※追記:前回の写真の部分に一部追記をしています。まだ見ていない方は是非ご覧ください。
「それじゃあ、予告通り実技テストを始めましょう」
4/21の水曜、以前から通知されていた実技テスト当日。俺たち《Ⅶ組》全員グラウンドに集められていた。
「前にも言った通り、このテストは単純な戦闘力を測るためのものではないわ。『状況に応じた適切な判断』を取れるか見るためのものよ。その意味で何の工夫もなく相手を早く倒せたとしても評価は辛くなるわ」
「フン……面白い」
「力押しじゃ評価に結びつかないってことね」
アリサとユーシスの言葉に頷いてサラ教官は続ける。
「フフ……それではこれより、4月の実技テストを開始する。シオン、前に来なさい」
「はい」
呼ばれて前に出たシオンの足にポーチ、腰には二振りの剣が吊るされていた。恐らく旧校舎の時に使っていた武器だろう。2本ということは二刀流が本来のスタイルなのか……?
「これから何チームかに分けてシオンと戦ってもらうわ。まずは……「いえ、全員でも構いませんよ」……ちょっと」
ジト目でシオンを見るサラ教官。対するシオンはいつも通りである。なんの気負った様子もなく俺たち全員を相手すると言った。
「はっきり言うけど、ここから先、必ず君たちは高い壁にぶつかる。全員で僕一人をどうにかできないようじゃ笑い話もいいところだ。それぞれ目的があってきた人がいるだろう。仕方なくここに来た人もいるだろう。でも、《Ⅶ組》に入ったのは君たちの意志だ。ならそれに相応しい覚悟をみせてくれ。因みに僕が勝ったら朝と夕方は可能な限り全員で食卓を囲ませるからね!」
言うがいなや2本の剣を逆手に持ち、臨戦態勢に入るシオン。
あまりの闘気に一瞬気圧されるが、すぐに抜刀。隣でラウラとフィーも構えている。
「そなたとは一度剣を交えてみたかった……だがそこまで甘くみられては困る!全力で行かせてもらう!」
「そろそろ勝たせてもらうよ……!」
リンクを繋いだ二人がシオンに突撃。ラウラがアルゼイド流の大剣による強烈な一撃を、フィーがその体躯を活かした素早い連撃を仕掛ける。が、それを全ていなしている。まるで未来でも見ているかのように受け流し、躱している。恐らく学年でトップレベルの二人の攻撃を意にも介していない。それを見て次々と戦闘態勢に入る皆。それぞれがリンクを繋いで攻撃しようとしたとき。
「やっとか。朧月夜」
シオンが円周上に衝撃を出し、ラウラとフィーを一瞬引かせる。その隙をついて剣を変形させる。
「レインバレット!バブルストーカー!」
片方の銃を真上に打ち、もう片方は目の前に大きな泡を出現させる。上に撃ったのはミス……?いや違う、別の意図があるはずだ。しかし銃の今は好機、間合いを詰める。そして泡を避けてあと一歩で届くといったときに後衛のエリオットとのリンクが切れた。
「なっ……!」
後ろを振り返るとエリオットと委員長、アリサが倒れていた。恐らくさっきの真上に放った戦技だ。
「3人。よそ見してる場合?」
「くっ!」
気を取られてる間に懐に入られ、横薙ぎに迫る剣を太刀で防ぐが、そのまま弾き飛ばされる。
「魔神剣・双牙!」
追撃の地を這う衝撃波が迫りくるが、どうにか回避。どうにか駆動を終えたマキアスとユーシスのアーツが発動するが、回避され、アーツの硬直で動けない二人に戦技が繰り出される。
「舞斑雪!斑雪返!」
高速の切り抜けで防御する間もなく攻撃を貰ったマキアスとユーシスはそのまま気絶。残るは俺とガイウス、ラウラにフィーだけになった。
「僕の最初の武器が剣だからってちょっと後衛組油断しすぎじゃないかな、前衛も全員同時にきて封殺するぐらいじゃないと僕を止められないよ。それにリンクもガイウスとリィンで繋ぎなおしておかないでどうするの?」
言われて慌ててリンクを繋ぐ。……強い。想像していたよりも。ガーゴイルを一人で相手にしていたのは伊達ではなかった。あの魔物を決め手に欠けるからサンドバッグにしていたと言われた方がまだ納得できる。
「みな、私が一撃で決めて見せる、その隙を作ってほしい。頼めるか」
「それしかなさそう。攪乱は任せて」
「ああ。どうにか抑えてみせるさ」
「任せろ」
方針を決め、改めて構えなおす。せめて一矢報いて見せる……!
「弧影斬!」
「ゲイルスティング!」
太もものポーチから銃のカートリッジを入れ替えているシオンに遠距離技で牽制。有効打にならないのはわかっているのでそれに追従するように接近。その間にフィーが銃を乱射しながらシオンの背後に回り込む。
「クリアランス!」
背後からの一斉掃射。前後からの挟み撃ち。それをなにをするでもなく背中向きで宙返りしながらお返しとばかりに射撃してくる。
「アンビュスマーチ」
これで俺とガイウスは距離を離され、フィーとシオンの一対一の状況に持ち込まれる。だがラウラとも距離が離れた今、それは俺たちにとって狙い通りの展開だ。
フィーがグレネード投げようとした瞬間それを射撃で弾き、追撃の射撃でフィーはダウン。その間にどうにか俺とガイウスは接近するが、いきなりガイウスが地面から生えてきた岩槍に吹き飛ばされた。
恐らく先ほどの宙返りの時に仕込んでいたのだろう。ラウラとリンクを繋ぎながら罠にかからずたどり着けた俺はそのまま切りかかるが、変形させた片方の剣で受け止められる。その隙に準備を終えたラウラが切りかかる。
「奥義・洸刃乱舞!」
俺は蹴り飛ばされたが、あそこからではまともに回避も防御もできないだろう。獲ったと思ったとき、目を疑った。
「臥狼咆虎!」
足を振りぬいた体勢から武器を手放し、そのまま回転、体を沈めて袈裟斬りを回避、勢いを殺さず続く横薙ぎを大剣の腹をかち上げるようにサマーソルト。剣を弾かれ、無防備な状態のラウラの真横に拳を叩きつけ、衝撃波浮かせ、そのまま蹴り飛ばし、意識を刈り取った。
武器を拾い、歩み寄ってくるシオン。立とうとするが、もはや体はボロボロで意志に反して体はいうことを聞いてくれない。目の前まできたシオンが銃を突きつける。その瞬間。
「はい、終了ー!」
「いっっったい!!!」
サラ教官がシオンの頭にげんこつを落としていた。……結構距離あったと思うんだが、この距離を一瞬で詰められる教官も大概だと思う。
「あんたねー、全員気絶させる気?」
「そのくらいの方がこれから頑張れるかなって……師匠もこんな感じでしたし。あと大見得切っちゃたから負けられなくなりまして……」
やりすぎた自覚があるのか苦い顔をして俺とサラ教官から顔を逸らしている。色々ツッコミたいがその気力も今はない。
「気絶させたら起きるまで待つの面倒でしょうが!」
「それもそれで大概では???」
「これからの訓練とか考えたらこれに慣れないようじゃまだまだよ。ほら、さっさとベアトリクス教官呼んできてちょうだい」
「はーい」
すたすたと何事もなかったように校舎のほうに歩いて行った。このテストを通して、その背中は現実の距離の何倍も遠く感じた。
「はい、お疲れ様。これで実技テストを終わるわ。……色々予定外だったけどね」
ベアトリクス教官の適切な処置でどうにか復活した俺たちにテスト終了が言い渡される。因みに予定外の部分で目を向けられた張本人はその視線からスッと目を逸らしていた。
「ちょっとやりすぎたのは認めます。でも僕が勝ったのでそれはそれとして全員今日から一緒にご飯食べてもらうからね……!」
「絶対あんたそこのためだけに本気出したでしょ」
「失礼な。あの宣言と5:5くらいですよ」
「尚タチが悪いわ」
真面目な顔で言うシオンにげんなりしたサラ教官。気持ちはとてもわかる。しかしこれから高い壁にぶつかる……か。確かに皆何かを抱えていると思うが、まるで
「気を取り直して、テストの結果は言わずもがなね。ここからは先日話した通り、重要な伝達事項があるわ。君たち《Ⅶ組》ならではの特別なカリキュラムに関するね」
緊張した空気が漂う中、サラ教官はその内容を告げた。
「君たちに課せられた特別なカリキュラム、それは《特別実習》よ!」
「と、《特別実習》……?」
「な、なんだか嫌な予感がするんだが……」
委員長とマキアスが全員の心の声を代弁してくれる。
「あなたたちにはA班、B班に分かれて指定された実習先に向かってもらうわ。そこで指定された課題をこなしてもらいます」
「……その様子だと教官がついてくるということもなさそうですね」
「流石に今回は色々わからないこともあるだろうし、影から見守るくらいはするけどね。さ、それじゃ今から1部ずつ受け取りに入らっしゃい」
受け取った紙には、A班に俺、エリオット、アリサ、ラウラ、シオン。B班にエマ、フィー、ユーシス、マキアス、ガイウスの構成だった。……これは明らかにそういう意図があって組まれているな。そして目的地はA班が東にある貿易地ケルディック、B班が南部にある紡績町パルムとなっている。
「日時は今週末、期間は2日ほどを予定しているわ。各自班ごとに鉄道で向かってもらうことになるわ。それまで各自、準備を終えて英気を養っておきなさい……!」
ついに《Ⅶ組》らしいカリキュラムが始まる。……メンバーについては少し不安が残るが、どうにか実習までには関係改善したいな……。
「ところで……皆、何か忘れていないかな?」
「何かありましたっけ……?」
「あ……そういえばテスト前に言ってたやつ?」
「せいかーい。というわけで今日の晩御飯は全員一階に集合!あとで紙渡すから好きな料理と食べれないもの書いてね」
そうだった。そういえばそんなのがあった。でも俺やエリオット、フィーやガイウスはすでにちょくちょく一緒に食べているから特に何もないが問題はそれ以外のメンバーだ。
「フン……予定があれば参加しなくていいのだろう?」
「良いけど勝負に負けたのに言い訳を使って逃げるのは
「ぐっ……」
「だ、誰が貴族と一緒に同じ空間で食事をしなければならないんだ……!」
「文句があるなら僕に勝ってから聞くよ。ルールに拘るレーグニッツがまさか約束を破るわけないよね?」
「ぐぬぬ……」
「あ、あの、私はちょっと別の用事が……」
「あ、猫ちゃん用のご飯も用意しておくから遠慮しなくていいよ?」
「あ、え?は、はい……?」
……あまりにも一方的に説き伏せていた。いやまぁ負けたから拒否権はないのはわかるんだが、最後の抵抗もむなしく、といったところだ。
「この手の話でシオンは引かないからやめておいた方がいいわよー?多分最終的に椅子に縛られて強制で参加させられるわよ」
「流石にそんなことしませんよ。納得してくれるまでこんこんと詰めますけど」
「本当にタガが外れてるわねあんた……」
終始笑顔のシオンに誰も何も言わなくなったあたりで解散した。
ちなみに書かなかったら苦手そうなものを出すからねーと言われ、全員紙を提出。その日の夕飯は皆の好物がそれぞれ用意されたバイキング形式になった。……いや、普通に考えて一人で用意できる量ではないだろうと戦慄した。
『どうしましょうか』
シオン「うーーーん……」
トワ「どうしたの?シオン君。何か悩み事かな?」
シオン「ああ、すみません。第3学生寮の皆でごはん食べたいんですけど妙案が思いつかなくて……」
クロウ「なんだそんなことかよ。お前なら全員気絶させて座らせればいいんじゃねーのか?」
シオン「いやそれも考えたんですけど」
クロウ「考えたのかよ!」
シオン「今後も考えるともう少し穏便にいきんたいんですよね……」
アンゼリカ「ふむ……それなら今度の実技テストは君が試験官役なんだろう?その時に勝ったら全員参加とかにしたらどうだい?」
シオン「あ、いいですねそれ。それでいきます」
アンゼリカ「そうだろうそうだろう!そしてこんなナイスアイデアをした私を見眼麗しい少女が集っているその場に招いてくれても……」
シオン「今回の参加者は《Ⅶ組》オンリーなのでだめでーす」
アンゼリカ「そんな!!!(ドン!)」
ジョルジュ「まぁまぁ。ちなみにどんな感じにするんだい?」
シオン「《特別実習》も始まりますし、頑張ろうって意味も込めて立食形式にしようかと」
トワ「いいね!皆喜んでくれると思うよ!」
シオン「ありがとうございます、皆さん」
やべーとこ出身のやつがこの頃のひなに負けるわけないよねって話。