みなさま麦茶飲みましょ。
モヤを抜けると薄暗いバーのような場所に出た。というかバーだな。なんで電気全部つけないんだろう。節約かな?敵も苦労してるんだね・・・。
「ようこそ緑谷出久。歓迎するよ」
死々倉滅がカウンター席からこっちを見ていた。見返り美人図かな?イケメンだから様になってるー。歓迎するならもっと歓迎してます感を出してほしいよ。
「ありがとう死々倉滅。ねぇ座りたいんだけど、椅子くらい用意してくれないの?」
こちとら客人だぞ!
「出久ちゃんトガの上にどうぞ!!」
「・・・結構です」
満面の笑みで足を叩いても座らないから。座ったら血吸うよね。チウチウされるよね。
後ろを向くと拘束具付きの椅子があったのでそれに座る。これ絶対かっちゃん用だな。
『やあ緑谷出久』
オンボロのブラウン管テレビから愉悦混じりの声が聞こえてきた。
「お早い登場ね、オール・フォー・ワン」
『おや、既に知っていたか』
「オールマイトからある程度話は聞いているわ。爆豪勝己を浚えず残念だったわね」
『あぁその通りだよ緑谷出久。君は僕の計画をとことん壊してしまう。僕は爆豪勝己だけ拉致できれば良かったんだぜ?しかし死々倉滅は君にご執心でね。仕方なく計画に組み込んだのさ』
よく喋るねー。話をまとめると死々倉が余計なことをした、と。
「それで?何故爆豪勝己を狙ったのかしら」
知ってるけど喋らせておこう。決して文字稼ぎじゃないから。違うから。
『彼は敵寄りの思考回路を持っている。教育すれば素晴らしい敵が出来上がるよ』
かっちゃんが聞いてたらガチギレしそうだね。あ、そういえば人形使わなかったな。私のバカ、こんな時に使わなくていつ使うんだよー。
『だが爆豪勝己は君がいる限りヒーローであり続ける』
いけないいけない、今はシリアスを演じなきゃ。
「じゃあ私を殺す?」
『ははっ』
笑いやがった。えーえーわかってますよ、私を殺せばかっちゃんはオール・フォー・ワンを絶対に赦さない。死ぬまでいや、死んでも殺し尽くす。もちろんヒーローとして。
「おい、手短に済ませるって言ってたよな。無駄話してんじゃねぇ」
死々倉がドスの効いた声でテレビの方を向く。貴方そんな声も出せたのね。儚げイケメンなのに。
『おおそうだったね。緑谷出久、単刀直入に訊こう。君のそれはなんだい?』
やっと本題か。それって多分魔術のことでしょ?
「オール・フォー・ワンでも流石にわからないのね」
『僕は個性にのみ目を向けていた。今になってこれは失敗だったと反省しているんだぜ?君のそれは個性ではない、個性と相対するものだ』
オール・フォー・ワンって長生きなのに魔術のこと知らないんだ。てことはグラントリノは全くの偶然で知っていただけか。ちぇ、ハゲチャビンなら何か知ってると思ったのに。弟さんにばっかり固執してるから視野が狭くなっちゃったんだね。
「知ってどうするつもり?」
『それは勿論、僕の物にするに決まっているじゃないか!』
いや、決まってないし。というか個性持ちって魔術使えるの?私は無個性だから大丈夫だっただけじゃないの?比較する人がいないからわかんないよ。他人に魔力をあげることはできるけど、本が古すぎて個性との兼ね合いとか書いてなかったし〜。というかハゲチャビンに私の魔力あげるの?・・・あー、実験はしてみたいかも。どうせ死んでも私に迷惑かかるわけじゃないし。逆に死んだ方が原作みたいにならなくて良いまである。殺してもオールマイトとの戦いで死んだことにすればいいのでは?よし、それでいこう。ハゲチャビン、お前の犠牲はすぐに忘れるぜ!
「やめておいた方がいいと思うけど」
『予想通りの返答だなぁ』
面白くないな〜って思ってんだろ。誰もお前を笑わせるつもりありませーん。
「ねぇ黒霧、水か何かくれないかしら」
ずっと外にいたから喉が渇いてしまった。
「仮にも敵のアジトだということを忘れていないでしょうね・・・」
む、なんだその呆れたような声は!水を貰いぐびぐびと一気飲みする。ぷはっ!うるおう〜。
『・・・・・・』
え、なに、なんかみんなに引かれてるんだが。あぁ、毒が入ってたかもしれないんだ。防御魔術のおかげで私毒効かないから大丈夫なの。
「オール・フォー・ワン、もう話は済んだだろ。切るぞ」
死々倉は返答を聞かずにテレビのコンセントを抜く。えぇ・・・目の前にリモコンあるじゃん。コンセント派なの・・・?コンセントを抜きこっちに振り返るとめっちゃいい笑顔をしていた。うわーこれヒーローと敵って関係じゃなかったらヤバかったかも。10人がこの笑顔見たら10人全員こいつに惚れるわ。
「緑谷出久今日はもう遅い、ゆっくり休んでくれ」
えぇー、夜はまだこれからだろ!!
「滅くん酷いです。出久ちゃんを独り占めする気ですね。トガも混ざりたいです!」
「そうだそうだ!」
トガちゃんとトゥワイスがぶーぶー言ってる。しかし死々倉は黒霧のワープを使って敵達をアジトから消す。最後までぶーぶー言っていた二人は抵抗していたが、荼毘に首根っこ掴まれて消えていった。
それから2日間くらいは敵連合とボードゲームとかトランプとかで遊んでた。みんな意外とノリいいんだよ。オール・フォー・ワンに先生と呼ばれたおじいちゃんがテレビ越しに話しかけてきたけど、その人も魔術のことは知らなかった。まあ科学と魔術って相反するものだからね。この人は知らなくても仕方ないよ。
『我々も手を拱いているわけではありません。現在、警察とともに調査を進めております。我が校の生徒は必ず取り戻します』
アジトに来て3日目、雄英高校の会見の中継を見ていた。帰ったら反省文だけで済まないんだろうなぁ・・・。あぁ、今から気が重い・・・。
「雄英もご苦労なこったな」
「攫われた本人は呑気にババ抜きしてるんだものね」
「はい1抜けー」
「かーっ、またかよ!?」
「出久ちゃん強すぎです〜」
中継を聞き流しながら持っていた2枚のトランプをテーブルに置く。ふふん!ババ抜きの出久と言われた私にババ抜きで勝てると思うなよ!
コンコン
勝利の喜びを噛み締めていたら、出入口のドアがノックされた。
「どうもーピザーラ神野店ですー」
「誰かピザ頼んだの?」
確認しても誰も自分だと言わない。え、じゃあ誰が頼んだんだよ。
「スマーーッシュ!!!!!!」
わー!ダイナミックな配達の仕方だー!!レンガ調の壁からオールマイトが突っ込んできた。壁には見事な大穴が開いている。
「黒霧ゲートっ!!!」
死々倉が黒霧に指示を出すが、オールマイトの後ろからシンリンカムイが現れ腕の枝?触手?を伸ばし敵達を拘束していく。おぉ、アクション映画みたいだ。その後からグラントリノも飛んできて荼毘の頭を思い切り蹴り意識を削いでいた。痛そー。ドンマイファザコン、パパの声に反応したのが悪い。
「流石若手実力派だ、シンリンカムイ!そして目にも留まらぬ古豪、グラントリノ!もう逃げられんぞ、敵連合・・・。何故って?」
「我々が、来た!!!」
決まった!心の中で拍手しとこ。忍者の格好をした人(多分、いや絶対ヒーロー)や機動隊も入ってくる。
「緑谷少女大丈夫かい?怖かったろうに、よく耐えたね」
オールマイトが屈んで頭を撫でてくる。私のこと幼女と勘違いしてません!?撫で方もう少し練習した方がいいと思います。
「ありがとうございますオールマイト。怖くて怖くて仕方なかったです」
「嘘つけ!!今まで何やってたか忘れたのかよ!頭狂ってんのか!?」
黙れトゥワイス!私はいたいけな少女なんだよ!!
「黒霧、脳無持って来い」
「・・・・・・すみません死々倉滅、所定の位置にあった脳無が・・・」
「チッ」
えっと、別の所に待機させていた脳無を持ってこようとしたけど、ヒーローが頑張って捕獲したってことでいいのかな?今の会話ってそういうこと?
「おいたが過ぎたな敵連合。此処で終わりだ、死々倉滅・・・!」
「・・・・・・はぁ。だから言ったんだ、僕はやりたくないって」
「・・・何故笑っている」
死々倉の方を向くとめっちゃニチャアって笑ってた。
「楽しいからだよ。本当にアイツの言った通りになったからなぁ」
「アイツ・・・?まさかっ!!」
オールマイトが死々倉に近づこうとした瞬間泥のようなベチョベチョが死々倉の両隣に現れる。そしてその泥から脳無が現れた。
「脳無・・・!?」
次々に脳無が現れて、ヒーロー達は対処に追われる。ヤバいんじゃないこれ。
「こふっ」
え。いやーーーーーーー!!!!!!!口から泥出てるーーーーーー!!!!!!!!
「緑谷少女!!」
目の前にいたオールマイトを無我夢中で掴む。何これ何これ何これぇぇ!!!!キモイキモイキモイキモイィィィィィィ!!!!どんどん泥が溢れて私達は泥に溺れる。待って、こんなのの中に入りたくない、いやだ、うそうそうそぉぉぉっ!!!!!