グッドイブニングエブリワン、 今日も今日とていい夜ですねー。
「フォウ」
「おはようございますキャスパリーグさん」
お昼寝から目覚めたキャスパリーグさんがもう一度フォウと鳴き、伸びをする。
マーリンさんに塔から落とされ意識を失った私だったが目覚めるとお医者さんや看護師さんに囲まれていた。意識が覚醒していないながらもお医者さんから聞いた話では、私は1週間も眠っていたらしい。そして眠り続けて7日目の今日、突然心肺停止になり危ない状況だったがこれまた突然目を覚ましたそう。夢の中で意識を失う直前に聞こえてきた声は看護師さんの声だった。看護師さんと話してたらあの時聞こえた声じゃん!ってなったんだよねー。目が覚めたものの一度心肺停止になったから大事を取って2日は入院しなければいけないそう。心肺停止になったの、絶対マ塔から落とされたせいだ。びっくりして心肺停止してたんだよ。絶対そうだ。
「マーリンシスベシフォウ?」
「ど、どこでそんな言葉覚えたんですか・・・」
もしかしてキャスパリーグさんってマーリンさんに対して辛辣なのでは?そういえば病院って動物ダメだよね・・・、キャスパリーグさん見つからないようにしなくちゃ。
コンコン
ドアがノックされた。
「緑谷さん、もうすぐ消灯時間なので電気消しますね」
「ありがとうございます」
看護師さんが電気を消してくれたため真っ暗になる。暗い部屋で何もすることもないから寝るとしますか。おやすみなさーーい・・・・・・・・・・・待って、キャスパリーグさんバレたくない?
「フォウ」
キャスパリーグさんが首を横に振る。大丈夫ってこと?たしかに看護師さんは何も言わなかったけど・・・。
「隠れてたんですか?」
「フォウ」
そ、そうですか。ならいいです。寝ます。
翌日。予想していたが事情聴取に来たのは塚内さんだった。そして・・・
「み“どり”や“し”ょ“う”じょ”ぉぉ・・・!!!」
「生きとったか」
オールマイト(号泣)(トゥルーフォーム)とグラントリノも一緒に来てくれた。グラントリノ生きとったかは酷くない?バチバチに生きてますけど?
「お疲れ様?ですオールマイト、グラントリノ」
「1週間も寝おって、こいつを宥めるのに苦労したぞ」
「み、緑谷少女、ぶじ、無事で良かったぁ・・・!」
まだ泣いているオールマイトに苦笑しているとグラントリノがバシンッとオールマイトの頭を叩く。
「私が言うのも何ですが、オールマイト体調は如何ですか?」
「グスッ・・・君のおかげで無傷だったよ!」
「よかった」
あれだけ凄まじい戦いをしていたんだ、治癒魔術を常時発動させていたのは間違いなかった。グラントリノも心配されるような歳ではないそうです。よかったです(微笑)。そして私が一番訊きたかったこと、オール・フォー・ワンについて。
「オール・フォー・ワンは死んだ。緑谷さん、君の力によってね」
やっぱり死霊判定されてたんだ・・・!死霊にはめちゃくちゃ効くんだよな、あの宝具。死ぬ寸前まではボコしたことはあっても殺すのは初めてだったけど手が震えたり自分が怖くなったりすることはない。よくドラマで自分の手に殺した人の血がついている幻覚が見えるとかあったけど、そんな幻覚なんて全く無い。
「しかしここで問題が生じた」
問題?後始末とか?
「”誰が“オール・フォー・ワンを殺したのか、が問題なんだ」
「・・・・・・」
やらかしてしまった身として大変申し訳なくなり塚内さんに土下座する。
「み、緑谷少女!?」
「あの、本当に、今謝ってもどうにもならないんですけど、すみません!!」
オールマイトと正面からヤり合えるほどのヤバイ敵が一瞬で倒される攻撃をまさか高校生が放ちましたなんて信じる人いないよね・・・。最悪脅威として監視とかされるかも。ヘリから撮られてからバレてるのかなぁ・・・。
「メディアはオール・フォー・ワンを倒したのは誰なのか週間経った今でも犯人探しをしている。警察やあの場にいたヒーローにはひっきりなしに電話や取材が来ている」
まだ犯人探しをしている?てことはあの時映ってなかったのか?上手いこと建物とかで隠れてたのかな。
「幸い君のことはバレていない」
「お前さんが自分がやったと名乗り出らんのなら、嘘をでっち上げられるんだよ」
「極秘に警察が対オール・フォー・ワン用に開発していた兵器を使用したという情報を流すつもりだ」
「な、なるほど・・・」
「本来ならば君には名声や報酬が与えられていたんだろうが、」
「要りません要りません!!」
そんな目的のためにやろうとしたんじゃないです!!後々死々倉を殺しやすくするためにしただけですから!!
「ははっ、君ならそう言うと思ったよ。情報を流す際、君には真相を口外しないようにしてほしい」
「はい、わかりました」
「オール・フォー・ワンについてはこれくらいかな。では事情聴取に移ろう。林間合宿から病院で目覚めるまでの出来事を教えてくれるかい?」
「はい」
それから詳細にとまではいかないが(もちろんマーリンさんとの話は絶対にしない)、連れ去られていた3日間のことやオール・フォー・ワンの他におじいちゃんドクターがいたこと、オール・フォー・ワンをどうやって殺したかなどを話した。
「概ねA組の生徒やヒーロー達からの聴取と変わらないな。だが“ドクター”という存在が気になるな」
「緑谷少女、そのドクターと呼ばれていた老人はオール・フォー・ワンと親しげだったんだね?」
「はい。あ、でも死々倉やヴィラン連合には興味が無いように見えました。あくまでもオール・フォー・ワン経由で関わっているって感じでした」
「ドクターがヴィラン連合に接触する可能性は多いにある。手を組む前に捕まえなければ・・・」
むむむ・・・と眉間に皺を寄せていた塚内さんだったが、いつもの好青年らしい表情に戻る。
「ありがとう緑谷さん、目覚めて早々押しかけてすまなかったね」
「いえ、私の方こそ面倒事を作ってしまって・・・」
「アイツをこの世から葬ってくれたんだ。これくらい安いことさ。では私は失礼するよ」
「腹出して寝ねぇようになデク」
「あれ、グラントリノも帰るんですか?」
「グラントリノは我々に協力してくれているんだ」
なるほど。転弧によろしく言っといてくれとグラントリノは病室から出ていった。塚内さんも体調には気をつけてねと好青年スマイル(隈付き)で帰っていった。後始末の書類とかいっぱいあるんだろうなぁ・・・。
「緑谷少女」
呼ばれたためオールマイトの方を向く。オールマイトはいつになく真剣な表情をしていた。
「・・・ヒーローは時として敵を殺さなければいけない状況がある。しかし実際に自らの手を血で染めるには相応の覚悟が必要だ。本来であれば私達プロヒーローが行うべき、いや、行わなければならなかったことだ。子供である君に人を殺すという重荷を背負わせてしまったこと、本当に申し訳ない」
オールマイトが静かに頭を下げる。
「・・・・・・こんな前置きをしたんだがね。あの男を葬ってくれてありがとう。君のおかげでワン・フォー・オールの継承者達が浮かばれるだろう。本当に・・・、本当にありがとう」
オールマイトは顔を下げているため、ズボンに水滴が落ちシミを作っている。ズズッと鼻を啜り涙を拭き顔を上げる。
「君が助けてくれたギャングオルカ達も意識が戻って元気に働いているよ」
「・・・ベストジーニストはまだ回復されていないんですね」
お腹に穴開いてたからなぁ。一応塞いだけど精神的負担がかかってるのかな。
「・・・・・・」
オールマイトが何か言いにくそうに口をムズムズさせている。耳を貸してくれるかいと言われたためそうする。
「彼は目覚めて早々、警察から極秘任務を任されてね。表立って動くとマズいようでまだ療養中ということにしているんだ」
「なるほど」
ベストジーニストも元気だということがわかって一安心。
「それと、これは学校のことなんだけど・・・」
コンコン
オールマイトが話していると病室のドアがノックされる。
「来たみたいだね」
「?」
ドアが開かれるとスーツ姿の相澤先生がいた。
「相澤先生!」
「元気か緑谷」
「時間ぴったりだね相澤君」
相澤先生が来たのは安否確認+入寮確認のためだった。みんなはもう入寮していて、引子さんには兄さんの入寮確認の際私の許可も貰っているそうで後はお前の確認だけだ、と言われた。もちろんすぐにOK。そして相澤先生は愛のあるゲンコツとお小言を私に与えると颯爽と帰っていった。めっちゃ痛いんだけど。ジンジンする。自業自得だってわかってるよ?でもああしないと物語進まなかったし。反省文書かせられないだけましか。その後、オールマイトもちょっとだけおしゃべりして帰っていってしまった。
ここでみなさんお気づきかもしれませんが、今まで4人も病室に来ていたが誰一人としてキャスパリーグさんのことを指摘した人はいなかった。どうやら隠れていたようで、オールマイトが帰って窓から何食わぬ顔で病室に戻ってきた。キャスパリーグさんってば隠れるのがはちゃめちゃに得意みたい。
そして入院最終日も検査でどこにも異常がないことを確認したりキャスパリーグさんとぼーっとしていたらあっという間に過ぎていった。
ーーーーーーーーーー
退院の日、お世話になった看護師さん達に見送られ病院を後にし、孤児院に戻ってきた。
『いずねぇーー!!!』
「う“っ」
玄関を開けて早々お腹に衝撃を受けふらつく。倒れはしない、体感鍛えてるんで。
「ただいま稔、穂波」
「おかえりー」
「お“か”え“り”ぃぃぃぃ」
穂波の涙で服が湿っていく。お腹が冷たいなぁ・・・。
「いずねぇどこいってたの?」
「病院で寝てたのよ」
「ぼくもいきたい!おひるねする!」
「お昼寝は出来ないわね」
「えー」
出迎えて満足したのか稔は部屋に戻っていく。穂波はというと、相変わらず私の服を湿らせている。
「穂波、ただいま」
「おかえり・・・。いずねぇ、ひっく、だいじょうぶ・・・?」
「えぇ、とっても元気よ。だから泣かないで」
「うん・・・ぐすっ」
穂波は泣き虫さんなのだ。でもすごく優しい子で心配させてしまったな。ゲンコツももらったから猛省しております。反省じゃなくて猛省ね。ここ重要。穂波を連れてリビングに入る。
「おかえりなさい出久ちゃん。とっても心配したのよ」
「ただいま引子さん。猛省してます」
「五体満足で帰ってきてくれて嬉しいわ。これから寮に行くのよね?」
「はい」
みどり園には顔を見せに来ただけで、これから学校に向かう。荷物は兄さんの分と一緒に既に寮に運んでもらっている。
「いずねぇバイバイ!」
稔さんや、あなたわかっていらっしゃらないな。満面の笑みで手を振ってくれてありがとう。
「もうあえないの・・・?」
「週末は会いに来るわ」
「ぜったいだからね。こないとはりせんぼんだよ」
怖。他の子にも会いたかったが、今日は登校日らしく会えなかった。さて、学校に向かいますか。
オール・フォー・ワンはこんな簡単に死なない!と思われるかもしれませんが、仕様です。仕様なのです。ご都合主義者なのです。