NPCになりまして。   作:紅絹の木

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クエスト:村を助けましょう2

 

 

 姉妹に名前を聞かれたので、普通にナナミだと答えました。そして隣にいるのはアルベドだと。

 モモンガ様はどうするんだろ?

 

「――我こそは、アインズ・ウール・ゴウンである」

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 姉妹は森に置いていく。

 モモンガ様……今はアインズ様によって魔法で守りを固めてから、私たちは村の方へ歩いていく。

 途中、遭遇した騎士風の者たちでまた実験しつつ進んだ。アインズ様の防御系パッシブスキルやら、アルベドの攻撃、さらに私のアサシンとしての能力を試す。

 うん、これなら村に乗り込んでも問題ないだろう。

 

 

 ゴトリ。

 

 また一つ首が落ちた。

 血の海が辺り一面にでき、臭いが充満する。

 

 私は周囲を警戒しつつも、死体となった騎士風の者たちをぼんやり見ていた。

 ――悲しみはない。アインズ様に刃を向けたのだ。死んで当然だと思う。心も痛まない。でも……気分がいいものではない、かな。

 進んでしようとは思わない。きっと、私のカルマ値が中立の善よりだからかな。

 

 未来で、罪なき村人たちを殺す日が来たら……私の心は痛むだろうか。

 

「……ご命令であれば、完遂はさせるけど。どう感じるんだろ」

「どうしたの?ナナミ、そちらは終わったのかしら?」

「終わったよ。あと、これからの事を考えていただけだよ」

「ほう?聞かせてくれるか?」

「アインズ・ウール・ゴウン様」

「アインズでいいぞ、アルベド」

「くふー!よ、よろしいのでしょうか!?」

 

 くねくねと鎧姿のアルベドが踊る。

 私はアルベドの肩に手を置いた。

 

「アルベド。多分だけど、全員同じ呼び方で統一されるよ」

「なんですって!?」

「その通りだ、ナナミ」

「……そうですよねー。だと思いましたー」

 

 がくりと肩を落とす仲間に、私は「ドンマイ」と声をかけておく。

 アインズ様が私の隣に来て、耳打ちされた。

 

「アルベドはどうしたのだ?」

「アインズ様と呼べるのは自分だけではないか、と期待したんだと思います。考えが外れたから、落ち込んでいるんですよ」

「そうか……。あー、ところでナナミ、アルベド。一つ聞きたい事がある」

 

 アインズ様の声に、緊張と不安が含まれた。

 アルベドもそれに気づいたのか、お互いに襟を正す。

 

「……この名前を私が名乗る事に対して、何か思うところはないか?」

「ありません。この世界でそのお名前が広がったとき、他の至高の存在を探しやすくなると思います」

「――私もございません。非常に良くお似合いのお名前かと思います。私の愛する――ゴホン。至高の御方々をまとめられていた方に相応しいかと」

「そうか……。ナナミはともかく、お前たちの主人を差し置いてこの名前を私が名乗ることを、どうとらえる?」

 

 アルベドは語った。

 自分たちを捨てた至高の存在が、アインズ様を差し置いて名乗ったならば、何か思うところがあったかもしれない、と。

 しかし――。

 

「最後まで留まられたモモンガ様であれば、喜びという感情以外の何があるというのでしょう」

 

 アルベドは言いきって、頭を下げた。

 アインズ様は何も仰らない。アルベドの言葉を考えているんだろう。

 

 ユグドラシルは、ゲームだ。

 きっとアインズ様も考えているだろうけど、リアルの生活を捨ててまで続けるものじゃない。それは目の前にいらっしゃる御方も同じだった。

 

「(どんどん至高の存在がお隠れになる中で、私は原作を知っていたから耐えられた。寂しかったけれど、モモンガ様だけは残ってくれるとわかっていたから)」

 

 それでも原作通りにならなかったらどうしようと、怖かった。だから、モモンガ様の気配がする日はいつだって嬉しかった。

 

 アインズ様は頭を振った。

 

「……人の気持ちは複雑怪奇なもの……」

 

 そして仰られる。

 私の仲間たちが異を唱えるまで、アインズ・ウール・ゴウンは私ただ一人を指す名だ、と。

 

 私たちは深く頭を下げた。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 村に乗り込む前に準備をする。

 アインズ様が装備するスタッフの邪悪なエフェクトをカットしたり、アインズ様が仮面とガントレットを装備されたりした。

 

「――どうだ?」

 

 アインズ様が両腕を広げられる。

「お似合いです。アインズ様のご尊顔が隠れてしまうのは少々残念ですが」と、アルベド。

「種族がパッと見ではわからないので、多少は警戒はされるかと思いますが話は聞いてもらえるかと」が、私。

 

 アインズ様は満足そうに頷かれた。

 そして<飛行>の呪文を唱えられる。遅れてアルベド、私の順番で空に舞い上がる。

 高く飛び上がると村を見つけた。村の中央あたりでデス・ナイトが暴れている。だが、デス・ナイトの動きが止まった。

 

「――行くぞ」

「はっ」

「はい」

 

 きっとアインズ様が何かされたのだろう。

 デス・ナイトの所へ飛ぶと、死の騎士が立つ辺りの地面は血を吸って濃くなっていた。そして横たわる死体がちょいちょいグロくて見ていられない。そっと視界から外しておく。……が、また死体が目に入る。

 私は諦めた。

 

 生き残った四人の騎士風の者たちは息も絶え絶え、という感じで立っている。

 対してデス・ナイトは直立している。背筋いいなあ。

 

「デス・ナイトよ、そこまでだ」

 

 アインズ様に追従して、ゆっくり地上に降りる。

 

 そこからはアインズ様の独壇場だ。

 相手から武器を捨てさせ、膝をつかせる。

 そして騎士風の者たちに、この辺りで騒ぎを起こさない事、騒ぎを起こした場合相手の国まで死を告げに行く、と仰られた。

 騎士風の者たちは、アインズ様の合図で一目散に走る。

 

 次にアインズ様は、村人たちに向かって歩き出す。

 互いに三メートル程の距離がある地点で、私はアインズ様に声をかけた。

 

「アインズ様、村人たちは動揺されている様子。ここから、お声をかけてあげるのはどうでしょうか?」

「ああ、私も同じ考えだとも。――さて、皆さん。もう安全です。安心してほしい」

 

 こうして村人たちとの交渉が始まった。

 と、その前に姉妹を村まで連れて来ないといけないね。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 アインズ様が、姉妹に最高位魔法をかけて記憶操作をおこなう。

 それは無事に終わった。アインズ様はMPがかなり削られてお疲れの様子だが、姉妹は元気だった。

 

「――さて、協力ありがとう。共に村に戻ろうか」

「は、はい」

「アインズ様。村に戻る前に、この者たちに水を飲ませたいのですが、よろしいですか?おそらく、喉が渇いているかと」

「……まあいいだろう。飲ませてやれ」

「ありがとうございます。さあ、飲んで」

 

 大きめのポーチから竹で作られた水筒を取り出す。ポーチも水筒もマジックアイテムだ。ポーチにはたくさん物が入るし、水筒にはその見た目以上に水がいれられる。至高の存在から見れば大したアイテムではないが、ちょっと人を助けたい時には便利だ。

 

「で、でも、お待たせするわけには……」

「早く飲めば、それだけ早く移動できるよ?」

「いただきます。さ、ネム」

「いただきます」

 

 姉は水筒を受け取り、蓋を取った。そして抱きしめている妹に手渡す。妹は喉が渇いていたのだろう。喉を鳴らして飲む。

 

「――おいしい!これおいしいよ、お姉ちゃん!」

 

 妹にずいっと水筒を渡され、姉は驚きつつも受け取る。そして一口飲んで――妹と同じように何度も喉を鳴らした。

 

「――ぷは、おいしい!」

「それは良かった」

「あ、ありがとうございます。お返しします」

「ありがとうございます!」

「いいのよ。さあ、行きましょう。立てる?」

 

 私は、片手で返却された水筒を受け取る。姉の方に空いたもう片手を差し出した。

 姉はじっと手袋をはめた私の手を見つめて、そしておそるおそる自分の手を伸ばした。

 握られた手を、握り返す。ゆっくりと優しく引っぱり、立たせた。

 

 

 

 

 村へ到着する。

 道中、彼女の両親はすでに亡くなられていた事は伝えた。泣きたかっただろけど、彼女はぐっとこらえて私たちに望みを聞いてくれた事に対して感謝の言葉を口にした。

 

 村の広場まで行くと、皆で死体を運んでいるようだ。

 その内の一人が、こちらに声をかけてきた。

 

「エンリちゃん!ネムちゃん!」

「あ、おばさん……。あの、ここで失礼します。本当に、お世話になりました!」

「お世話になりました!」

 

 深く頭を下げた二人は、顔を上げておばさんの所に走り出す。

 そしてどこかへ案内されていった。

 

 ――入れ違いで、誰かが近づいて来た。なので鋭くそちらを見る。

 男性はびくりと体をすくませて、三メートル先で立ち止まった。

 

「アインズ様」

「うん?ああ……あなたは確か村長殿」

「は、はい。あの、準備が整いましたので、我が家にご招待いたします」

「これはこれは、ありがとうございます。……アルベド、ついてこい。ナナミはここに残って村人たちに手を貸せ」

「かしこまりました」

「かしこまりました」

 

 アインズ様とアルベド、そして村長さんを見送ってから、私は村人たちに合流した。

 

 怪我人の傷を治し――低級の回復魔法なら私も使えるのだ――、そして瓦礫を片付けていく。

 レベル百のシーカーは、レベル百のマジックキャスターと比べれば力持ちだ。もちろん、本職の戦士職には敵わないけれど。その力でどんどん瓦礫を退かしていく。

 

 ――その間にも、ぞくぞくと周囲の反応は増えていた。

 村人ではない。こちらを監視する視線は、多分ナザリック勢の反応だろう。

 念の為、アインズ様に報告するか。

 

 周囲の村人たちに「アインズ様に報告したい事があるので、抜ける」と伝えた。

 

「これから葬儀が始まりますし、抜けても大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。ナナミ様のおかげで怪我が治りました」

「助けてくださってありがとうございます」

「全てはアインズ様がお許しになられたから、できた事です。感謝は全てアインズ様に伝えてください。では、また後で」

 

 私は軽く土埃を払ってから、アインズ様の反応がある方角へ走り出した。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 村の中でもちょっとだけ大きい家から、村長さんとアインズ様が出て来た。

 もちろん、アインズ様のお傍にはアルベドとデス・ナイトがいる。私は四人に近づいた。

 

「アインズ様、少しお話したい事がございます」

「わかった。村長殿、では後ほど」

「はい。失礼します」

 

 村長さんが頭を下げられるので、私もぺこりと頭を下げておいた。

 そして村長さんが充分に離れた所で、三人に伝える。

 

「アインズ様、村の周囲に数百の反応があります」

「――敵か?」

「いえ、敵意は感じません。村人を監視している様でしたので、多分……」

 

 ここで、ちらりとアルベドを見る。

 アインズ様もアルベドを見た。アルベドから微笑んだ気配を感じた。

 

「――ナザリック勢かと」

「……どういう事だ。アルベド」

「はっ。この村を襲撃できるように、四百のシモべたちが準備を整えております」

 

 アルベドは頭を下げた。

 アインズ様は頭を振った。そしてぼそりと「セバスに伝言ゲームの才はないな」と仰った。

 

「……襲撃の必要はない。既に問題は解決済みだ。シモべたちの指揮は誰がしている?」

 

 アルベドは報告する。

 アウラとマーレが指揮している事。デミウルゴスとシャルティアはナザリック内を、コキュートスはナザリック周辺を警備している事。

 

 アインズ様は頷かれた。

 

「ではアウラとマーレを除き、他は撤収させよ」

「あの、アインズ様」

「なんだ。ナナミ」

「隠密に長けたシモべも残しておきませんか?例えば、エイトエッジ・アサシンがいれば、彼らを」

「ふむ。なぜだ?」

「襲撃者に備える為です。私一人では、限界がありますから」

「――よかろう。アルベド……いや、私が直接伝えた方が早いな。しばし待て」

「はっ」

「はい」

 

 アインズ様はアウラに〈伝言〉を使われた。

 それは数分で終わる。

 

「……よし。では、行くぞ」

「どちらに、でしょうか?」

 

 純粋な疑問だった。

 アインズ様は村長さんが向かった方角を指した。

 

「この世界の葬儀に興味がある」

 

 

 

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