「フォウ!」
そんな「遅い!待ちくたびれた!」みたいな顔されても困りますよ、キャスパリーグさん……。ロッカーを開けるとキャスパリーグさんがおすわりしてた。
………………。
いやいやいや、ていうかなんでここにいるんですか!?
「あれ?キャスちゃんやん!」
「ケロ!どうしてここにいるにかしら?」
鳴き声が聞こえたのか2人がキャスパリーグさんがいることに気づいてしまった。
「フォウ、フォウフォウ。フォウ〜、フォウ」
「えぇっと……、朝早く出かけようとしていたから気になった、だそうよ……」
「フォウ!」
どうして今になって興味を持ったんですか!!!今までも朝早くトレーニングやインターン行ってましたよ???
「寂しかったんやね」
「でも今から任務よ、緑谷ちゃん連れて行くの?」
ここにいてくれたりは———
「フォウ」
しませんよね。
「……仕方ないから連れて行くわ」
「フォウフォウ!」
話していたら合時間までもう時間がない。急いでコスチュームを着て胸元にキャスパリーグさんを押し込み、事務所裏に停めてある車両に乗りこむ。キャスパリーグさんを無理やり押し込んだけど胸元は変に膨らんではいない、はず。でもフォウと鳴かれると一発でバレる。バレませんようにバレませんようにバレませんように!!!平然を装いながらさっきナイトアイからもらった資料を読み込む。
ふむふむ、神田が拠点としているのは海沿いの倉庫群の中のひとつで、本来その倉庫は海運会社が所有しているはずなんだけど、調査すると会社の職員は神田の部下達だったらしい。いわゆるペーパーカンパニーってやつだね。今回の設定として、そのペーパーカンパニーの摘発と倉庫の差し押さえで、神田達を確保して指定敵団体の勢力を縮小したい警察。だけど、神田は金でチンピラまがいの敵達を雇ってるという情報が入る。念のためヒーローに協力を要請している。っていうことらしい。個性消失弾のことは公にしないみたい。まあ公にしちゃうと大変なことになるしね。でも神田が個性消失弾を作ろうと考えるなんて未だに信じられないんだよなあ。お金と女性が好きっていう典型的なダメ男で、頭が回る人には見えなかったんだけど、まあ人は見かけによらないし、今まで私に接していた態度が演技だった可能性もあるしね。なんて考えているうちに私達を乗せた車両は海沿いの倉庫群に着き、警察車両や護送車がいっぱい停まっている倉庫の近くで停車した。
外に出ると戦闘音と怒号が響いてる。会議室にいたヒーロー達が先に突入していたみたいで、ヤクザや敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げしている。ちぎっては投げされた人達をお巡りさん達が護送車に乗せている。わーなんて効率がいいのかしらー。ヤクザの人達は見たことある人がまあまあいるなー。あ。あの人この前喧嘩吹っ掛けて来たから返り討ちにした人だ!バブルガールやリューキュウ達、先輩達も倉庫に走っていく。よーし私もやるぞー!と走りだそうとしたけど、ぺちぺちと胸元にいるキャスパリーグさんが胸を叩いてくる。ちょ、あんまり動くとバレますから!
「デク」
やば、バレたかも。
「はい、なんですか?」
あくまでも平然に。なにも知りませんが?という顔をする。
「君は我々とは別行動だ」
「……それはなぜでしょうか」
「先ほど別動隊から神田を確保したと連絡があった。しかし、神田は何のことかわからないと容疑を否認しているそうだ。そして君が今回の事件の本当の犯人と思われる人物を連れてくる予知を見た」
「神田が犯人じゃないんですか?」
「神田の発言と私の予知を鑑みて、別人が犯人という可能性は捨ておけん。君を単独行動させた方が勝算が高いだろう」
なるほど。確かに物語上神田が捕まって、はい終わりってならないか。
「わかりました。まずは付近を捜索します」
「頼んだぞ」
「はい!」
ホウキ・改を投影し跨って倉庫群を空中から眺める。ある程度ナイトアイから距離が離れたところで胸元を開けてキャスパリーグさんを取り出す。キャスパリーグさんは器用に肩へ移動する。どんどん倉庫群の中に進んでいくと人の気配が全く無いボロボロの倉庫が増えていく。
「フォウ!」
キャスパリーグさんが鳴き、ぺしぺしと肩を叩いてくる。
「この倉庫ですか?」
「フォウ!」
見るからに使われていない廃倉庫の前に降り立つ。倉庫の入口を開けてみようと試みたが錆ついてるのか全く開かない。どこかに穴とかないかなと思ってキョロキョロしてみると、壁面に大きめの長方形の穴が開いていて人ひとりが余裕で入れそうな隙間があった。わざとらしい隙間だなー……。
「危ないのでキャスパリーグさんはここにいてください」
「フォウ」
隙間から中に入った瞬間、眼前にナイフが飛んでくる。それを屈んで避けると色々な方向からナイフが飛んでくるがそれらを全て避けながら中に進んでいく。このナイフトガちゃんかー。やっぱりいたか敵連合。ある程度倉庫の中に進むとナイフ攻撃が止む。
『ギャアギャア!!』
ナイフ攻撃の次は脳無か。前後左右からムキムキ脳無達が飛びかかってくる。面倒だから下にガンド撃って逃げるか。あっちに下に続く階段あるから多分地下室的な部屋あるだろうし。
「ガンド」
ドゴッッッッ
コンクリの地面に穴を開けると、想像していたよりも広い空間が広がっていて落下していく。その間4体の脳無を投影した剣で頭を貫いていく。そして地面とごっつんこする前にホウキ・改を投影しゆっくり降下する。
「出久ちゃーーん!!!」
トガちゃんが走りながらナイフを刺そうとしてくるが結界を張って防ぐ。満面の笑みを浮かべながらナイフ振りかざすなんてめっちゃホラーなんだが。
「イダダダダ!!!なんだよこの猫!?」
キャスパリーグさんはいつの間にか倉庫の中に入ってたみたいでトゥワイスの頭をがぶがぶと噛んでる。
「それでどうして貴方達がいるのかしら?敵連合も今回の件に関わってたのね」
「痛ぇっつってんだろクソ猫!!」
トガちゃんが離れてくれたので結界を解くとキャスパリーグさんが肩に乗ってくる。噛みつかれたトゥワイスの頭には血が滴っててめっちゃバイオレンス。
「トガ達は出久ちゃんに会うために来たんですよ~」
「でも神田は貴方達敵連合と接触していたそうだけど?」
「アイツは義爛とコンタクト取るために俺たちのとこ来ただけだ。俺達に会いに来たんじゃねぇのかよ!」
「そうです!あのおじさんトガ達をチンピラって言ったんですよ!!ありえないです!!!」
義爛っていうのは敵連合と敵達の中継ぎ役のような人でトガちゃんや荼毘は義爛の紹介で敵連合に入ったらしい。実際に会ったことはないけど、敵連合が大きくなったのは義爛のおかげでもあるんだって。
「神田の目的は理解したけれど、それなら彼が個性消失弾に関わる必要はないはずよ。あと貴方達の後ろにいるものは何?」
この地下空間に降りてきたときから気になってたけど、SF映画に出てくる生命維持装置的な機械に繋がれたタコを人サイズに大きくしたような生物が二人の後ろにいる。目がギョロギョロ動いててこっちを凝視してる。キャスパリーグさんが威嚇してないから敵意とか攻撃性はないんだろうけどね。直視できないくらいの気持ち悪さではある。
「コイツを説明するにはそれはもう長い時間を要するわけよ!長すぎて嫌になるくらいな!」
「そうです。なので、出久ちゃんには滅くんからのビデオレターを差し上げます!」
トガちゃんからUSBを投げられる。説明がめんどいからってリーダーに丸投げしたわね。
「んで、これもあげちゃう!」
トゥワイスからはモデルガンを投げられた。危なっ!暴発したらどうすんだ!
「じゃあ帰るかー。バイチャー!なんだよその挨拶!」
「ですね。出久ちゃんまた会いましょう!!今度は絶対ちうちうさせてください!」
「前向きに検討するわー」
手を振るトガちゃんに手を振り返していると二人の体が一瞬で泥になる。あの二人はトゥワイスの個性で複製されたものだったみたい。さて、私もナイトアイに連絡しよ。この装置を一人では持っていけないしね。
「フォウ!」
キャスパリーグさんが急に肩から飛び、たこっぽいやつが繋がれている装置のそばにある小さな作業机にひょいひょい歩いていく。えぇ……、そいつの近く行きたくないぃ……。
「どうしたんですかキャスパリーグさん?」
今いる位置から動かずキャスパリーグさんに何かあるのか聞く。するとテシテシと机の上のものを見ろと言ってくる。ギョロ目タコの横を仕方なく通り過ぎ、キャスパリーグさんの元へ行き机の上を見る。
「何があるんですか?」
作業机の上には1枚のA4用紙が置いてあり、用紙いっぱい文章が記載され女性の顔写真が一つ添付されている。
「え……」
顔写真の女性は私の母親、緑谷陽だった。
「な、んで」