魔術師緑谷出久   作:ヤヤヤンヤ

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おかあさんばいばい

 

動揺をなんとか押し殺しナイトアイに連絡を取り、ここの場所を伝える。地下から外に出てナイトアイ達の到着を待つ。数分で廃倉庫にヒーローや警察が入り乱れているのを横目で眺める。

 

「デクちゃん大丈夫?」

「ええ、大丈夫…」

「ケロ…….。でも顔が真っ青よ」

「気分悪いなら先帰ってるか?」

「大丈夫。大丈夫…」

 

そんなに顔色悪いのかな。麗日さんと梅雨ちゃん、切島くんが心配そうに私を見てくる。キャスパリーグさんも麗日さんに抱かれながらフォウフォウ言ってる。体調なんて全然悪くない、むしろ大盛りご飯をお腹いっぱい食べたいくらいにはお腹も空いてる。ちょっとびっくりしただけだし、大丈夫。

 

「デク、病院に連絡した。行ってこい」

 

相澤先生が携帯片手にそう言ってくる。ナイトアイと先生にあの倉庫でのことをありのまま伝え、あのA4用紙に添付された緑谷陽のことも話した。そしてナイトアイにはトガちゃんから貰ったUSBも渡した。

 

「先生私どこもケガしてませんよ」

「違う。お前の母親の病院だ。...緑谷さんは病室にいるそうだ」

「ぇ?」

 

でもあの紙には"被験者緑谷陽の遺体"って書いてあったよ。

 

「......あれに書かれたことが、本当なのか見てこい」

 

先生は私の肩に手を置き呟き、混乱している私を警察車両に紛れて停まっていた黒いセダンに押し込む。

 

「蔵内さん....?」

「緑谷さん久しぶりだね」

 

セダンには蔵内さんが乗っていた。いつの間に連絡してたんだろう。蔵内さんは先生と一言二言話した後ハンドル切りり車を走らせる。どうして蔵内さんが来たんだろう?あの時の担当だったからかな。それとも敵連合が関わってるからかな。30分くらいであの人がいるはずの病院に着いた。

 

「ここで待っておくかい?」

 

蔵内さんは車を停め自分ひとりだけで確認に行くと言ってくれた。

..........でも。

 

「いえ、私も行きます。あの人が本物なのか確めたいです」

「君は強いな。.....では行こうか」

 

エントランスを抜け、エレベーターに乗り、どんどん病院の中を進む。オートロックタイプの自動ドアを2つ抜けると目的の病棟に入る。ここは精神病患者の中でも重い症状の人がいる病棟で、あの自動ドアは患者の脱走防止らしい。そして緑谷陽と書かれたネームプレートがある部屋の前にたどり着く。深呼吸を長めにし、スライドドアを開ける。

 

「いらっしゃい、出久」

「…………」

「もう、そんな怖い顔しないの」

「緑谷さん彼女は、「ガンド」.....!!!」

 

蔵内さんが何か言う前に緑谷陽の姿をした何かにガンドを打ち込む。すると体が泥に変わる。さっき廃倉庫の地下で見たトゥワイスの個性で作った泥人形と全く同じ崩れ方をした。

 

「!!……これは」

 

なるほど。トガちゃんとトゥワイスなら実体でここに来て多少の追手がいたとしても逃げられるはずなのに、わざわざトゥワイスの個性を使ったのは私に敵連合の関与を気づかせるためか。死々倉もいやらしいことするね。

 

「私があの人の偽物に気づかなかったらどうするつもりだったのよ...」

「緑谷さん一体どういうことなんだ。あの泥は複製の個性によるもののはずだ」

「......ふう。......蔵内さんの想像通りだと思います。緑谷陽は敵連合と関わっていたようです」

 

そして蔵内さんは病院側に状況を伝えたものの患者に混乱を与えないために一度管察署に戻り、応援を呼ぶらしく私を寮まで送っていくと言ってくれた。でも自分で帰るからと断り車を見送る。相澤先生には蔵内さんが話してくれるだろうし、私からは何も言わなくていいだろう。ああ、でもあの紙に書かれたことは本当だと思いますって言った方がいいかなあ。素直に、死んでると思います。って言った方がいいのかな?.....死んだんだよねあの人。死んじゃったんだよね。勝手に、私の知らないところで、死んじゃったんだ。

 

「..................私が殺そうと思ったのに」

「人殺しちまったらヒーローになれねぇぞ」

「!」

 

中庭のベンチでぼーっと夕やけの空を眺めて呟いた言葉を誰かに聞かれてしまっていたらしい。いつもなら気配で気づくのに、やっぱり今日は疲れてるのかな。なんでもないです。と言うために後ろを振り向く。

 

「......轟くんだ」

「おう」

 

後ろにはいつもよく見る赤と白のツートンカラーをした髪を持つ轟くんがいた。

 

「.....私服だ」

「日曜日だからな」

「あぁ、学校お休みだったね」

「おう」

 

後ろを向くのが面倒だからベンチに座るよう促すと、轟くんが隣に座ってくる。

 

「なんで轟くんはここにいるの?」

「おかあさんがここに入院してて見舞いで来た」

「そうだったんだね」

「おう。緑谷も見舞いか?」

 

一緒に空を眺めていた轟くんが私の方を向く。

 

「うーん、お見舞いなのかな」

「違うのか?」

「会おうと思ったけど死んじゃってた。病院にいたのは偽物だったの」

「......??」

 

轟くんが首を傾げてる。冗談だと思われてる?本当のことなんだけどなあ。

 

「ふふ、轟くんハグしよう」

「ん、急だな」

「人肌が恋しくなった!」

「わかった」

 

轟くんとハグしようと近づくと轟くんの髪が鼻に当たって少しくすぐったい。いい匂いがする。柔軟剤かな?男の子って感じの体だ。数分ハグし続けていたけどちょっと心が軽くなった気がするから轟くんから離れる。

 

「ありがとう、もういいよ」

「おう。満足したか?」

「うん、十分です」

「ならよかった」

「ありがとね。そろそろ帰ろうか」

「ああ。早くしねぇと夕飯食いっぱぐれる」

「そうだね」

 

そして寮までの道のりを轟くんと話しながら帰り、寮に着き中に入ると同時にかっちゃんと兄さんに両手を引っ張られてかっちゃんの部屋に連行された。

 

「なに二人とも、どうしたの?」

「「!?」」

 

なぜか驚かれて二人でぶつぶつ話し始めた。

 

「い、いずく、あのな、えーとな、」

「退けッ!......デク、話は聞いた。お前がアイツに縛られずに生きてくれるなら、なんだってする」

「お、俺も!!出久が苦しんでたの知ってるし、……正直死んで良かったと思ってる」

 

二人とも優しいなあ。相澤先生からあの人のこと聞いたんだんだね。

 

「二人とも心配してくれたんでしょ?ありがとう。……本当はね、ずっと私が殺してやるって思ってた。でも、……なんか今すっきりしてるの。全然虚勢とかじゃないから!確かに被検体とか遺体とか書かれてて動揺したけど、でももうあの人のことで悩んだりしなくていいって思ったらすっきりしちゃった」

 

笑顔で話す私を見て二人はほっと一息ついた。すごく心配してくれてたんだね。二人まとめてハグしようと腕を広げて抱きつく。轟くんには申し訳ないけれどやっぱり二人の方が安心する。かっちゃんの甘いニトロの香りと兄さんの私と同じ洗剤の香りが心を落ち着かせてくれる。目を閉じて二人のぬくもりを堪能していると、かっちゃんが急に抱きしめる力を強める。

 

「かっちゃん?」

「......半分野郎の匂いがする」

「「え」」

「デェェク......どういうことだァ?」

「ま、まさか出久........愛人候補探してんのか!?」

「してないけど!!?」

 

兄さんの予想外の発言に二人から体を離そうとしたのに、かっちゃんが離すかと言わんばかりに抱きしめる腕の力がだんだん痛いくらい強くなってくる。い、いた、痛い痛い!!

 

「愛人だと…?」

「はい!はい!志村転弧16歳、立候補します!!」

「立候補しないで!!ていうか募集してないんですけど!!?」

「殺す。半分野郎殺す。欠片も残さず殺す」

「かっちゃんダメ!!!轟くんは悪くないの!私がハグしてって頼んだの!」

「殺す」

 

今にも人を殺しそうな敵顔をさらすかっちゃんの腰に抱きつく。轟くんを守らなきゃ!!全体重をかけているのにずりずりとかっちゃんは進んでいく。兄さんは床でのの字を書いていてしょぼしょぼして助けてくれない。本気で愛人候補とか考えてないよね!?私には爆豪家の戸籍に入ることしか選択肢無いから!!

 

「そいえばさー」

 

多分のの字を書くのが飽きた兄さんがこっちを見てくる。

 

「なに!?」

 

もう玄関に着いちゃうよー!!!緑谷出久根性みせろー!!うおーー!!!

 

「出久の口調昔に戻ってね?」

「え?」

 

そういえばそう、かも?引きずられながら今までの会話を思い出す。…………本当だ。古本屋のお姉さんの口調が移ってそのままだったけど、ショック療法で治ったのかな??そしてなぜかかっちゃんの動きが止まったのでこれ幸いとかっちゃんを部屋に引き戻す。

 

「もうかっちゃん落ち着いて。私はかっちゃんが恋愛的にも友愛的にも一番好きなんだから」

「……チッ」

 

はあ………、落ち着いてくれてよかったあ。

 

「そんで、なんで口調戻ったんだよ?」

「私にもわからないけど、ショック療法的なやつじゃないの?」

「へー。ま、どっちでも俺はいいけどさ。あー腹減った。飯食い行こうぜ」

「はーい」

 

夕飯を食べるためにかっちゃんの部屋を出る。かっちゃんは轟くんの匂いを消すためか抱きついてる。自分の匂いをつけるためにすり寄ってる。絶対マーキングだよね。共有スペースに降りると(かっちゃんはマーキングが満足いったらしくもう離れてた)インターン組の3人も心配してくれてたようで麗日さんは涙目で、でぐぢゃーーん!!!!と言いながらタックルされた。デジャブかな??インターン組以外も3人の雰囲気でただ事じゃないと心配してくれていたけれど、インターンのことは口外できないので元気100%でもう大丈夫だと伝えるしかなかった。申し訳ない……。それと轟くんは無事に生きてます。かっちゃんが睨んでくることが不思議だったのか轟くんは、爆豪もハグするか?と平然と聞いてた。さすが天然、恐ろしい子…!

 

そしてみんなで夕飯を食べしっかり睡眠を取った翌日の学校では、先輩達も含むインターン組は相澤先生に呼び出され個性消失弾関係の話は口外禁止と再度注意を受けた。事件の顛末というか詳細は追ってインターン先のヒーロー達から聞くようにとのこと。ヒーローからインターン中の評価を直接聞き、評価シートを手渡されるまではインターンはまだ終わらない。データで送った方が効率は良いけれど、ヒーローから直にアドバイスを聞ける機会はなかなか無い。なので根津校長はそういった場を無くさないよう敢えて行っているらしい。というわけでヒーローや警察のゴタゴタが落ち着くまでは公欠してた分の復習や課題に励んでいろだってさ。一般市民が沢山いる病院(しかも侵入が難しい重症患者の病棟)に敵が入り込んでたんだから警察は捜査とかで忙しいだろうしね。ヒーローも協力しなきゃだろうし。私も以前のショッピングモールの時みたいに事情聴取されるのかな。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ナイトアイから連絡が来たのは任務が終わって一週間くらい経ったあとだった。メッセージには事件についての報告と成績評価を行うため雄英高校に来るというのが季節の挨拶からなが~く書かれていた。学校にもアポ済みで○日の昼休みに応接室に行けばいいんだって。ちなみにオールマイトはナイトアイが来ること知らない。なんでかっていうと、ナイトアイと会うのはきまずいからって隠れてしまわないように秘密にしているのです。~オールマイト&ナイトアイ仲良し大作戦~を実行するんだ!ナイトアイから連絡があった日、校長先生にオールマイトには絶対に伝えないでほしいと直談判したら理由を聞かれただけで軽くOKされた。校長先生もオールマイトとナイトアイの関係が悪化した事情を知っていて、大人の喧嘩に巻き込んでしまってすまないねと謝られ出張のお土産のお高そうなクッキーをひとつ貰った。ジャムがのったクッキーでとっっってもおいしかったです。

 

そして今は応接室でナイトアイを前に報告書を読んでいた。なぜか私一人だけ。通形先輩にはもう報告済みなんだって。一人ひとりに行う形なのかな?まずナイトアイと治崎さん達で調査を行っていた神田についてだけど、ある意味神田も被害者だった。トゥワイスがあの日言っていたように神田は敵連合ではなく義爛に金で雇える敵を探してほしくて敵連合と接触していた。そして神田に罪を擦り付けるためにトガちゃんが神田の姿に変身してたみたい。

 

なぜ敵を雇おうとしたのか、それは死穢八斎會の組長になるためボイコットを起こそうと考えていたから。神田はずっと現若頭候補の治崎さんを目の敵にしていた。今の死穢八斎會の方針が緩くて気に食わない、組長(理事長先生のことね)が行っている慈善事業(うちの児童養護施設とか犯罪や非行をした人が社会に復帰するための支援をする保護司っていう活動とか災害ボランティアとか)についてもカタギに舐められる、バカなことしやがってと思っていた。だからじぶんが組長になって昔のイケイケ時代に戻そうとしたかったんだってさ。

 

それで考えた作戦が、

①海外の過激派指定敵団体(略称:A団体)にけんかを吹っかけて責任を死穢八斎會に押しつける。

②A団体の対応に追われる治崎さん達の隙をついて八斎會本部を襲撃しボイコットする。

だった。なんか中学生くらいなら思いつきそな作戦だなー。まあ結果は言わなくてもわかるよね。ボイコット実行組の敵や下っ端達はボコボコに返り討ちにされ神田の企みは失敗に終わったのでした~。多分玄野さんが用意してくれたはずの八斎會側の出来事などが記載された書類には、アリーベルグループ(多分A団体のこと)が話し合いに応じてくれたのも後処理が早く済んだ一因だって書いてある。あと本部襲撃未遂の時点で神田が裏で動いていたことは治崎さん達は気づいていたけどまた何かするんじゃないかと思って泳がせてたんだって。そしてやっちまったのが恋人さんの私への発砲行為。ナイトアイからの連絡待ちしてる間に、音本さんが八斎會のみんなに報告してて理事長先生がかんかんに怒っちゃって、神田はもう破門している状態らしい。私は報連相をしろとめちゃくちゃ怒られました。説教3時間コースでした。足しびれて感覚無くなってた。

 

次にトガちゃんがくれたUSBに入っていた情報について。次のページをめくると詳細は映像を閲覧すること、と書かれてあり、それ以外はなぜか論文の内容や写真、あと緑谷陽の体調面についてが記載されていた。

 

「ナイトアイ、映像というのは?」

「あぁ、これを見てほしい」

 

ナイトアイがPCを開いて画面を見せてきた。画面に映る動画を再生すると薄暗い建物の真ん中で死々倉滅がランプ穢を持って微笑んでた。そのランプ雰囲気づくりで誰か買ってきたよね。そんな角材とかが置いてある所におしゃれランプあるわけないもんね。死々倉はいつの間にか置かれていたパイス椅子に座り、パイプ椅子のそばに落ちていた紙を拾った。

 

『これを読めばいいのか?えーっと……、今から指定敵団体死穢八斎會組員神田信彦、B大学准教授消元響(けしもときょう)、G病院入院患者緑谷陽、そして我ら敵連合開闢(かいびゃく)行動隊、の動向について報告する。はぁ、文字量多すぎだろ……』

 

カンペを音読し始めた。えぇ……、なんでカンペ。あと小声で『もっとイケメンらしくしろ!いや陰キャぽくしろ!』とか『滅くん気合入れてください!』とか『おい腹から声出せよー』とか指示出してるの普通に聞こえてるからね!?順番にトゥワイス、トガちゃん、荼毘ね。アンタ達静かにしなさい!って注意する声は多分おかまの人だと思う。今も棒読みの音読が続くけど長くなるからまとめちゃうね。

 

神田が接触していたのと同時期に敵連合には消元響っていうどこかの大学の准教授さんがコンタクトを取ってきた。消元は人間の身体に存在する個性因子を軽減する薬、個性軽減薬の製造の協力を仰いできたそう。

 

「個性軽減薬?」

「初期の段階では個性因子を消滅させようとは思っていなかったようだ。そして消元は、個性婚による格差社会の形成という論文を学会で発表していた」

 

あー、だからここに論文のこと紹介してたのね。またシビアな社会問題で論文書いたなあ。まじの関係者が友達にいるし闇深い事案あんまり関わりたくないんだけど…。仕方ないので動画を止めて論文の概要を読む。えっと、社会には強個性と呼ばれる個性持ちの人がいるよね?かっちゃんなんて自分で言ってるし。かっちゃんは偶然つよつよ個性を持って生まれたけど、轟くんは個性社会の負の遺産、個性婚により意図的に強個性を持つように作られてしまった。消元は個性格差によるいじめや虐待を生み出す個性婚を科学的・政治的にめちゃくちゃ否定している、って感じかな。

 

「個性軽減薬についてだが、消元は平等な社会の実現という()()で万人が手に取りやすい薬を用いて、個性因子の軽減や増強を試みていたようだ」

 

なるほど。確かに弾丸より薬の方が警戒心は薄れるよね。…………あれ?でも今ナイトアイ名目って言ったよね。

 

「名目が平等な社会の実現なら、本当は何をしようとしていたんですか?」

「…………、君だ」

 

へ?……わたし?

 

「映像を再生すればわかることだが……、消元は緑谷出久、君の個性因子を奪おうとしていた」

 

わたしのこせいいんし…………。

無いが?個性因子なんて無個性の私にあるわけないじゃん。なんで???

 

「心当たりが無いようだな」

「はい。でもどうして私なんですか。母に頼まれた、とかですかね?」

「いや、緑谷陽は無関係だ」

 

映像を見た方が早いだろうとナイトアイが再生ボタンをクリックする。

 

『20年前、消元響と緑谷陽は、高校の同級生だった。交友を深める二人は次第に惹かれ合ったが、交際には至らず卒業。っていうのがあの学者さんの言い分だよ』

 

死々倉は急にカンペからカメラの方に顔を上げる。音読終わったのね。

 

『実際は、緑谷陽はレオン・()()()()()という男と夜逃げし、君を産んだ。それから先は君の方が知ってるだろう?』

 

そうだね。消元響なんて聞いたこともなかったから、多分惹かれ合ったっていうのは消元の妄想だと思う。ていうか私の父親って外国人だったんだねー。レオンさんレオンさん言ってたけどまさか外国人だと思わないよねー。別にどうでもいいけど。アドリブを言えて満足したのか、死々倉はまたカンペを読み出した。

 

はい、ここからもまとめていきますよ〜。消元は大学を卒業し准教授になっても緑谷陽のことが忘れられなかったけど、学生では調べるために探偵を雇うようなお金がなかったから失踪したこと知らなかったんだって。あの人が私を産み、殺人未遂を起こし、精神病院に入院していることを大人になって知った消元は、医者としてあの病院に働きだしてあの人と接触したけど、娘に会いたい、合わせてほしいとずっと言うだけで、自分のことなんて全く覚えていなかったことにショックを受けた。どうすれば自分に振り向いてくれるか考えた結果、私の個性「魔術師」を奪って自分のものにするっていうよくわからんことに思い至ったらしい。

 

そこで気づいたよね、私ってば突然個性が発現したラッキーガールになってるって。自分では個性因子なんて持ってないって思ってるけど、第三者には私も遅咲きだけど強個性を持ってると認識されてる。だから私を狙ってたってわけね。母親を釣る餌にされる娘って……(泣)他人から見れば私の人生って波瀾万丈じゃない?

 

閑話休題

 

個性軽減薬を作るには研究施設と資金が必要、大学にも研究室はあるけど大学は個性軽減薬の研究を認めなかった。だから頼ったのが敵連合だった。でも死々倉は興味を持たなかったんだって。

 

『君を狙う輩を僕が許す訳ないだろう?君を殺すのは僕だけだ』

 

はーい、ヤンデレありがとうございまーす。敵連合にもバイバイされそうになった消元に、手を差し伸べた人がいた。敵連合に手を貸してるドクターが研究に協力しようって言ったんだって。あのおじいちゃん何にでも興味持つよね…。ドクターの元で研究してた消元だけど、なかなか上手くいかない。そんなときに新しい材料としてドクターが持ってきたのが緑谷陽の遺体だった。

 

『あ、僕達が殺したわけじゃあないよ。彼女は睡眠薬の多量摂取で死んでたんだよ』

 

あの人は市販の睡眠薬を多量に服用して自殺していた。警備や監視が厳重のあの病棟でどうやって市販薬を手に入れたのか、眠れないから睡眠薬が欲しいとお願いされた消元が密かに持ち込んでたらしい。消元は自分が自殺に手を貸してしまったことにショックを受けて廃人みたいになってしまったから、研究はドクターが引き継いだそう。

 

『あのじじいはそれが狙いだったみたいだよ。じじい生半可な研究にイラついてたし。僕が知らない間に個性消失弾は造られていた。でも量産はできなかったようだ』

 

1つ目は神田に変装していたトガちゃんがミスって神田の恋人さんに銃ごと盗られた。それが私が持ってた個性消失弾ね。

2つ目は天喰先輩が撃たれたときのやつ。あれは効果時間が短いものだったから、失敗作としてわざと神田の名前を使って流通させたんだってさ。

 

「そして3つ目だが、君が押収したモデルガンに装填されていた」

 

書類にあの日手渡されたモデルガンと個性消失弾が写真で添付されている。やっぱり弾丸入ってたじゃん。暴発しなくてよかった。

 

『あー、あとタコみたいなやつがいただろう?あれだ消元って男だ。じじいが新しい研究の材料にするって色々いじてしまった結果だそうだよ』

 

えぇ……。簡単に人間をおもちゃにしないでよ……。ナイトアイも行方不明者に消元響がいないか警察に調べてもらったら3ヶ月前に行方不明届け出されてるそう。DNA検査でも99%消元のDNAとタコのDNAが一致したって。なんか消元可哀想な人って印象しか残らなかったな……。

 

『これが事件の展望さ。緑谷陽に関しては申し訳ないと思っているけど、緑谷出久的には死んでくれて助かってるだろう?』

 

否定はしないよ。大っぴらには言わないけどね。

 

『君の枷をひとつ無くせたこと、とても嬉しく思うよ。じゃあまたね緑谷出久。ヒーロー達も僕らを見つけられるよう頑張ってくれたまえ』

 

死々倉が爽やかな笑顔で手を振って動画が終わった。書類も読み終えたのでナイトアイに戻すと、ナイトアイは鞄からファイルを取り出す。なんだろ?

 

「かそう、きょかしょう?」

 

火葬許可証と書かれた紙以外にも何枚か色々手書きされたものがファイルの中に入っている。

 

「……消元が利用していた研究施設で、君の母親の遺体が保存されていた。幸い目立った傷は注射痕のみで、現在は民間の安置施設に保管されている」

 

はぇーそんな施設あるんだ。

 

「君は未成年のため、公的な手続きなどは死穢八斎會の顧問弁護士が行っていると伺っている。だが君のサインが必要なものが幾つかあるそうだ」

「なるほど」

 

死んだ後って色々手書き大変なんだ。私が死ぬとき困らせないように終活ノート書いとこ。よくわからない名前の紙は都度ナイトアイに聞きながらサインと印鑑を押していく。このために印鑑持ってこいって相澤先生言ってたんだね。

 

「この書類で終わりですか?」

「あぁ」

 

そして皆さんこれからが本番です。インターンの評価が知りたいんですからね?ナイトアイ事務所のインターン成績はAでした〜。Aプラス取りたかった!!市民への対応はAプラスだけど、他ヒーローとの連携がイマイチでBだった。1人で解決できると思っても他ヒーローとの情報共有を行うこと、単独行動をする場合は端末での連絡を忘れないこと、を注意されました。それ以外は今のままでも大丈夫だって。でも研鑽は怠らないようにします!

 

「長期間ご迷惑おかけしました。ありがとうございました」

「いや私もインターン期間ではあったものの、危険な任務に参加させてしまい申し訳ない。来年も我が事務所に来てくれることを願っている」

 

冬のインターンは見分を広めるために別の事務所に行ってみようと思ってるから、冬のインターン期間は断った。

 

「はい、来年も必ず伺います!」

「期待しているよ」

「はい!」

 

これで終わり…………ではないんですね〜。ブレザーのポケットに入れていた携帯がさっき震えてたから多分もうすぐ来るはず。

 

「ナイトアイ、これからのご予定はありますか?」

「いや特に無いが……」

 

よかった。なら思う存分話せるね!!応接室の使用時間も校長先生が放課後まで使っていいって言ってくれたし大丈夫!あと午後の授業も出席出来なかったら公欠にしてくれるって。出血大サービスすぎてびびったよ。頭の中で仲良し大作戦の流れをおさらいしているとドアがノックされた。

 

「失礼しまーす。オールマイトお届けに参りましたー」

 

サングラスした兄さんがオールマイトを連れて来てくれた。なんでサングラス?兄さんの後ろには戸惑い顔のオールマイト、サングラスをした麗日さんと轟くんもいる。なんでサングラス?飯田くんは学級委員長としてのお仕事があるらしくて参加不可でした。

 

「ッッ!!!……オール、マイト」

「ナ、ナイトアイ!?」

 

オールマイトが驚いている隙に3人でオールマイトを応接室の中に押し込んでくれた。なぜか3人に敬礼されたので私も敬礼で返す。ありがとうみんな。でも兄さんと麗日さんは絶対に楽しんでるよね。轟くんはやり切った感出てる。頑張ってくれてありがとね。ドアの鍵を閉めて、オールマイトをソファに座らせて、私も横に座る。そして外に声が漏れないように遮音結界を張る。

 

「……」

「……」

 

この二人、会話しないつもりだな!!!そんなこと許すわけないだろー!まったく。ここは私が一肌脱いでやりますよ。

 

「ナイトアイはオールマイトが大怪我を負っていたことをご存じですか?」

「……あ、あぁ」

「その怪我についてですが、」

「み、緑谷少女!それを言っては……!」

「大丈夫ですオールマイト」

 

軽く深呼吸をしてナイトアイに向き直る。仲良し大作戦は大成功で終わらなきゃ。

 

「私が個性で治しました」

「へ、」

 

オールマイト、へって言わないで。バレるでしょ!

 

「……事実なのか」

「はい。私の個性は複合的であることはご存じだと思いますが、欠損した箇所も復元できます」

 

半分はウソ言ってないよ?個性か魔術の差異はあるけど。

 

「……なるほど。君の個性によりオールマイトの身体は治癒された、と」

 

あれ?理解早くない?普通信じないでしょ。

 

「ナイトアイ、信じて、くれるのかい…?」

「……6年前サイドキック契約を終了した後も、私は貴方の活動を追いかけていました」

 

ネ、ネトストだ……!ネットストーカーってやつだ……!SNSを駆使して逐一行動を監視してるやつだ……!

 

「5年前の先の戦いから、貴方は徐々に活動時間が短縮している。最近では現場に滞在する時間も1分ほどだった。だがある時期から、現場でのマスコミ対応が増加している。そして攻撃力もここ3ヶ月全盛期と相違ないレベルにまで増強されている。これらの点と彼女の個性の万能性を鑑みれば、納得しろと言っているものだ」

 

ガ、ガチオタじゃん……。事務所にオールマイトのポスター貼ってたし、原作でもオタクぽい描写あったけど仕事忙しすぎて追っかけとかできてないと思ってた。オールマイトの今までの活動完全に追ってるじゃん。オタク舐めてたわ。

 

「……オールマイト、貴方は彼女を後継者にするつもりなのですか」

 

きゅ、急に切り込んだね!?

 

「大丈夫ですナイトアイ、私断りましたから」

 

即座に断ったことを話す。

 

「君も知っていたんだな」

「……彼女が私の負傷を治してくれた時に話したんだ。ナイトアイ、私のことで気を病んでいたとは知らず、申し訳ない」

 

オールマイトが頭を下げる。気を病むっていうか、オタクのタスクだと思う。数秒後顔を上げたオールマイトは苦笑いを浮かべていた。

 

「私はオール・フォー・ワンを討つことを最優先として、今までヒーローを続けてきた。君に止められようが、身体が壊れようが、……最悪の場合相討ちになろうが、かまわないと思っていたよ。けれど、あの忌々しい男が死んでから、今までの生き方を恥じるようになったんだ。恩をアダで返していたと反省しているよ…。君にはもう遅いと言われるかもしれないが、あの時君の忠告を聞かず一人で突っ走ってしまった。すまなかった」

 

再度オールマイトは頭を下げた。でもすぐに頭を上げる。なんかすっきりしてる。心のもやもやが晴れたかな。

 

「いえ、私も貴方を救いたいと感情的になっていました。申し訳ない」

 

二人は最初よりもリラックスしてなごやかな空気になってる。これにて仲良し大作戦は終了になります。皆様ご協力感謝感謝です。では失礼して……

 

「てってっれ~」

「「!?」」

 

大成功!!!って書かれたボードを投影して持ち上げる。

 

「み、緑谷少女……?」

「オールマイトとナイトアイ仲良し大作戦、大成功~。はいお二人とも横に並んでください。いきますよー、はいチーズ」

 

二人に横一列に並んでもらって携帯でまず二人だけの写真を撮って、次に自撮りで私が入り込んだ写真を撮らせてもらう。

 

「お二人ともご協力ありがとうございます。ナイトアイ、今日は高校まで足を運んでいただきありがとうございました。では私は授業があるので失礼します」

 

一礼し、応接室を出る。はー、疲れた。さっき撮った写真を通形先輩に送る。校長先生にも放課後大成功だって言いに行こ。るんるんで教室に戻っていると携帯が振動してるのに気づいた。通形先輩かなと思って携帯を見ると(もちろん止まって見てますよ)治崎さんからだった。

 

「治崎さんから?なんだろ?」

 

メッセージアプリを開くと治崎さんからおつかれさま!と書かれたかわいい羊のイラストスタンプが送られてきてた。なにがおつかれさま?今回の事件に対してのおつかれさまってこと?あと治崎さんこんなかわいいスタンプ持ってたんだね。よくわからないおつかれさまへ、おめでタイ!なんつって!と書かれたたい焼きの被り物を被った犬のスタンプを返す。このスタンプ気にいってるんだ~。ちょっときもい感じがかわいいんだよね~。携帯をポケットに入れてゆっくり廊下を歩いていると5時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。……そういえば6時間目小テストなかったっけ。やば。気持ち急いで教室に向かう。こんな感じでドタドタバタバタしてたインターン期間は無事終了。誰も死なずに終わった。ナイトアイ救済成功ってことでOK?

 




2話続けての投稿でした。
出久の母親がなんで自殺した理由や父親のことは次回以降書くつもりです。
あと書かずに没にしたもので、
・ナイトアイはオールマイトが後継者として選んだ人が出久と思っていて、体育祭の活躍を見て実力を確かめるためにスカウトしていた。
・インターン初日にナイトアイは予知を試みたけど防御魔術が作用して予知できなかった。
という設定がありました。

次回からは文化祭編になります。

どうでもいい話ですがヒロアカが終わってガチ病みして体調崩してました。
皆さんも暑い日が続きますが体調お気を付けください。
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