PM 0:50
「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイトそしてもう1人の、3人態勢で見ることになった」
「何するんですか?」
相澤先生がRESCUEと書かれたカードを取り出す。
「災害水難何でもござれ、レスキュー訓練だ。今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな」
壁から番号が書かれたアタッシュケースが現れる。
「訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上準備開始」
各自の判断と言われたけどみんなコスチュームを着てバスに乗り込む。飯田くんが2列に並ぶよう指示していたけどバスは路線バスタイプのためムダでした。
「私思ったことを何でも言っちゃうの、緑谷ちゃん」
私の左隣に座った梅雨ちゃんが話しかけてくる。
「昨日オールマイトと何か話していたわね」
おっと、見られてた。
「先日の戦闘訓練でいい動きだったと褒めて頂いたの」
「確かに緑谷と爆豪の戦いすごかったよな。流石入試1位と2位って感じだった!」
「なんかスポーツやってた?」
梅雨ちゃんの隣に座る切島くんや私の真正面に座る芦戸さんが話に混ざる。
「知り合いに体術を教えてくれる人がいるの」
「だからかー!」
指定敵団体のヤクザです、とは言えないよ。談笑しているとバスが目的地に到着した。
「皆さん待ってましたよ」
スペースヒーロー13号が出迎えてくれた。テレビで見てて気になってたけど、あの中って暑くないのかな。扇風機とか搭載されてるのかな。
「早速中に入りましょう」
『よろしくお願いします!』
ドーム型の建物の中には、様々な災害に対応できるよう6つのゾーンが造られている。
「水難事故、土砂災害、火災、暴風、エトセトラ。あらゆる事故や災害を想定し、僕が造った演習場です。その名もウソの災害や事故ルーム、略してUSJ!」
いいのだろうかそれで。許可取ってるだろうけどさ。
「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせる筈だが・・・」
相澤先生が13号と何やら話しているが小声だから聞こえない。
「先輩、それが通勤時に制限ギリギリまで活動してしまった見たいで、仮眠室で休んでます」
「不合理の極みだな。・・・仕方ない、始めるか」
終わったみたい。
「えー、始める前にお小言を1つ2つ・・・3つ4つ5つ6つ・・・」
増える小言の数にみんなが顔を引き攣らせる。
「僕の個性はブラックホール、なんでも吸い込み塵にする個性です。僕の個性は主に災害救助で役に立ちますが、簡単に人を殺せる力です。みんなの中にもそういう個性がいるでしょ?みんなは容易に人を殺せる力を持っていることを忘れないでください。相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では心機一転。個性をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない、助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな。以上ご静聴ありがとうございました」
拍手と歓声が起こる。
「よし、そんじゃまずは・・・」
突然建物内の照明が消えて噴水があるセントラル広場に黒紫色のワープホールが出現する。
「一塊りになって動くな!13号、生徒を守れ」
相澤先生が捕縛布を構える。
ワープホールが徐々に大きくなり、そこから何人もの敵が現れる。けれど学校のセキュリティセンサーは作動しない。
「また入試ん時みたいにもう始まってるパターン?」
「動くな!」
相澤先生が首に掛けていたゴーグルを装着する。
「あれは、敵だ」
みんなに緊張が走る。
「13号、避難開始。学校に電話試せ」
「了解。皆さん急いで出口に向かってください」
13号の指示で走って出口に向かう。しかし途中でワープホールが現れ行手を阻んでしまう。
「させませんよ。初めまして我々は敵連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校入らせて頂いたのは平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして。ここにオールマイトがいると聞いていたのですが、何か変更があったのでしょうか」
13号がワープホール男、黒霧に攻撃を仕掛けようとするが、かっちゃんと切島くんが殴りかかる方が速かった。しかし黒霧は無傷で13号諸共私達をワープホールで覆ってしまう。
魔術使うか!?でもここで黒霧を捕まえたら今後の展開的にまずいことになるし・・・。とぐるぐる考えていたら水難ゾーンに飛ばされた。兄さんと共に落下しながらホウキを取り出し急上昇する。
「うおっ、めっちゃ敵いんじゃん」
「私達が落ちてくるのを待っていたのね」
湖にポツンと浮く船を見つけたのでそこへ降りる。船にはびしょ濡れの峰田くんがいた。そして梅雨ちゃんが船の壁をよじ登ってくる。
「梅雨ちゃん無事で良かった」
「えぇ、しかし大変なことになったわね」
「でもよ、オールマイトが来ればあんな奴らけちょんけちょんだぜ!」
いつの間にか回復していた峰田くんがそう言う。
「峰田ちゃん、殺せる算段が整ってるから連中こんな無茶してるんじゃないの?」
梅雨ちゃんの言葉に峰田くんが顔を引き攣らせる。確かにあの脳無がいるならオールマイトを追い込めることはできる。
「オールマイトが来るまで持ち堪えられるかしら。オールマイトが来たとして無事で済むのかしら」
峰田くんは徐々に焦りの表情を浮かばせる。
すると湖にいた敵達が船に登って来ようとしていた。
「わー!?大量だー!!」
峰田くんが敵に慄き涙目になっている隣で兄さんがスタンガンを湖に発射する。
『うわぁぁぁぁ!!!』
敵達は水中にいるため感電し気絶した。湖の中に潜んでいた敵達も浮かんでくる。
「一丁あがり〜」
周囲に意識のある敵がいないことを確認するとホウキに跨る。
「梅雨ちゃん峰田くん、二人は兄さんとここにいて」
「何言ってんだ緑谷!?」
「どこに行こうとしているの」
「相澤先生の所。一体だけ他の敵と違うヤツがいたの。相澤先生一人だけでは殺される」
「助けを待とうぜ!?」
「ごめんなさい、黙って見ているなんてできない性分なの」
地面を蹴り飛び上がる。
「緑谷ちゃん気をつけて!」
「了解!」
猛スピードでセントラル広場の方に向かう。遠目で相澤先生が巨体の脳無に頭と腕を掴まれ血だらけになっているが見えた。急がないと。
『止まれ』
呪文を唱えると脳無の動きが止まる。地面に降りて相澤先生に近づく。出血多いな。
「みどりや、くるな・・・」
先生すみません。でも止めないで。
『爆ぜろ』
再び呪文を唱えると脳無が爆散し辺り一面に血が撒き散らされる。白のコスチュームが赤く染まった。身体中に脳無の返り血がついてしまった。ちょっとやり過ぎた。
「アハハハハハッ!!!」
突然笑い声がセントラル広場に響き渡る。
相澤先生の怪我を治癒魔術で治すと防御魔術で結界を創り私と相澤先生の周りを囲う。
「アハハハハハッ!!アハハハハハッ!!!」
声の方に視線を向けるとボサボサの白髪の美青年が頬を赤らめてこちらを凝視しながら笑っている。オリキャラだ。
「こんにちは緑谷出久!久しぶりだね!!」
興奮しているのか息を荒げている。久しぶり・・・?
「生憎貴方のような知り合いはいないわ」
「なら自己紹介をしよう!僕の名前は死々倉滅!個性は寿命吸引、触れた者の寿命を自分のものにできるんだ!でも吸い取ろうと意識しないと吸えないよ!あぁ緑谷出久と会話できるなんて夢のようだ!!あの写真見てくれたかな?よく撮れていただろう!」
あの気色悪い写真の送り主はお前か!
「あぁこんなに近くで君を見ることができるなんて・・・!やはり君は美しい!可憐だ!あんな男のものになっては君の美しさが損なわれてしまう!!君を助けるなんて馬鹿な事をしでかすヤツは敵に殺されればいいんだ!」
「・・・・・・」
・・・・・・馬鹿な事だって?今かっちゃんが馬鹿な事したって言ったか?しかも殺されればいい、だと?
「アハッ!その顔は見たことがなかった!身体がゾクゾクするよ!」
よし殺そう。
「緑谷、アイツは何もんだ」
ハッ!・・・・・・・・・ありがとうございます相澤先生。先生が話しかけてくれなかったらもう一人殺る所でした。
「恐らく私のストーカーです」
「・・・ただのストーカーには見えねぇな」
「ワープホール男は敵連合と言っていました。オールマイトを殺しに来たそうです」
「オールマイトを・・・」
「ワープホール男の個性でみんな散り散りです。兄さんと梅雨ちゃん、峰田くんは無事を確認済みです」
「了解だ」
相澤先生に状況を伝えていると、死々倉の隣に黒霧が現れる。
「黒霧、遅いじゃないか」
「すみません死々倉滅。生徒を一人逃してしまいました」
「使えないなぁ。・・・じゃあ今日はもう帰ろう。緑谷出久にも会えたことだしね」
死々倉が満面の笑みでこっちを見つめる。
「しかしオールマイトを殺すという目的が・・・」
「黙れ」
死々倉が表情をそぎ落とし黒霧を睨みつける。
「脳無は殺された。僕達にできる事はもう何も無い」
「!?」
黒霧は辺り一面に広がった血や血塗れの私や相澤先生を見る。死々倉の言葉が嘘ではないとわかったようだ。
「・・・・・・・・・わかりました」
「緑谷出久、残念ながらお別れの時間だ。また会えることを願っているよ!」
死々倉は出久に手を振りながらワープホールに入っていく。
ワープホールが消えたことを確認すると防御魔術を解く。
「デクッ!!!」
おっと、かっちゃんが慌てた様子で私に駆け寄り肩を掴む。あの時みたいな焦った顔してる。
「かっちゃん大丈夫。これ返り血よ」
「・・・マジで何もねぇんだな?」
「えぇ、かっちゃんこそ無事で良かったわ」
かっちゃんがチンピラ程度の敵に負けるわけないもんね!
「お二人さん甘い空気を出さんでくれよ」
「・・・チッ」
「爆豪ー!」
かっちゃん同様倒壊ゾーンに飛ばされていた切島くんがこちらに走ってくる。
「急に走ってどうしたんだよ・・・って緑谷!?相澤先生!?」
切島くんが血塗れの私と相澤先生を見て目を見開く。
「すげぇ血だぞ!?大丈夫か!?」
「返り血だから気にしないで」
「切島、他に生徒は見たか」
「い、いやあっちには俺と爆豪だけっす。でも途中氷が見えたんで、多分轟も無事なはずっす!」
轟くん、葉隠さん凍らしてないといいけど。
「1-Aクラス委員長飯田天哉、ただいま戻りました!!」
飯田くんの声が聞こえた方を向くと、オールマイトをはじめ、雄英の先生達が駆けつけていた。
ーーーーーーーーーー
先生によって捕獲された敵達が警察に連行されている。
「18、19、20、21・・・、ほぼ全員無傷か」
うわー!こんな所でこの人に会えるなんて!
みんなは教室に戻る指示が警察から出されたためバスに戻るが私は先ほどの刑事さんに話しかける。
「あの、塚内さんですよね?」
「ん?」
10年前あの人を豚箱にぶち込んでくれた塚内直正さん。
「君は・・・緑谷出久さんだね」
「はい、お久しぶりです」
「久しぶりだね。大きくなったなぁ。雄英に入ったんだね、合格おめでとう・・・ってもう遅いか」
「いえ!ありがとうございます」
10年前も前の事を覚えてくれてたなんて・・・!
「塚内君、緑谷少女を知っているのかい?」
オールマイトが塚内さんに尋ねる。
「あぁ」
「昔お世話になったんです」
「お世話!?け、警察にかい!?」
「安心してくれオールマイト、彼女は何もしていない」
「そ、そうなのかい緑谷少女!」
「えぇ、私逮捕歴なんてありませんよ」
オールマイトがあからさまにホッとする。失礼な。私そんなにヤンチャに見えます?
「緑谷行くぞ」
相澤先生から呼ばれた。ひぇ!バスの方を向くとかっちゃんが凶悪な顔で窓に張り付いていた。
「今行きます!塚内さんお会いできて嬉しかったです。失礼します」
出久は一礼しバスに向かう。
「まさか塚内君も緑谷少女を知っていたなんてね」
「詳しくは言えないが、彼女は事件の被害者なんだ」
「だからお世話になった、か」
「あぁ。君の怪我を治したのが彼女なんて、なんの因果が働いたのか」
オールマイトと塚内は勝己に尋問される出久を見ていた。
ーーーーーーーーーー
USJから逃亡した死々倉と黒霧はアジトに戻っていた。死々倉は恍惚とした表情で出久の写真を見ている。
「緑谷出久・・・、あぁまだ心臓がドクドクいってるよ・・・!」
『死々倉滅、またそんなものを見ているのかい?』
突然テレビから男性の声が聞こえた。
死々倉がテレビを睨みつける。
「・・・・・・」
『オールマイトならまだしも、子供を殺すことも出来ず逃げ帰ってくるなんて、見通しが甘かったね、死々倉滅』
声だけでも愉快そうだとわかる。
『敵連合なんちゅうチープな団体名じゃからいかんのだろうよ』
今度はしわがれた老人の声がテレビから聞こえる。
『ところで、先生とわしの共作脳無は?』
『回収してないのかい?』
死々倉が声を無視して写真を見続けるため黒霧が代わりに答える。
「・・・倒されました」
『何?』
「跡形も無く木っ端微塵にされていました」
『折角オールマイト並みのパワーにしたのに・・・!』
老人が悔しそうな声を上げる。死々倉は出久が脳無を倒した光景を思い出し満面の笑みを浮かべる。いつも写真で見ていた表情とは全く異なり、こちらを殺気を込めた目で睨みつけていた出久に死々倉は興奮して身体が震えている。
「緑谷出久、あぁなんて美しいんだ・・・」
ーーーーーーーーーー
翌日
学校は臨時休校となったが、私はオールマイト(トゥルーフォーム)と警察署に来ていた。敵連合のリーダーと思われる死々倉滅と接点があったため詳しいことを聞きたいらしい。
「これは・・・」
死々倉に隠し撮りされた写真をオールマイトと塚内さんに見せる。
「典型的なストーカーだな。いつからこういった行為はあったんだい」
「6年前です。それから毎年届くようになりました」
「緑谷少女、なぜ警察に言わなかったんだ」
「警察は実害が無いと動かないと聞いたので、別に生活に支障は無かったですし」
「Oh、タフネス・・・」
オールマイトが顔を手で覆い上を向く。
「6年前何か変わった事はなかっただろうか。例えば人を助けたとか」
「・・・・・・買い物に行った所で強盗に遭遇しました。でも直ぐにヒーローが来て捕獲されていたはずです」
6年前兄さんがゆるキャラを見たいと言ったため二人でショッピングモールに行ったが強盗があったのでイベントは中止になってしまい兄さんが悔しがっていたのを思い出した。
「監視カメラの映像を見るに死々倉の緑谷さんへの執着は凄まじい。何処かで出会っているのは確かだ」
「緑谷少女思い出すんだ!」
「そう言われても・・・・・・・・・・・・あ」
「何か思い出したんだね」
強盗犯が取り押さえられたあと、怪我をした少年を見つけたから治癒魔術で治したな。あれ、でも茶髪だった気がする・・・。塚内さんにその事を話すとメモをとっていた。
「君より年上だったかい?」
「そうだったと思います」
「死々倉は凡そ20代前半、6年前ならば中学生くらいか・・・。他に覚えていることは?」
他に、他に、他に・・・・・・。あ!
「・・・・・・男の人がいました。黒いスーツを着て、帽子を深く被って、あ、棒を持ってました。盲者の人が持っているような棒です」
「なるほど・・・」
程なくして話は終わり私は帰路についた。でもあの少年が死々倉なのか?顔思い出せればな〜。あんだけイケメンなら覚えててもいいもんだけど・・・。ん〜〜〜。
死々倉滅
個性:寿命吸収
触れた者の寿命を吸収し自分のものにできる。しかし常時発動しているのではなく、意識しなければ吸収できない。触れた時間と吸収する寿命は比例している。触れた相手の寿命全てを一瞬で奪うこともできる。