蝉が煩いと思うほど鳴いてる。こんな炎天下でなんでみんな平気なの・・・。暑い・・・。暑いのは苦手なんだよ。もちろん寒いのも。
「雄英高は1学期を終え、現在夏休みに入っている」
やっと相澤先生の話が始まった。先生そんな真っ黒な格好で暑くないの?見てるだけで暑いんだけど。早くバスに乗ろう、溶けちゃうよ。
「だがヒーローには安息の日など無い。君達にはこの林間合宿で更なる高みへ、プルスウルトラを目指してもらう」
『はい!』
はーい。
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「出久久しぶり」
「・・・何言ってるの兄さん」
隣の席に座る兄さんがいい笑顔で変なことを言ってきた。昨日も今日も会ってる、というか一緒に住んでるでしょ。
「なんとなく?」
「何それ」
「だって俺2話分出てねぇし」
「???」
ついに兄さんの言語がわからない日が来るなんて・・・。気にしないでおこう。兄さんが変なのはいつものこと、いつものこと。
「俺寝るから、着いたら起こしてくれ」
「わかったわ」
話し相手がいないなら景色でも見るか。それにしてもみんな元気だなぁ。これからのことを知ってる身としては今だけ楽しんでねって感じだけど。
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「ようやく休憩か〜」
「トイレ!トイレ!」
目的地に到着しましたー。パーキングエリアとはかけ離れたなんにもない場所です。バスの近くには黒の高級車が止まってる。やっぱり有名ヒーローは稼ぎがいいんだ。
「なんの目的も無くでは、意味が薄いからな」
みんなが頭に?を浮かべていると車のドアが開いてヒーローコスチュームを着た2人組が現れた。
「ようイレーザー」
「ご無沙汰してます」
先生が敬語ってことはこの人結構年いってるのか。
「煌めく眼にロックオン!」
「キュートにキャットにスティンガー!」
『ワイルドワイルド、プッシーキャッツ!!』
拍手しとこ。
パチパチパチ
「今回お世話になるプッシーキャッツの皆さんだ。お前ら挨拶しろ」
『よろしくお願いします!』
・・・あれ?車の横に男の子がいる。もしかしてあの子が洸太くん?
そういえば話してなかったんですけど、洸太くんのご両親ウォーターホースは生きてます。でもあの時重傷だったから後遺症が残ってるかもだけど・・・。なんでそんな事知ってるのかって?まあ色々あったんですよ。後でちゃんと説明しますから!
「今は午前9時30分。早ければ12時前後かしら?12時半までかかったキティはお昼抜きね」
みんなバスに逃げようとしてる。ホウキ・改準備しとこ。ホウキ・改っていうのはメリッサさんに貰ったカッコいいホウキのことだよ。(それを分解して、仕組みを理解して、投影魔術で創り出してるの)
「兄さん乗って」
「りょーかい」
ピクシーボムが地面に手をついた瞬間勢いよく地面を蹴り飛び上がる。土が液状化して波のようにみんなを飲み込む。崖の下まで流されてる。
「おーすげー」
兄さんが写真を撮りながら飛んでくる土を個性で消してる。器用だな。
「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から3時間、自分の足で施設までおいでませ!この魔獣の森を抜けて!!」
みんな頑張ってね。
「出久ここからどんくらいだ?」
「スピード出せば5分くらいで着くわよ」
「んじゃゆっくり行こうぜ」
「了解」
ゆっくり飛ぶなら森の全体像を確認できる。一応探索のルーンを森全体に貼っとくか。
「
これでかっちゃんが狙われてもどこにいるかわかるようになった。
「お?まじか。鳥もいんのかよ」
後ろからバサバサという音がしてるけど鳥なのか。
「はい崩壊っと」
「ありがとう兄さん」
「うい〜」
前から後ろからと鳥的な土の魔獣達が来るけど兄さんは崩壊、私はガンドで対応する。30分くらいそんな事を続けていると麓の施設が見えたので高度を下げる。
「よいしょっと」
「出久サンキュー」
「いいえ〜」
投影していたホウキ・改を消して相澤先生の元へ向かう。プッシーキャッツの二人と洸太くんはいないみたい。みんなの所にいるのかな?
「はいお疲れさん。バスから荷物取って部屋に行け。昼食は時間になったら食堂で取るように」
「ういーす」
「わかりました」
ーーーーーーーーーー
「おぉ!ホントにもう着いてるよ」
「お疲れさまー!」
昼食を片付けていると食堂に出入口にマンダレイとピクシーボブ、洸太くんがいた。
「お疲れ様です」
「ういーす」
簡単な挨拶をして食堂を出るため三人の横を通りすぎる時洸太くんをチラリと見ると、何やら言いたそうな顔をしていた。でも目があった瞬間すぐに逸らされてしまった。どうしたんだろう?
そして時は過ぎてあと少しで日が暮れそうになっていた。暇だったので兄さんと二人でオリジナル魔術を考えて、いや違うな遊んで、夕食の手伝いをしていたらボロボロのみんなが食堂に現れた。今何時だろう。・・・17時40分。
「みんなお疲れ様」
「もうメシ出来てるぞ」
『腹減ったぁぁ!!!!!!』
みんなはテーブルに置かれた山盛りの料理に釘づけだ。昼食抜きだったもんね。
「デグぢゃ”ん“!!!!」
「お疲れ様麗日さん。いっぱい食べてね」
「う”ぅ“・・・!!癒しだぁぁ」
疲れ過ぎてテンションがおかしくなってる・・・。
「蕎麦がある・・・」
忘れてた。轟くんの席には蕎麦を並べてたんだった。まさかの蕎麦の登場で轟くんが驚いてる。
「ちょうどストックされてたから茹でてみたの。市販ので申し訳ないんだけど」
「いや、ありがとう緑谷」
「え、えぇ。喜んでもらえてよかったわ」
そ、そんなに嬉しいかったんだ。・・・・・・かっちゃんそんなに睨まないで。かっちゃんの席にもエビチリ置いてるでしょ。贔屓してるわけじゃないってば。
「緑谷さんそこの野菜運んで貰えない!?」
「わかりました!」
マンダレイから言われた通り厨房にダンボールに積められた野菜を運ぶ。運び終え食堂に戻るため振り返ると洸太くんが着いてきていた。
「!・・・どうしたの?」
「・・・・・・」
Oh・・・無言。
「私に何か用かな?」
「・・・・・・」
何か言いたいけど、言っていいのか・・・って顔をしてる。なんかうちの子供達に似てるな。虐待されてた子は最初はこんな感じの顔する。自分の意思を伝えることをためらい塞ぎ込んでしまっている。そこを何とか引子さんや兄さん、時たまかっちゃんと協力して根気強く話かけるのだ。
閑話休題
洸太くんの言葉を待つ。初対面だもん緊張するよね。
「・・・・・・ウォーターホースって知ってるか?」
「もちろん。お元気かな?」
「!・・・今リハビリしてる。でも前より動けるようになった」
「そう、よかった。・・・そういえば自己紹介してなかったね、緑谷出久です」
「出水洸太、です」
軽い自己紹介と世間話をして、洸太くんとちょっとだけ仲良くなれた。そういえばウォーターホースに何があったか言ってなかった。
2年前本を借りようと図書館に行っている途中、近道しようといつも通る道ではない人通りが殆どない道を通っていると、ウォーターホース夫妻と筋肉妖怪(マスキュラーだっけ?)が戦っている場面に出くわした。夫妻はあと一発でも喰らえば死んでしまうんじゃないかってくらいの重症だった。状況を把握した瞬間、筋肉妖怪をガンドで吹き飛ばした。確か魔力を3分の1くらい使ったガンドだったから結構な勢いで飛んでいった。敵が死んだってニュースは無かったから多分生きてる(死んでればよかったのに)。筋肉妖怪が吹っ飛んだ後、ウォーターホース夫妻を軽く治療して(全部治すと怪しまれるからね)警察と救急車を呼んだ。自分の携帯じゃなくて近くに設置されてた公衆電話で。携帯ですればいいのにって?だって事情聴取面倒だったから。その間、奥さんの方は気を失っていて旦那さんは意識はあるけど痛みで動けないって感じだった。救急が見えたら私は申し訳ないけど逃げた。なのでその後夫妻がどうなったか知らなかったのです。
2年前のことはこんな感じかな。ウォーターホースは活動休止中で全然情報が無かったから、どうなってるのかわからなかったけど元気ならよかった。折れた骨を治すくらいしかしなかったから申し訳なかったんだよね。洸太くんが私にウォーターホースの事を聞いてきたのは旦那さんが私を覚えていたってことだ。でも洸太くんだけが知ってる感じだったし、面倒なことにはならないか。
「デクちゃーんお風呂行こー!」
「今行くわ!」
さて、回想はこの辺でお風呂に入ってきまーす。
ーーーーーーーーーー
『温泉だー!!』
芦戸さんと葉隠さんが両手を上げて喜んでる。意外と大きな温泉だね。
「温泉あるとかサイコーだわ!」
「気持ちが良いですわね」
八百万さんの言うとおり気持ちー。このまま寝ちゃいそう。
「緑谷ちゃん、寝ては駄目よ」
「はーい」
「ゴクッ・・・」
左から唾を飲み込む音がしたので、そっちを向くと麗日さんが緊張した面持ちでこっちを見てた。
「麗日さん?」
「デ、デクちゃん・・・」
「は、はい」
どうしたんだろう・・・。
「触ってもいいかな・・・?」
「触る、私を?」
「うん!!」
「ど、どうぞ」
何を言われるかと思ったらそんなことか。減るものでも無いしいいよね。麗日さんが恐る恐る私の腕に触ると目を見開いた。
「す、すべすべや!!!」
「緑谷ちゃん私も触っていいかしら?」
「どうぞどうぞ」
梅雨ちゃんも腕に触れる。くすぐったい。
「確かにすべすべね。ずっと触っていたいくらいだわ」
「ふふっありがとう」
「爆豪離せぇぇぇ!!!!!!」
峰田くんが大声でかっちゃんに何か言ってる。そういえばさっきから男湯からかっちゃんの声がしてたけど、何話してるんだろ。
「テメェみてぇな変態にデクの裸見せるわけねぇだろォ」
「うおぉぉ!!!リア充めぇぇぇ!!!!」
も、もうかっちゃんったら峰田くんくらい自分でなんとかできるのに。洸太くんも男湯と女湯の壁の一番上で待機してくれてるし。洸太くんは極力女湯を見ないようにしてくれてる。紳士だけどかわいい。
「・・・?、デクちゃんこの傷跡どうしたん?」
ずっと腕を触っていた麗日さんが、背中の傷跡に気づいた。
「小さい頃怪我した時にできた傷なの」
「このくらいの傷跡なら緑谷ちゃんの個性で治せるわよね?」
「えぇ、でもこれは戒めみたいなものだから」
『戒め?』
「危ないことは極力するなっていう昔の私への戒め」
二人は納得したみたいで、それ以上は傷跡について訊かれることはなかった。
・・・・・・この傷跡を残している本当の理由は、あの日々を忘れないようにするため。死にそうになったけどあの人を嫌いになりきれないのは事実だから。優しく頭を撫でてくれたあの手を忘れたことなんてない。忘れたくなったこともあったけど、やっぱりダメだった。・・・今回の事件が終わったら会いに行ってみるか。あの人が収容された刑務所から手紙が来てたんだよね。あの人が私に会いたがってるらしい。あの事件から10年、やっとかって思う。やっと自分がした事と向き合うつもりなんだなって。ホントにそうかはわかんないけど。
湿っぽい感じだけど、今日はこのくらいにして寝まーす。
ゆっくり更新します。