NPCになりまして。   作:紅絹の木

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連日の投稿、失礼します。
ストックがあるので、出させていただきます。


クエスト:村を助けましょう4

 

 

 

 私の護衛は、アインズ様に預けてきた。

 そして、西陽が輝く草原を駆けて、法国から来ただろう連中の周囲をうろちょろする。

 

 今は気配を完全に消し去り、連中の近くに寄って……確か指揮官の名前はニグンだったよね……彼らを数える。

 人は……結構いるかな。召喚された天使の数も、同じだ。

 レベルは、百の私たちナザリック勢からすれば、とっても低い、という事はわかる。

 ニグンとガゼフならば、ニグンが少し強く。

 ガゼフとニグンの部下ならば、ガゼフの方が強く。

 ニグンの部下と、ガゼフの部下ならば、ニグンの部下の方が強い。

 

 私たちからすれば脅威ではない。

 でも、ガゼフ達からすれば、死を覚悟する相手ではあるだろう。強さの差もあるし、ガゼフたちには敵が多すぎる。しかも、天使なんて召喚者の力量にもよるが、何回も召喚できちゃうし。

 

「(アインズ様は、ガゼフを助けるのかな?)」

 

 そんな事を考えつつも、ニグンと思わしき指揮官の男から、彼らのレベルには似合わない高位のアイテムの存在を感じ取る。

 うん、あらかたの情報は得た。これ以上待たせては、いけないだろう。

 私はまた、朱色に照らされた草原を駆けた。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

「ただいま戻りました」

「ご苦労。報告を聞こう」

 

 音もなく、村の中にある――それも敵を監視できる――家屋に入り込む。

 そしてアインズ様、護衛のアルベド、二人の隣にいたガゼフに、敵について報告した。エイトエッジ・アサシンたちの姿は見えない。どこだろうね?

 ガゼフが、音も気配もなく、側に寄った事について驚いているが、気にしない。今は報告の方が大事。

 

「……数は、ご覧の通り向こうが上です。強さは、ガゼフ……様たちより上ですね。それから気になるものが一つ」

「なんだ?」

「指揮官と思わしき男の懐から、彼らのレベルに似合わない……強力なアイテムを、感知しました。おそらく切り札でしょう。戦うなら、注意するべきです」

「そうか。よくやった、ナナミ。……だ、そうです。戦士長殿」

「この短時間で、一体どうやってそこまで調べられたのか……凄まじいな」

「調べものがちょっと得意なだけですよ」

 

 えへへ、と笑うと、ガゼフが眩しいものを見るかのように、目を細めた。なんだろう。その視線が、気になる。

 

「――ゴウン殿。良ければ雇われないか?報酬は望まれる額を約束しよう」

 

 それに対し、アインズ様は断られた。

 デス・ナイトを貸して欲しいという願いも、断られた。

 王国の法を用いて、強制徴集するのは?というガゼフの案に、アインズ様は首を振る。

 

「――こちらもいささか抵抗させていただきますよ?」

 

 折れたのはガゼフの方だ。

 法国と戦う前に全滅する、とこぼした。

 うん、ガゼフの勘は正しい。アインズ様、そしてナザリックと敵対する事はマイナスでしかないのだから。

 そして、ガゼフはもう一度、村を救った事への感謝を、アインズ様に伝える。

 加えて最後に願いを口にした。“もう一度だけ、村人たちを救ってやってほしい”と……。

 

「王都に来られることがあれば、お望みの物をお渡しすると約束しよう。ガゼフ・ストロノーフの名にかけて」

 

 膝をつこうとするガゼフを、アインズ様が止められた。

 

「……了解しました。村人は必ず守りましょう。このアインズ・ウール・ゴウンの名にかけて」

 

 ガゼフの表情は晴れやかなものに変わる。

 アインズ様に感謝を伝えて、死地に向かおうとした。

 ここで、アインズ様はアイテムの一つをガゼフに渡す。

 ガゼフは、アインズ様からの品だからと、その小さな彫刻を懐にしまった。

 ――そして、私を凝視した。

 なんで?

 

「あの、何か?」

「すまない。一ついいいだろうか」

「はい」

「私の、無事を祈ってくれないか?」

 

 彼の目は真剣そのものだ。

 断れそうにもない。

 

「……どうか、ご無事で。ご武運を」

 

 ガゼフは、それは嬉しそうな笑顔を見せた。

 

「感謝する!その……」

「ナナミと申します」

「ナナミさん……良い名だな」

「ありがとうございます。ガゼフ様のお名前も、素敵です」

「そう思ったことはないが、君が褒めてくれるのならば、私の名前も良いものだな。――これで思い残すことはない」

 

 その目は、ひどく優しい。

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 ガゼフは部下を率いて、村から遠ざかる。

 ぼうっと、その後ろ姿を見つめた。

 さっきのやりとりはなんだったのだろう、そう考えていると、隣でボソボソと声が聞こえてきた。

 

「……魔性といえばいいのか?」

「アインズ様?」

「いや、なんでもないぞ?」

 

 アインズ様はくるりと反転し、私とアルベドに背中を向けた。

 そして“コキュートスにライバルか”と、仰った。

 訳がわからないです……。どうして先程のやり取りで、そうなるのですか。

 と、仕事しないと。

 

 村長さんと合流した私たちは、村人達を大きな家屋に集め、アインズ様は防御魔法を張るのだった。

 

 

 

 

 村人達を大きめの家屋に集めた後、私たちは彼らから距離をとり、奥でコソコソと話す。

 

「それでは、私とアルベドは戦士長と入れ替わろう。ナナミ、デス・ナイトと後の事は任せる」

「かしこまりました。お気をつけて、いってらっしゃいませ」

「うむ」

 

 そして私はアインズ様から距離をとる。

 間もなくしてアインズ様とアルベドの姿が消えた。入れ替わるようにガゼフとその部下達が現れる。

 ガゼフはひどく怪我を負いながらも、立って剣を構えていた。しかし、部下達は気絶しているのか、転がっている。

 私はガゼフに近寄った。ガゼフは私に気がつき、目を瞬かせる。

 

「ナナミさんか?……ご、ゴウン殿の姿が見えないようだが?」

「あなた方と入れ替わりで、戦場に赴かれました。さあ、今は部下の方々と共に、お休みください」

 

 ガゼフに手をかざし、低級の治療魔法をかける。

 いくらか、ガゼフの傷が塞がった。

 ガゼフが私の手を掴み、そして深く頭を下げた。

 

「頼む!報酬はいくらでも出すから、部下達を治療してやってくれ!」

「じゃあ、いくらか、いただきますね」

「してくれるのか!感謝する、ナナミさん」

「では、早速取り掛かるので、あの、手を……」

「む。すまない……」

 

 私よりもいくらか大きな手が離れていく。

 ガゼフにも手伝ってもらいつつ、私は彼の部下たちを、治療してまわる。

 

 

 

 

 すっかり辺りが暗くなり、空には満点の星空が輝く頃。

 アインズ様とアルベドが歩いて帰ってきた。

 すでに村人達には、アインズ様達が帰還する事を報せておいた。

 なので村の出入り口にて、私とデス・ナイトと村人達、加えてガゼフと王国の戦士達と共に、アインズ様達を出迎えた。

 

 感謝と賛辞の言葉が、アインズ様達に降り注ぐ。

 私は前に出て、アインズ様に笑いかけた。

 

「アインズ様、それにアルベド。ご無事で何よりです。お帰りなさいませ」

「ナナミか。そちらも、問題なかったか?」

「はい。こちらは王国の戦士……さん達の治療をして、待っておりました。死者はおりません」

「それは素晴らしい。よくやった」

「はい!ありがとうございます!」

 

 そこに近づく気配が一人。

 振り向いて、声をかける。

 

「ガゼフさん?」

「ゴウン殿、ナナミさん、感謝を改めて言わせて欲しい。――本当に、ありがとう!」

 

 アインズ様は鷹揚に頷かれた。

 そうしてガゼフに、敵は追い返した、と告げた。

 嘘だろう。この周囲はナザリックに囲まれているのだ。逃げるなんてできやしない。おそらく、捕まえてナザリック送りだ。

 

「……それで、ゴウン殿はこれからどうされるのかな?私は部下達と共に、この村で休ませてもらう事になっている」

 

 アインズ様は「これから出立するつもりです。どこに行くかは決めていません」と、言った。

 ガゼフは、私達を心配して……やめた。強者にはいらぬ心配だと、気づいたのだ。

 

「王都に来られた時は思い出してもらいたい」

 

 私達はいつでもあなた方を歓迎する、と。

 ガゼフは私の方を向いた。

 

「あなたもだ。ナナミさん。私を、部下を救ってくれて、感謝する」

「いいんです。私は、私のやるべき事をしただけなのですから」

 

 ガゼフの左手薬指に光る指輪を、見た。

 ふふ!素敵なアイテムは、アインズ様に報告しちゃおうね!

 

 やるべき事はやった。

 アインズ様と私たちは、ナザリックに帰還するのだった。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 

 ナザリックには、〈転移門〉で帰還した。村から離れた所で、アインズ様が魔法を使ってくださったのだ。

 村の周囲にいたナザリック勢は後から帰ってくるらしく、アインズ様とアルベドと私は、先に拠点の中に入る。

 そして、アインズ様はアルベドに「シモベたちを玉座の間に集めよ」とご命令された。

 

「ギルドメンバーが創造したNPCは、必ず集めるように。ただし、ヴィクティムやガルガンチュアなどといったメンバーは、動かすな。あれらに持ち場を離れられては困る」

「承知しました。では、代わりに各階層の高位のシモベたちを集めてもよろしいでしょうか?」

「……許す」

「ありがとうございます。それでは、直ちに行動を開始します」

 

 アルベドが去っていく。

 その姿が遠ざかってから、アインズ様は私に命令する。

 

「では、ナナミ。行くぞ」

「はっ。向かう先は、アインズ様の自室でよろしいですか?」

「その通りだ」

「かしこまりました」

 

 セバスさんが走ってきた。そして私達は指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)を受け取る。

 

「ご苦労、セバス。ではな」

「セバスさん、ありがとうございます。それじゃ」

 

 転移間際、セバスさんが頭を下げるところが見えた。

 

 

 

 

 

 今、アインズ様と二人きりだ。

 アインズ様の自室に入り、そこで切り出した。

 

「アインズ様、あの、提案というか、相談事があります」

「なんだ?」

 

 アインズ様は私を振り返る。

 私はまっすぐ、アインズ様を見上げた。

 

「今後、階層守護者の方々がナザリックの外部にて、活動される時……それも戦闘が予想されるケースで、私も同行させていただけませんか?」

「――仕事が欲しいのか?」

「それもあります。何よりも、階層守護者の方々が至高の御方々のように、私やハンゾウといった隠密に長けた者を、うまく使えるようになるべきだと、考えました」

 

 アインズ様は顎をさすった。

 

「……階層守護者たちを、テストするんだな?私の目の届かない所で、どこまで命令通りに……いや、できるなら、命令以上にナザリックの利益となる行動をとれるか」

「テストだなんて、そんなつもりは……。ただ、必要だと思うのです。命令されるだけではなくて、自ら考え、行動する事が。それに慣れてほしいのです。今はもう、ユグドラシルではないから」

「――わかった。ナナミ、お前の案、少し考えてみるとしよう」

「ありがとうございます。アインズ様」

 

 深く頭を下げる。

 そして顔を上げて、アインズ様がこちらをじっと見ていらっしゃったから、ニコッと笑っておいた。

 

「……やはり、お前といると落ち着ける」

「そうですか?」

「そうだ。……ところで、ナナミ。ガゼフをどう思う?」

「ガゼフを、ですか?……実直な方だと思います」

「それだけか?」

「はい」

 

 アインズ様は、ボソボソと独り言を呟かれる。

 

「青い羽根があれば……また違う……なったかも……」

 

 アインズ様って、もしかして私の恋の行方を、すごく気にしていらっしゃる??

 青い羽根の効果かもしれないけれど、今の私にはナザリックではない者と結ばれる気はない。

 もし外部の者と結婚しろ、なんてご命令があれば、うん、従うかな……。

 

 三十分後、私たちは玉座の間でシモベ達が集合するのを待っていた。

 ただ待っていたワケではなくて。王国の戦士達から頂いたお金をアインズ様に渡し、ガゼフがはめていた指輪がマジックアイテムだった事を報告していた。

 ただ、何の効果があるかまでは、あの短時間に確認はできなかったんだよね。治療中に見せてもらえば良かった。

 

 そこに扉がノックされる。アルベドがアインズ様の自室に来たのだ。

 部屋には私しかシモベがいなかったので、私が対応する。

 

「アインズ様、アルベドを入れてもよろしいですか?」

「ああ、入れてやれ」

「かしこまりました」

 

 扉の前まで歩く。

 そのまま開けずに、スキルや魔法を最大限に使い、扉の向こうの存在を探った。

 すごい。まるで扉や距離なんてないみたい。すぐ側で会っているような感覚だ。呼吸さえ聞こえてきそう。

 扉の向こうにいるのは、間違いなくアルベドで、敵意はない。――操られている可能性も視野に入れて、警戒は怠らない。

 ゆっくりと扉を開ける。感覚はより鮮明になる。

 優しい微笑みを浮かべるアルベドと、目が合った。――彼女の気持ちだろうか?何かが自分の中に流れ込んでくる。

 深い満足感と急くような気持ちだ。……操られてはいないと思う。

 

「アルベド、今、私の行動に満足していているね。それから早くしてほしいって思ってる」

「正解よ。顔に出ていたかしら」

「ううん。私が読み取ったの。さあ、入って」

 

 扉をさらに大きく開けてアルベドを招く。

 アルベドは「ありがとう」と言い、感謝の念と共に私に伝わる。

 そして彼女は部屋に入り――。

 

 暴風のような愛情。

 

「――アインズ様、遅くなってしまい申し訳ありません。簡単にではありますが、今回の報告書をお持ちしました」

「そうか。感謝しようアルベド。さっそくここで聞かせてくれ。……どうしたナナミ?」

「あいんず、さま。問題ありません」

「いや、顔色悪いぞ?」

 

 お腹に手を当てて、苦い物を食べた時のように顔を歪ませる。

 うわん。アルベドの愛情ってめちゃくちゃ嵐みたいな、沼のような感じなんだね。一つ学んだよ……。

 私の顔色はその後、セバスさんが呼びに来ても回復しなかったので、アインズ様から休むように命令される。

 

「では、自室に戻ります。体調が戻り次第、顔を出してもよろしいでしょうか?」

「許す。早く治せ」

「ありがとうございます。それでは失礼します」

 

 二人に頭を下げて、私は先に部屋を出た。

 セバスさんと顔を合わせる。――ああ、優しい。日向のような温かさを感じる。

 

「セバスさん。私、これから部屋で休みます。体調が戻り次第、復帰します」

「どこか悪いのですか?」

「ちょっと、愛に当てられて……」

「は?」

「とにかく、すぐに回復します。なので、ご心配なく。それじゃ、また」

「そうですか?何か、いるものがあれば言ってください。お持ちしますから」

「ありがとうございます」

 

 セバスさんにも頭を下げてから、私は廊下をフラフラと歩いていく。

 後ろから気遣いの視線を感じた。セバスさんって、やっぱ優しいや。 

 

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 自室。寝室にて、前世の時よりもずっと使い心地が良いベッドに、ダイブする。

 そして下着以外の装備品を、アイテムボックスにしまっていく。

 全てから解放されて私は、ほっと息をついた。

 

「私、感情を読めちゃうんだな。慣れなきゃ、ダメだね」

 

 でも、それは起きてから。

 今はやり切った自分を褒めてあげたい。

 かけ布団に包まり、目を閉じた。

 あ、化粧落としてないや……。

 

 

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