、その階層にいた敵の掃討に成功した。
「おいおい、これをまだ最低3回もやるのか…僕はもう限界だな」
サリエルが弱音を吐いている。
「なぜじゃろうなぁ〜ちょっと前まではこんな事余裕でこなせたんじゃがな〜」
「珍しいじゃあないか、お前がそんなこと言うなんてな」
レイアミがそう言った。
「ところで、さっきの武器の通りが悪いとか言っておったが、どういうことじゃ?」
「ちょっと確認してもいいか?」
「ああ、お構いなく」
「教えてくれ、物流神!」
そう叫ぶと、おなじみの物流神が出てきた。
「ヤッホー、何かお困りの様子だねェ」
「ちょっと説明してもらいたいことがあるんだが」
「何かな」
俺は先程の武器のダメージが少なくなってきている気がするということを話した。
「あーそれかァ、簡単な話だよ」
「それはどんなことだ!?」
レイアミも食いついてきた。
「それはね…モンスターが慣れたからなのォ」
一同はしばらく固まっていた。
「待て、それはどんな意味だ」
「うーん、真面目に解説してもいい?」
「構わんよ」
「まず結論から言うと、モンスターがその武器の攻撃に慣れてきているのねェ。まあどうしてそんなことになってるかって話なんだけど、一種類の武器を使っている人が多ければ多いほどモンスターはその武器に強くなるってことらしいんだよねェ」
「そんなんがあったのか…」
「マジかよ」
「じゃあ新入りがめっちゃ強く見えたのって…」
「モンスターがまだその武器に慣れてなかったからだねェ。」
「それもあったのか、俺に仕事頼んだ理由」
しばらくして気づいた。
「ん、じゃあ俺にかけた呪いと被ってないか。そのシステム」
「あーその倍率が人不にだけ高く適応されてるだけだよォ」
「そうか」
「あんたらほんとに神と人間の関係?」
「そうだ」「そうだョ」
「いや、なんかそれにしては馴れ馴れしいなって思って」
その後、しばらく休み、ダライオスが言った。
「今は帰ったほうがいいんじゃなかろうか、全員満身創痍じゃろう?」
「それもそうだ、一時撤退だね」
「武器変えるか…」
そこで俺は提案をした。
「全員で戦鎚を使わないか?あとついでに工房に一本送っておきたい」
「もちろんだ、これは広めた方がいい」
街に帰る途中、少し視界が暗くなったような気がした。
「?!」
「どうした、人不」
「いや、なんでもない。疲れているようだ、ッ!?」
「ダメそうだな」
俺の脳内で誰かの会話が聞こえる。
『大根おろ……もかかるし時…めんど…』
会話というより収録現場かこれは。まあ誰かの声が聞こえる。何故か聞いたことのないはずなのにひどく懐かしい感じがあった。
『……そんなとき……根スリス……』
何故か、聞いたことのある、いや、自らの口から出したことのあるような、そんな口調だった。
「大丈夫かよ、そんな体力で」
「いや、今日はもう活動できなさそうだ」
「肩を貸そう。街までは持ってくれよ」
無事に街に着くことができた。
それにしても、なんだったのだろうか、あの声は。
何かを紹介しているかのような口調だった。かろうじて聞こえたところから推察するに、調理器具の紹介だろう。
少し、思い出した。
「おいおい、またぼーっとしてるぞ」
「なあ、やりたい事があるんだが、いいかな」
「おう」
「家具の店はあるか?」
「あるな」
「そこにはダミーとかあったりするか?」
「ふつうに売ってるよ」
「ならアレができるな」
「アレってのは…」
「広告だ」
「あぁ…ってことは僕たちは専門外ってことかな」
「そうかもしれん」
「じゃあ別行動かぁ…」
その後、パーティとは別れ、教えてもらった家具屋にいき、テーブルとダミー、武具屋でプレートアーマー二つとグレートソードを購入し、工房へ。
工房には、戦鎚を渡し「この武器を作って置いておけばもしかしたら売れるかもしれない」と言っておいた。すぐに作成に取り掛かったので安心だろう。
そしてその足で街の大通りへ。
邪魔にならないような場所、直線の真ん中あたりの縁の方へテーブルを置く。
そこに戦鎚とグレートソードを並べておく。
そのテーブルの横にはプレートアーマーを着せたダミーを設置。
そう、俺はこれから「紹介」する。
この知名度が極限まで低い戦鎚という武器を。