魔術師緑谷出久   作:ヤヤヤンヤ

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オリジナル魔術でます。


約束された勝利の剣

 

『さあ昼休憩も終わっていよいよ最終種目発表!・・・とその前に予選落ちのみんなに朗報だ。あくまで体育祭、ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!』

 

生徒達が入場する中、A組の女子(私以外)がチアリーダーの格好で登場した。

 

「お前も着りゃ良かったのに」

「ああいう格好はかっちゃんの前でしか着ないって決めてるの」

「へーへー」

 

二人の会話を聞いていた上鳴と瀬呂が生暖かい目で勝己を見つめる。

 

「見てんじゃねぇ!!」

 

え、なにかっちゃん。急に大声出してどしたの。

 

ルール説明に移る。

最終種目の総勢16名からなるトーナメント方式の1対1のガチバトル(プレゼントマイク的言い方)の組み合わせ決めのくじ引き後レクリエーションを挟み、ガチバトルが始まる。レクリエーションの参加は各自自由らしい。

 

「それじゃあ1位のチームから・・・」

「あの!すいません」

 

尾白くんが手を上げる。

 

「俺、辞退します」

 

尾白くんの周りの生徒達が目を見開く。

 

「騎馬戦の記憶、終盤ギリギリまでぼんやりとしかないんだ。多分ヤツの個性で・・・。チャンスの場だってのはわかってる、それを不意にするのは愚かな事だってのも」

 

みんなが尾白くんを思いとどまらせようとするが、尾白くんは首を横に振る。

 

「違うんだ。俺のプライドの話さ。俺が嫌なんだ」

 

B組からも尾白くんとチームを組んでいた男子が辞退を申し出る。ミッドナイトが辞退を認めたことでB組の鉄哲くんと塩崎さんが繰り上がりで最終種目に進んだ。

 

「抽選の結果、組はこうなりました!」

 

スクリーンに映し出されたトーナメント表に各自の苗字が登録される。

 

私は第1試合、普通科の心操くんと当たる。

 

「アンタだよな、緑谷出久って」

 

背後に心操が立っていた。気配気づいてましたけどね!

 

「1回戦よろしく」

 

無言で対応しておこう。そしてレクリエーションが始まるが私と兄さんは観客席に戻り話をしていた。

 

レクリエーションが終わりステージへと続く廊下でプレゼントマイクのアナウンスを待っている。

 

「Hey!」

 

後ろから声をかけられ振り向くと、オールマイト(トゥルーフォーム)がいた。

 

「オールマイト、いらしてたんですね」

「キミの活躍見ていたよ。余裕の1位通過、流石だね」

「ありがとうございます」

「間違いなくキミは決勝に進むだろう。しかし油断は禁物だよ?」

「えぇ、足を掬くわれないよう気をつけて戦います」

「その調子だ!」

 

『オーディエンス共!待ちに待った最終種目が遂に始まるぜェ!』

 

オールマイトと話しているとプレゼントマイクのアナウンスが始まる。

 

「応援しているよ!」

「はい!」

 

『第一回戦ヒーロー科緑谷出久VS普通科心操人使!』

『ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする。あとは参ったとか言わせても勝ちのガチンコだァ!レディ・・・』

「あの猿はプライドがどうとか言ってたけど」

 

突然心操くんが喋りだす。

 

『スタートッ!』

「チャンスをドブに捨てるなんて馬鹿だと思わないか?」

「いいえ?」

 

問いかけに答えたが何も感じない。だって身体の内側に防御魔術張ってるからね。

 

「お前は恵まれてていいよな、緑谷出久。振り向いてそのまま場外まで歩いていけ」

 

心操くんの命令通りに振り向き歩いていく。けど途中で歩みを止める。

 

『おっと!?緑谷の動きが止まった!』

 

「何?」

 

ステージを四角く覆うように黒い結界を張る。

 

『こりゃ何も見えねぇぞ!!どうなってんだ!?』

 

振り返り心操くんに笑いかける。

 

「なんで洗脳が・・・!」

「ごめんなさい。私そういう系効かないの」

 

心操くんは焦っているのか額に汗を滲ませる。

 

「ねぇ、先程の恵まれてていいよなってどういう意味かしら?」

「・・・・・・そのままの意味だ。アンタの個性ヒーロー向きだろ。俺みたいな地味な個性だとヒーローにはなれねぇんだよ」

「そうかしら」

 

なるべく明るい声で否定した。

 

「貴方の個性、洗脳って言ってたわね。充分ヒーロー向きの個性だと思うわ。敵に一言喋らせただけで言うことを聞かせられる、素晴らしい個性ね。血を流さず事件を解決できるもの」

「・・・・・・」

「確かにパワー系の個性の方が日の目を見ているわ。でもね、本当に必要とされる人は貴方のような人なのよ」

「・・・なんでそんな事わかるんだよ」

「さあね」

 

治崎さんや玄野さんに聞いたなんて言えない。治崎さん洗脳系の個性じゃないのに洗脳できるからね。あれは一種の才能だと思うよ。

 

「・・・心操くん、ヒーローになる夢を絶対に諦めないで。貴方を必要とする人は沢山いるのよ」

 

話しながら心操くんに近づいていて呪文を呟く。

 

『眠れ』

 

心操くんが膝から崩れ落ちるのを支えて地面に寝かせ結界を解く。

 

『お?心操倒れてね?』

「し、心操くん戦闘不能、緑谷さんの勝利!」

『最終種目、真っ先に2回戦に進出したのはA組緑谷出久!』

 

数分後、担架で運ばれた心操は普通科のクラスメイトから心操を欲しがるプロヒーロー達の言葉を聞かされるのだった。

 

第2試合、塩崎さん対上鳴くんは瞬殺で塩崎さんが勝利。

第3試合、轟くん対瀬呂くんは轟くんが会場を飛び出す程の大きな氷塊を創りだし瀬呂くんを行動不能にし勝利。

第4試合、発目さんが発明したベイビー達のお披露目のような試合となったが飯田くんが勝利。

第5試合、ビームの撃ち過ぎで弱った青山くんに芦戸さんのアイアンクローが綺麗に入り芦戸さんが勝利。

第6試合、常闇くんの黒影のラッシュで押し出され八百万さんはなす術なく場外となり、常闇くんが勝利。

 

第7試合が始まったため席を立つ。

 

「どこ行くんだ?」

「麗日さんの所」

「行ってら」

 

控え室2に入ると麗日さんと飯田くんが話していた。

 

「緑谷君!」

「お話中ごめんなさい。麗日さんに頑張れって伝えたくて」

「デクちゃんありがとう!」

 

沈黙が走る。

 

「しかしまぁ、流石に爆豪君も女性相手に全力で爆破は・・・」

「するわ。女の子だろうとかっちゃんは手加減しないわよ」

「やはり、そうか・・・」

「・・・・・・騎馬戦の時、仲良い人と組んだ方がやりやすいって思ったけど、今思えばデクちゃんに頼ろうとしてたんかもしれない。だから飯田くんが挑戦するって言ってて、本当はちょっと恥ずかしくなった」

 

麗日さんが席を立ち控え室を出ようとする。

 

「みんな将来に向けて頑張ってる。そんならみんなライバルなんだよね。だから、決勝で会おうぜ・・・!!」

 

振り返り、震えながら笑顔でグッとサムズアップをする。頑張れ麗日さん。

 

第7試合、切島くん対鉄哲くんは両者ダウンにより引き分け。回復後簡単な勝負で勝敗を決めることとなった。

 

 

第8試合が始まる。

 

『第1回戦最後の第8試合、堅気の顔じゃねぇ!ヒーロー科爆豪勝己!VS』

『俺はこっちを応援したい。ヒーロー科麗日お茶子!第8試合スタートッ!!』

 

麗日さんが走りだす。かっちゃんが右腕を振りぬこうとする。麗日さんは右からの大振りが来ると考え腰を低く屈む。それを見抜いていたかっちゃんは下から爆発を起こし麗日さんにモロに攻撃が入る。

 

「勝己ってばえげつねぇな」

「女の子でも容赦しないのが、かっちゃんだから」

 

かっちゃんが左側に爆発を起こす。しかし麗日さんはおらず爆発で穴の空いたジャージだけがありかっちゃんに隙が生まれる。

 

麗日さんがあともう少しでかっちゃんの背に触れるというところで、かっちゃんが凄まじい反射神経により避け、振り向きざまに爆発を起こし麗日さんを跳ね飛ばす。

 

麗日さんが再び走りだす。

 

「遅ェ!!」

 

かっちゃんが爆発で地面のセメントを崩しながら麗日さんにさらに大きな爆発を浴びせる。再び麗日さんが接近しかっちゃんが爆発を浴びせる。それが何回か繰り返されると会場からかっちゃんへブーイングが起こる。

 

「あのヒーロー殺していいかしら」

「緑谷君!?」

「かっちゃんが遊んでるですって?大概にしなさいよね。臓物引きちぎるわよ」

「出久落ち着け。俺だって崩壊させてぇのに我慢してんだぜ」

「志村君まで何を言ってるんだい!?」

 

苛立つ私の頭を兄さんが撫で続ける。

 

『今遊んでるつったのプロか?何年目だ。シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ!帰って転職サイトでも見てろ!』

 

相澤先生がマイクを取りブーイングに叱責を入れる。いけ相澤先生!あんなヒーローなんかけちょんけちょんにしてしまえ!!

 

『爆豪はここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろ。本気で勝とうとしているからこそ、手加減も油断も出来ねぇんだろうが!』

 

会場のブーイングが止む。

 

「てかあれ気づかねぇなんてマジでプロなんか?」

「プロ(笑)ヒーローなんじゃないの?」

「なるほどな」

「緑谷君そのような肩書きはないぞ!?」

 

私達の視線の先にはステージ上空に数え切れないほどのセメントの破片が浮いていた。

 

「勝ァつ!!!」

 

麗日さんが個性を解くと一気に破片が落下する。破片を処理するために生まれる隙を捉えようと麗日さんがかっちゃんに腕を伸ばす。

 

ドォォンッ!!!

 

かっちゃんがとてつもない大きさの爆発を起こす。爆風により麗日さんの体が地面に打ちつけられる。セメントの破片は爆発で会場の外へ飛ばされていた。

 

「デクとつるんでっからな。なぁんか企みあるとは思ってたが・・・」

 

『爆豪会心の爆撃!麗日の秘策を堂々突破ァ!!』

 

よろよろと麗日さんが立ち上がる。それを見てかっちゃんが凶悪な笑みを浮かべる。

 

「いいぜ、こっからが本番だ!麗日ァ!!」

 

「かっちゃんが名前で呼んだ・・・!」

「嘘だろマジかよ!?」

「どこに驚いているんだい君達!?」

 

かっちゃんが麗日さんに向かって走りだす。麗日さんもそれに対応しようとするがバランスを崩し倒れる。それでもかっちゃんに向かって這いずってでも進もうとするが意識が途切れる。

 

ミッドナイトが駆け寄り麗日さんの様子を確認する。

 

「麗日さん行動不能、爆豪君の勝利!」

 

『爆豪二回戦進出!!これで1回戦が一通り終わったァ!小休憩挟んだら早速次いくぞ!』

 

ーーーーーーーーーー

 

二回戦のため控え室に向かっていると

 

「無視してんじゃねぇぞデク!!」

 

かっちゃんが階段を登りながら凶悪な顔でこっちを見ていた。

 

「あら、かっちゃんいたの」

「いちゃ悪いんか!?」

「別にそんな事言ってないわ。一回戦おめでとう」

 

かっちゃんにそれだけ伝えると麗日さんのいる控え室に向かう。

 

「テメェの入れ知恵だろ。あの捨て身のクソみてぇな策はよォ。厄介な事しやがって、ふざけんじゃねぇぞ」

 

かっちゃんが吐き捨てる。違うよかっちゃん。

 

「いいえ、私は麗日さんに何も言ってないわ。全て彼女が貴方に勝つために考えたのよ。厄介だと思ったのなら、彼女の策が有効だったの」

「・・・・・・」

 

ーーーーーーーーーー

 

「いや〜負けてしまった!」

 

控え室に着くと元気そうな麗日さんがいた。

 

「最後イケると思って調子乗ってしまったよ!クッソ〜!」

「・・・麗日さん怪我はどう?」

「リカバリーされた、体力削らんようほどほどの回復だから擦り傷とかは残ってるけど」

 

ガーゼを貼られている頬を照れくさそうに掻いている。

 

「いや〜やっぱ強いね爆豪くんは!完膚なかったよ〜!もっと頑張らんといかんなわたしも!」

 

左手を握りしめて悔しそうにする。

 

「良い試合だったわ」

「ありがとう!」

「本当に大丈夫?」

「大丈夫!デクちゃんだってすぐ先見据えてやってるし私も負けたからって負けてられんよ!」

 

『イヤァオゥ!』

 

実況のプレゼントマイクの声が控え室に響く。第7試合で引き分けだった切島くんと鉄哲くんの二回戦進出をかけた腕相撲勝負が終わったようだ。

 

『二回戦の切符を勝ち取ったのは切島だァ!!さぁこれで二回戦の進出者が出揃った!つぅわけでそろそろ始めようか!』

「行ってくるわ」

 

控え室を出ようとすると麗日さんの携帯のコール音が鳴る。

 

「あぁごめん!私がおって全然準備が・・・」

「気にしないで」

「・・・デクちゃん頑張って!」

「ありがとう」

 

控え室から出て暫くすると控え室から泣いている声が聞こえてくる。泣き声を背にステージに向かう。

 

ーーーーーーーーーー

 

プレゼントマイクのアナウンスで二回戦第一試合が始まる。

 

『二回戦第1試合、女子対決だァ!!ヒーロー科緑谷出久VSヒーロー科塩崎茨!スタートッ!!』

 

塩崎さんが私めがけツルを伸ばす。

 

『曲がれ』

 

呪文を唱えるとツルが突然直角に進行方向を変える。

 

「!?」

『拘束しろ』

 

更に呪文を唱えるとツルは塩崎さんの方に猛スピードで戻ってくる。塩崎さんがツルで盾を創るがそれを避けるようにツルが二手に分かれ、塩崎を拘束する。

 

「くっ・・・!」

「塩崎さん行動不能、緑谷さんの勝利!」

 

『瞬殺だァ!準決勝への切符を掴んだのは緑谷!!』

 

続いて第二試合。

 

『二回戦第2試合、お互いヒーロー家出身のエリート対決だァ!ヒーロー科飯田天哉VSヒーロー科轟焦凍!スタートッ!!』

 

轟くんが飯田くんに向けて氷結を発動する。飯田くんはスピードを活かし逃げるが氷に囲まれる。轟くんはさらに飯田くんに向けて氷塊を創り出す。氷に阻まれた飯田くんだったが迫り来る氷を立ち幅跳びのように避け、轟くんに接近する。

 

「レシプロ、バースト!!」

 

飯田くんが足のエンジンを起動し素早い蹴りを入れるが、轟くんは屈む事でそれを避ける。飯田くんがもう一度足を加速させ蹴りを打ち込む。轟くんは避けきれずモロに攻撃を受ける。

 

「ヒュー、やんじゃん飯田」

 

飯田くんが俯せになった轟くんのジャージを掴み、場外に投げ飛ばそうと走り出す。

 

しかし突然加速が止まる。飯田くんの足のマフラーが凍らされていた。

 

「いつの間にっ!!」

 

飯田くんの体が氷に包まれる。

 

「蹴りん時、範囲攻撃ばかり見せてたからこういう小細工、頭から抜けてたよな。警戒してたんだがレシプロ、避けられねぇな流石に」

 

「飯田君行動不能、轟君の勝利!」

『轟、炎を見せず準決勝進出決定だァ!』

 

その後第3試合、第4試合と続き常闇くん、かっちゃんが勝ち進んだ。

 

『これでベスト4が出揃った!小休憩挟んで準決勝だぜ!』

 

ーーーーーーーーーー

 

準決勝のためステージに向かっていると曲がり角からフレイムヒーローエンデヴァーが現れた。

 

「おぉいたいた」

 

面倒くさいのが来た。初期エンデヴァーはマジヤバ親父だからな。

 

「緑谷君、キミの活躍見せてもらった。素晴らしい個性だね」

「ありがとうございます」

「判断力や洞察力、身体能力も素晴らしい。まるで若かりし頃のオールマイトを見ているようだよ」

「お褒め頂き光栄です。急いでいますので失礼します」

 

エンデヴァーの横を通り過ぎステージに向かう。

 

「うちの焦凍には、オールマイトを超える義務がある。君との試合はテストベッドとしてとても有益なものになる。くれぐれもみっともない試合はしないでくれたまれ」

「・・・ご心配なく。貴方には悪いけれど息子さんには勝つわ」

「何・・・?」

「それとね」

 

振りかえりエンデヴァーを睨みつける。

 

「子供は親の所有物でも玩具でもないの。野望とは身の程を超えた大きな望みっていうの、貴方の野望なんて私がちり紙と一緒に捨ててあげるわ。子供だって一人の人間なのよ。一人の人間の人生をめちゃくちゃにして楽しいかしら?」

「・・・・・・」

「失礼するわ」

 

『お待たせしたなァエブリバディ!!準決勝第1試合はビッグマッチだァァ!!』

 

歓声が上がる。

 

『二回戦ではヒヤヒヤしたぜ!ヒーロー科轟焦凍!!』

『ここまで順調な勝ちっぷり!同じくヒーロー科緑谷出久!!』

『準決勝第一試合、今回の体育祭両者共にトップクラスの成績!緑谷VS轟!!まさしく両雄並び立ちィ!今、スタァァトッ!!』

 

開始の合図と同時に轟くんの氷塊が繰り出される。

 

ᚹᛁᚾᛞ()

 

風のルーンを空中に書くと爆風が起き氷が弾き飛ばされる。氷を含んだ突風が轟くんや轟側の観客席にまで吹き荒れる。観客から寒い!という声が上がっている。

 

『おおお!!緑谷、轟の攻撃を防いだ!』

 

轟くんが再度氷塊を創り出すが、もう一度風のルーンで弾き飛ばす。会場内の温度が轟くんの氷により徐々に下がっている。

 

「チッ!」

 

轟くんが足元に氷塊を創り出しながらこっちに接近する。ここで氷を弾いても上から轟くんが攻撃を仕掛けてくるだろう。

 

「ᚹᛁᚾᛞ」

 

気にせず風のルーンで轟くんの足元の氷を弾き飛ばす。案の定跳躍した轟くんが私目掛けて拳を振り上げる。しかし私は避けず拳をモロにくらい吹っ飛ぶ。いったぁ・・・。

 

「!」

 

『ああっと!イイのが入ったァ!!』

 

「・・・・・・」

 

左頬が痛いが立ち上がり轟くんを睨みつける。

 

「埒が明かないから言わせてもらうけど」

 

口の中の血を吐き出してまた口を開く。

 

「貴方の境遇なんて興味ないのよ。同情してほしいわけ?生憎、私と兄さんだってそれくらい鼻で笑えるような修羅場くぐり抜けてきたの。何がエンデヴァーを見返すよ、見返す相手もいない私達への皮肉?貴方みたいな、力があっても使おうとしない人がヒーローになろうとしないで。そんな甘い考えで人を救えると思ってるの?エンデヴァーなんて関係無いでしょ。・・・氷だけで私を倒す?笑わせないで」

 

「轟焦凍!!全力でかかって来なさい!!」

 

「全力・・・?何のつもりだ・・・、クソ親父に金でも握らされたか?」

 

轟くんに接近し蹴りをかます。置換魔術で轟くんの目の前の氷塊と私の位置を変えたのです。

 

「ぐっ・・・!」

 

轟くんは腕でガードしたものの衝撃で腕が痙攣している。そして氷結を使い続けているため体に霜が降り体の動きが鈍くなっている。

 

それでも轟くんは私に向かって走り攻撃を仕掛けようとするが、腹に重い一撃を打ち込む。吹き飛ばされるが氷の壁を創り、なんとか場内に留まる。

 

「俺は、この力を、親父の・・・!」

 

轟くんがよろよろと起き上がりながらも左の力を使わまいと呟く。いい加減にしなさい!

 

「・・・・・・貴方の個性は貴方のものよ!!他人がどうこう言おうと貴方の力なの!!!」

 

数秒轟くんの動きが止まった。

 

突然轟々と音を立てて火柱が上がる。

 

『こ、これは・・・!?』

 

やった・・・。私なんかの言葉でも効いたんだ!

 

「焦凍ォォ!!」

 

エンデヴァーの大声が会場内に響く。でもごめん、なんて言ってるか全然わかんない。もっと大きな声で言って!

 

「何笑ってんだよ。この状況で、イカれてるよお前。・・・どうなっても知らねえぞ!!」

 

轟くんが右足から今までで一番大きな氷塊を私に向けて放ち、次に左手で炎を繰り出す。

 

「まずいっ!!」

 

急いでセメントスがステージ中央にセメントで大きな壁を創り出す。

 

私は手をピストルのような形にして今ある半分の魔力を放つ。

 

「ガンド!」

 

迫り来る氷塊やセメントの壁が魔力の塊に弾き飛ばされる。

 

そして轟くんの氷結によって冷やされていた空気が高温の炎で暖められたことで膨張し、爆風が起こった。粉々になったセメントが舞い上がり煙幕のようになる。風強すぎ!!!

 

徐々に煙幕が薄れると、ステージ内に二つの人影が現れる。観客は様子を固唾を飲んで見守る。

 

バタッ

 

一人が倒れた。

 

 

 

 

 

 

「と、轟君戦闘不能、緑谷さん三回戦進出!!」

 

歓声が上がる。

 

轟くんに駆け寄り、急いで担架に乗せる。

 

「みど、りや・・・」

「轟くん嬉しかったわ。ありがとう」

 

限界だったのか轟くんが意識を失う。

 

ーーーーーーーーーー

 

「出久」

 

観客席に戻る途中、兄さんが待っていた。

 

「兄さん」

「ん」

 

兄さんが両手を広げるので腕の中に飛び込む。

 

「あんま気にすんなよ」

「うん。ちょっと熱くなっちゃった。ごめんなさい」

「魔力は保ちそうか?」

「大丈夫」

 

ーーーーーーーーーー

 

『準決勝第2試合、爆豪対常闇!爆豪のラッシュが止まらねェ!』

 

爆発を常闇くんの黒影が防御するが光と熱に弱い黒影は目に涙を浮かべている。

 

『常闇はここまで無敵に近い個性で勝ち上がってきたが、今回は防戦一辺倒!!』

 

かっちゃんが上へ爆発を起こし跳躍する。黒影がそれを追うがかっちゃんから爆発と同時に殴られる。

 

「掴め黒影!」

 

かっちゃんは空中で更に爆破を起こし高く飛び黒影を躱す。そして常闇の背後に回り込む。

 

「スタングレネード!!」

 

かっちゃんが眩い光とともに爆発を起こした。煙幕が観客の視界を遮る。煙幕が晴れると仰向けの常闇くんにかっちゃんが跨っていた。

 

「黒影の弱点、知っていたのか・・・?」

「撃って暴いたんだ、バァカ。まあ相性が悪かったな。同情するぜ。詰みだ」

「・・・・・・参った」

「常闇くん降参、爆豪君の勝利!」

 

歓声が上がる。

 

『これで決勝は、緑谷対爆豪に決定だ!!』

 

かっちゃんが私を睨んでいる。手でも振っておくか。

 

「調子乗ってんじゃねぇぞデク!!」

 

「もうかっちゃんたら素直じゃないんだから」

「お前に手ぇ振られて照れてんだろ。出久は美人だからな」

 

兄さんが髪をくるくると弄ぶ。

 

「ふふっありがとう兄さん」

 

兄さんの手が離れたので席を立ち控え室に向かう。

 

「ん?」

 

観客席から飯田くんが電話をしている姿が見えた。恐らくお兄さん、インゲニウムの件だな。でも今できることは何もないし、決勝に向かおう。

 

ーーーーーーーーーー

 

バンッ

 

誰かと思ったらかっちゃんが足で控え室のドアを開けていた。

 

「あ?」

「かっちゃん入るならノックして頂戴」

「なんでデクがここに、控え室・・・」

「かっちゃんの控え室は1でしょ。ここは2よ」

「クソが!」

 

まったく、おっちょこちょいなんだから。

 

「おいデク」

 

かっちゃんがいつになく真面目な顔をして私の方に来る。

 

「何?」

「俺が勝つ!!」

 

かっちゃんが親指で自分を指す。

 

「はいはい」

「んだその返事はァ!!」

「勝己様の言う通りでーす」

「黙れ!!」

 

ーーーーーーーーーー

 

『雄英校体育祭もいよいよラストバトル!1年の頂点がこの一戦で決まるゥ!所謂、決勝戦!ヒーロー科緑谷出久VSヒーロー科爆豪勝己!今スタァァァトッ!!』

 

「オラァァァ!!!」

 

かっちゃんが先ほどの常闇くんとの試合のスタングレネードよりも大きな爆発を撃ち込んでくる。でも防御魔術を張ったから効かないよ!ていうか初っ端からこの威力って殺す気でしょ!

 

ᛁᚲᛖ()

 

空中にルーン文字を書くと会場の半分を覆うほどの氷塊が地面から現れる。

 

『デケェ!!緑谷、爆豪との接戦を嫌がったか!?』

 

客席の轟が自身の個性と同じ氷結を繰り出したため目を見開く。

 

氷塊の中からボンッボンッと音が鳴る。恐らくかっちゃんが爆発で氷を削っている音だ。氷の中からかっちゃんが現れる。

 

「あら、生きてたの」

「勝手に殺すなや!殺すぞクソナード!!」

「きゃーかっちゃんこわーい」

「黙れカスがっ!!」

 

かっちゃんが爆発を起こし私に接近する。

 

「ガンド」

 

魔力を打ち込むが、かっちゃんは爆発で軌道を変え避ける。でもそれくらい読んでるわよ!殴りかかろうとしているかっちゃんの両手を封じる。

 

「恋人繋ぎねかっちゃん!」

「気色悪ぃ事言ってんじゃねぇ!!」

 

かっちゃんが手を離そうと踠くが全く拘束が解けない。

 

「テメェゴリラにでもなったんか!」

「酷いわね!強化してるだけよ!」

 

痺れを切らしたかっちゃんが爆発を起こす。危なっ!間一髪で手を離した。爆発の勢いでかっちゃんが後ろに飛んでいく。

 

「クソカスがァ!!」

 

再びかっちゃんが助走をつけながら跳躍し右手で爆破を起こし殴りかかる。右の大振りなら、懐に入って、伸ばされた右腕を掴んで、投げる!って重い!

 

「かっちゃんもう少し軽くなりなさい!」

「煩ぇ!!」

 

私の力では場外ラインまで届かず、かっちゃんは場内で着地した。

 

「テメェへなちょこな技使ってんじゃねぇぞ!!」

「失礼ね、これでもメダル持ってるわよ!」

「そりゃガキ共が作ったやつだろうがァ!」

 

みどり園のガチンコバトル大会!で優勝した際、子供達から折り紙で作ったメダルを貰った。大事に部屋に飾ってます。ちなみにかっちゃんも参加していて2位だった。

 

「はぁ、わかったわよ。それならお互い今ある力全てを出しましょう」

「イイぜ、やってやんよ。泣いても知らねぇぞナードちゃんがよォ!!」

 

かっちゃんが爆発の勢いで飛び、空中で爆発し続けることで竜巻を起こす。

 

私は剣を投影する。観客席に被害が出ないようにステージ内に強固な結界を張る。よし、じゃあやるか。剣を振り上げると地面から光の粒子が剣に集まり、刃が銀色から金色に輝く。

 

「ハウザーインパクトォォ!!!!」

 

「・・・・・・束ねるは星の息吹。輝けるは命の奔流。受けるが良い」

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!」

 

剣から光の帯が現れ、剣を大きく振りぬくと光の斬撃が竜巻諸共かっちゃんを襲う。斬撃は結界をも突き破ろうとし結界にヒビをつくる。あ、ヤバいかも。セメントスがセメントの壁で周囲を囲み観客を守ろうとしている。ありがとうございますセメントス!頼む結界持ち堪えてくれ!!

 

『緑谷から何かしらのビームが放たれたァ!!めちゃくちゃ眩しい!サングラスしててよかったぜ!』

 

斬撃は行き場を無くし結界に沿って上へ放出する。

 

光が収束し消えるとかっちゃんが俯せで倒れているのが見えた。光の斬撃をモロに受けたからね。

 

「爆豪君戦闘不能、緑谷さんの勝ち!」

 

これまで以上の歓声が上がる。

 

『以上で全ての競技が終了!今年度、雄英体育祭1年優勝はA組緑谷出久!!』

 

かっちゃん大丈夫かな。剣を支えにしながら進む。

 

「かっちゃん、大丈夫?」

「て、めぇ、てかげん、しろやぁ・・・!」

「したわよ。じゃないと今頃かっちゃん雲の上よ」

「しねぇ・・・!」

「はいはい、リカバリーされましょうね」

 

担架に乗せられたかっちゃんが中指を立てながら運ばれて行く。

 

ーーーーーーーーーー

 

「今年度雄英体育祭、1年の全日程が終了。それではこれより表彰式に移ります!」

 

ミッドナイトのアナウンスにより表彰式が始まる。ミッドナイトの後方から表彰台に乗った3人が現れる。1位の出久は笑顔で観客に手を振っている。2位の勝己は出久を凶悪な顔で睨みつけている。3位の轟は浮かない顔で下を向いていた。

 

「それではメダル授与よ!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!」

 

「ハーハッハッハッ」

 

電光掲示板の傍に人影が現れる。オールマイトとわかると観客のボールテージが一気に上がる。そしてオールマイトが表彰台の前に降り立つ。

 

「それではオールマイト、3位からメダルの授与を」

 

オールマイトがミッドナイトからメダルを受け取り轟の前に立つ。

 

「轟少年、おめでとう。3位決定戦で左側を収めてしまったのは訳があるのかな?」

「緑谷戦できっかけを貰って、わからなくなってしまいました。あなたがこいつを気にかけるのも少しわかった気がします」

「あなたのようなヒーローに成りたかった。ただ・・・俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃ、ダメだと思った。清算しなきゃならないものがまだある」

 

轟が真っ直ぐ前を向く。オールマイトが轟を抱きしめる。

 

「うん、顔が以前と全然違う。深く聞くまいよ。今の君ならきっと清算できる」

「はい」

 

次に勝己の前に立つ。

 

「爆豪少年、おめでとう」

「ハッそんな言葉いるかよ。来年はデクを負かして必ず1位になる。そんでアンタをも超えるヒーローになってやる」

「その調子だ。期待しているよ」

 

勝己が素直にメダルを受け取る。

 

「さて、緑谷少女。優勝おめでとう」

 

出久の首に金メダルが掛けられる。

 

「選手宣誓の伏線回収、見事だった」

「ありがとうございます」

「圧倒的な実力は時として畏怖されるだろう。しかしそれを跳ね除けてこそヒーローというものだ」

「えぇ、これからも精進します」

「その意気だ」

 

最後は会場全員でのプルスウルトラの掛け声で締められ雄英体育祭は終了した。

 

ーーーーーーーーーー

 

体育祭の翌日、私は死穢八斎會に来ています。治崎さんが優勝のお祝いをしてくれるそう。やったね!兄さんはゲームのイベントが今日から始まるから行けないんだって。

 

『お嬢お疲れ様です!!』

 

・・・・・・下っ端のみなさんが出迎えてくれた。すごく姿勢よくお辞儀してる。斜め45度くらいかな?いつもしなくていいって言ってますよね?聞いてなかったのかな?

 

「お嬢早く上がってください」

「こんにちは音本さん」

 

下っ端さん達を抜けると玄関にペストマスクを持ったスーツ姿の音本さんがいた。

 

「スーツなんて珍しいですね」

「商談行ってたんですよ」

「なるほど」

 

音本さんの後ろを歩いていると何度もお嬢お疲れ様です!と声をかけられる。お疲れ様ですと返し奥へ進む。廊下の突き当たりにある虎の絵が描かれた襖を開けると前から衝撃が来る。

 

「おっと」

「出久さんゆうしょうおめでとうございます!」

 

理事長先生のお孫さん、壊理ちゃんが突進してきた。

 

「壊理ちゃんありがとう!」

 

壊理ちゃんとぎゅーとハグをする。今日も今日とてかわいい。

 

「出久、壊理、早く座れ」

 

パーティーハットを被った治崎さんがいた。玄野さんはサングラスをかけて、入中さんはHappyBirthdayと書かれたケーキ型の帽子を被っている。ぬいぐるみの姿と相俟ってさらに可愛く見える。でも中身はおじさんです。

 

「入中さんなんでそれ被ってるんですか」

「これしか無かったんだよ!キエェェェ!!」

 

テンション高いなぁ。

 

「八斎衆のみなさんは出られてるんですね」

「組長の護衛だ」

「定期検診ですか?」

「あぁ」

 

理事長先生甘いもの食べ過ぎてたからまたお医者さんに怒られて帰ってくるはずだな。

 

「じゃんじゃじゃーん」

 

金メダルを掲げる。壊理ちゃんがすごくキラキラした目でメダルを見てるー。かわいーいー。

 

置く場所がなかったから金メダルは入中さんの首にかけました。よかったね入中さん、さらに豪華になったよ。なぜかホールケーキが3つもあったけど、音本さんが半分くらい食べてた。見てるだけでお腹いっぱいになったよ・・・。




出久は入中さんの訓練で死穢八斎會の幹部以外の全員と戦って勝ったらお嬢と呼ばれるようになってしまったのです。
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