それは唐突なことだった。
高校の卒業式を無事に終えて友人との写真撮影後に解散し、帰路についていた僕。
そんな僕は至って普通の道を歩いていた筈なのだ。
なのに気付けば周囲が真っ白で、上下左右がわからなくなるような空間にいた。
「あぁ...なんか気持ち悪くなってきた...」
白一色で自分が立っている場所がなんなのか分からず、脳の情報処理が追いつかずに挙げ句の果てには吐き気が襲って来る始末。
自分は知らず内にして違法薬物にでも手を出してしまっていたのだろうかと不安になっていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
“こんばんは”
「こんばんはぁ...ん?今の声はどこから?」
“上または下または左右どちらかに私はいます。姿は見せられませんが私は確かに存在しているのです。”
早々わけわからない事を言われたが深く追求してはいけない気がしたので無理矢理納得しておこう。
「そうですか...それでもしかして貴方が僕をこの空間に運んだのでしょうか?」
“正解です。貴方は厳正なる抽選の結果、異世界転生のプレゼントに当選いたしました。”
「え、嫌です」
“え......?....あの、今なんと?”
「だから、嫌です」
“理由の方をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?”
「まず僕は現代人です。文明がしっかりとした場所でないと不便さというストレスで早死にしてしまいます。その次に僕は日本人です。戦争から無縁となったこの島国の一般国民であり平和ボケした人間が異世界転生したところで生き抜ける気がしないのです」
僕は頭に浮かんだ理由の中で最もらしいものを口に出してみる。
“ふむ...でしたらすごいチートを差し上げますが、それで如何でしょうか?”
「いえ、チートをいただいたとしてもそれを扱える堅固な精神は持ち合わせていませんし、何より大学生活が楽しみなので異世界に行きたくないんです」
そう、チートを一つか二つもらった程度で現代日本人が生き残れるわけがないでしょう精々一週間が限界だ。
“そうですか...分かりました。”
「分かっていただけて何よりです」
“では金髪碧眼のイケメンにして超チートなステータスを与えた上で転生させますね”
「....ん?あの、話聞いてました?僕は異世界転生を拒否しているんですけど」
“えぇ、そうですね。ですけどすでに決まっていることですのでこの決定を覆すことはできません。ですので大人しく異世界転生されてくれませんか?”
「もしかしなくても貴方って邪神か何かですか?」
“いいえ?私は豊穣と慈愛の神ですよ”
「...絶対嘘ですよ。本当だとしても絶対名乗るべきものが違いますよ。貴方は邪神の才能がありますよ、良かったですね」
“酷いことをされても丁寧な言葉遣いを続ける貴方はとても良い人なのですね。ではそんな貴方に神々の祝福があらんことを”
「え、ちょっと!?その口上はもう転生させるってことですかね!?もしかしなくてもそうなんですね!...うわぁ!足元が光って消えていくぅ!えぇい!覚えましたからね!次会ったらこのチートで何かしらお見舞いしてやりますよ!」
“えぇ。楽しみにしていますよ”
「うっわ綺麗な流し方!」
こうしてなんとも雑な流れで僕は異世界転生を果たしてしまうのでした。
つづけ。