魔術師緑谷出久   作:ヤヤヤンヤ

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また性懲りも無く書いちゃったいました。
だってヒロアカ面白いんだもん。
死柄木弔が志村転弧のままです。お前誰や!?状態です。
視点がコロコロ変わります。


爆誕!!!

 

痛い。

 

「出久ちゃん!出久ちゃんしっかりして!!もうすぐ救急車来るからね!」

「デクっ!!!」

 

痛い。痛すぎる。

 

「いたい・・・」

 

救急車のサイレンが聞こえてくる。やっと来たか。それにしても痛すぎる。

 

「デクきゅうきゅうしゃきたぞ!」

 

かっちゃんの声がする。でも目が霞んで見えない。かっちゃんどこにいるの?私を1人にしないで。1人は寂しいの。

 

「か、ちゃ」

「どうしたデク!?」

「て、てを」

 

かっちゃんが手を握ってくれる。もうそんなに強く握ったら痛いよ。かっちゃんの手あったかいなぁ。・・・・・・あれ、眠たくなってきた・・・。

 

「デク?・・・・・・おいデク!!いずく!!!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

ピ、ピ、ピ、

 

「ん・・・」

 

・・・・・・助かった!!私生きてる!!!

 

「痛っ!!」

 

待って、めちゃくちゃお腹が痛いんだが。あの女私を殺す気か!!いや殺す気満々だったな。目血走ってたし。てかナースコール押さなきゃだよね。

 

ナースコールを押すと40代くらい医師と30代くらいの看護師が病室とスーツを着た男性が入ってくる。医師が聴診器を持ち出久の心音を聴き終えると、胸元からペンを取り出す。

 

「これは何本に見える?」

「1本」

「今此処には何人いる?」

「4人」

「脳の機能、心音共に正常ですね」

「良かった」

「では私はこれで。あまり長引かせないようお願いします」

「わかりました」

 

医師と看護師が病室を出る。

 

「自己紹介がまだだったね。私は塚内直正、警察官だ。よろしく」

「緑谷出久です。よろしくお願いします」

 

出久はペコリと頭を下げる。

 

「単刀直入に訊くが、出久ちゃんあの日何があったのか教えてくれるかい?」

「・・・・・・うちに帰ったら包丁を持ったあの人が立ってて、お腹を刺されました。外に逃げて助けを呼ぼうとしたら、掴まれてまた刺されそうになったけど、幼馴染と幼馴染のお母さんが助けてくれました」

「あの人というには君のお母さんで間違いないね?」

「はい」

「・・・君はお母さんに会いたいかい?」

 

塚内の問いかけに出久は黙る。

 

「・・・・・・いいえ。もうあの人とは会いたくないです」

「わかった。あとはこちらに任せて君は傷を癒やしてくれ」

「ありがとうございます」

 

塚内が病室を出ると、出久は肩の力を抜く。

 

読者の皆さんこんにちは。突然語りかけてごめんなさい。でも私の話を聞いてほしい。話し始めるが、私は所謂転生者というやつだ。あるあると言っていいのかわからないけど、異世界転生しました。緑谷出久として。もうわかってるとは思うけどこの世界は僕のヒーローアカデミア通称ヒロアカの世界だ。

 

前世の私はトラックに轢かれて死んだ。おばあさんを助けたは良いものの自分は間に合わず轢かれてしまった。恐らく即死だ。痛みなんて感じなかったから。いやまさか主人公に成り代わるとは思わなかった。性別そのままなのは助かるけど。リアルなオールマイトをテレビで見た時は柄になく興奮した。

 

とここまで明るく語ってみたが、ここからはこの痛み原因を話したいと思う。この世界では4歳頃に「個性」と呼ばれる超常能力が現れる。しかし稀に個性が発現しない「無個性」が生まれる。原作同様私も無個性だった。

 

無個性とわかった途端あの人、私の母親、緑谷陽は人が変わったように私に暴力を振るうようになった。あの人はいい所のお嬢様だったらしいが私の父親と夜逃げし、今まで住んでいたボロアパートに父親と暮らしていたが、私を妊娠した途端父親が蒸発し、女手一つで私を育てていた。あの人は私がすごい個性の持ち主なら、実家に取り入って養ってもらおうとしていたらしい。けれど私は無個性だったので、その計画は実現しなかった。

 

「アンタなんか生まれてこなければよかったのに!!」

「目障りなのよ!!」

 

別人のような豹変っぷりに私は慄き、あの人に見つからないように生活していた。見つかれば殴る蹴るの虐待を受けるから。

 

ボロアパートとは比べ物にならない邸宅の住人のかっちゃんと知り合ったのは幼稚園。隣の席だったかっちゃんが話しかけてくれたのが始まり。そこから私は爆豪家と仲良くさせてもらっていたが、あの人はかっちゃんの個性目当てでかっちゃんにばかり話しかけていた。

 

そしてあの日、奇しくも5歳の誕生日、コンビニで昼食を買って帰ったら血走った目をして包丁を持つあの人がいた。お母さん?と呼ぶとあの人は突然近づいてきてお腹に包丁を刺した。痛かったがこのままでは殺されると思い、外に飛び出すとかっちゃんと光己さんがちょうど家の前にいてあの人を取り押さえてくれた。覚えているのはそこまで。気づけばここにいた。

 

かっちゃんは大丈夫だったのかな。あんな修羅場を見てトラウマにでもなってたらどうしよう。悪いことしたな・・・。

 

「デクっ!!」

 

突然病室のドアが開きかっちゃんが入ってきた。

 

「かっちゃん・・・」

「こら勝己!大声出さない!出久ちゃんがびっくりするでしょ!」

 

その後ろから光己さんも病室に入ってくる。

 

「おまえいっしゅうかんもねてたんだぞ!」

「うそ・・・」

「うそじゃねぇ!」

「勝己!だから大声出さない!」

 

光己さんがかっちゃんに拳骨を落とす。

 

「ごめんね出久ちゃん。この子出久ちゃんが目覚めないんじゃないかってすごく心配してたんだよ」

「・・・・・・」

 

かっちゃんがそっぽを向く。

 

「ありがとうかっちゃん。私はほらこの通り、とっても元気だよ!」

 

私は腕を上げガッツポーズをする。腹の傷がじくじくと痛むが気づかないフリをする。

 

「デク」

「なに?」

「おれがおまえをまもる」

 

かっちゃんが真剣な目で見つめてくる。

 

「だからおれとけっこんしろ」

「・・・・・・・・・ん?」

「おまえはかわいいからすぐつれていかれる。おれのものってわかるようにしとくんだ」

 

た、確かに誘拐未遂は1ヶ月に4,5回はあったけど、子供だからかわいいって感じでしょ?

 

「よく言った勝己!」

 

光己さんがかっちゃんの頭を勢いよく撫でる。

 

「え、あの、か、かっちゃん本当に結婚するの・・・?」

「いやなんか」

「違う違う!私かっちゃん大好きだよ!でもかっちゃんに悪いよ。私全然君に釣り合わないし・・・」

「おれもおまえがすきだ。だからもんだいない」

 

かっちゃんがおかしい。これは夢かな?ほっぺを抓ると痛い。夢じゃない。何が起こってるの!?

 

「デクをまもれねぇのにヒーローなんかなれるわけねぇ」

「かっちゃん・・・」

「ぜったいなにがあってもおまえをまもる。あのおんなになんかゆびいっぽんふれさせねぇ!」

 

目から涙が溢れる。

 

「どしたデク!やっぱどっかいたいのか!?」

「ちがう、ちがうの、うれしくて、かっちゃん、ありがとう、ありがとう・・・!」

 

かっちゃんが心配するから泣き止まなきゃ。泣き止まなきゃいけないのに涙が溢れてくる・・・!

 

「頑張ったね出久ちゃん。もう大丈夫だからね」

 

光己さんが抱きしめてくれる。

 

「う、うあぁぁぁぁん!!!!」

 

その後、1ヶ月入院した出久は勝己の家からほど近い児童養護施設に入ることとなった。光己から里親の提案もされたが、出久はそこまでしてもらうのは申し訳ないと断った。

 

「はじめまして出久ちゃん。私は緑橋引子と言います。これからよろしくね」

 

引子さんいたーーー!!!!

 

「よ、よろしくお願いします」

 

児童養護施設みどり園は今年建てられたばかりの新しい施設で施設と言っても少し広めの家のような造りをしている。

 

「あの引子さん、私の他に子供っているんですか?」

「今年建ったばかりだから、まだ出久ちゃんの他に1人しかいないのよ」

 

1人か・・・。

最後にリビングに案内された。そこには黒髪の子がおり、ソファに座ってテレビを見ている。横顔でも美少年ってわかるんだけど。

 

「あの子がもう1人の子で、志村転弧君よ」

 

志村転弧・・・・・・・・・死柄木弔だ!!!!

ど、どうしよう。でも志村ってことはオールフォーワンに出会ってないんだよね。なら闇堕ちはしてないってことだよね。

 

「こ、こんにちは、緑谷出久と言います。よろしくお願いします」

「ん。しむらてんこ」

 

転弧くんは私を一瞥すると短い返事をした。そして私の新しい生活が始まった。

 

ーーーーーーーーーー

 

あれから1年が経ちました。みどり園での生活はボロアパートに比べれば雲の上のような生活です。そういえば転弧くんの事を兄さんと呼ぶようになりました。兄さんがそう呼べって言ってきたから。兄さんは親に捨てられたからか、少なからず家族というものに執着している。

 

かっちゃんに兄さんを紹介すると、うわきか!とかっちゃんに怒られた。兄さんは兄さんだからと1時間ほど説明してやっと納得してくれた。兄さんはというと、いずくはよめにださねぇとこっちもこっちで変な事言ってたが、止める体力は私にはもう残ってなかった。

 

1年経ったので私は小学生となったが、私と兄さんは不登校を貫いている。最初の一週間は真面目に行ったよ?でもクラスの男子達が施設暮らしの事や無個性の事を馬鹿にしてきたからイラついて無視してたら担任に、

 

「無視はいけないよ出久さん。無個性の君と関わってくれてるんだから、感謝しなきゃ」

 

とか言われたら誰だって学校行きたくないって思うだろ!!かっちゃんと別クラスとわかった時から行きたくなかったし、義務教育だから行かなくても進級できるし、前世の記憶あるから小学校なんか行かなくても大丈夫だし、あんな奴らと同じ空気吸いたくないし。ちなみに兄さんはダルいから行きたくねぇと言ってた。

 

そしてそしてここからが一番重要なんです皆さん!!私なんと「魔術」が使えたんです!!魔術なので個性ではないです。古本屋にあった見るからに古そうでボロボロな本に魔術の使い方が書かれてあったんです。生まれてからずっと身体の中に何かがある感覚がしていて、これが個性なのかと思っていたけど診断結果は無個性だったから、もしかしたらと思いその本を買った。筆記体で書かれていたから解読するのに時間はかかったけど、初級の「ガンド」という手をピストルのようにして魔力の塊を放つ技を試してみると、多分指先から魔力が放たれて、床に積まれていた教科書が倒れた。その瞬間すごく興奮した。

 

魔術が使えるとわかった後、すぐにかっちゃんと兄さんに話した。兄さんは喜んでくれたがかっちゃんは面白くなさそうな顔をしていた。理由を訊くと、デクが強くなったら俺が守る意味が無くなるだろだって!!久々のデレにふらついたけど耐えました!!危なかった、私が長女じゃなかったらヤられてましたよ・・・。私は、守られてばかりじゃなくてかっちゃんの隣に立ちたいと伝えると抱きしめられた。すぐ兄さんに引き離されたけどね。魔術の事は3人だけの秘密になった。

 

ーーーーーーーーーー

 

ある日、兄さんといつものように園で過ごしていると、インターホンが鳴った。引子さんが慌てた様子で玄関に走っていく。

 

「今日なんかあったか?」

「さあ?」

 

近くすると複数の足音が聞こえてくる。足音の方を向くと、60代くらいの厳つい男性とその後ろに学生服を着た青年が二人いた。なんか見たことあるような・・・。

 

「引子さんその人達誰」

「理事長先生とその息子さん達よ。二人ともご挨拶して」

「緑谷出久です」

「志村転弧」

 

理事長先生と呼ばれた男性がニカッと笑い出久と転弧の頭を撫でる。

 

「出久ちゃんと転弧君だな。俺のことは理事長先生って呼んでくれ。よろしくな」

「よろしくお願いします」

「ん」

「玄野針だ。よろしく」

 

銀髪で前髪が時計の針のような形をした青年が挨拶をする。イケメンだ。

 

「・・・・・・」

「廻、お前も挨拶しろ」

 

こっちの人は真夏のこの時期に黒マスク・・・。

 

「・・・治崎廻」

 

引子さんと理事長先生は二人で話すことがあるらしく談話室に向かった。

 

「ここはバビューンでドドーンって感じだろ」

「兄さん全くわからない」

「ん〜・・・じゃあカキーンって感じ」

「擬音やめて」

 

兄さんと二人でスケッチブック絵を描いている。

 

「何描いてるんだ?」

 

玄野さんが近寄ってきた。

 

「佐々木のじいさんに頼まれたやつ」

 

兄さんそれだけじゃわかんないよ。

 

「近くに大きな公園があるんですけど、そこに置くモニュメントのデザインを考えてるんです」

「随分と独創的なデザインだな」

 

玄野さんが兄さんの描いたデザインを見て感想を言う。

 

「兄さんのデザインは複雑すぎて実物化できないんです」

「出久はシンプル過ぎなんだよ」

「どんなデザインだ?」

 

玄野さんに絵を見せる。

太陽系の惑星を模したようなデザインの絵を描いた。

 

「地球って70億人も人が住んでるのに宇宙から見れば小さいじゃないですか。なら人はもっと小さくて、個人の違いなんてすごくすごく些細なものだから、態々指摘する必要無いっていう警鐘を鳴らすんです」

「説明長いんじゃね」

「そうかな?」

「・・・・・・」

 

治崎さんが立ち上がり、私のスケッチブックを見つめる。

 

「・・・いい絵だな」

「ありがとうございます!ほら兄さん治崎さんも褒めてくれたよ」

「なんでこの良さがわからねぇんだよ」

 

出久と転弧が言い合う中、治崎は出久を見つめていた。

 

「廻どうしやした?」

「・・・いや、何でもねぇ」

 

治崎は玄野の隣に座り、出久を撫でる。

 

「廻・・・!」

 

玄野は潔癖症で自分から他者に触れようとしない治崎が出久を撫でた事に驚き目を見開く。

 

「治崎さん?」

「次は何するんだ」

「次はー吉井のばあちゃんの依頼ー」

「家に飾る絵を描いてほしいと頼まれたのでそれを描きます」

 

出久達は転弧の独創的な絵に慄きながら完成させていく。

 

夕方になり引子と理事長の話が終わったため、治崎達は帰ることとなった。

 

「もう帰るのかよ」

「また来てくださいね!」

「あぁ」

「またな」

 

この後も治崎や玄野はみどり園に遊びに来るようになった。

 

ーーーーーーーーーー

 

「デク」

「かっちゃん!おかえりなさい」

「ん」

 

学ランを着たかっちゃんがみどり園の入口にいた。またまたあれから月日が流れ、私達は中学3年生になった。早いとか言わないで。中学でも私と兄さんは不登校を貫いている。流石に定期テスト期間は学校に行く。この頭は知識を吸収しまくるので、テストは毎回全教科満点なのだ!勿論兄さんもだけどね。定期テスト期間以外は学校に行かないため同じクラスのかっちゃんはプリントを届けに来てくれている。ありがたい。かっちゃんも第二の家的な感じでみどり園に度々遊びに来て子供達の面倒を見てくれる。あれからみどり園には子供が5人も増えたので、面倒を見てくれるのはすごくありがたい。

 

「あーついに来たのね、この紙」

「持って行ってやるから書け」

「でも決まってないのよね〜」

 

そういえば口調が変った。学校に行ってないため暇で暇で仕方なかった私は、魔術の本を見つけた古本屋に入り浸り、店主のお姉さんと友達になった。お姉さんとおしゃべりしていたらいつの間にかお姉さんの口調が移って戻らなくなっていた。別に困ること無いしいいか、とそのままにしている。

 

閑話休題

 

出久は進路希望と書かれたプリントを持ち上げ見つめる。

 

「かっちゃんはどこに行くつもりなの?」

「雄英」

「ヒーロー科よね」

「お前も来い」

「私無個性なんだけど」

「んなもん関係ねぇわ」

 

この世界に生まれて気づいたけど、ヒーローへの憧れを持たない人間は異物のように見られることがある。私はヒーローになりたいかと訊かれても別にと答えるだろう。兄さんも同様だ。確かに金になる仕事だから、みどり園の資金援助くらいならできるかもしれないとは思うけど。

 

「でもかっちゃんと離れるのは嫌だー」

「ならヒーロー科にしろ」

「何、なんの話?」

 

兄さんがアイスを食べながらソファに座る。

 

「進路希望の事よ」

「あーそんな時期か。勝己どこ行くんだよ」

「雄英」

「なら俺もそこ行く」

 

兄さんの即決に目を見開く。

 

「兄さん、ヒーローになりたいの?」

「いんや。でもヒーローって金貰えるだろ?引子さんに返せるもんつったらそんくらいしかねぇしな」

「だとよデク。あとはテメェだけだ」

 

二人の視線が私に注がれる。

 

「わかったわ、私も雄英に行く」

「うし、勝己よろしく〜」

 

転弧はいつの間にか書き上げていたらしく勝己にプリントを渡すと、自室に戻っていった。

 

「アイツ何しに来たんだよ」

「兄さん今拓実のロボット直してるのよ」

「また壊したんか」

 

拓実とは4歳の男の子で、4年前園の前に毛布の包まれていたのを転弧が発見した。ロボット遊びやヒーローが大好きな子だ。

 

「お前も早よ書け」

「はーい」

 

第一希望から第三希望まで雄英高校ヒーロー科と書いた紙をかっちゃんに渡す。

 

「今日は夕飯どうするの?」

「家で食う」

「オッケー、あ!」

 

かっちゃんに渡すものがあったんだった。

 

「これ持って帰って。マカロン作りすぎたの」

「けっ、甘ぇのかよ」

「ふっふっふっ・・・、かっちゃんのために甘くないマカロン作ってみました!」

 

紙袋の中から可愛らしくラッピングされた箱を取り出す。

 

「テレビで七味で作ったマカロンが特集されていたから、これならかっちゃんも食べれるかなって思ったの」

「・・・・・・」

「箱に説明書入れてるから。食べたら感想聞かせて頂戴」

「・・・・・・あんがとよ」

 

かっちゃんが照れながら紙袋を受け取る。

 

「あ、でも美味しくなかったら食べなくていいから!」

「バカか!テメェが作ったもんで不味かったもんなんてねぇんだよ!全部食べ尽くしてやるわ!!」

「かっちゃん・・・!」

 

スパダリってかっちゃんのためにある言葉だよね!!!

 

「大好きー!!」

「んなこと大昔から知っとるわ」

 

かっちゃんが帰った後、早めに夕飯の買い出しに行こうと兄さんを誘い園を出る。

 

「今日は何すんだ?」

「生姜焼きでもしようかなって」

「よっしゃ」

 

買い物を終え二人で薄暗い高架下を歩いていると、液体が流れる音が聞こえる。後ろを振り返るとヘドロのようなものがマンホールから溢れていた。

 

「何あれ、気持ち悪い」

 

兄さんの後ろに隠れる。

 

ヘドロが徐々に集まり目や口が現れる。

 

「Lサイズの隠れ蓑・・・!」

「敵か」

 

ヘドロ敵が兄さんに向かって飛びつこうとする。

 

『動くな』

 

呪文を唱えると突然ヘドロ敵の動きが停止する。側から見れば空中に浮いてるみたいに見える。

 

「兄さんこれどうする?」

「このままでいいだろ。帰ろ帰ろ」

 

誰か追放してくれるでしょ。帰ろうとしたら目の前でマンホールが吹っ飛んだ。また敵が来たかな。

 

「もう大丈夫。私が来た!!」

 

マンホールから金髪の筋骨隆々な大男、誰もが知るNo.1ヒーローオールマイトが現れた。オールマイトは追いかけていたヘドロ敵に少年少女が捕まっていると思っていた。しかしそこには宙を浮くヘドロ敵と無傷の少年少女がいた。

 

「あれ?」

「オールマイトだ。デカ」

「オールマイト、敵はあれです」

 

出久がヘドロ敵を指さす。

 

「そ、そうか!」

 

オールマイトが空のペットボトルにヘドロ敵を押し込む。

 

「どうするの兄さん」

「どうするかねぇ」

 

結局オールマイトが敵を回収するまでそこで待っていた。

 

「怪我は無いかなお二人さん!」

「だいじょぶ」

「はい、大丈夫です」

「そうか、怖かっただろう。だが安心してくれ!敵はもうこの中だ!」

 

オールマイトがヘドロ敵が入ったペットボトルを持ち上げる。

 

「では私はこれdブフォッ!!!!

 

オールマイトが突然血を吐き、ガリガリの姿に変わる。

 

「うおっ」

「!」

 

びっくりした。原作を知っている身でもこれはびっくりするよ。

 

『・・・・・・』

 

沈黙が走る。

 

「Bye!!」

 

オールマイト?が勢いよくその場を去ろうとしたが、ふらつき倒れる。

 

「え、えぇ・・・」

 

普段あまり動じない兄さんもこの時ばかりは動揺してた。

 

「に、兄さん!園に連れて行きましょう!」

「そ、そうだな」

 

2mくらいある長身の痩せ細った男を二人がかりで園に運ぶ。お、重いぃぃぃ。

 

ーーーーーーーーーー

 

「・・・・・・ここは」

 

オールマイト、本名八木俊典は見覚えのない天井に今までの記憶を思い出す。

 

「ハッ!」

 

八木は勢いよく起き上がる。

 

「いずねぇおきたよー!」

 

子供の声が聞こえたため周囲を見回すと、おもちゃやら絵本やらが床に無造作に置かれていた。

 

「はーい、ありがとう稔」

「えへへ」

「兄さん呼んでくるから先に行ってて」

「わかったー」

 

小さな足音が自分の方に向かってくる。3歳か4歳くらいの男の子が視界に現れる。

 

「こんにちはー!」

「こんにちは」

 

元気のよい挨拶に八木は自然と笑顔になる。

 

「少年ここはどこかな?」

「ここはねみどりえんっていうの!」

「みどり園・・・」(・・・児童養護施設か)

 

また足音がこちらに向かってくる。

 

「お、ホントだ起きてる」

 

先程出会った少年と少女が現れた。

 

「オールマイトさんご気分はどうですか?」

 

八木はふと左脇腹の痛みが無いことに気づく。オーバーサイズののTシャツを捲り確認すると、痛々しい見た目をしていた手術痕が消えている。

 

「これは・・・」

「あの、まだ痛みはありますか?」

 

少女が尋ねる。

 

「いや、大丈夫だ」

「良かった」

 

八木は自身の身体を触ると全摘した筈の胃の感触があり、呼吸も前に比べて格段にしやすくなっていた。

 

(治癒系の個性か・・・?)

「・・・・・・失礼を承知で訊くが、君達の個性を教えてくれないだろうか」

「俺は崩壊、5本指で触れた物を崩壊させんの」

「私は無個性です」

「・・・・・そうか、ありがとう」

(個性で治癒されたのではない・・・・、では一体これは・・・)

 

八木は自身に起こった摩訶不思議な現象の原因は個性によるものだと思っている。

 

「出久、言った方がいいんじゃねぇの」

「えぇ。オールマイト、怪我を直したのは私です」

「だ、だが君は無個性だと・・・」

「はい。私は正真正銘の無個性です。でも別の力を持っています」

「別の力?」

 

出久が背後から分厚くボロボロの本を取り出し八木の前に置く。表紙には筆記体の文字が書かれている。

 

「SORCERY・・・?」

「魔術です。私は魔術が使えるんです」

 

沈黙が走る。

 

「魔術というとアニメとかで見る・・・?」

「えぇ、その認識で構いません。貴方の内臓は治癒魔術で再生しました」

「ほ、本当に、個性ではないんだね・・・?」

「はい、私の足の小指の関節は2つです」

「・・・・・・この本読んでもいいかな」

「どうぞ」

 

八木は暫く無言で本を読んでいた。本には、魔術は紀元前から存在していた。魔術を使う者には魔力というエネルギーを使用して魔術を操っていた。しかし個性の発現により魔力を持つ者が減少している。100年後には魔力を持つ者はいなくなるだろう、と書かれてある。この本の出版年度が今から80年前、ということは現在では魔力を持つ者はこの少女だけなのかもしれない。そして本には様々な魔術の名前と使い方が載っていた。先人は後世に魔術があったことを遺そうとしていたのだろう。

 

八木は本を閉じ、二人に向き直る。

 

「二人の名前を訊いてもいいかな」

「緑谷出久です」

「志村転弧」

「緑谷少女、志村少年、私を助けてくれてありがとう。感謝してもしきれない」

 

八木が頭を下げる。

 

「この礼はいつか必ず・・・!」

「いいって、俺運んだだけだし」

「私も結構です」

「そう言わずにさ、何かない?これでもNo.1だからね大抵の事は出来るよ!」

「んじゃさ、出久の個性登録してよ」

 

転弧の提案に出久は目を見開く。

 

「個性登録かい?」

「そ、俺達雄英のヒーロー科受験したいけどヒーロー科って実技試験あるだろ。出久が力使うには無個性のままだと自由に使えねぇ、だったら個性ってことにしとけば何の心配も要らねぇって思ったんだよ」

「兄さん・・・」

「確かに個性社会の今、魔術の事が知られれば実験対象になるかもしれない・・・。わかった、私の方で手を回しておくよ」

「ありがとーございます」

「あ、ありがとうございます!」

 

出久が慌てたように頭を下げる。

 

「では私は失礼するよ。長居してすまなかったね」

「いえ、気にしないでください」

「またな〜」

 

ーーーーーーーーーー

 

二日後の早朝、出久と転弧は海浜公園にいた。昨日オールマイトから明日の早朝海浜公園に来てほしいと電話があったから。

 

海浜公園には不法投棄されたゴミの山が出来上がっている。

 

「なんで俺まで呼ばれたんだよ・・・」

「兄さんもオールマイトの本当の姿を知ってるからでしょ」

 

まだ眠そうな転弧と違い、出久はいつも通りだ。出久にとっては毎朝早起きして走り込みをしているため酷ではないのだ。

 

「私が早朝に〜来た!」

 

今日はマッスルフォームでの登場だ。

 

「おはようございますオールマイト」

「おはよう緑谷少女!志村少年はまだ夢の中かな!」

「起きてるよ・・・」

「ならば良し!」

 

オールマイトの声に転弧の閉じかけていた瞼が開く。

 

「オールマイト、今日はこんな早朝に呼び出してどうしたんです?」

「今日は君達に私の秘密を教えたくてね。早朝なのは空いている時間がこの時間しかなかったんだ」

「秘密ですか?」

「あぁ、緑谷少女が治してくれた傷のことさ。助けてくれたキミ達に言わないのも気が引けてね」

 

それからオールマイトは5年前自身に傷を負わせたオール・フォー・ワンについて、そして自身の個性ワン・フォー・オールについて二人に話す。

 

「なんか違う世界の話みたいだな」

「ハハ、確かにそう言われても仕方ない。・・・今度こそ私はヤツを捕まえる。怪我を負ったままでは無理だったかもしれない。本当に二人には感謝しかないよ」

「私の魔術がお役に立てて良かったです」

 

出久は微笑みを浮かべる。

 

「そうだ!緑谷少女、キミの個性登録しておいたよ。個性名は“魔術師”にしたけど良かったかい?あの本に載っていた名前を用いたんだけど・・・」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます」

 

オールマイトはこれから仕事だと言い颯爽と帰っていった。

出久と転弧も園に戻りいつものように下の子達の世話をしていた。

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