NPCになりまして。   作:紅絹の木

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(幕間)ナナミ考える

 

 

 モモンガ様の自室。応接室。

 またまた応接用のソファに向かい合って座る。

 私は冒険者風の装備を身にまとい、モモンガ様はいつもの黒の豪華なローブを装備している。

 

「ナナミなら、どうする?」

「――私ですか?!」

 

 ナザリックの今後を決める方針を考えられている最中、私に白羽の矢が立つ。

 まあ、部屋の中には私しかいないから、当然なのだけど。

 

「うーん、私は、その……怒られるかもしれませんが、モモンガ様についていく以外の事をちゃんと考えてなかったんです。今、モモンガ様に質問されて初めてちゃんと考える機会を得たと言いますか……」

「ふむ、そうか。では、ナナミ」

「はい、モモンガ様」

「命令だ。今日中に自分の成すべき事を見つけてこい」

「今日中に、でございますか!?」

「お前の任は一時的に解く。よく考えよ。そうだな、お前がいない間の身辺警護はアルベドに任せるか……」

「よろしければ、索敵が得意なシモべも置いてください。先日、召喚したハンゾウなどがよろしいかと……」

 

 モモンガ様は鷹揚に頷かれた。

 私は気づかれないように、胸の内だけでほっと息を吐く。

 モモンガ様とアルベドを二人きりにするなんて怖すぎるもんね。

 

 

 ――――――

 

 

 アルベドに引き継ぎをした後で、私は自室に戻ってきた。

 始めは部屋の中を歩き周り、考えていた。けれど考えがまとまらないので、紙に書き出すことにした。

 

 やりたい事……モモンガ様について行く事。拝命したいし、お世話したいし、なんというかとにかく傍にいたい。

 

 そういう意味ではこの数日間は最高だったんだよね。

 専属護衛になって身辺警護について、ずっとモモンガ様の傍にいた。気を抜く事はできなかったけれど、楽しかったな!

 

 によによと、緩む頬を引っ張って真面目に考える。

 加えてギルドメンバーに会いたい。探したい。

 これはモモンガ様も同じ気持ちだろうな。一緒に探せたら嬉しいな。

 

 逆にやりたくない事はなんだろうか?

 

 やりたくない事……モモンガ様の不利益になる事、かな?ナザリックの不利益になる事もしたくないわ。

 あとは?

 

 何か足りない気がして、私は頭を抱える。

 視点を変えるために、今度は紙にこれから起こる出来事を大雑把に書いていく。

 

 第一巻……転移。カルネ村と交流。法国と初バトル。

 

 まず、第一巻で起こる出来事を見る。

 まず転移は、私じゃ防ぎようがない。これは考えなくていいかな?

 

 カルネ村との交流は、必要でしょ。この世界の知識を初めて仕入れる場所だし。未来じゃ、エンリの旦那さんにポーション作りをお願いする事になるんだし。

 

 法国と初バトルは、避けられないだろうね。……というか、遠視の鏡かなんでもいいけどカルネ村見つけておかないと、カルネ村襲撃の時に恩を売れないよね?

 後で、モモンガ様に遠視の鏡での索敵を進言してみよう。

 

 ふと、気づいた。

 私、人が死ぬ出来事に対して、全然気にかけていないな。

 なんというか、まったく自分とは関わりのない出来事って感じがするんだよね。関わるのに。

 

「私のカルマ値はマイナスじゃないから、カルマ値のせいじゃない。私が不老だからかな?でも人間である事に変わりないし」

 

 どうしてこうも、他人の死が遠いんだろう。

 これがナザリックのメンバーなら?

 

「……想像するのも、嫌だなあ」

 

 ――ギルドメンバー、もしくはモモンガ様なら?

 胸が鷲掴みされたようだ。

 絶対に起こって欲しくない。起こさせない。そう思う。

 

 深呼吸して、気持ちを落ち着かせる。

 じゃあ、自分の死は?

 

「……遠くなったな」

 

 死にたくはない、と思う。けれど、モモンガ様やギルドメンバー、ナザリックメンバーよりは下で。

 最優先ではない。

 

 モモンガ様、ギルドメンバーはともかく。

 なぜナザリックメンバーより下に思うのか。

 

「……モモンガ様が大事に思われているから?」

 

 すとん、と心に落ちる。パズルのピースがはまるみたいに。

 そうか、私はモモンガ様を優先しているから、モモンガ様の大事なものを大切にしたいんだ。

 

 ……ここまでは、モモンガ様の従者NPCとしての私の考えっぽい。

 私の、個人の考えはどうなんだろう。

 

 うーんと、頭をひねる。

 

 転生したての頃は、まだリアルの人間としての考えというか、意識が強かったけれど。

 今はなあ……モモンガ様やギルドメンバーなしの私なんて考えられないんだよね。

 

 やりたい事、欲しいもの、やりたくない事、欲しくないもの……うーん。

 

「皆がいる未来が欲しい……かなあ」

 

 大切な人達が笑っている未来が欲しい。

 その中に、私もいたら嬉しい。

 他は?

 

 お見合いした、五人の顔が浮かぶ。

 コキュートス、マーレ、デミウルゴス、セバス、パンドラだ。

 一番好感度が高いのはコキュートスとはいえ、恋人になるほどではない。

 ……私は彼らとどうなりたいんだ?

 

「決着つけたいな……うん。現状のままはモヤモヤするし」

 

 恋人になるのか、友達になるのか白黒ハッキリさせたい。……できたら、恋人を作りたい。

 そのためには、ナザリックが続く未来でなければならない。

 

「ナザリックが生き残るためにも、頑張らないとね」

 

 そのためにはどうしよう?

 ……原作知識を言う?

 

 頭を振った。

 

 私だったら、そんな事を言う奴を信じない……というか頭おかしいと思っちゃう。

 モモンガ様に捨てられたら――?

 

 頭がぐらりと揺らいだ。酷い吐き気に襲われる。

 

 ああ、この事は考えるのをやめよう。

 もっと別の、私が役に立てる事を考えよう。

 

「私は索敵ができる。レンジャーのアウラよりも。弐式炎雷様よりもそれに特化している。あと、運が高くてレアアイテム見つけてくる。モモンガ様にもいっぱい褒められた。良い子だって言われた」

 

 早口で言い切る。

 体を動かしていないのに、息切れがした。

 それが少し落ち着く。

 

 大体、私がいる時点で原作と同じ時間に転移しているとは限らないんだよね……。

 

「私、役に立てるのかなあ?」

 

 ユグドラシル時代はモモンガ様たちの命令に従っておけば良かった。

 今はそれだけじゃダメなんだよね……。私どうなるんだろ。いつまでも専属護衛のままじゃいられないし。

 

「うーん、気分が落ち込んできた……散歩してこよ」

 

 未来を書き記した紙をきちんと燃やし、色々書いた紙をアイテムボックスに入れてから部屋を出る。

 

 

 ――――――

 

 

 最古図書館に来た。

 ナザリック第十階層にある場所だ。

 

 ここって結構好き。

 ユグドラシル時代。ギルドメンバーがログアウトしていて、第九、第十階層に置かれた時、よくここに来て暇を潰したりしたんだよね。

 

 司書長のティトゥスに挨拶してから、中を歩く。

 すれ違う司書たちと時々軽く挨拶をして、ぶらぶらする。

 

「(たしか、未来のモモンガ様はより良い上司となるべく、ビジネス本を読むんだよね?)」

 

 ちょっと覗いてみるか。

 

 

 

 ビジネス本の中でも気になった本を数冊手に取って、近くの椅子へ向かう。

 この図書館では寝転んで本を読めるスペースもあるので、そちらに行ってもいいかもしれない。

 

 一人用の椅子よりも、より広々とした場所へ足を向けた。

 

 目的地へ近づく度に、冷気を感じた。

 なんかひんやりしている?

 本棚を抜けて、広いスペースに出た。

 ――でっかいアイスブルーの何かがいる。

 

「コキュートス!?」

「ム、ナナミカ」

 

 アイスブルーの何かはコキュートスだった。

 コキュートスに近づくと、コキュートスは視線を合わせるように、片膝をついた。目線がぐっと近づいて、ドキッとした。

 私は慌てた。

 

「やめて、そういう事をするのは至高の方々だけに……」

「タダ、目線ヲ合ワセテイルダケダ」

「うーん……でもさあ」

「他意ハナイ」

「そうだけどさあ……」

 

 そこで気づく。

 立っているから、コキュートスが膝をつくのだ。ならば、座らせれば良い!

 

「コキュートス、座ろう!」

 

 どこがいい?と聞くと、指をさすのでそちらに向かった。

 そこは、大きなソファとテーブルが置かれた場所だった。ソファは幅が広いため尾があるコキュートスでも、座りやすそうだ。

 互いに向かい合って座る。

 

 あ〜、これでやっと落ち着ける!

 安心すると笑みがこぼれた。

 声が弾んだ調子へと変わる。

 

「コキュートスは、どうしてここへ?」

「モモンガ様ニ報告シニ行ッタラ、最古図書館デ休厶ト良イト勧メラレタノダ」

「そうなんだ。なんでだろうね?」

「至高ノ御方ガ考エラレタノダ。意味ハアル……ガ私ニハワカラナイ」

 

 コキュートスは頭をかく。

 私は足をブラつかせた。

 

「……私もわからないよ」

「ナナミホド、長ク至高ノ存在ニ仕エテモワカラナイ事ガアルノカ?」

「そりゃあね。他人だもの。ある程度は察する事ができても、すべては無理よ」

 

 そう言うとコキュートスの下顎がガチンと鳴らされた。……多分、意を得たのだろう。

 

 そうだ、いい事思いついた。

 コキュートスに相談しよう。

 

「ねえ、コキュートス。今時間空いてる?相談したい事があるの」

「ナンダ」

「あのね、モモンガ様からね……」

 

 モモンガ様から出された課題をコキュートスに話た。

 そして、自分がどう考えたのか。それも話と、コキュートスは四つの腕のうち下側の腕を組む。考えているようだ。

 

「好キ嫌イで考エテミタカ?」

 

 まだならやってみるといいと、コキュートスが言う。

 好きな事と嫌いな事か……。それはまだ考えてなかったな。

 

「私は、アインズ・ウール・ゴウンが好き。ナザリックが好き」

「アア」

「嫌いなのは、それが壊されること」

 

 私は転生前、オーバーロードを最後まで読めなかった。だから、続きが知りたいと思う。

 私はシャンデリアが輝く天井を見上げた。

 そうか、私は物語の続きが読みたかったのか。

 

 モモンガ様たちと出会ったのは偶然だけど。ずっと彼らについてきたのは、もっとアインズ・ウール・ゴウンを知りたかったんだ。

 

「ありがとう、コキュートス。答えが見えたよ」

「……ヨカッタナ」

「うん」

 

 その返事がなんとなく力がないように思えて、私はコキュートスの顔を覗き込んだ。

 

「どうかしたの?」

「…………モウ、行クノダロウ?時間ガ早イト思ッタダケダ」

「それって、もう少し私とお喋りしたかったって事?」

 

 コキュートスは何も言わない。

 でも、それは肯定のように思えて。

 

「……もう少し喋る?」

「至高ノ存在を待タセルノカ?」

「違うよ。報告は今日までだもん。時間いっぱい考える事は悪い事じゃないもん。……あ、そうだ。伝えなくちゃいけない事あったわ」

「ナンダ?」

「お見合い終わったよ」

 

 コキュートスの下顎が鳴る。

 ……今度は疑問の意味があるのかな?多分。

 

「あのね、私ってコキュートスの他にもお見合いしたじゃん?」

「シタノカ?」

「あれ?知らなかったの?したよ。コキュートスの後に、マーレ、デミウルゴス、セバスさん、パンドラって順番でしたの。お見合いはパンドラで最後。私の相手は決まらずじまい。それでお終い」

「ソウカ。他ノ者トモ見合イヲシテイタノカ」

「数日たって、ちょっとはナザリックも落ち着いたよね?皆にお見合いが終わった事を言ってくるよ」

 

 未来のモモンガ様のように回覧板まわすか。

 私は本を持って立ち上がる。

 

「コキュートス、一緒に部屋に来て。回覧板作るから、サインして欲しいの」

「回覧板……?」

「見せてあげる。さあ、来て」

 

 コキュートスのひやりとした、人間の男の胴ぐらいありそうな腕を引っ張る。

 

 受付で本を借りて、コキュートスと一緒に自室へ帰った。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 回覧板ができた。

 早速、コキュートスにサインを貰う。

 

「ありがとう。あとこれ、部屋まで来てもらったお礼です。どうぞ」

 

 シックな箱に入れられ可愛くラッピングされた蜂蜜をコキュートスに渡す。

 ソファに座る彼の隣に腰を下ろし、説明した。

 

「これはね、至高の方々と蜂を狩りまくった時にゲットした蜂蜜なの。そこそこレアな物なんだよ、ナザリックで食べられている蜂蜜と同じくらい。前に食べた時おいしかったし、コキュートスも気に入ると思ってさ」

「良イノカ?貴重ナモノデハナイノカ?」

「まあ、私が持っている数は少ないけどさ。この蜂蜜には武人建御雷様との思い出があるの」

「ナント!」

 

 興奮して冷気を吐き出す。バキバキと部屋が凍った。

 綺麗だなあ。

 

「その思い出があるからこそ、あなたにも渡しておこうと思ったの。思い出は今度語るわ。そろそろ休憩時間も終わりでしょう?」

「ムウ……仕方ナイカ。ナナミ、今度聞カセテクレ」

「ええ、またね。それじゃ、今度は転移門に移動しましょう。この回覧板、マーレたちにもサイン貰わないと」

 

 今度は第九階層にある転移門へ向かった。

 コキュートスに転移門に入ってもらい、転移してもらう。

 見送りが済んだので、私も指輪を使い転移した。

 

 

 回覧板を持って行って、お見合いが終わった事を告げた反応は様々だった。

 マーレは、私が他の人とお見合いした事を知っていて、特に驚いていなかった。

 デミウルゴスも知っていた。

 

 どうやら当時か弱いネコ様が、転移する際に「次へ行くぞ」と仰っていたから、マーレとデミウルゴスは他にも見合いの相手がいると考えたらしい。

 

 その話をデミウルゴスが説明してくれた。

 彼の顔に少々疲れが見えたので、数個のマカロンが入った袋を渡しておく。

 

「お茶休憩の時にでも食べて」

「なぜこれをくれるのか、聞かせてくれますか?」

「それウルベルト様が私にくれたアイテムなの。余ってたみたいでさ。膨大な数を貰ったからおすそ分け」

「そうでしたか。ありがとう、ナナミ。大切にします」

「……もう一個あげる。だから、片方は食べてね?」

 

 そう言うと、悪魔は穏やかに笑った。

 

 

 

 次はパンドラがいる宝物殿に転移した。

 彼も私が他の人とお見合いした事を知っていた。

 

 そういえば、か弱いネコ様は私たちの前でお見合いしたメンバーの名前を仰っていたものね。

 パンドラなら、私が他の人ともお見合いしてるって事に気づくのも当たり前か。

 

 

 最後はセバスさん。

 セバスさんはやっぱりモモンガ様の部屋の前にいた。見つけられてよかった。

 

 彼からもサインを貰う。

 回覧板を開いてその内容を読んだ時、セバスさんは驚いていた。

 

「コキュートスも知らなかったんですよ。彼も驚いていました」

「そうでしたか。……あなたを幸せにする覚悟をしていましたが、その必要はなかったようですね」

「……初めて聞きました」

「初めて言いましたから」

 

 セバスさんは穏やかに言う。私の顔は赤くなった。

 待って。もしかしてコキュートスもそういう事考えてたりしたのかな?

 ふぁっ!?

 

 もたらされた新情報に頭の中がぐるぐるする。

 うっ、コキュートスと次会う時は、どんな顔すればいいのかわからんぞ。

 

「それで、ナナミ。モモンガ様に何か用があるのではないのですか?」

「はっ、そうでした。取り次いでもらえますか?」

「わかりました」

 

 セバスさんのサインが書かれた回覧板を受け取り、アイテムボックスにしまった。

 そして、モモンガ様の部屋に入室する。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

「ナナミ、ただ今戻りました」

「よく戻ったな。近くへ寄れ」

「はい」

 

 モモンガ様は執務用の椅子座り、机に向かって書類仕事をされていたようだ。

 隣りにはアルベドがいて、補佐しているようだった。

 五体のハンゾウは部屋の中に散って警戒に当たっている。

 

 私は机を挟んでモモンガ様の向かいに立った。

 モモンガ様は私を観察するように見る。

 

「それで、答えは得たかな。ナナミ」

「はい、出ました。今、お伝えした方がよろしいですか?」

「いや、少し待て。アルベド、そしてハンゾウたち。今から一時間、暇をやろう。休憩してくるといい。私も少々疲れた」

 

 モモンガ様はわざとらしく、背をのばし、背もたれに深く体を預けた。

 アルベドはモモンガ様に対して深く腰を折る。ハンゾウたちは全員が床に降り立ち、モモンガ様へ膝を折った。そして深く頭を垂れる。

 

「かしこまりました。それでは失礼いたします」

 

 アルベドは去り際に私へ小さく手を振った。

 私も手を振る。

 六人は素早く部屋から出て行った。

 

 足音が聞こえなくなったところで、モモンガ様は大きく息を吐いた。

 

「やはり、お前が護衛している時とは違ったよ。気を抜けられん」

「ご迷惑をおかけしました」

「ああ、気にするな。これもナザリックの主人として必要な事だからな。……心なしか、アルベドの機嫌も良かった」

「モモンガ様のお傍にいられたら、皆嬉しいですから」

「そういうものかな……。さて、答えを聞こう」

 

 私は従者NPCとしてのやりたい事と、個人としてのやりたい事を話た。

 

 NPCとしてやりたい事、それはモモンガ様に従う事。ギルドメンバーを探す事。

 個人としてやりたい事、それはナザリックの今後をこの目で見る事。

 

「ナザリックの今後……か」

「はい。知りたいのです。ナザリックがどんな風に繁栄するのか。どんな風に進化していくのか」

「そうか。わかった。……では、お前の夢はなんだ?」

「夢でございますか?」

「ああ。それについては考えていないか?」

「夢というか、その、とても個人的なのですが……」

「かまわん。話てみろ」

 

 私は五人を思い浮かべる。

 

「……恋人を作りたいと思っております」

「ほお!それはなぜだ?」

 

 ぐいっと身を乗り出されて、私は少し恥ずかしくなった。

 それでも、真っ直ぐモモンガ様と目を合わせて言う。

 

「お見合いをしたからです。それで、気になる人を見つけました。この気持ちが恋なのかはわかりませんが、大切に育てていきたいと思っています。なので、将来的に恋人が作れたら、嬉しいです」

「そうか、そうか!うむ、それは良い夢だ。――応援しているぞ、ナナミ」

「はっ、ありがとうございます。モモンガ様」

「うむ。ところで、ナナミ。コキュートスには会えたか?」

「?はい。最古図書館で会えました」

「そうかそうか。よかったな」

「はい。元気そうだったので安心しました」

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 モモンガは今日も一日を終える。

 

 既に夕方だったので、ナナミを下がらせた。

 もう少しだけ仕事をした後、アルベドとセバスを下がらせて、ハンゾウとコキュートスの配下を護衛につかせる。

 

 俺はスイートルームの寝室で、大きなベッドに腰かける。

 独り言が漏れる。

 

「あ〜、今日も疲れた。ナナミ以外のNPCとはまだ距離感掴めていないんだよな……上位者としての振る舞い慣れないわあ……」

 

 横になろうとして、今の装備では寝返りをうてない事を思い出す。仕方ないので仰向けに寝転がるだけにした。

 

 はあ〜と、息を吐いて身体中から力を抜いた。

 ぼんやりとした頭に浮かぶのは、ナナミの恋の行方だ。

 モモンガは心の中でニヤリと笑う。

 

「ナナミが誰を選ぶのかはわからない。五人の誰がナナミを選ぶのかもわからん。だが、応援すると言ったのだ。背中を押してやらんとな」

 

 ――今日、コキュートスを図書館に行かせたように。

 

 ユグドラシル時代、ナナミは第九、第十階層に放置されると、最古図書館に行く行動パターンがあった。

 行く理由は様々だった。暇つぶしだと言う時もあれば、探し物の為に来ている時もあった。

 

 今回は、その事を思い出してコキュートスに最古図書館に向かうよう勧めた。

 

 無事に二人は会えたようだ。よかった。少しは話せただろう。

 好感度上昇しているかな?見たいが……人の感情を覗くのは良くないか……。

 

「……俺は、両親と恋の話なんてせずに別れちゃったからな」

 

 ナナミとは親子関係ではなく主従関係だが、親しい者として恋の行方を見守りたいと思っている。

 ……まあ、見守る以上の事をしているが。

 

「か弱いネコさんは、どういうつもりで見合いなんてさせたんだろう?」

 

 その答えは、わかりそうになかった。

 

 

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