オーバーロードという作品が好きです。
ダークファンタジーで、人がバタバタ死んでいくし、主人公側はマッチポンプしてるし、主人公側のコキュートスってキャラがまたいい人……?異形種でね!
良い箇所を数えていないな、これは。
とにかくね、好きなのです。詳しくはアニメか原作小説読んでね!Web小説もあるよ!
異世界転移、転生ものが流行る昨今。
もしもオーバーロードの世界に行くなら、主人公側に付きたいよね。できれば主人公側のNPCになりたいわ。
そうして眠りについた日。
なぜか私はどこかの村にいた。
――――――
えーとね、昨日会社から帰宅してからすごく眠かったのは覚えてる。
翌日は休みだからと風呂に入らずメイク落として歯磨きして、壁を背にうつらうつらと船を漕ぎ。
起きて目を開けてみれば。
知らない景色が広がっている。
……??
中世の村って感じだ。
コンクリートで舗装されていない、地面がむき出しの道。
ファンタジーに出てきそうな、現代とは異なる服装。
木造の建物たち。
建物の奥には木々が見える。
……???
わからない。だから知らないといけない。
自分の服装、姿、実は声すらも変わっていることに疑問を持てず、私は歩き出す。
――――――
いや、ここどこだよ。
人に話しかけたら、私の言葉がそのままテキストウインドウとなり、表示されて文字が浮かび上がった。
相手の言葉もそうだ。
どういう仕掛け?
しかも数回話しかけたら、同じ言葉を繰り返すようになった。BOTかな?
極めつけは動かない表情だ。
私は動くけれど、相手は仮面でも被っているのかというぐらい動かない。こわあ。
私はさまよった。
会話ができる人に、人間に会いたかった。
寂しかった。
ここがどこなのか、私はどうなっているのか質問したかった。
村を回り終えて、手がかりを得られず。
だから村からそう離れていない森の中にも入る。
途中、子供が木の枝を拾って遊ぶように、私も色々拾ってポケットに入れた。お金になればいいなと思って。
人は見つからない。
遠目から異形の者は見た事がある。
それも人間種らしき人たちに狩られて死んでいた。
鎧を着た勇者が、剣を握るその手が、永遠の静寂をもたらす。
ここには死がある世界なんだ。
とても怖くて、その場所から村へ一目散に逃げ出して。
数日は村から出ないように、人に見つからないようにした。
怖さと寂しさと絶望が重なり混じり合う。
それでも人に会いたくて。
姿形に関わらず話せる相手を見つけたくて、森に入る。
異形と人間。どっちが話せるかな?
私は人の見た目だから、人間の方がいいかな?
うん、人間に話しかけてみよう。
そうこうしているうちに、一人で森の中を歩く人間を見つけた。
紺色の洋風の全身鎧を着用した戦士職らしい感じだ。帯刀している。刀持つなら和風の鎧じゃないのか?
余計な考えを頭を振って追い出す。
私は自分よりも大きな木の後ろに隠れて、何度も深呼吸する。
話さなきゃ、変わらない。
意を決して、相手の前に躍り出る。
――――――
結論から言って、失敗した。
彼は私に斬りかかってきた。
私は逃げ出した。
追いかけっこが始まる。
「待てよ!!NPC風情が逃げんなよ!!!!」
「(はあ……はあ……はあ……)」
相手は刀を振り回して木々も茂みも切り飛ばす。
私はそれらを躱し、時々スレスレで当たって怪我を負い、とにかく逃げる。
「(誰か……!何か……!お願い、助けて!!)」
「ちょこまか鬱陶しいんだよ!いい加減やられろよ!」
村へ向かいっているが、方向は合っているだろうか。
村に行けば助かるだろうか?
わからないけれど、怖いから、逃げなきゃ。
――ああでも、神様は私を見捨てなかった。
何日も何日も捨て置いたくせに、今日は救いあげてくれた。
赤いマントと黒いローブが目に入って、その人たちは異形だったけど、今の私には安心感しかなくて……。
「助けて……」
「ん?今、声が聞こえたような?」
「聞こえましたね」
「助けてーー!!!!」
こちらを振り向いた。
片方が素早く動く。
――――――
「助けてーー!!!!」
耳に心地よい声が、悲鳴となって聞こえる。
声が聞こえる方を向けば、初心者っぽい装備品に身を包んだ女性プレイヤーを背後から切ろうとする全身鎧の男性プレイヤーがいた。
驚いている間に、横にいたたっち・みーさんが走り出して男の大振りな一撃を止めた。
女性プレイヤーは転んで地面に伏している。
「邪魔すんな!そのNPCは俺の獲物だ!」
「NPC?プレイヤーではないのですか?確かに声が聞こえましたけど……?」
「声が実装されているNPCなんだろ?いい加減どいてくれ」
「ふむ……」
俺はその会話を聞いて追加で驚いた。
今まで声が実装されているNPCはいた。それは重要なイベントを進行するNPCに限られている。
こんな普通の、何の変哲もない森の中に、そんな重要なNPCがいたなんて。
「声が実装されているなら、何かのイベントを進行するNPCだと思われますが、それでもキルするんですか?」
「おう。そいつ殺したらキル百人目で転職条件叶うんだ。それに面白そうだし」
「……面白そう、か」
今のところ、この男性プレイヤーと争うメリットないんだよなあ。
どうしたもんかと考えていると、女性プレイヤー、じゃなかった。女性NPCが四つん這いになってバタバタと両手足を動かし、俺の元に来た。そして座り込む。
何事かと思って様子を見ていたら、アイテムをばらまいた。
テキストウインドウが表示される。
【私の全財産を差し上げます!だから助けて!!】
――本当にNPCだったんだな。
ちらりと奥に目をやる。
男性プレイヤーとたっちさんはこちらに気づいていないようだ。
俺はしゃがんでアイテムを調べた。
……とんでもない希少レアアイテムがある。
俺はそれを手に取った。そして女性NPCに見せる。
またテキストウインドウが表示された。
【それが欲しいのですか?差し上げます。助けてくれますか?】
選択肢が出る。
YESかNOか。
俺はYESを選んだ。
次のテキストウインドウが表示される。
【ナナミを雇いますか?金貨百枚です】
――金貨は問題ない。ユグドラシルなら簡単に稼げる……はした金だ。
「私を雇ってくれたら、そのアイテムがある場所、教えます」
――それは素晴らしい。
モモンガは再び出た選択肢のYESを選ぶ。
たっちと協力して相手を倒すべく、立ち上がった。
――――――
これがモモンガ様と私……ナナミの出会い。
どうやらここはオーバーロードの世界らしく。私はNPCになっている事に驚いた。それは、もう、驚愕したね。
男性プレイヤーがたっちさんとモモンガさんに倒された後、私は聞きたかった事を質問した。
「あの、家への帰り方とか聞きたいんだけど、誰か知ってます?あ、知らない。そうですか。えへへ、それじゃその、あの……どうしよう」
途方に暮れていると、私を雇ってくれたモモンガさんが拠点まで連れて行ってくれて、そこに住むことになった。家問題解決。やったぜ。
ちなみにナザリック地下大墳墓じゃなかったよ。
そうか。まだクラン時代なのか。とか、考えつつ。私は拾ったアイテムがある場所を教えた。クラン時代のメンバーと遠足みたいな事するの楽しいね!
運が高いという事と、レアアイテムを一人で見つけた功績により、私は色んな場所に連れ回された。
「レアアイテム見つけたら雇用継続するから、頑張って」
そう言われたのでめちゃくちゃ頑張りました。
衣食住のため、やらなくてはならないので、やる気は凄かったよ。
ただのアイテム拾いの傭兵NPCだった私。
それが日々が過ぎていくにつれて、クランメンバーから……ギルドメンバーからも気にかけてもらえるようになった。
女子グループの着せ替え人形になったり。
受け答えの数が膨大という事で、お喋りの相手になったり。
レベル百になるまでレベリングしてもらったり。
私だけの神器級のアイテムをいただいたり。
ナザリック地下大墳墓の第九階層に部屋を貰えたり。
楽しい思い出が増えるにつれて、ギルドメンバーのログインが減っていく。
…………
……………………
私は今、宝物殿にいる。
ギルドメンバーのお一人、か弱いネコ様がふざけて『ナナミのお見合い』というイベントをやったからだ。
コキュートス、マーレ、デミウルゴス、セバスというお見合いしたメンバーを見てもらえばわかるだろうか?
性別が男性かオスと思われるNPCと、見合いをさせられたのだ。
そしてラストを飾ったのが、パンドラズ・アクターである。
途中で飽きたのか、か弱いネコ様はパンドラに会わせた後でログアウトしてしまった。
あのう、私リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを指にはめたままなのですが良いのですか?あのー???
その疑問も届かない。
か弱いネコ様は、私を置いたまま戻られなかった。
ご主人様のモモンガ様にも会えず。寂しい。
時々、気配は察知できるけれど、それも遠い。何よりお姿が見えないし。
この頃になってくると、雇用継続のための金貨の心配は必要なくなった。
私からモモンガ様への友好度がMAXになったからだ。
私はモモンガ様の傭兵ではなく、従者になった。
だから、金貨は貰っていない。貰わなくて済むようになった。
それはとても嬉しい事だった。
宝物殿。パンドラと二人。
広い部屋の端に置かれたソファに向かい合って座っている、二人。
――今日も独りで言葉で遊ぶ。
誰も返事をしてくれないはずだった。
「――あ〜なんか楽しいこと起きないかな」
「例えば如何様な事で?」
「モモンガ様がいらっしゃるとか…………」
「ほう、それは良いですね」
弾んだ声を発したのはパンドラだ。
今まで喋らなかったNPCが喋ってる。
――転移した??
まじまじとパンドラを見ていると、彼は手を顎に当てて首を傾げた。
「どうかしましたか?」
「いや、あの……今日は反応してくれるんだね。私の独り言に」
「そりゃあたまには返しますよ。今は暇ですからね」
――いや、あなたずっとここに待機してたじゃん?私は動き回ってたけれど。
なんて事は言わない。絶対に。
私は動揺を隠すために、アイテムボックスから水筒を取り出して中の水を飲んだ。
うまあ。