私事ですが、風邪を2回くらい拗らせました。みなさんも体調にお気をつけて。
今回オリキャラが出てきますが、しゃべりはしません。
仮免試験が終わって数日で2学期が始まった。みんなの関心はもっぱら始業式で校長先生が言っていたインターンについて。インターンというと、治崎さんが登場するけど、原作開始時よりも前に関わりを持っちゃったし、原作が嘘のように全然敵っぽくないしで、どういう風に進んでいくのか全く予想できないからちょっと心配なんだよね。だってこの前もみどり園に帰ったら、理事長先生と入中さんが子供達と遊んでくれてた。いや、入中さんは遊ばれてたの方が正しい気がする。稔にぶんぶん振り回されてて慌てて救出した。入中さんは何も言わなかったけど、あのまま振り回され続けていたら絶対手足もがれてたよ。びっくりしすぎて「い、入中さん!!??」って思わず叫んじゃったし。
そんなこんなで、指定敵団体という肩書きだけが怖そうな死穢八斎會だけど、このところ仕事が立て込んでるのか治崎さんとか玄野さんとか音本さんとか幹部の皆さんは忙しそうで姿を見てない。理事長先生に聞いたら、ポカした奴らに代わって後処理をしているそう。入中さんも、アイツらこのままじゃあ確実に早死にするな!!って笑ってた。いや笑うところ???
閑話休題
物語がどう変わるのか心配だけど、まあなんとかなるか精神で2学期が過ぎていっている。今日は先生がインターンの詳しい話をするらしい。通形先輩達が来るんだろうね。
ホームルームのチャイムが鳴り終わって先生が話し出す。
「今日はインターンについて詳しく説明するんだが、まずは職場体験とどういう違いがあるのか、直に経験している人間から話してもらおう。入っておいで」
教室前方のドアが開いて通形先輩たちが入ってくる。
「現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名。通称ビッグ3のみんなだ」
ビッグ3って誰が名付たんだろう?先輩たち自身が名乗ってそうではないし。特に天喰先輩とか自分から名乗らないでしょ。先輩たちがそれぞれ自己紹介をしているのを眺める。波動先輩めっちゃかわいいな。おめめぱっちりでこの距離でもわかるくらいお肌きれいなんだけど。使ってるスキンケア教えてくれないかな。
「君たちまとめて俺と戦ってみようよ!!!」
通形先輩のギャグが滑り倒して終わってしまった後、原作の流れと変わらず通形先輩と戦うことになった。あ、そういえば通形先輩ってオールマイトから話聞いてるのかな?流石に2学期になったんだからオールマイトも話つけてるよね。そうだよねオールマイト…?
ーーーーーーーーーー
体操服に着替えて体育館γに集合した私達。これから通形先輩にボコボコにされるって知らないみんなは、ちょっと余裕があるみたい。
「出久、あの先輩ってオールマイトが言ってた人だろ?」
「そうだけど、どうしたの?」
「なら気合い入れてやんなきゃヤられるな」
「そうね、真面目にやりましょ」
まあでもマジギレ治崎さんに比べたらかわいいものだろう。あの人の地雷未だにわかんないんだよね。ペストマスクに猫のアップリケつけたっていいじゃんか。壊理ちゃんだってかわいいって言ってくれたんだよ?あんなに怒ってボコボコにされるなんて……。
「始まるぽいぞ」
「はーい」
よーし、腹パンされないよう頑張りますかね。
近接戦が得意な子達が攻撃を重ねていくけど、通形先輩はどの攻撃も透過の個性によって防いでいる。たしか、すり抜ける途中で個性を解除するとその物体から弾かれるっていう性質を利用して、弾かれる方向を調整してワープのような芸当をやってのけている、はず。自分の個性を熟知して、血の滲むような努力をしているからこそ簡単にしているように見えるんだよね。
「POWERRRRR!!!!!!」
通形先輩の紹介をしているうちに遠距離系の個性のみんながお腹を押さえて倒れている。ありゃりゃ、痛そう。実力者のかっちゃんや轟くんも倒れてはいないけど、すぐに戦闘復帰できなさそう。…………兄さん?なんで貴方はそこで倒れているのかな????……まさか。お、おまえ、わざとヤられたなーーー!!!!???あのセリフはなんだったんだよーー!!!!!やる気出せよ!!?そんなんだから夢に転弧にぃと結婚したくないって言われるんだよ!!!???
「よそ見はいけないんだよね!!」
「すみませんね!!」
「!」
気配はわかってたから殴られそうだったけど、敢えて手で受け止めた。これくらいなら乱波さんの一打の方が全然重いや。次の攻撃が来る前に効かないだろうけど足払いをかけてみる。
「なっ!?」「!」
足払いかかったんだけど……。通形先輩はバランスを崩すが即座に体勢を立て直し、私から距離を取る。
「やっぱり君は一筋縄ではいかないな!」
いや、私も何がなんだかさっぱりなんです。なんで個性解除するんだ???
もしや、防御魔術発動してるから?通形先輩が私に触れたら問答無用で解除されるんだろうな……。魔術ってなんて便利なんだろうか……。この力がオール・フォー・ワンの手に渡らなくて本当によかったと今更ながら思うよ。
私以外を先に倒すことにしたらしい通形先輩が次々に腹パンをかましていく。そして立っているのは私だけ。
「さあ行くよ!」
「ご指導ご鞭撻、よろしくお願いします」
通形先輩が目の前から消える。これ視界からの情報邪魔だな、目瞑って戦う方がいいかも。前方に気配を感じたため上体を逸らす。逸らした勢いのまま足を蹴り上げる、が何も当たらない。避けられたか。屈んでいたがすぐに起き上がり、気配を感じる方から繰り出される攻撃を避けたり受け流したりしながら、自分も攻撃を当てていく。さっきの足払いから感触的には2,3発は当たっている。このまま続けてもいいけど、意外とずっと目瞑ってるの疲れるな。先生早く終わらせてくれないかなー。
「そこまで!」
攻撃を繰り出そうとしていたが動きを止めて目を開ける。おっと首に当ててしまうところだったか。
「ありがとうございました」
「俺こそ勉強させてもらったよ!ありがとう!」
ニカッと笑い手を差し出されたので、私も手を差し出し軽く握手する。
「あの……早く服着てもらえませんか?」
「あっ、ごめんね!!」
まっぱで握手求められたのは初めてだった……。
――――――――――
先輩方との交流が終わって数日、またまたホームルームで先生から伝えられたのは、インターン受け入れの実績が多いヒーロー事務所に限り、1年生の実施を許可することが学校で決まったということだった。先生は体育祭のコネを使えと言ってたけど、一応オールマイトにサーナイトアイの事務所にアポとれるか訊いてみようかな。
「無理だ!!」
兄さんと職員室に向かい、オールマイトを応接室まで連れ出しインターンの話をしたが、案の定断られた。
「そうですか」
「……あれ?なんか軽いね緑谷少女」
「いえ、断られるとは思っていたので」
「そ、そう。しかし私がコンタクトを取ることが難しいだけで、サーにコンタクトを取れる子が一人いるよ!」
他人に任せようとしているのになんで胸を張れるんだ。オールマイトってばお茶目なところあるよね。でもねオールマイト、
「通形先輩ですよね。もう話は通してあります。インターンの届け出も提出済みです」
「えぇぇぇぇぇ!!!!!」
もう終わってるんだなぁこれが。通形先輩と手合わせをした後、治癒魔術で通形先輩の傷を治していると、先輩からサーナイトアイ事務所にインターンに来ないかと提案されたんでーす。お願いしたいです、と言ったら次の日にサーからOK貰ったよ!と通形先輩がサムズアップしながら1年の教室に来てくれたのだ。対応の速さに驚いたけど、多分サーナイトアイは予知してたんだと思う。そんなわけで、相澤先生からインターンについて条件が出される前には私のインターン行きは決定していたのだった!!
「じゃ、じゃあ何故私に訊いたんだい…?」
「ワン・フォー・オールのことを通形先輩に話しているのなら、サーナイトアイとも交流を再開しているかなと思ったんですけど…、あれほど話せと言ったのに話していないんですね?」
「オールマイト、No.1なのに肝っ玉小さいのな」
「ふ、二人とも私に厳しくないかい!?成人でも泣いてしまうよ!!」
大人なんだからホウレンソウはちゃんとしないと!!オールマイトにホウレンソウがいかに重要か30分ほど話したよ。なんか怯えた目で見られたんだけど。
――――――――――
「ここがサーの事務所だよね」
サーナイトアイの事務所は雄英から電車で1時間ちょっと。見た目はザ・オフィス!な感じのビル。伝わるかな?中に入ると通形先輩はエレベーターを使わず、すみの方に螺旋階段の方へ向かう。螺旋階段を登り4階?5階?付近で廊下に出てドアの前に立つ。
「言いそびれてたけど、サーはとても厳しいんだよね」
「……今言いますかそれ?」
もう対策の仕様が無くないか?
「サーと話し終わる前に必ず一回、サーを笑わせるんだ。サーはユーモアを最も尊重してる」
「はあ…」
ユーモアってなんだ???一芸して気に入られるわけないし、対応力的な感じ?
「サー!緑谷出久さんを連れて来ました!!」
通形先輩がドアを開ける。中には全体的に水色な女性が機械に固定されてサーナイトアイにくすぐられていた。すぐさま通形先輩に目隠しをする。
「何も見えないんだよね!」
「未成年の前でそういうプレイは止めていただきたいんですが」
原作で知っていたとはいえ、公共の場でしかも未来予知で私達が来ること知ってるはずなのにお仕置きしてるって……サーナイトアイってドSじゃん!!
「ん?」
「サー!緑谷出久さんを連れて来ました!!」
目隠しされたままの通形先輩がさっきと同じ文言を話す。サーナイトアイはゆっくりと視線を私に移動する。
「……」
「……」
なにこの時間?いまだに青い人はくすぐられてるし。
通形先輩の目隠しを外すと、通形先輩はやれやれと青い人の拘束を解いてあげている。その間サーナイトアイは私を、穴があくだろ!?ってくらい見つめてる。いや睨まれてる?睨んでるのそれ??喧嘩なら買うが?
「君が、緑谷出久か……」
「私が緑谷出久です」
「……」
サーナイトアイが顔をくしゃくしゃに歪める。
えぇぇ……、なに?なんなの??
「……契約書は?」
「持参しています」
スクールバッグから契約書を取り出す。
契約書を私の手から取ったサーナイトアイは、ものの数秒でサインと印鑑を押してくれた。あれ?原作の印鑑バトルは???対応策何個か考えてきてたのに、何もないの?笑わせなくていいの?つまんないー。
その後は明日からの注意事項や諸連絡を聞いて解放された。なんか身構えてたのに杞憂に終わったな。
寮に帰り兄さんやかっちゃんにインターンに行くことを伝えると、兄さんもグラントリノの事務所の近くにあるヒーロー事務所にインターンに行くらしい。なんでもプロヒーローになってグラントリノの事務所を継いでも、土地勘が無ければ満足いくヒーロー活動ができないから、あの地域のヒーロー事務所でインターンできる所がないか探してたんだって。そして探しているうちに、事務所同士が近いこともあって事務所の所長さんがグラントリノと顔見知りで、インターン実績もそこそこあるから学校もOK出してくれたので、所長さんに直談判したらぜひ!と快諾してくれたそう。兄さんがこんなに乗り気なところ久々に見たかもしれない…。
かっちゃんはというと、ベストジーニストは今インターンの受け入れができないくらい忙しいらしく、今回は止めとくだそうです。たしかオールマイトが、ベストジーニストは警察から極秘任務を任されているって言ってたからなぁ。忙しいのは仕方ないよね。かっちゃんは自主練に励むんだって。
A組のみんなにもインターンが決まったことを伝えると、麗日さんや梅雨ちゃんや切島くんが3年生の寮にカチコミに行ってしまった。あついね~青春だね~。
ーーーーーーーーーー
翌日、インターン1日目。寮から学校ではなくナイトアイの事務所に通勤?した私。コスチュームに着替えて、昨日訪れたナイトアイの仕事部屋に入る。中にはコスチュームを着た通形先輩と青い人改めバブルガールがナイトアイのデスクの前に横一列で並んでいた。
「おはようございます。遅れてしまいすみません」
「おはよう!俺もちょうど今来たところさ!」
「おはようございます!全然遅れてないから、大丈夫だよ」
私は通形先輩の左に並び、ナイトアイに向き直る。
「おはようデク。では本日の任務を伝える。本日はパトロール兼監視。私と
バブルガール、ミリオとデクの二手に分かれて行う」
「ナイトアイ事務所は今、秘密の捜査中なんだよ」
監視……秘密の捜査…………い、いや、まさかねぇ~。
「死穢八斎會という小さな指定敵団体だ」
聞き間違えとか言えないくらいばっちり死穢八斎會って聞こえましたーーー!!!!しかもナイトアイが見せてくる資料にはペストマスクをつけた治崎さんの写真が載ってる。
はい黒ぉぉぉ!!オフホワイトどころじゃない、完全な真っ黒だよ治崎さん!!!!え、え、えぇぇ???ヒーローに目付けられるとか何したんですか!?いやたしかに指定敵団体ではあるけど、交番のお巡りさんと協力して空き巣事件とかオレオレ詐欺とか解決してたじゃん!?某少年探偵団みたいにさ!!この前お巡りさんが、ここら辺の治安が良いのは治崎さん達のおかげなんだって言ってたんだよ???それを伝えそびれてたのがいけなかったのかなぁ??
「デク、どうかしたのか」
「い、いえ大丈夫です、続けてください」
「あぁ。この死穢八斎會のNo.2である若頭、治崎という男が妙な動きを見せ始めた。ペストマスクがトレードマークだ」
よぉぉぉぉぉく知ってます……。最近はペストマスクからガスマスクに変えようとして、音本さんから全力で止められてました。
「指定敵団体は過去に警察によって大解体されて、今は監視されているから大人しいイメージがあると思うけど、治崎ってやつは解体されてバラバラになった連中をどういうわけか集め始めてる」
「ただヤツが何か悪事を企んでいるという証拠は未だ掴めない。そのため八斎會は黒に近いグレー……、敵扱いができない。我がナイトアイ事務所が狙うのは奴らの尻尾、くれぐれも向こうに気取られぬように」
『イエッサー!』
遂にとち狂ったのか治崎さん…………。ていうか、死穢八斎會のこと調査してるはずなのにナイトアイ達がみどり園のこと知らないのなんで?あ!もしかして知ってて私を採用したのかな、人質的な?なるほどなるほど、だからあんなにスムーズに契約書かいてくれたのか。納得したわ。私を餌に治崎さん達をおびき出そうって作戦なんだ。よろしい、その作戦わからないフリをして乗ってあげましょう!
「そして、死穢八斎會の中で気になる奴がもう一人いる。神田信彦という男だ。治崎が現れるまではこの男が若頭候補筆頭だったそうだが、10年前八斎會の武器や金を横流ししたことがバレ破門寸前になった」
「サー、寸前ということは、その神田という男は破門にはならず今現在も死穢八斎會に所属しているんですか?」
「あぁ。何故破門が取り消されたのか、そこまではわからなかった。現在も小規模だが自身の派閥を作り海外の軍相手に武器を売買しているようだ。だが、この男が先日敵連合と接触を図ったことが確認された。治崎の命で動いているやも知れん。この2名の監視を重点的に行うつもりだ」
『イエッサー!』
かんだ?神田って誰だっけ?そんな人いたっけ……?
ん~~………………あ。思い出した。あのセクハラおやじじゃん。一回何かの会合で顔合わせて以来なぜか距離が近いんだよなぁ……。出久ちゃーん♡ぐへへ~、って感じで本当にきもいんだよね。こんな風に寄って来られるけど、話したこと一回も無いんです。顔をちょっと見たくらいなんです。だからあの人のイメージは恐怖ときもいしかない。しかし顔が普通の人よりちょっと良いからいつも傍らに派手な化粧と服の女性がいる。でもぐへへ~だから残念なイケメンって本当に実在するんだなって私は憐れんでる。傍らの女性はセクハラおやじを横取りするんじゃないかってめっちゃ睨んでくる。だれがそんな男いるか!こっちから願い下げだバーカ!!!!っていつも脳内で思ってる。てか治崎さんがもし、本当に悪いことをしているなら、セクハラおやじがやったことにすればいいんじゃね?そうしようそうしよう。音本さんに言えばすぐに記録の改竄とかしてくれるでしょ!(他人頼みなのは致し方なし)レッツ断罪!!レッツ追放!!
そんなこんなでルミリオン(折角だしヒーロー名で呼んでよね!だそう。なにが折角なんだ?)とパトロールで事務所付近を歩く。パトロールは職場体験で訓練の途中で気分転換にやってたからある程度どんな場所や人に気を付ければいいかとか、グラントリノに教えてもらっていたから慣れてはいる。あーこういうビルとビルの細い路地って、悪いことするには絶好の場所なんだよなぁ、と路地を横目で見ていると手を振りながら壊理ちゃんが満面の笑みで走ってきていた。……え。
「出久さーーーーん!!!!」
そんなまさかと思ったけど、本当に壊理ちゃんだ!!?
路地の方へ体の向きを変えて壊理ちゃんを受け止める。今日はピンク色のAラインワンピースだぁぁ!!かわいいいいいいい!!!!!
「出久さんこんにちは!!!」
「こ、こんにちは壊理ちゃん。どうしてここにいるの?」
「出久さんのたいいんのおいわいをかいたいって言ったら、ちさきがこのお店につれてきてくれたんです!」
このお店……、壊理ちゃんが指さしたテナントビルを見る。何度瞬きをしてもハイブランドのブティックにしか見えない。もしや貸切ったな。
「壊理ちゃん、もしかしてそのワンピースもこのお店で?」
「はい!ちさきがえらんでいいって言ったから一番かわいいものにしました!にあってますか……?」
か、かわっ!!!!!!!!!!!!
「えぇ、とっても可愛いわ。よく似合ってる」
「えへへ」
はうっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!(クリティカルヒット!オーバーキル!)きらきらすまいる……!む、むねがくるしい……!
「おい壊理。走り回るなと言っているだろ」
壊理ちゃんのかわいさに悶えていると、路地からペストマスクをつけてない素顔で、ブランドのロゴがデカデカと描かれたショッパーを両手に持った治崎さんが現れる。
「…………何故出久がここにいる」
私を見つけると目を見開き、手に持っていたショッパーを背中に隠す。いや隠せてないから。
「それはこっちのセリフですよ治崎さん。お仕事で忙しいんじゃなかったんですか?」
「……一段落して休憩を取っている最中だ」
「ちがいます出久さん!ちさきはね、自分の仕事はくろのとねもとに押しつけて来たんですよ!」
「おい壊理」
「へぇ……、また玄野さんと音本さんをこき使っているんですね?あれだけ自分の仕事は自分でしろと、部下を片手間で使うなと、あれだけ、さんざん、言ったのに仕事を押しつけて来たんですね?」
据わった目で治崎さんを見つめる。片手で窃野くんに治崎さんを迎えに来てほしいとメッセージを送信する。
「壊理ちゃんは私が預かりますので、どうぞご自分のデスクにお戻りください」
「い、出久……」
私の後方の車道に黒塗りのセダンが停車したのが見えた。
「若来やしたよ!」
窃野くん以外にも車に乗っていた八斎衆の人達が、治崎さんを車に押し込み去っていった。
空気と化していたルミリオンの方を向くと……困惑するよなぁ。監視対象とあれだけ親しく話してたんだし誤魔化せないよね。まあ別にやましいことなんてないから尋問されても怖くないもんね!呆然としていたルミリオンが落ち着くのを待つこと1分。はっ......!とルミリオンが正気を取り戻したみたいなので、ナイトアイに連絡を取るようお願いする。まだ少し困惑しているぽかったけどすぐにバブルガールに電話をかけていた。さすが3年生、イレギュラーに対する順応が早い。バブルガール経由でナイトアイから事務所に戻るよう指示があったようなので、壊理ちゃんを連れて事務所に戻った。そして今私はデスク越しにナイトアイと対峙している。壊理ちゃんはソファでお茶うけをもぐもぐと食べてらっしゃいます。
「……説明してもらおうか、デク」
「はい。端的に言いますと、私が育った養護施設の理事長が死穢八斎會の組長なので、若頭の治崎さんとはあの人が学生のころから親しくさせてもらっています」
「では死穢八斎會の連中とは顔見知りということか…」
「はい」
お嬢って呼ばれるくらいには組員の皆さんに認知されてます。
「何故報告しなかった」
「ナイトアイはご存じなのだと思いまして。知っている上で私を採用し、餌として治崎さん達をおびきだそうとしているものと思っていました」
「…………」
ナイトアイがうなだれる。いやーまさか私の妄想の一人歩きだとは思わなかったけどねー。私ってば漫画やアニメのみすぎだろ!でもさ、冷静沈着なナイトアイのことだから、みどり園の情報くらい掴んでるって思ったんだけど……。だってインターンに来たいって言ってきた生徒の身辺調査くらい普通するよね?みどり園はほの暗いことなんて一切無い真っ白でクリーンな施設だから調査しなかったのかも。それか理事長先生がどんな手を使ったのかわかんないけど、みどり園と組がつながっていることを隠してるのかも。だって組を恨んでるやつからしたらみどり園なんて、言ったらなんだけど人質の宝庫じゃん。子供だらけだし、職員の引子さんも戦えないし(まあそんなことがないように施設には結界張ってるんですけどね)。理事長先生ただのおじいちゃんみたいだけど、指定敵団体の組長だからね?そりゃあ権力や人脈持ってますよ。納得だわ。
私が一人で納得していると、ナイトアイがキャビネットから真新しいファイルを取り出す。思ってたんだけど今時紙で保存してるの珍しいよねー。八斎會だって電子ファイルなのに。墨入っおじちゃん達みんなPCぱちぱちしてるよ?
「そちらの少女は、死穢八斎會組長の孫娘で間違いないんだな?」
そう言ってナイトアイはファイルに綴じてある資料を見せてくる。なになに~?…………ほうほう、理事長先生や理事長先生の家族について色々書かれてあるっぽい。指でさされたところを見ると、理事長先生の娘さんについて書かれてあった。色々端折るけど、理事長先生の娘さん(壊理ちゃんの母親)は結婚したかったけど理事長先生と大揉めして絶縁して家を出た。その後娘さんは子供(壊理ちゃん)を生んで父親を含む家族3人で暮らしていたけど、何らかの理由で旦那さんと子供が死亡した、って書かれてある。ありゃ?子供って壊理ちゃんのことでしょ?死んだことになってたのか。ばっちり生きてますよ~。資料には書かれていない何らかの理由っていうのは、壊理ちゃんの個性が発現して個性により父親が消滅したのだ。そして壊理ちゃんを恐れた娘さんは壊理ちゃんを捨てて、理事長先生に託し行方をくらました。そしてそして壊理ちゃんは男所帯の死穢八斎會に放り込まれ、成長するにつれて組の女帝として君臨するまでになったのだった。チャンチャン。
閑話休題
壊理ちゃんを捨てた後、娘さんは職を転々としてたっぽい。でも3年前に病死してるらしい。理事長先生には申し訳ないけど、バチが当たったんだね。
資料から顔をあげる。
「はい。彼女が理事長先生の孫娘の壊理ちゃんです」
「子供が生きていたとはな……、調査を改める必要があるようだ。デク、君と八斎會の関係は理解した。その上で尋ねよう、治崎達が何を企んでいるか知っているか?」
「いえ。理事長先生が子供は遊びが仕事だと言って、組の仕事については教えてくれないので何も知りません。ですが治崎さん達は組でヘマしたやつの尻拭いをしていると理事長先生は言っていました」
「尻拭い……」
私、わかっちゃいました。悪いことしてるのって治崎さんではなく、神田なんじゃね?なんで神田かって?だって敵連合と関わろうとするやつは大抵悪だくみしてるじゃん?治崎さんや玄野さん達、若頭側の幹部のみなさんはヘマした人の尻拭いに追われているので忙しい。神田はその隙に何かよからぬことを起こそうとしてるのでは?ヘマした人も神田とグルで、治崎さん達を嵌めて死穢八斎會を自分のものにしようと思ってるのでは!?わ、わたし、名探偵かも~~!!!…………合ってたら兄さんになんか買ってもらお。あ、それと、神田もマークしてるなら、神田に悟られないようにして治崎さんと協力関係作った方が良いのでは?
ナイトアイに組に協力してもらえば?と伝えると、指定敵団体とヒーロー事務所がーって、やっぱり体裁を気にしてるようで答えを出し渋っている。
「!…………死穢八斎會に協力を仰ぐぞ。バブルガール、至急死穢八斎會の資料を纏めろ」
「イエッサー!」
壊理ちゃんとおしゃべりしていたバブルガールが勢いよく立ち上がり、どこかに走っていく。資料室的な部屋があるんだろう。今までうんうん悩んでたのに考えを変えたのって、何か未来が見えたからかな。
「サー、俺達は待機ですか?」
壊理ちゃんの隣に座っていたルミリオンが立ち上がり、爽やかな笑顔ではなく真剣な表情でナイトアイを見る。
「あぁ。死穢八斎會について新たに調査し直す必要がある。すまないが君達の任務は一旦停止させてくれ」
「「イエッサー!」」
ちなみに組への協力要請は事務所を通して行うそうなので、私のやることは何もない。
そして、ナイトアイから任務再開の連絡が来たのはそれから1週間経ってからだった。